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高校数学 東京大学1988 (昭和63)年度 理系前期入試問題の解説

図形問題が4問もあり、しかもそのうち3問が空間図形である。

「大学への数学」における各大問の難易度: B, D, C, B, C, B

解答例

第2問

超難問であり良問として有名。

面積Sの平面図形と平面αの角度がθのとき、この図形のαへの正射影した図形の面積はS cos θとなる。

答えは直感的に分かるのだが、きちんと論証するとなると極めて大変。丁寧な論証より答えを出すことを優先しよう。

第3問

まず題意を正確に把握する必要がある。点Pが満たす条件は、「曲線Cを平行移動したものを、点Pを通る様に満遍なく動かしたとき、Cと共有点を一つ持つときが3回ある」という意味。

共有点を一つ持つ場合にはCとC’が「接するとき」や「交わるとき」や「C’の端点がC上にあるとき」が考えられそうだが、実は共有点を一つ持つのは接するときしかない。なぜなら、「接するとき」以外では、CとC’を合わせた図は”両曲線の変曲点の中点”において点対称なので必ずもう一つの共有点を持つからだ。 これを見抜くのが最初の関門。

その次は解の配置問題として、Pを通る様にC’を動かしたときに範囲内で3回接する条件を求める。

計算量が多いが、対称性に着目した図形的考察が重要で、「CとC’が接する時のみ共有点を一つ持つ」ということを示せれば大きな部分点が得られるだろう。

原点対称性を持つ問題なので、0≦xの範囲で考えるだけで良い。これで計算量を減らせる。

C’がCと共有点を持つための平行移動量の必要条件を求めるだけでも部分点が得られるだろう。

第5問

空間認識力があればかなり易しく5分で解けるが、そうでない人にとっては難問。

第6問

点A, B, C, Dをそれぞれ空間上で動かす必要があるので一見すると多くの変数が必要になりそうに感じられるが、仲間外れのAを固定してB, C, Dを考察すると上手くいく。

体積が最大になるときに△BCDは正三角形になるのは予想が付く。それを厳密に証明するには「円に内接する三角形のうち、面積が最大なのは正三角形である」ことを証明する必要があるが、そこまで要求されていないだろう。もっと言えば、正三角形になることは直観にも分かるので一切の説明は後回しで答えを出すことを優先するのが良い。

高校数学 東京大学1989 (平成1・昭和64)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: C, B, C, D, C, D

解答例

第1問

見かけより難しい問題で、対称性を活かして計算するのが如何にも東大数学らしい。

「①かつ②」⇔「①+②かつ①-②」であり、右辺は片方のみでは成り立たない。それは、「y = x, x = y」や「y = -x, x = -y」といった関数同士を足したり引いたりしてみるとどちらか一方が0 = 0になってしまうことから納得できる。

グラフを描くと、両曲線はα = β, α = -β となる交点を持つが、これらは不適な解なので(α -β)と(α +β)の因数を消去できる。

東大入試に於いてはこのような対称性に着目する問題は頻出だが、当時としてはまだ珍しく難問だったようだ。

両関数を連立すると9次方程式が現れ、計算が大変になる。しかし、両関数は対称性が高く、y = x, y = -xと交点を持つことから因数(kx2 -k +1), (kx2 -k -1)を持つと分かり因数分解できる。

ちなみに、両関数同士はy = xに対称だが逆関数ではない。

第2問

S(a)はθを含む式になり、aだけでは表せないので、三角関数の極限公式を用いる。

第3問

(2)

計算が極めて煩雑なので何とか楽にしたい。

f10(z) = f5(z) より、fn(z)は周期5で同じ関数を繰り返す。したがって、f0(z) = f4(z)であるはずだ。f0(z)はf1(z)の逆関数である。更にf4(z) = f2(f2(z)) とすることで計算を少し楽にできる。

関数の入れ子構造を扱うのは珍しいので難しい問題だ。

第4問

整数部の桁数は簡単だが、1の位は難問。合同式の考え方を適用できるように、無理やり整数を作る。分からなくても数字を書いておけば10%の確率で当たる。

第5問

バウムクーヘン分割の証明はどの程度厳密に説明すればよいのかどうか分からないので、後回しにして、残り時間に余裕があれば厳密な証明をしよう。

第6問

並べ方において、「白玉が連続してk +1個以上並ばない」という条件が非常に分かり難い。これを無視して求めても部分点は得られる。

高校数学 東京大学1998 (平成10)年度 理系前期入試問題の解説

1998年度の東大数学と言えば、後期日程第3問が大学入試史上最も難しい問題として語り継がれているが、前期日程も高難度の問題が並んだ。

本年度は発想力より処理速度が重視されており、制限時間に対する分量が全く見合っていない。論述面は気にせず答えを出すことを優先しよう。第1, 2, 6問を1時間で完答し、残り時間で第3, 4, 5問をじっくり試行錯誤しながら解くのが理想的だ。

「大学への数学」における各大問の難易度: B, C, D, D, D, C

解答例

第1問

参考書やウェブで調べた限り誰も気付いてない様だが、この大問には、3分で解ける絶妙な解法がある。それは次のようなものだ。

x = sで極大、x = t で極小となるとすると、f(s) -f(t)はy = -f'(x)とx軸で囲まれる面積を表す。y = -f'(x)は2次関数であり、aがどんな値を取ろうと、y = -9x2を平行移動したものに過ぎない。つまり、この二次関数の頂点のy座標が最小になれば良いのだ。y = -f'(x)を平方完成すると、このy座標は(a -1/a)2 +4で常に正であると分かり(極大・極小値を持つ)、a = ±1で最小値をとる。

東大はこの鮮やかな解法を意図的に用意していたのではないだろうか。

第2問

断面z = k に於ける格子点の総数を求める。平面z = 0に対称なので、z > 0とz = 0の総数を調べればよい。

結局のところn3で割るので、数え上げる過程で「最終的に2次以下になる」と分かる項は無視していくことで計算を楽にできる。

丁寧に記述すると解答用紙に収まらないので、f(n)を求めるまでの過程は、大まかな方針と図と断面に於ける格子点の総数の式を書けば十分だろう。

Σと極限の組み合わせだから区分求積法も使える。

裏技

n→∞とすると格子点の集合は正四面体になる。これを1/nに縮尺…つまりf(n) /n3とすると、一辺2の立方体の内部に4頂点を共有して収まり、体積は8/3になる。これは本問の解と一致している。

この解法は時間が掛からない一方で論証がかなり甘いが、本年度の分量の多さを考慮すると有力だ。

これと正攻法のどちらの解法を選ぶかは残り時間から判断するべきなので、本問は最後に着手しよう。

第3問

難問だが、工夫次第で部分点を稼げる。

(1)(2)

分からなくても、数列の証明問題なので「数学的帰納法で示す。」と書いてn = 0, 1の場合を示そう。実験により漸化式を予想できるので書いておけば部分点が得られるかもしれないし、その式から解法に気付くこともあり得る。

(3)

(1)と(2)が解けなくても(3)が解けるように、求めるべき漸化式を問題文に明記すべきだった。

予想した漸化式を利用して解くことも出来る。ここまで解けなくても極限値は求めれる。

極限値を求める方法として、不等式を用いずpn, qn の一般項を求める方法もある。この方法が使えないという点で、不等式を証明させるのは不適切だ。

第4問

悪問と評するしかないほど計算が極めて煩雑。方針だけ書いて逃げるのが得策だ。

f(x)は複雑な式に見える。こういった問題は、解いてみると意外と簡単なコケオドシである事が多いので、取り敢えず状況を把握するためにグラフの概形や実験をしてみよう。定義域でf(x)が単調増加という嬉しい事実が判明する。

第5問

計算が煩雑。s := sin θ, c := cos θ, X := xn, Y := yn と書き換えるなどして効率化しよう。

第6問

x軸垂直かz軸垂直のどちらの断面で積分するかの判断が必要。

一般的に、円をその中心を通らない直線で分割して面積を求める場合は三角関数の置換積分が必要になり計算量が多い。よってx軸垂直が望ましい。対称性を最大限生かして四角錐の0≦y, y≦xの部分だけ求積すると場合分けも不要になり楽だ。

断面図をイメージするのは難しいが、四角錐と円柱を分けて考察すると意外と簡単。

y = xに垂直な平面で断面積を求めるという手もある。

高校数学 東京大学1993 (平成5)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: D, B, D, B, D, C

解答例

第1問

等面四面体の体積は直方体の4頂点を結んだ立体として捉える事で容易に求めれる。それを知っているか、或いは気付けるかが全ての受験技巧的な問題だ。わざわざ座標軸に言及してミスリードしているのが嫌らしい。

l → 2とすると、△ABCは直角三角形になるが、等四面体の面は必ず鋭角三角形であり、直角三角形に近づくと体積が0になってしまう。

1992年度の数学の入試問題は完成度が非常に高かったが、本問や94年度は数学力を測るという本質から離れて、単純に受験者間の点差が開くような問題を出すという安直な傾向があった。

第2問

「数学的帰納法で示す」と宣言しておけば部分点が得られるかも。

(1)

数学的帰納法で示すのか、3項間漸化式として一般項を求めるのか的確な判断求められた問題。

「同値」を示すわけだから、P(anが偶数) ⇔ Q(nが3の倍数) を示す。つまりP⇒QとQ⇒Pの両方を示さねばならない。

証明の仕方にもよるが、英語表記を参考にして偶数を(e), 奇数を(o)と表すと記述が楽になる。合同式(mod 2)を用いるとこういった工夫も不要で楽に記述できる。

(2)

「同様の形式」という表現は不明瞭で、解き手に混乱をもたらしている。

(1)を誘導として利用すると、「 nが3の倍数ならばanは2の倍数」を示したのだから、今度はanが5の倍数となる条件を調べればよい。

実験によって証明する方法もある。anが初めて10の倍数となるのはa12 = -43920だが、実験をしていってもここに到達する前に挫折するだろう。ところが、10の倍数という事は1の位が0になる事と同値だから、漸化式に1の位だけを代入していく事で計算が遥かに楽になる。そして周期性に着目して証明すればよい。

第3問

本年度の最難問。

実のところ、双曲線の方程式さえ建てれれば難しくはないのだが、とにかく時間が掛かる。

論証が簡単な、直線部分(y = -3x)と原点を通るという事だけでも記述と図示しておこう。さらに、軌跡が原点対称である事や双曲線を含む事は計算せずとも分かるので部分点狙いで記述しておこう。これで12点くらい貰える。

第4問

この大問だけ突出して易しい。偶関数、奇関数に着目して計算を楽にしよう。

第5問

それぞれの数字の変化が独立事象である点に着目しよう。

分からなくても「確率漸化式を作る」とかp = q の場合の極限値(1 /32)は書いておこう。

第6問

方針は、三角関数の方程式を解くか、グラフの概形を考察するかがあるが、後者の方が楽。いずれにしても計算量は多い。

x(t) = x(2π -t), y(t) = -y(2π -t)に気付けば、0≦t≦πの概形をx軸対称移動させるだけでよい。

高校数学 東京大学1994 (平成6)年度 理系前期入試問題の解説

第1, 2, 4問は最初から躓きやすく、部分点も取りにくい。本年度の問題は全体的に数学力を測るには不適切だった。

「大学への数学」における各大問の難易度: C, C, C, D, C, D

解答例

第1問

微分を駆使する問題だと思いがちだが、実は平方完成を用いると簡単に解ける。(1)ではf(x)について、(2)ではg'(x)について二つの平方完成項を作る事でそれらが正であることの十分条件を示す。受験生の虚を突く問題だった。

その解法以外に、f(x)やg'(x)が高次方程式であり極小値を持つことに着目して、f'(α) = 0, g”(β) = 0を用いて次数下げをするという解法もある。

いずれにしても受験技巧的な問題だ。

(2)

g(x)が単調増加であることを示せれば、後はg(-1)とg(0)を調べて完了。単調増加を示せなくても g(-1)とg(0)を調べることで部分点を狙おう。

g(-1)は分数の面倒な計算をせずとも、(-1 +1)+(-1/2 +1/6)+(-1/24 +1/120)とすることでg(-1) < 0を示せる。

f(x)とg(x)について x = 1/t と置換すると、マクローリン展開の形になっており、この性質を用いて解くことも出来る。

第2問

(1)が解けなくても(2)が解けるように、(1)の問題文は「a +b = 5/4, ab = 5/16 を示せ」とするべきだった。(1)が解けなければ、(2)では部分点狙いで数学的帰納法を用いることを書いておこう。

(1)解法を暗記するしかない問題。受験技巧的でつまらない。

(2)xとyの対称式は、基本対称式x+y, xyの組み合わせで表せる。

第3問

計算量の多い求積問題だが、誘導が丁寧なので本年度の最易問。

時間の節約の為、図形的考察はしない方が良い。

(1)断面となる円の半径がθで表されており、断面積をθで表す様指示されているので積分する必要がない。この特性に気付くと計算が楽になる。

第4問

問題そのものが難しいというより、文字が多く条件が複雑なので内容の把握が困難。

関数f, gが漸化式になっているので、極限値を得られるように式変形していく。条件「0 < x < 1」は関数が収束する事を示唆するものだ。解けなければ方針だけでも書いておこう。

実はfn(x)の一般項を数学的帰納法で証明できる。それを積分することでも解答できる。数列に関して困ったときは取り敢えず数学的帰納法を試みよう。

この問題は、PRIVATE EYESが指摘しているように答えに対する見解が分かれており、鉄緑会の問題集でもなぜか断りなく問題内容が改変されている。

第5問

(2)「どのカードを引く確率も正である」という条件を見落とすと間違える。虱潰しにEを算出していく場面での計算の負担が大きい。

第6問

x,yの範囲で3×3通りに場合分けするが、同じ操作を繰り返すことになるので、その繰り返しを省くために事前に式変形や代入をしよう。

難問とされるが、場合分けの処理は時間はかかるが易しいので部分点は取り易い。時間が足りなければ方針だけ書いておこう。

高校数学 東京大学2012 (平成24)年度 理系前期入試問題の解説

行列が2問出題されたり煩雑な計算問題があるなど出題傾向に不思議な点があった。

「大学への数学」における各大問の難易度: B, C, B, D, B, C

分析: 東進, Z会, 河合塾, KATSUYA

解答例

第1問

線分の端点の一方は円周上にあるが、与えられた円の方程式を使うと根号が現れるので、微分が大変になる。問題文中で変数θが指定されているのが大きなヒント。東大数学では手始めに図形的考察をして情報を引き出す。本問では円周角の定理が利用できるのでやはりθが適切だと判断できる。

途中計算で3次方程式が現れるが、領域Dが(√2)/3という意味ありげな値で区切られている事から、少し試行錯誤すれば因数分解できると推測できる。

第2問

図形の対称性に着目すると、部屋を3つずつ、3種類に分類できる。そのうち二つはnが奇数の場合のみ到達する。よって偶奇で分けて3部屋のみ考察すればよい。部屋Qに到達する推移を、「部屋P」と「P以外の2部屋」からの到達に分けることで直接漸化式を作れるが、記述が面倒なので寧ろ漸化式を3種類作った方が速い。

第3問

計算が面倒なだけの何とも東大らしくない問題だ。なんの捻りもないので、何か誤解や引っ掛けがあるのではと不安になってしまう。

(1)楕円体の体積は(4π/3) × √2 × (1/4√2)2 である。ここから空洞部分を切り抜くという解法があるが、積分区間に根号が出てくるので悪手。

(2)V2 /V1 < 1 と仮定して式変形するのが楽。結局√2 < 57/40 を示せばよいことになる。

第4問

(2)が難問。必要条件で絞り込んでいくという流れ。数学的帰納法を用いることを宣言し、n = 2の場合に成立していることだけでも記述すれば部分点が得られるだろう。

高校数学 東京大学1992 (平成4)年度 理系前期入試問題の解説

全体的に難度が高いが全く歯が立たないという問題もない。多様性に富み良問が多い。大学入試として稀に見る傑作である。

「大学への数学」における各大問の難易度: C, C, C, D, C, D

解答例

第1問

シンプルな問題設定でありながら極限に関するセンスを試される良問。

(1)

題意から S1 -S2 が最小値となるbを求めると分かるが、そもそもS1は定数なので、S2 の最大値を求めるだけで良い。

(2)

極限計算の手法として、定数項を絞り出して残りの項が0になるように式変形するというものがある。それに従い本問では、発散速度が最大の項”a log a”で分母分子を割る。

{log (a -1)}/log a について。対数関数は、真数の積を和で表せるという特徴がある。そこでこの分数について定数を”絞り出す”ことで極限値を得られる。2003年度第5問でもこの手法を用いる。

対数関数が多く出てきているので対数の極限公式を用いるという発想も自然だろう。

答えが1になりそうなのは直感的に分かる。解けなくても部分点を得る為に予想した極限値を書いておこう。

第2問

「直線上の格子点は等間隔に並ぶ」「x,y が互いに素な整数であるとき、原点と(x, y)を結ぶ線分上には格子点はO, Pしかない」という事実は証明が必要。鉄緑会の問題集を参照。

どこまで詳しく論証すればよいか悩むところだが、手を付けないよりは大雑把に証明を完了した方が良い。

第3問

a, bの関係式を求めると、対称式になっている。更に不等式証明問題であることから、相加相乗平均を意識して対称性を崩さない様に処理していこう。

円に外接する三角形の面積は、3辺の長さと内接円半径から求められるのは有名だが、この定理は円に全ての辺が外接する多角形に一般化できる。更に、球に外接する多面体にまで一般化できる。体積 = (多面体の表面積)×(内接球半径) /3 となる。

この四面体に直角が多く含まれるのがrを求めるヒントだ。

相加相乗平均を用いることを書く事で部分点が得られるかも。

第4問

これは当時としては言うまでもなく、現代に於いても風変わりな問題。体積を求める問題で座標軸平行な断面を”スキャン”するのはよくあるが、本問は角度θでスキャンしていく。

展開図を作るためにx = f(θ)の式を作る。

解法が分かったとしても、斬新な問題であるだけに先の見えない処理を続けねばならない。しかし解き進めていくと案外楽だ。

Bの概形を調べるとz = ±1で重解を持つのでAを2分すると分かる。これを書けば部分点が得られるかも。

第5問

微分方程式の問題。時間と速度の情報が与えられているので、曲線の長さを求める。初期値に注意。

第6問

じゃんけんグリコを題材にしたゲーム理論を背景とする問題。

(1)

A, Bの出し手を表を作って纏めるのが、記述の負担が少なくて分かりやすい。

(2)

変数が多くて途方に暮れるが、必要条件で絞ると上手くいく。

そもそも、Aの如何なる戦略(手の出し方の比)に対してもE > 0になるBの出し方があるというのは有り得ない、と直感的に分かるだろう。つまり高々E = 0にしかなり得ないのだ。とすると、Eの式をa, b, cの各項で纏めて、それらの係数が0になるようにすればよい。

高校数学 東京大学1991 (平成3)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: A, B,D, B, D, C

解答例

第2問

点光源を固定すると影はRに相似な長方形になるというのが重要なのだが、意外と気付きにくい。空間図形問題では、3つの視点の向き(x, y, z軸平行)で考察するのを心掛けると良い。また、点光源が作る影は点光源と直線で結ばれるという特徴がある。

思考の負担を減らすために図を伸縮して楕円を真円に変換して計算するのも良い。

影の概形が分からなくても勘で描いておこう。

第3問

(1)|p| < 2のときは、f(p)をβで表すと説明が楽だが、αγを含む方程式を作り、y = p2に交わるαγを示す方法もある。

(2)「概形を描け」という指示からは、グラフの凹凸も正しく示す必要があるのか分からない。凹凸まで調べると難しい微分が必要になるので難度が上がる。採点対象かどうか分からない処理に時間を費やすのは勿体ないので、時間が余った場合に示せばよい。大数のD難度という評価は凹凸も示すことを加味したものだろう。

第4問

チェビシェフ多項式に関するでは必ず加法定理を利用する。両方の小問で数学的帰納法を使うが、「数学的帰納法で示す」と書くだけでも部分点が得られるかも。

(1)題意の把握が難しい。関数の添え字が違うと別の関数を表す。例えば関数psとpt は全く無関係な関数だ。よって関数pを多項式で表そうとするのは間違い。

(2)(1)が解けていなくても、(1)に示すべき式が問題文に記載されているので、これを利用して(2)は解ける。

第5問

格子点が登場しているので、本質は整数問題である。

整数m, nと互いに素な整数p, qを用いたmp+nqで全ての整数を表せる。解法に発想力を要するが、実際のところ5×2の格子内を考察すればよいので、力技で解ける。

第6問

(1)対数微分法の逆操作をする。

(2)(1)で求めたf(x)-2f(x)がa(x)の階差数列となっていることを見抜く。

高校数学 東京大学2018 (平成30)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B, C, B, B, D, C

分析: 東進, Z会, 河合塾, KATSUYA

解答例

第2問

(1)文字式としてはpn = n(n +1), qn = 2(2n +1)だが、nに数値代入してみると2で割り切れると分かるだろう。あくまで数値として既約分数でなければならない。そして既約分数とは、分母と分子が「互いに素」ということだ。

第3問

kの値で場合分けが必要になる。この点が本問の罠で、予備校すら誤った模範解答を公開してしまったらしい。多くの受験生は場合分けできなかったと思われるので、その減点は小さいだろう。細かいことに神経質になって調子を狂わすよりは大雑把に答えを出した方が良い。

kの値によって図形の概形が変わることは図形のセンスが無いと気付きにくい。東大は空間図形のように数学的センスを要する問題を出しがちだが、本問もその種の問題と言ってよいだろう。

第4問

非常に易しいと言われているが、必要条件を漏れなく拾い上げるのは案外気を使う。

第5問

簡素な問題設定でありながら、複素数平面や平面幾何、二次曲線の基本知識の的確な運用を必要とし、正解に辿り着くのは難しいという良問。こういった問題は、歴史的に見て複素数平面の出題頻度が少ないからこそ出せるのだろう。

(1)

複素数平面に慣れていなくても、幾何的に考察するだけで∠AOP = ∠APQと分かる。そして基本公式αα* = |α|2 を用いる。

(2)

意味ありげな「絶対値の商」を考察しよう。ここでは基本公式(α +α*)/2 = Re(α)や偏角を使う。

(z -1)2/(z* -1)2 の変形が一つの関門だが、図形的に考察すると z -1とz* -1 は実軸対称なので偏角はz-1の4倍で、zだけで表せそうだと目星が付く。

題材が円で、しかも複素数平面の問題だから、角度の情報を重視して解いていこう。

直交座標を用いて求める事も計算量は多いが可能。

第6問

空間認識力を要する求積問題。

誘導が丁寧なので方針で迷うことはないが、記述に骨が折れる問題だ。集合論で用いる論理記号を使えば、共通部分に関する記述を楽にできる。(1)の共通部分の図示は、「同一平面上に図示せよ」と指示されているだけなので図を1つ描くだけでも十分だろう。

高校数学 東京大学2020 (令和2)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B, B, B, C, C, C

U-taisakuのまとめ

分析: 東進, Z会

解答例: 電数

第2問

解法に迷う問題だ。面積を考察するにも関わらず、△ABCについて長さも角度も情報が一切与えられていないという特徴に着目しよう。この特徴から、比や相似について考察するという発想に至る。

第3問

どの小問も、小技で計算を楽にすることができる。(1)は根号の中身だけを考察すればよい。(2)は長さの平方の関数を微分すると楽だ。(3)では、積分区間が座標軸対称なので奇関数の面積が0となる。

(2)の誘導があるので難易度がかなり下がっている。

OPの長さを求めていることから、極形式で面積を求める方針もなくはない。

第4問

(1)数列や整数の問題ではお決まりだが、問題設定と規則性の把握を兼ねて実験しよう。

第5問

求積問題。

(1)感覚的に答えを出せるが、さすがに答えだけを書くのは良くない。

(2)(1)の誘導により、平面z = tでの断面積を積分するという方針が建つ。更に、断面積の形も予想できるので、予想を証明できるような解法を選ぼう。

第6問

(2)

題意を把握するのがまず難しいので、解き進められなくても、状況を把握していることをアピールしたり、正しい文字設定をするだけでも部分点が得られるだろう。

条件から「直線PQがC上の点Qに於ける法線になる」と解釈できる。

(1)は誘導問題なのは間違いないが如何に利用していくかは予想しにくい。それでも、(2)に於ける点P, Qの文字設定を三角関数で表した方が良さそうだという判断はできる。