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高校数学 東京工業大学1989 (平成1)年度 前期入試問題の解説

解答例

どれも難易度の高い問題だった。

第1問

(1)点Pの座標(a, b)を用いてQの座標(X, Y)を記述する。そしてa, bの不等式に代入する事でQの範囲が分かる、というのが大まかな流れ。

(2)では、不等式の条件はもはや無関係。面積については三角形の頂点の座標が分かっているのでサラスの公式を使おう。Y≧X2では二本の接線を引けないので、Y < X2が必要条件。

第2問

外サイクロイド曲線がテーマ。2016年度第5問も外サイクロイドだ。

(1)イメージし易くする為に軌跡をを描いてみよう。y座標が2つあるという見落としも防げる。三倍角の公式を憶えていると速い。

(2)曲線の長さの公式を使う。sin θ sin 3θ +cos θ cos 3θ = cos 2θに気付きたい。途中計算の量は多いが、最後はシンプルな積分になる。

第3問

(1)とりあえず関数に0を代入してみて性質を探る。全てのxについて微分可能である事を示すためには、導関数を計算して全てのxについて解を持つ事を示せばよい。

(2)は微分方程式の問題。(1)で用いた導関数を使うが、f(x)を積分しても無意味なので変形して積分すると、対数関数を作れる。

第4問

短い問題文だが難しい。これを誘導なしで解かせるのはいかにも東工大らしい。解法は主に2つあり、Math Stationに両方載っている。

解法1

極限がある事と、「次第に大きくなる山が並んでいる」というグラフの概形から、挟み撃ちの原理が有効と分かる。難しいのは何で挟むかだが、

  • 被積分関数のx2があるせいで積分計算が大変
  • 少し大きい山と少し小さい山で挟むとn→∞では面積が一致する
  • 一つの山毎に分割すると絶対値を外せる

という事からx2 を定数化して少し大きい山と少し小さい山で挟む。

とりあえずグラフを描いてみればこの方針が思い付ける。

解法2

素直に絶対値を外して積分する。t = nxと置換するなど工夫はしてもやはり計算量が多くなる。

高校数学 東京工業大学1998 (平成10)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1, 3, 4問は誘導の作り方が下手である。

第1問

aを含む不等式を等式(直線)としたものをLとする。aが変数なのでaの値によって場合分けが必要だ。

Lは定点(3, 2)を通るのだが、それに気付くはaに様々な値を代入して挙動を考察するのが良いだろう。 これをヒント無しで導かせるのは不親切であり質の低い問題だ。

後はLの傾きを変えながら最大値を探す線形計画法だ。

第2問

(1)xの上限がa /2であるのは明らか。それでは下限を決定づけるのはどの円か?それぞれ計算する前に、図で示せば時短になる。

(2)面積の和で関数を作るが、√x = t と置き換えると計算が楽。x = √b /2で最小値となるのは予想できるので答えだけでも書いておこう。

第3問

(1)fとfn が紛らわしいので fn は gn とすべきだった。f = fn とは限らないから、 f0(t) = (2t -1) /t = t とはならないので注意。「全ての自然数nについて」に着目して、数学的帰納法で fn を証明する。それによって分母が0でなければ常に成立すると示せる。

(2)単純な積分と極限の計算。a = 1のときを場合分けする点に注意するだけで、(1)より簡単だ。

第4問

(1)三平方の定理や余弦定理を使うと計算が複雑になるので、角度を活かした解法を使おう。楕円を媒介変数表示すれば角度で表せる。 角度が等しいという条件を活かして、幾何的に考察して相似形を見つけ出すのが筋が良い。

(2)基本的な極限計算で(1)より簡単だ。

高校数学 東京工業大学1992 (平成4)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

与式をf(x)とおく。xが取り得る値は実数なので整数問題というより方程式の問題だが、色々実験してみるといずれ答えに辿り着くようにはなっているのは整数問題っぽい。

まずk = 0の場合を調べてみると、f(2) = 0となるので不適と分かる。Math Stationでは「f(x) = 1 となるxは存在しないので不適」としているが、f(x)が1となるxを必ず持っている必要はないので、題意を誤って解釈しているのではないか?

分母の値が何であれ、分子 = 0となる場合は不適だ。0≦k≦1ならばその条件になり得るのでこの範囲が除外される。この事を記述しているだけでも部分点が得られるだろう。

k > 1の範囲では分母は0にならないのでf(x)が全区間で連続関数であるという性質も重要。f(0) = 1であり、f(x) > 2, f(x) < 0 となるxがあるならば平均値の定理よりf(x) = 整数となるxが存在するという事なので、0 < f(x) < 2 が必要十分条件であると分かる。

ちなみに、分母と分子の多項式が「平方完成してみろ」と言っているような形なのでやってみると、k > 1ならばf(x) > 0と分かる。

誘導が無いので方向性が見えにくく、難しくなっている。 f(x)の分子の次数下げは自然な発想だが答えに辿り着かないので、誘導を付けた方が良い問題だった。

第4問

fn(x)は数学的帰納法で示せる。

文字だらけで把握しにくいが、kやmが小さい場合で実験すれば答えを予想できる。常にm≦nだが、n→∞である一方でmは有限値とする。極限値が0になる珍しい問題。極限の考え方そのものを問うたからこんな答えもアリだったのだろう。

第5問

(1) In とIn-1を和積公式を使って纏めれば”2x cos (2nx -2x)”の積分計算に持ち込める。しかしIn+1 -In を計算した方が、和積公式を使わないし”x cos 2nx”の積分計算なので楽だ。

高校数学 東京工業大学1991 (平成3)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

n!を素因数分解した時に2の個数が5の個数より多くなることは記述した方が良い。

(2)は、解答例ではガウス記号と挟み撃ちの原理を用いた方法が紹介されている。挟み撃ちの原理を使わない方法として、1~10nの数のうち、5の倍数、52の倍数…5nの倍数を数えて等比級数を作るというものがある。

簡単な問題だった。

第2問

空間ベクトル分野の問題だが、ベクトルは利用する必要がない。

空間における平面πの方程式を作る。接線lの方程式はxyz空間上では「z軸に平行な平面」であるので、この方程式に+azの項を追加する事で傾きを与える。(1/2, 1, 1)を通るという情報を加えれば平面の方程式が確定する。

楕円は媒介変数表示にした方が、θの範囲からkの範囲を決められるので分かりやすい。

第3問

二つの円錐と球の体積を求めて足すという方針はすぐに見える。試されているのは計算の効率性だ。

Math Station のように、三つの数式は展開せずに保持して最後に足し合わせると上手く相殺する。展開してしまうと10分以上失うだろう。体積を分割して計算した後に足し合わせる場合はこのようなテクニックが使える場合がある。

第4問

(1)

一般に「増加」といった場合は広義単調増加「f'(x)≧0」を意味する。狭義単調増加「f'(x) > 0」として解いた場合は減点されるかも。

(2)

この問題のポイントは逆関数の意味を正しく理解しているかという所だろう。逆関数と言っても、ここではxとyが入れ替わってないのでグラフはy = f(x)と同じだ。

逆関数はxとyについて置換するのが基本。f(x) = bは一瞥すると解けなさそうだが、xとして簡単な整数を代入してみるとx = 1で解けると分かる。

面積を定数とするa, bの関数と(1)で得たグラフを見比べれば、両者が接するときに最小値を取ると分かるので、判別式 = 0の解が答えだ。(1)が無ければ難問だった。

第5問

情報を整理すると、サイコロの出目は63通りあって、方程式の解はそれぞれに最大で3個ある。

偶数次数の項が負である理由を考えると、x≦0 ならば方程式は成り立たないので、x > 0であると分かる。要するにa, b, c, xが全て自然数となる組み合わせを探すわけだから、不定方程式の問題なのだ。ここまで整理した情報を記述するだけでも部分点が得られるだろう。

不定方程式なのを意識してx(x2 -ax +b) = cと変形すると、解はcの約数だと分かる。よってc = 1~6で場合分けする。

確率と見せかけて整数の問題だった。不定方程式として扱うという発想が必要だが、サイコロの出目や方程式の解が整数である点から気付ける。

高校数学 東京工業大学1997 (平成9)年度 前期入試問題の解説

解答例

珍しく数Ⅲからの出題が1問だけだった。第3, 4問は小問が誘導として役に立ってない。意図的に引っ掛けたのだろうか?

第1問

「図形と方程式」から領域の問題。グラフで考察するのは難しいので、方程式で処理していく。示すべき領域を如何に方程式で表すかがカギとなる。

場合分けが煩雑だ。まず楕円のグラフを描いた時点で、a, bについて0か否かで場合分けが必要だと分かる。

a ≠ 0∧b ≠ 0 のときは、図形的には楕円と直線の共有点が0または1になるのが必要条件なのはすぐ分かる。そしてMath Station のように、直線が常に(1, 1)を通る事に着目して、「直線で示される領域が常に原点を含む」と言い換えて立式するのが筋が良い。楕円と直線のグラフを想像上で動かすと気付ける。

また、 直線の方程式を楕円の方程式に代入する際、”by = “とすると楽だ。あるいは、楕円を媒介変数表示する手もある。

「図示せよ」と指示されているので、図が無いと大幅に減点されるだろう。a = 0∧b = 0の場合だけでも示す、題意を分かりやすく言い換えるというだけでも部分点が得られるだろう。

第2問

Σと極限の組み合わせなので区分求積法を使おう。また、図形的に考えてy = 1 /x [n, 2n +1]とy = 1 /(x -1) [n, 2n +1]の面積で不等式を作り挟み撃ちの原理を使う手もある。

(2)は挟み撃ちの原理を必ず使うが、何で挟むかは図形的に考察した方が確実だろう。

ボーナス問題だった。

第3問

(2)

文字だらけなので題意の解釈が難しいが、nとrは定数として考えよう。

「全てのnについて成立する」という証明なので、数学的帰納法を使おう。(1)は誘導として利用しない。

n = mのときに個数が有限個であると仮定すれば、xm+1の候補となる自然数が有限個となる事を示せばよい。そこで、xm+1 を上から抑える不等式を作る。その準備として x1≧x2≧… xm+1 と整列しておく。これは1996年度第1問と似た論証で、さすがに2年連続は良くない。

数学的帰納法の問題としてもハイレベルだ。方針だけでも部分点が得られるだろう。

第4問

(1)

与式には(α +β)が含まれているので、頂角について正弦定理を用いるのが筋が良い。

(2)

(1)を利用した計算方法は非常に煩雑となってしまう。(1)は無い方が正解率が高かったはずだ。Math Stationのように三角形の一つの角が60°となっている事に着目する方が速い。

高校数学 東京工業大学1990 (平成2)年度 前期入試問題の解説

解答例

本年度は難易度が高い。しかも驚くべきことに全ての大問が小問を持たない。第2問や第3問を見るに、出題センスが未熟である。

第1問

いきなりゴツい数式を出してやる気を削いでくるが、コケオドシ問題である。

m, nについて小さい整数を代入してみると、m = 1, n = 2のときにxw = yz が出てくる。この事は、この式が必要条件であるという事を示している訳だが、実は同時に十分条件でもあるのだ。

十分条件である事を示すには、与式に xw = yz を代入して恒等式となる事を示せばよい。式の対称性を活かしてxw = yz = kとするのが筋が良い。

整数問題は実験が大事」の教訓が強く表れた問題だ。 必要なのは実験する心構えと地道な式展開の計算だった。

第2問

本年度の最難問。

左辺はΣ内がlog xi との積になっているので処理しにくい。そこで右辺の一部をΣ式に変えるわけだが、この操作が珍しい。そして移項して式を纏めるわけだが、ここまで構想できれば立派だ。

ここからはlog x≧x -1 /xの不等式を自力で思い付いて適用するのだが、普通は誘導で与えられる部分である。当時の東工大はこういう出題もあったようだが、今の受験生なら誰も解けない。

第3問

図形の問題で最大値を求めよというから、いつもの様に微分法だと思ったら沼に嵌る。

二つの円の中心が楕円の焦点になっている事に気付く事が全てである。さて、どうやって気づくかだが、「三つの曲線とPQ, PRのグラフを描いてみる」とか「東工大は有名性質を利用した問題が多い」とか「楕円が(0, √3)という中途半端な座標を通過する」といった点を意識することだ。

それに気付かずこの問題に時間を取られてしまうと不合格になるわけだ。単に受験生を振るい落とす役割しか持たない、受験生の学力を試せない悪問だ。2000年以前の東工大数学ではこの手の問題があった。

この問題は三角不等式の活用例でもある。

答えが6になるのはP(0, √3)やP(2, 0)のときを確認する事で予想できるので、解けなくても答えだけでも書いておこう。

第4問

標準的な難度の積分問題。そのまま微分すれば極小値をとるθが分かる。

分数関数の積分なので、強引に「∫(y’ /y)dx = log |y|」の形に持っていく。sin やcosは、2乗の形であれば容易にsin とcos の間で変形が出来る。また、t = tan (θ /2)と置換する手法もある。

第5問

また楕円の問題。この時代の東工大数学は楕円の性質を利用した問題が多い。

ある点から楕円に引いた二つの接線が直交するとき、その点の軌跡は円となる。これを「楕円の準円」という。それを知っていれば簡単に解ける。

準円の存在証明はした方が良いだろうが、他の問題が難しいので余裕がある場合のみするのが戦略的に良いだろう。

存在領域として(1 /√3, 0)が除外点になるのに注意。

高校数学 東京工業大学1995 (平成7)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

a(n)が整数になる必要条件の一つ「分子≧分母」に着目して解く。

(1)は単なる極限の問題ではなく、誘導問題だ。n→∞とするとa(n) = 0になるという事は、nを大きくしていくとa(n)はいずれ1未満になり整数ではなくなる。よって(2)の条件を満たすnは有限だ。(3)についても、1未満となったa(n)を掛け続ければ与式はいずれ1未満になる。

整数問題ではあるが、与式を連続関数のグラフとしてイメージするのは有意義なのだ。

(2)も(3)もnについて虱潰しに調べていくだけの地味な問題。

n≧7のとき常にa(n) < 1である事を示す方が良いだろう。これは数学的帰納法が使える。

第2問

東工大頻出の、微分を用いて図形に関する最大最小値を求める問題。

方針によって難易度が大きく変わってしまう。筋の悪い解法で手詰まりになってもそれなりの点数は得られるはず。

正八角形の半分の形(θ = π /4)となる時に面積最大となるのは容易に予想できる。だから答えだけでも書いておこう。筋の良い解法となる補助線の引き方は、この形の時に対称性が強く残るようなものだ。

第3問

(2)

f(x) が極小値をとるxをαn とする。

グラフからの考察が大事。楕円とy = ex /n のグラフも描いてみると、-n < xn < αnが明確に分かる。xn を不等式で挟めたので挟み撃ちの原理を使おう。

挟み撃ちの原理を導入しなくても、n→∞のときxn = -∞を示してからxn /n = -√(1 -e2xn) を解くのもアリだろう。

高校数学 東京工業大学1999 (平成11)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問や第4問は、昔の難関大によくあるコケオドシの問題だ。この手の問題は今は出題されないから、解けなくても気にすることはない。

第1問

一瞥すると整数問題のように見えるが、文字が取り得る値は整数ではなく「正の実数」である。そして、解法以前にどの分野の問題なのかも分かり難いが、大小比較をするという事と、東工大は微積が頻出であるという事から、微分を用いると見抜ける。

文字の種類がやたらと多いが、これは目くらましである。xy平面においてA, Bはyに対応する。

さらに、両関数はapで割ることでb /a を作り出し、文字を統一できる…しかしこれは気づきにくいだろう。そこでaかbで偏微分してみると何の問題もなく解ける(対称性が崩れるので気が進まないが)。

第3問

構想力が勝負の問題。辺上の動点を導入し、2変数関数を作る。二等辺三角形を考察するので場合分けが生じる。三角形の形状や面積比が手掛かりになる。

0 < a≦1のときは、線分は短辺と平行になる。1≦a < 2のときは長辺と垂直になりそうだが、そうならないのが意外。

第4問

かなり複雑な数式だが、「2以上の全てのnで成り立つ」という点に着目して数学的帰納法を用いると解ける。これに気付けるかに全てが掛かっている。

高校数学 東京工業大学1994 (平成6)年度 前期入試問題の解説

解答例

本年度は簡単なセットだった。

第1問

PとQの対称性を常に意識するのがコツ。

第3問

Math Stationは問題文が間違ってるので注意。

(1)

部分積分を2回行う。e-xは微分しても負号が変わるだけであり、sin xも微分に周期性があるので、∫(e-x sin x)dx と∫(e-x cos x)dx を用意する方法がある。

(2)

「n→∞」なので挟み撃ちの原理を使いそうだが、n→∞ のときに値が一致する関数を作ることは出来ない。そこでsin xの周期性に着目し、積分区間をπごとに区切って計算してみる。

第4問

パターンに当てはまらないので思考力を要する問題だ。

(2)は、「ならば」という論理学的表現に着目して、「p ⇒ q」の対偶「¬q ⇒ ¬p」を証明してみよう。また、Σ式を多項式に変形する事で、f(m, n)とf(m’, n’)との演算が可能になる。

第5問

ちょぴん先生のように偏微分を使うと快適だが、高校範囲外なので減点の恐れがある。

両放物線の法線が一致する様な直線がPQであるが、これは自明とは言えないので証明した方が良いが、しなくても減点されるかは分からない。だから時間配分の戦略として証明を後回しにすると良い。

高校数学 東京工業大学1996 (平成8)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

(2)

解が一つしかないという事は「nx = xn」となるが、n = 1のときは解が無限にあるので注意。

(3)

解の個数が有限であることの論証は、1997年度第3問と似ている。有限性を示す為に、解が取り得る値に上限がある事を利用する。その準備として解を大きさにより並べ、不等式を作る。

与式右辺を利用すると指数関数となり扱いにくいので左辺を使ってnxnで抑える。一方右辺は xn xn-1 を使って下から抑えることでxn-1≦n を作れる。

第4問

東工大で出題された微分方程式に関する問題の中では最も新しい。

(1)

微分方程式を解く事によってf(x)を求める事が出来るが、題意を示すだけならその必要はないので簡単だ。

問題文が紛らわしいが、「f'(x)が単調増加」も示す必要がある。

(2)

最小値をとるf(t)が4/3かaかで場合分けが必要なのは見落としやすい。グラフの概形を描いておけばミスを防げる。