問題 , 解答
第1問
問2
質量モル濃度は分母が「溶媒の質量」である点に注意。質量モル濃度は、沸点上昇・凝固点降下の場面でしか出番がない。
問3
操作Iで体積を減らすと、気体の状態方程式に則れば圧力は増える筈だが、実際には圧力は変わらない。このような直感に反する現象が起きる原因は、容器内が気液平衡…つまり蒸気圧が飽和蒸気圧に達しているからだ。この状態だと圧力が増した分の水蒸気が液体に変わるので蒸気圧はそれ以上は上がらない。
気体の状態方程式は、物質が気体以外の相へは変化しないという条件の上でのみ成立するのだ。
問4
- (2)配位数は、体心立方格子ならすぐに分かるが、面心立方格子はイメージし難いので絵を描いてみると良い。
- (4)「すべて」という表現は注意。共有結合結晶は種類としては寧ろ少ない。他に分子結晶、イオン結晶、金属結晶がある。
問6
(1)滴下したそれぞれのNaCl水溶液とNa2SO4水溶液に含まれるNa+の物質量は同じだ。にもかかわらず沈殿発生に違いが出ているという事は、沈殿に作用したのは陰イオンの方だという事だ。すなわちこのコロイドは正に帯電している。
(2)実験Iから0.1mol/L のSO42-があれば沈殿が生じる事が分かったので、K2SO4でもOK。
ちなみに実験Iで、塩化ナトリウム水溶液を滴下しても沈殿しなかったのに、濃度が半分の硫酸ナトリウム水溶液で沈殿したのは、凝析の効果がイオンの価数の6乗に比例するという「シュルツ・ハーディの法則」によるもの。
(3)白濁したのは、FeCl3と水の反応後に生じたHClがセロハンを透過し、硝酸銀と反応してAgClの沈殿を生じたため。
(4)HClの水素イオンが透過した事を示している。
第2問
問1
混合気体の物質量は2mol なので、プロパンの物質量をx mol、 ブタンの物質量をy molとして連立方程式を解くことでxが求められる。しかし選択肢の数値を代入した方が速いだろう。
酸素の物質量は、5 * 0.6 + 6.5 * 1.4 = 12.1となるが、「 6.5 * 1.4 」を「6 * 1.5」にして暗算すると速い。
問2
電流の向きはイオン化傾向を知っていれば解ける。
質量の変化を求めるには、まず亜鉛イオンと銅イオンの価数を知っている必要がある。金属イオンの内、アルカリ金属と銀以外の価数は基本的に2以上である。 亜鉛イオンと銅イオンはともに2価なので物質量の変化はないが、原子量は亜鉛の方が大きいので減る。
問3
陽極と陰極から気体が発生したと書かれているので、陰極で発生した気体は水素である。したがって電解質の内、陽イオンのイオン化傾向が水素より小さいものは不適。ゆえに(1)か(3)だ。
陽極と陰極で発生した気体の物質量が1 : 2 であるので、陽極では2価の陰イオンが反応していると分かる。それは酸素なので(1)が正解。
問4
与えられた式に数値を代入すると、p NH3は9.0 * 105になる。指数を含む計算ではあるが出題者も煩雑にならない様に配慮しているので安心しよう。
気体の分圧と物質量は比例するので、左辺の物質量の総和が右辺のそれの2倍という事は、 NH3 の反応前の分圧は2倍だったという事だ。したがって合計18 * 105 PaのN2とH2が反応したわけだ。この内の1/4にあたる4.5 * 105 Paが反応したN2なので、反応前には5.5 * 105 Paだったわけだ。
問5
緩衝液は、弱酸(塩基)とその塩による水溶液である。中和してしまっている水溶液は緩衝液ではないので、(2)と分かる。
問6
まず、pHが大きいほどxも大きくなるので、右肩上がりのグラフに絞られる。
正攻法は[H+] = (CKa)0.5 の公式を用いる事。代入して10-pH = (10-1 * 10-x)0.5 となる。
公式を使わずとも、与えられた式を使う事もできる。[H+] = [A–]より、10-pH * 10-pH / 10-1 = 10-x である。
いずれも 2pH = x + 1 というグラフになる。
第3問
問1
シリカゲルは、網目状の構造をしているので吸水作用があり、乾燥剤などに利用されている。この網目構造を作るには鎖状のケイ酸H2SiO3を脱水縮合させる必要があるのだが、二酸化ケイ素SiO2は4配位の結晶であり水と反応しない為、直接はケイ酸にならない。
そこで、まずはケイ酸をNaOHなどと反応させケイ酸ナトリウムNa2SiO3にして、更に水に溶かす事で鎖状構造の水ガラスを作る。ここにHClを反応させる事でケイ酸を得るのだ。
ソーダ石灰ガラスもシリカゲル同様に乾燥剤。名前から分かるようにCaが含まれているが、問題文ではCaは関わっていないので不適と分かる。
問2
(3)濃硝酸が酸化剤として銀に作用し二酸化窒素を発する。
(4)ギ酸はアルデヒド基とカルボキシ基を併せ持つ。これに濃硫酸を反応させると脱水作用によってH2OとCOに分解される。
問3
金属はそれぞれ、(A)Hg, (B)Sn, (C)W, (D)Ti, (E)Ag である。遷移元素の特徴として融点が高い事、硬い事が挙げられ、この特徴に合わない金属を元素を特定せずに絞り込む事ができる。
問4
実験I: まず、KとNaはアルカリ金属なので沈殿しない。Na[Al(OH)4]に希塩酸を加えるとAl(OH)3の白色沈殿が生じ、更に加えるとAlClとなり溶ける。
実験II: 硝酸イオンは沈殿を生じないので、銀イオンと溶液の陰イオンが沈殿を作ったと分かる。KBr は硝酸銀との反応で淡黄色のAgBrの沈殿を生じる。KOHはAgOHを作るが、Cu(OH)2と同じく熱的に不安定な為Ag2Oとなり褐色の沈殿となる。
問5
炭素の2つの反応式を使って生成したAlの物質量を特定する訳だが、電子と酸素のどちらに着目しても使っても導ける。流れた電子は7000mol、消費した酸素は3500molだ。何れにせよ、2つの式から導いた電子または酸素の物質量は予め足し合わせておいた方が計算は速い。
第4問
問1
結合した原子同士はできる限り離れようとする。共有結合を4つ持つ炭素原子は、他の原子と正四面体型に繋がるので直線状にならない。二重結合を持つ炭素原子は、三角形型になるので同様。三重結合を持つ場合は直線状になる。
問2
アルカンが置換反応を起こすには光が必要なので、これは付加反応である。ハロゲンは、付加反応に紫外線が必要で、置換反応には触媒が必要なので、反応しない。したがって2か3に絞られる。
問3
- (1)ギ酸はアルデヒド基が酸素を奪うので還元性を持つ。
- (2)オレイン酸は二重結合が1個、リノール酸は2個、リノレン酸は3個。C17HnCOOHが直鎖アルカンならば、Hがカルボキシ基を除く炭素原子16個に2個ずつ、末端Cに3個あるのでn=35だ。ここではn=29なので二重結合が三つあると分かる。
- (5)マレイン酸はシス型なのでカルボキシ基同士で脱水縮合し五員環となるが、フマル酸はトランス型なのでカルボキシ基同士が離れており反応しない。
問4
問題文から、構造は五員環とC一つであると分かる。この結合が飽和であればC6H12であるがHが2個少ないという事は二重結合を一つ持っているという事だ。この構造の結合を二重にできるのは4か所。
問5
a
化合物Cは安息香酸、化合物Dはアセトフェノン。NaOHで反応するのは化合物Cで、中和反応によりカルボン酸ナトリウム塩になるので水層に移る。塩酸を加えると弱酸遊離反応で元の安息香酸に戻りエーテル層に移る。
b
- (1)アルデヒドに対する銀鏡反応
- (2)ヨードホルム反応
- (3)アニリンを加えると紫になる。
- (4)フェノール類に加えると青~赤紫色になる。
第5問
問1
- (1)ポリプロピレンは容器などに用いられる。接頭辞として「ポリ」が付くなら熱可塑性樹脂だ。
- (2)紙おむつは、吸水性樹脂であるポリアクリル酸ナトリウムが電離する事で、浸透圧と膨張により吸水する。
- (3)デンプンの中ではアミロースは鎖状だがアミロペクチンは分岐を持つ。
- (4)アラミド繊維は テレフタル酸ジクロリド と p-フェニレンジアミンのHClを排出して縮合するアミド結合の一種だ。
問2
エステル化はカルボン酸とアルコールの脱水縮合なので、メタノールが正解。アセチル化というくらいなので無水酢酸とすぐわかる。
第6問
問1
Aはクロロプレンを付加重合したクロロプレンゴム。高校化学で登場する高分子化合物は主鎖に二重結合を持たないが、ゴムは全て持っている。
Bはεカプロラクタムを開環重合したナイロン6。
第7問
問1
- (1)ヨウ素はデンプンの螺旋構造の中に入り込む事で呈色するが、加熱すると螺旋構造がほどけるため色が消える。冷却すると構造が復活するので再び呈色する。
- (2)トリペプチド以上が条件である。これは、まずNaOHによって二つのペプチド結合からH+を奪い、そこにCu2+を配位させるためである。
- (4)赤紫〜青紫色に呈色する。
問2
塩基アがAdenine、イがGuanine、ウがCytosine、エがThymine。名前が分からなくても解けるが。
塩基対を作るのはA-T (水素結合2個)、G-C (水素結合3個) の組み合わせ。したがって、アとエをそれぞれ2倍、イとウ をそれぞれ3倍したものの和が正解。