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中小企業診断士 令和六(2024)年度第二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ)の再現答案

二次試験の受験テクニックが普及していることへ対抗するためなのか、3PLやブランド価値など、一次試験の知識が必要な設問が増えている。

事例Ⅰ、Ⅱに関しては易しかったので、我ながら見事な出来だと思う。事例Ⅲは相当に手強かったが、難化に対応した時間管理が奏功して論理的破綻のない回答が書けた。

事例Ⅰ

第1問

(a)
①協力会事業者との連携②地元密着の良質サービス③自社倉庫保有
(b)
①非効率な物流管理②弱い顧客開拓力③旧態依然の組織と人事制度

2000年当時の状況は第4~5段落にほとんど書かれているので、第13段落の「創業時から人事処遇制度はほとんど変更がなされないまま」という記述は見落としやすいだろう。

第2問

答案
プロジェクトチームを組織したのは、既存ノウハウを活かして首都圏進出する上で、市場調査が必要だった為。狙いは、長女の大手物流企業での豊富な経験を活かす事と、後継者として経験を積ませる事。

首都圏事業部自体ではなくそのプロジェクトチームを立ち上げた理由を問われているので、市場調査が目的だと答えた。

第3問

答案
A社は協力会を運営しており多様な荷主と関係が強く輸送に強みがあり、地元密着の良質サービスを提供しており、自社倉庫を保有している。Z社は県内進出に際してそれらの機会を活かしたかった為。

ほとんどA社の強みを述べるだけの回答になって第1問と重複してしまっているがこれで良いのだろうか?一応、「県内進出」というワードを盛り込み、A社についての説明には「強み」という表現を用いてZ社については「機会」という表現を用いて立場を明確化した。

第4問

設問1
答案
①長男に県内事業部の管理も学ばせて3代目として育成する為②2代目が両事業部を総括する体制を整える上で、経営幹部が彼女をサポートする必要がある為。

与件文で長男と2代目の配置転換について言及されているので、それぞれの理由を回答する必要がある。

設問2
答案
①事業部間で連携強化し、首都圏事業でのノウハウを活かし県内事業部のIT化とOJTを進めて人手不足に対応しつつZ社からの受託業務の範囲拡大②Z社と人的交流とIT連携を進めて信頼関係と業務効率を強化。

事例Ⅰは組織・人事がテーマなので、「事業部間で連携強化し、首都圏事業でのノウハウを活かす」という記述は必要。

与件文によると人手不足が起きているのは首都圏らしいが、いかにも重要な要素だと感じたので盛り込んでおいた。物流業が本年度の事例として選ばれたのは「物流2024年問題」が関わっていると思われるので、人手不足に言及すれば得点になるだろう。

事例Ⅱ

第1問

S
①3代目の熱意とデザインセンス②自社カフェ保有③自社ECサイト保有
W
売上が減少しており、販路が細り情報発信が困難。自社製品が比較的高い。
O
①X焼の陶磁器祭り②動画を通した若者や外国人からの関心③様々な窯元との協業可能性
T
①安価でデザイン性ある外国製品②少子高齢化とコロナ禍による市場縮小

第2問

答案
X焼とX市郷土料理のセットを企画する。郷土料理の盛り付け方を紹介し、X焼は郷土料理に合う色と形にし感覚価値訴求。郷土料理の歴史も紹介し、X焼をガスコンロで直接使える様にして自宅再現可能だと観念価値訴求。

X焼を利用しつつ観念価値の訴求ができそうな企画はこれくらいしかないのではないか。

第3問

答案
3代目のデザイナーズホテルの成功経験を活かして自社カフェを拡大しレストランを開き、様々な窯元のX焼を用いて食事を提供する事でX焼に触れる機会を作り、自社飲食事業の売上拡大と様々な窯元に貢献。

令和5年度にサブスクが正解として想定された設問があったので「X焼のサブスク」と回答した受験生もいたようだが、次の理由で不適切だろう。

  • 他社も同様のサービスを展開した際に差別化が難しい。
  • 単位注文あたりの費用は、往復送料などで少なくとも2千円はかかる。したがって一個数千円の高級食器でなければ収益化できない。

やはりB社の強みを活かす提案が望ましい。

第4問

答案
施策は①サイト上でX焼の新デザインを顧客から募り、人気を得たデザインを製造し店舗で販売する事で顧客の関心を集め、新製品販売により売上拡大②サイト上に食器愛好家向けBBSを開設し、自社カフェで定期的に愛好家が集まる食事会を開きX焼を用いて食事を提供する事で愛顧拡大、飲食事業の売上拡大、X市に貢献。

提案はより具体性のあるものを一つだけ挙げる方が良いかもしれないし、2つ目の提案は第3問の回答に似ているが、堅実に得点する戦略としては正しかったと思う。

事例Ⅲ

第2問と第3問の回答要素の切り分けに苦心した。

第1問

答案
①C社長の施設レイアウト設計と提案の能力②特注品の受託生産能力③X社にメンテナンスサービスを提供④部品構成表はデジタル化され製造部で活用されている。

第2問

答案
改善策は①生産計画をコンピュータで全社的に立案し計画改訂の頻度を高め生産効率化②OJTで多能工化し生産工程のボトルネックとなっている製缶業務を強化し生産リードタイム短縮③製造作業を標準化・マニュアル化・外段取り化で効率化。

製缶業務のボトルネック改善は必須の要素だろう。

第3問

答案
進め方は①受注情報・設計データをDB化し全社的共有②OJTで多能工化し納期変更に迅速柔軟に対応③ソフトウェアを用いて経験に頼らず工数見積りし、無駄な会議を減らして納期を守る。

工数見積りの改善は必須の要素だろう。

第4問

答案
対策は①需要予測に数理モデルや市場調査を用いて正確にコスト見積もり②調達手段を改善し材料費を抑える③X社以外との取引を増やしX社依存低減でX社との交渉の優位性を高める④X社以外にもメンテナンスを有料で提供し、本体価格の上昇を抑える。

2022年1月の下請法ガイドライン改正が意識された問題。良い答案が思い浮かばなかったので、問題文の「価格交渉を円滑に行う」という要素を「価格の上昇を抑える」、「交渉を優位に進める」という意味も含まれていると拡大解釈し、四つもの提案を乱発した。結果的に多面的な回答になってるし、与件文の「X社への依存度が高い」「X社にのみメンテナンスを提供している」という要素を反映しているので得点にはなるだろう。

第5問

答案
施策は①製造企画部を設立し、C社長の施設レイアウト設計と提案の能力を活かして自ら従業員を教育する②これまでの受注・設計情報をDB化してノウハウを蓄積・活用し製造の効率化③X社と連携し施設の計画やコストを正確に把握し堅実に事業を進める。

C社長の施設レイアウト設計と提案の能力を活かすのは必須の要素だろう。多分「社長自ら」ではなく単に「自ら」と書いてしまったので、「中小企業診断士自ら」と解釈されてしまうと得点にならない…。

受験の感想

試験対策

一次試験は800時間の勉強が必要と言われているが、思いの外忙しくて250時間しか勉強できず、足切りギリギリの点数での合格となってしまった。二次試験の対策には350時間必要なところを、夏休みを活かして150時間と比較的十分(?)に時間を取れた。

比較的短時間の勉強でも何とかなったのにはいくつか理由がある。1つ目は日頃からビジネスに関心を持っていたこと。

2つ目は国語力だ。事例Ⅰ~Ⅲは受験国語によく準えられる。実は私は大学受験の時に東京大学の国語の模試で合格点を取れていたほど国語力は強いので、事例Ⅳに比べると遥かに楽だった。与件文の要素から解決策を導出する手続きはパズルゲームのようで中々楽しかった。

3つ目は過去問演習を重視したこと。過去問演習をすれば苦手な部分が浮き彫りになり、そこを集中的に強化することで効率的に合格水準に達することが出来る。私は予備校や「ふぞろい」のような参考書は全く使わず、過去問とネット上の情報を参考にして費用ゼロで勉強した。

問題用紙と解答用紙は印刷して本番を模して行う方が良い。AASの小冊子形式で印刷しよう。

電卓の購入先は、ヤフオクで型落ち品を格安で販売しているmoguさん。多機能な電卓が600円で買えるのでオススメ!

試験本番

私の試験会場は早稲田大学戸山キャンパスで、受験者は9割が男性、平均年齢は推定50歳程度だった。中には20歳程度と思われる若者も居た。

試験開始と共に、問題用紙をビリビリと切り離す音があちこちから聴こえてきた。メモとして使うために問題用紙を切り離して使うテクニックは知っていたが、私はメモは最小限に留めて頭の中で文章を構築するスタイルなので切り離さなかった。そもそも切り離さなくても、問題文のページに余白は十分にあった。

試験終了後は科目毎に毎回トイレには長蛇の列ができていたので、試験前に済ませておこう。

時間を確認するために300円の腕時計をダイソーで買ってきて装着していた。何故か事例Ⅳの試験中に小さいアラーム音を何度も発して周りに迷惑をかけてしまった。皆さんも注意しよう!!

口述試験対策

質問は、二事例から二問ずつ出題されるのが一般的なようだ。回答が的を得ていない場合は追加の質問がなされる。

質問パターンは各事例で10以上はあるようだ。面接直後に受験生が質問内容をインターネット上に公開することを協会は想定しているはずなので、質問内容は時間帯によって決まっている思われる。ただし、筆記試験の設問と同じ質問がなされもことがあるので、筆記試験で誤った回答について質問される場合もあるのかもしれない。いずれにしても、予備校の答案を研究するのが有力な試験対策になるだろう。

中小企業診断士 平成29 (2017)年度第二次試験 筆記(事例Ⅲ), 口述の解説

事例Ⅲ

第1問と第2問は課題とその対策を問う問題だが、ユーキャンの答案は、「課題」ではなく「問題点」を答える致命的ミスをしている。

第1問

課題と対策の切り分けができていない受験者が多かった。

既存製品の受注減で生じた余剰資源の活用(第4段落)
余剰資源をCNC木工加工機に活用する為OJTで多能工化
製造部の班の間の連携強化(第6段落)
生産管理担当を決め、統一的な生産計画で生産プロセスを最適化
班の間の人的交流で暗黙知を含む技術情報の共有
外部企業との連携(第6段落)
ITを用いた情報共有し適切な生産管理

第2問

第2問は、第1問に「余力を生み出す」という条件を付加したものになっているので、「第2問の回答は第1問に書いても正解になるがその逆は成り立たない」という関係がある。そこで、CNC木工加工機の生産の為の対応策を列挙し、第2問に書ける項目は第2問に解答し、その残りを第1問に書くのが合理的だ。

機械の技術情報を広く製造部全体で共有し活用
技術情報を標準化・マニュアル化しDB管理、OJTによる多能工化でそれらを活用
受注量変動への適切な対応
生産計画をソフトウェアで立案、計画更新頻度を高める
小ロット化による効率化を検討

第3問

ウェブサイトの活用に焦点が当たっているので、ウェブサイトだからこそできる様な策を提案するのが理想。

回答欄が160字と非常に大きいが、第12段落の記述を利用できるので意外と埋めやすい。活用方法の方が社内対応策より遥かに書きやすいが、社内対応策も全体の1/3程度は記述しておいた方が良いだろう。

問題文に瑕疵があり、「潜在顧客を受注に~」という部分は「その潜在顧客を受注に~」とするのが文法として正しい。

活用方法: 潜在顧客の製品への理解度向上
操作やメンテナンスの動画解説
問い合わせフォーム設置
プログラム作成方法、使用可能な材質等を公開
社内対応策
問い合わせに対するマニュアルの準備と提案型営業、CNC木工加工機を使って生産したい物のサンプルの提供

第4問

KEC等は設備投資や人員の増加を回避する方法として外注化を挙げているが、問題文の記述は「支出を増やしたくない」という意図だと思われるので、的外れだろう。

  • 潜在顧客に当該製品による生産物の3Dモデルを提示し情報共有効率化し受注増(第2段落)
  • 受注量や受注単価が低下している既存顧客にも当該製品の購入を提案し収益改善(第4段落)
  • 割賦販売で顧客の負担減により受注増(第9段落)
  • 修理や改良等アフターケアを充実させ差別化し愛顧拡大(第12段落)

事例Ⅳ

第1問

設問1
効率性
同業他社に対する優位性としては、売上債権回転率は棚卸資産回転率に劣っている。しかし、与件文から棚卸資産回転率を選ぶ理由が見当たらない。一方、第2段落の「海外でも一定の評価を得ている」という記述から、取引先が多様で債権回収が効率的であることが推測される。
収益性
「得意先との交渉による適正価格の設定(第3段落)」より、売上や原価に課題があると分かる。
安全性
負債が大きいのが注目点。自己資本比率と負債比率で迷うところだが、設問2で「借入額が大きい」としか説明できないのなら自己資本比率を選ぶ方が明確だ。

連結会計では純資産の部に非支配株主持分が計上されているので、これを財務指標を算出する際に控除する必要がある。

設問2

得意先との価格交渉が不足し収益性は低い。借入依存で安全性は低い。債権回収は効率的(40字)

第2問

設問1

製造費は売上原価に含まれる。販管費に含まれるのは人件費、広告宣伝費、減価償却費等だ。

第3問

設問1

旧機械設備の購入額や償却期間の情報がなくても年間の償却額を算出できる。

第X1年度末の非現金支出項目には設備処分支出10、除却損50、減価償却費40が含まれる。問題文に「旧機械設備の除却損の税金への影響は第X1年度末に生じる」とかかれているので設備処分支出を無視して良いと勘違いしやすいが、会計年度の費用は全てCFの計算に考慮する必要がある。投資額200がCFの計算に含まれないのは、減価償却費が投資額の代役を担っているためである。

KECは金額の符号に関して誤解している。「税引前利益の差額-税金支出の差額=税引後利益の差額」が正しい。

設問2
入力画面表示
210, -, 76, -, 58, -, 58, ÷, 58, +, 3, =3.31…
電卓で回収期間を計算する際の効率的入力方法

電卓で効率的に計算する上では、金額と現価係数の積では「現価係数✕金額」の順にし、NPVは遡りながら足し合わせていく方が効率的なようだ。

入力画面表示
.713, +, .7629, +, .8163, +, .8734, ×, 58, M+183.6048
.9346, ×, 76, M+71.0296
210, M-, MRC44.6344
電卓でNPVを計算する際の効率的入力方法

設問1を解かなくても、数値以外は回答できる。

第4問

設問1

「損益状況」という表現が曖昧だが、「親会社単体は黒字か赤字か判断せよ」という意味だったようだ。単体では赤字である。この回答以外に「工場閉鎖により特別損失を計上した結果、当期純利益が大幅減少」などの回答も部分点が得られるだろう。

設問2

D-b社の巨額の負債がD社の安全性に影響する。

設問3

D社に限らない一般論を述べる形式となっているが、設問1, 2を誘導問題と捉え、D社への助言という観点を意識した方が高得点になるだろう。

  • 子会社の経営成績が親会社に影響しやすい

口述試験

出典: AAS

事例Ⅰ

中小企業診断士 令和二(2020)年度第二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ), 口述の解説

事例Ⅰ

第1問

設問1
  • A社長に仕事を学ばせて後継させる
  • 老舗酒蔵のブランドを活かしてインバウンドを取り込み
  • 酒蔵再建と関連多角化で地域活性化
  • グループ内の旅館とシナジー効果を出す

事例Ⅰは組織・人事がテーマなので、A社長を後継させるという要素は重要。

酒蔵と旅館が同じグループ内に属していることは明示されていないので、第4問の問題文から忖度する必要がある。

設問2
  • 前経営者の雇用責任遂行の意向に沿う為
  • A社長やその祖父は酒蔵経営に詳しくなく、再建と多角化の上で前経営者やベテラン従業員のノウハウや人脈が必要だった為
  • コアメンバーを残す事でA社の一体感を維持

第2問

  1. 事務員から事務作業や取引方法を学ぶ
  2. 情報システム導入について従業員や取引先に説明し理解を得る
  3. データのDB化、業務標準化
  4. 事務員から情報システムについて評価を受ける
  5. トラブルを防ぐ為に段階的導入

事例Ⅰは組織・人事がテーマなので、「従業員や取引先に説明し理解を得る」という要素は重要。

第3問

直販に必要とされる能力が何かを問われている。出題の趣旨には「主たる販売方法がルートセールス方式から直販方式に変更される際に、営業担当に求められる能力が、どのように変化するのか」と書かれているので、ルートセールスに必要な能力を書いても評価されない。

  • 老舗ブランドを訴求する為の会社や商品の知識
  • グループ内店舗との連携
  • 消費者に対する接客・ニーズ収集・提案
  • 自身の能力を同僚にも与える育成能力

事例Ⅰは組織・人事がテーマなので、「グループ内店舗との連携」「自身の能力を同僚にも与える育成能力」という要素は重要。

第4問

与件文第12段落の「A社の人事管理は、伝統的な家族主義的経営や祖父の経験や勘をベースとした前近代的なもの」「年功序列型賃金が基本」「企業グループ全体のバランスを考えた人事制度の整備が必須」という記述に対応した解答が必要。

  • 親族以外も役員登用可能にする
  • 経営者の裁量に依らない公平透明な人事評価制を導入し情報システムで効率運用
  • 成果報酬制導入で従業員の意欲向上
  • グループ全体の賃金体系を統一し不平等を解消

事例Ⅱ

第1問

S
無農薬・高品質のハーブの効率的栽培、多種栽培
美しいハーブ畑
確固たる取引実績
W
島外への高い輸送費
ハーブYの売上減
ハーブと島が都会で無名
自社ブランドの弱さ
O
ヘルスケアに関心ある層のハーブへの認知拡大
通信販売での需要
ハーブの広い用途
T
依存度高い取引先と取引が無くなる恐れ
ヘルスケア市場の競争激化
X島の人手不足

Z社への依存度が高いという点は弱みとも言えるが、取引減という脅威と纏めて書くのが合理的だ。

第2問

ターゲット顧客と取引先の両方を示す必要がある。

第3問で自社サイトでのマーケティング戦略が問われているので、設問群の流れを考慮して、自社ブランドの直販も取引先構成に含めよう。取引先には企業だけでなく消費者も含まれるのが盲点になりやすい。

4P戦略のPriceを盛り込むために「品質・安全性・希少性の強みを活かして高価格帯で取引」と書くのも有効だろう。

第3問

設問1

高得点者の再現答案に基づくと、多角化戦略が正解のようだ。予備校の殆ども多角化戦略と答えているが、KEC, MMCは新製品開発と答えている。

製品市場マトリックスは基本知識とは言え、思い出すのは容易ではない。本問に正解できたかどうかで10点の差が付いたと思われる。

設問2

問題文に「眠る前に飲むハーブティー」と書かれており、自社サイトの利用者は主にこの製品の顧客であるから、彼らを主なターゲットとして健康に焦点を当てた企画を提案する。

「自社オンラインサイト」と書かれているので自社サイトでしかできない企画を提案するのが望ましい。SNSでの情報発信は論外。

第4問でX島訪問ツアーの話が些か唐突に出ている。設問群の流れを考慮して、この企画に繋がるような提案ができると素晴らしい。

  • 健康の悩みを相談できるBBSや問い合わせフォームを設置し消費者ニーズ収集し、ハーブ・製品開発に活用
  • ハーブ畑などX島の魅力を発信し関与拡大
  • ハーブ以外で安眠できる方法も紹介し顧客の信頼拡大

第4問

B社長は「B社とX島のファンになってほしい」とは言うものの、中小企業診断士の役割は中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う事であるから、B社経営に資するものに重点を置く必要がある。

多様なアイデアが考えられるが、顧客がわざわざX島に訪問するのだから、「ハーブ畑への招待」と「島民との交流」は必要な要素。

  • B社ハーブ畑に招き景色を楽しんで貰いB社への愛顧拡大
  • B社の様々な製品の工場見学や試供で信頼と認知拡大
  • ハーブを用いた料理を島民と作って食べて貰い、島の文化理解と交流を促す

事例Ⅲ

令和元年度から大幅に易化。

第1問

与件文と問題文を読むと、「納期遅延根絶」が一貫した課題であり、C社長はあなた(中小企業診断士)にこの課題を解決するために助言を求めていることが分かる。したがって、弱みとして納期遅延を挙げる必要はなく、納期遅延の要因を挙げるべきだ。

モニュメントの受注事業が需要変動が大きいのは事業の性質によるものなので、同業他社に劣っている訳ではなく、弱みとして挙げるのは説得力に欠ける。

(a)強み
表面品質・溶接・研磨・装飾性に優れた技術力(第3段落)
設計から製作、据付工事の一括受注可能(第3段落)
(b)弱み
受注や生産計画が非効率
大型製品は対応不可(第2段落)
一部技術者が未熟(第11段落)
工場の作業場が狭い(第14段落)

第2問

設問1

「3D CADの導入」は全ての予備校が言及していたが、これは設計の問題である。受注・工事における顧客対応とは区別すべき。

(a)問題点
①受注時に顧客との打ち合わせに時間を要し、モニュメントの最終検査で修正・手直しが生じる
②2D CADを使用した設計が非効率
(b)対応策
①製品仕様を3Dモデルで顧客と共有し的確に把握する事で打ち合わせや修正の手間を省く
②3D CADを設計に導入し効率化
設問2

工場レイアウトの最適化も有力候補だが、第4問に温存しても良いだろう。

(a)問題点
①技術力が不足した作業チームがある
②生産計画が月次の為非効率で、基準となる工程順序や工数管理が未標準化
(b)対応策
①技術が未熟な人員にOJTを行い高度な作業に従事可能にし生産力強化
②生産計画の週次化、工程管理の標準化で効率化を進める

第3問

業務効率化
メッセージソフトで打ち合わせする事で製造作業の不在時間を減らし稼働率向上
スケジューリングに数理最適化ソフトを使用し、生産計画最適化と計画策定の人員削減
受注や設計データをDB化し作業の進捗を端末で全社的に即時共有

第4問

モニュメントの事業拡大が問われているので、与件文に書かれたモニュメント事業特有の強み・弱みを利用して解答する。高度な加工技術を持った人員が必要なことが増産のボトルネックだ。

事例Ⅲは生産・技術がテーマなので、マーケティングや営業部の強化といった、事例ⅠやⅡのような提案をしても評価されない。工場を大型製品に対応するよう改築・増設する提案が正解の一つである。これを書けたのは、予備校の中ではAAS名古屋、ユーキャン、大原で、個人では「資格取るなら」。

受注の充実・拡大に対応
大型製品も受注できる様工場の改築・増設
SLPで工場レイアウト改善し生産拡大
モニュメント加工の標準化・手引書化により効率化
モニュメントを3Dモデルで共有し製作図への理解を深め、OJTで技術者育成

事例Ⅳ

今年度はNPVの問題が易化した一方、その他の問題が思考力を問う良質な難問となった。NPVは例年難しいので受験者の多くが捨て問にしてしまうのだが、今年度は減価償却や法人税率を無視した単純な問題となり捨てるわけにはいかなかった。良い出題傾向ではあるが、NPVの問題文が不適切なために却って混乱を招く事態になった。

第2問

設問1

BEPの公式と言えば「固定費÷(1-変動費率)」だが、変動費率が一定でないためこれは使えない。公式を暗記しただけの受験者を落とす良問。

設問2

広告効果は税引き後CFであることが書かれている一方、広告費については何も書かれていない。わざわざ広告効果にのみ税引き後CFであることを示しているということは、広告費は税引き前であると解釈するのが自然だ。ところが法人税率が書かれていないので不適切問題である。こういう場合は自分に都合の良いように解釈して法人税率は無視しよう。

目的入力画面表示
X6年度末のCF.681 × 59
M+
40.179
X2~X5年度末のCF.735 + .794 + .857 + .926
×
30
M+
99.36
NPV5
M-
MRC
134.539
電卓で①の効果が出る場合のNPVを計算する際の効率的入力方法

目的入力画面表示
X4年度末のCF.794
×
23
M+
18.262
X2~X3年度末のCF.857 + .926
×
10
M-
17.83
NPV5
M-
MRC
-4.568
電卓で①の効果が出ない場合のNPVを計算する際の効率的入力方法

第3問

設問1

記述のポイントは、「純資産時価と買収額の差額」である「100百万円」を「負ののれん」として「特別利益」に計上するという点。

設問2
  • 買収に伴い財務の安全性が悪化しうる
  • デューデリジェンスの必要性
  • 収益力の悪化

第4問

設問2

利息の受取りと支払いは営業外損益の勘定科目なので、営業利益には含まれない。

予備校によって4.18%, 4.02%で答えが分かれている。四捨五入して4%になれば部分点が得られるのではないか。

設問3

セグメントの収益性という部分最適化が全社的な収益性という全体最適化を果たさない事があるというのが本問の趣旨なので、資本コストに触れるのが正しい。その他、売上高営業利益率で評価する方法も得点になるだろう。

中小企業診断士 令和五(2023)年度第二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ), 口述の解説

事例Ⅰ

事例Ⅰの本来のテーマである組織・人事に絡めた解答をするのが難しい問題が多かった。

第1問

第1~第9段落にかけて、時系列で強みや弱みが語られている。

古い情報は経営統合前の時点でも引き継がれているかどうか怪しい。例えば、第2段落に「コシの強い蕎麦」とあるが、これが経営統合前の時点でもA社の強みとして残っているという確証はない。だから、情報は第9段落から遡るように書き留めていくのが合理的だ。

回答欄に書き切れないほど情報が多い場合は、VRIOフレームワークに則り稀少性や模倣困難性の観点から絞り込もう。

以下のように、機会を強みに、脅威を弱みとして捉えるように表現を改訂しよう。

  • 「地域住民の強い愛顧」→「地域の常連客の存在」
  • 「顧客の高齢化」→「顧客獲得不足」
  • 「原材料の高騰」→「材料費高騰」
強み
地域の常連客の存在
問題を自主解決する社内風土
商品・サービスの質
収益の安定性
弱み
顧客獲得不足
弱い商品開発力
材料費高騰
仕入れの不安定性

第2問

差別化と狙いを区別して分かりやすく記述すべきだが、80点以上の高得点者ですら、そうすることに苦労したようだ。

競争回避
独自メニュー開発、商品・サービスの向上
来店者数増や従業員の負担軽減
客層の家族層への絞り込み
運営効率改善して収益増
蕎麦への資源集中

事例Ⅰは組織戦略の科目なので「蕎麦への資源集中」という要素は重要。これを書けていた予備校はAAS東京、EBA、MMC.

第3問

候補はたくさん挙げられるが、配慮せずに統合してしまうと混乱を生じると想像される点を優先して書こう。低価格戦略や離職率の高さは直ちに混乱を生じるわけではないので、重要ではない。

第4問の回答と関連付けるという視点も大事だ。

  • A社との主な客層や商品・サービスの質の違い
  • 仕入先がX社経営者と個人的関係に頼っており、仕入が不安定になりうる事
  • A社と異なり担当業務間の意思疎通が弱い事
  • 一部の社員が抱く統合への不安

事例Ⅰは組織戦略の科目なので「担当業務間の意思疎通が弱い事」や「一部の社員が抱く統合への不安」という要素は重要。

第4問

設問1

問題文が曖昧だが、与件文にて独立志向のある接客リーダーについてやや不自然に詳述されている点に着目すると、「誰がX社を率いるか」の記述は必要と思われる。回答内容が単なる留意点の記述にならないように注意。

  • X社従業員の意見を聴取してX社の風土尊重・不安解消
  • A社の接客リーダーが統括し、A社の方針を段階的に浸透させる
  • X社の取引先とも関係強化
設問2

「競争戦略や成長戦略の観点から助言せよ」と指示されているので、組織戦略について書く必要はない。

  • ターゲットは公共交通機関を用いて食べ歩きに訪れる外国人や若者
  • 地元産の高級な原材料を使用
  • 高級な原材料はX社の卸売業者から安く仕入れる
  • 高収益や差別化が狙い

「地元産の高級な原材料を使用する」という要素を書いた受験者は多いが、それをX社の卸売業者から仕入れるという点を忘れてはいけない。

事例Ⅱ

サブスクリプションや女性活躍アピールといった時事ネタが目立った。時事ネタを押さえるのが今後の戦略として有効だろう。

第1問

顧客
近隣のスポーツチーム
少年野球チームが常連でメンバーや保護者に推薦してくれるがチームメンバーの脱退もある
近隣の公立小中学校
女子野球チームは潜在顧客
競合
近隣の品揃えの良い専門店
近隣の安い量販店
自社
野球用品が品揃えや提案力に強み
刺繍加工技術、納品の確かさ、オリジナル用品の対応、良い立地、ICTの知見

回答欄は150字と大きいが、記述できる内容は書き切れないほど豊富にあるので、続く設問への回答と関連した内容に絞り込む為に記述を後回しにしても良い。

第20段落で女子野球チームは新規顧客と見なされているので、顧客ではなく潜在顧客と記述する必要がある。

3C分析はマーケティング戦略の立案のためのフレームワークなので、自社(Company)を強みと弱みに分ける必要はない。

第2問

「プライシングの新しい流れ」とはサブスクリプションの事だったようだ。これが書けていないと10点くらい失いそうだが、思いつかないからと言って考え続けるのは時間の浪費になりうるので、他の設問を優先しよう。

第3問

近年は大学の女子枠など、女性支援のアピールが流行っているが、それに便乗したと思われる出題。

「社長の思い」が第18~21段落にかけて四点書かれているが、女子野球は三点目である。

予備校も含めて「河川敷で野球教室を開催する」という解答が多いが、的外れだろう。野球ボールに触れたこともない女児に野球を知ってもらう段階から始める必要があるので、小中学校でキャッチボール等の体験イベントを開くのが理に適っている。

野球に興味がない女児が自ら情報収集するはずがないので、SNSのような消極的な発信方法は効果がない。よってプロモーションは近隣の住宅街や駅前での広告が効果的だろう。

提案力がB社の強みの一つなので、相談会を開催するのも有力だ。

第4問

「社長の思い」に対して、強みを活かしつつできる限り応えられる提案をしよう。三点目の女子野球の件は第3問で既に扱っているので無視して良い。全ての要求に応えるには字数制限が足りないので、第3問に含めると良い。

体格の3Dスキャンや技術データの送信をすると顧客に適した商品を提案するアプリの開発・提供
商品カスタマイズの提案力強化
各チームのデータ管理
購入データを収集し、顧客の買い替え時期に合わせてSNSで商品の告知して継続購入に繋げる
買い替えなどの多様にニーズに応える
HP上でユニフォーム加工やオリジナル用品の注文受付をして大口の常連顧客増
メンバーや保護者の要望の情報把握

事例Ⅲ

第1問

  • 経営者工場管理者専門分野に経験豊富
  • 高級品を扱う多品種少量生産体制

「経営者はホテル経営経験者」と「工場管理者は料理人経験者」という二要素をまとめる工夫をしている。

生産面以外の強みを書いてしまわないように注意。第13段落に製品企画部に経験者がいることが書かれているが、製品企画は生産管理には含まれない。生産管理は受注管理、生産計画、購買調達、工程管理、品質管理、原価管理に分けられる。

第2問

人手不足にも関わらず生産面での対応を求められているのがポイントなので、「人手不足を補う為に効率性を高める」という記述が必要。

与件文に書かれた生産面の弱みに着目して、これらの改善を通して生産性を向上するというシナリオがベスト。

  • 工場を機能別レイアウトにする(第6段落)
  • 惣菜の製造工程の自動化(第7段落)
  • 製品仕様のレシピをDB化(第10段落)
  • 食材や調味料の需要・発注データを蓄積し、需要予測システムを導入(第11段落)

わざわざ惣菜のフローの図が掲載されているので、製造工程の効率化・自動化を挙げるのは重要だ。EBAは「多品種少量生産型企業に自動化は適さない」と論じているが、本問は人手不足解消が主題なので自動化も正解になるだろう。

第3問

出題の趣旨には「C社の資材調達管理、在庫管理、製造工程管理の課題を整理し、その対応策について助言する」と書かれているので、事例Ⅲのテーマに沿って生産・技術面で提案する必要がある。

  • 取引先と調達や在庫の情報を共用する事で取引効率化し費用削減(第3段落)
  • 在庫管理を情報システムで全社的共有し、入出庫等も記録する事で、廃棄を削減し在庫適正化(第11段落)
  • 生産計画の週次化により調達・在庫・販売費用を削減(第11段落)
  • 材料の大口購入で仕入単価削減
  • 配送手段の最適化

第4問

問題文の「既存の販売先との関係を一層密接にする」「他のホテルや旅館への販路拡大を図る」「創業から受託品の製造に特化してきた」(=企画開発を強化する必要がある)という文がポイント。

  • 製品企画部の経験豊富な外部人材を部のリーダーに抜擢
  • 企画開発の経験ある人材を採用、他の従業員にOJTし組織強化
  • 既存及び新規の販売先や消費者からニーズ収集してアイデアを改良
  • 販売先と二人三脚で開発を進める

第5問

C社社長の意向に応えるのは必要だが、本問は共同事業がテーマとなっているため、「当初は客単価の高い数店舗から始め、10数店舗まで徐々に拡大したい」というX社の意向も考慮する必要がある。

高得点者は妥当とする判断が大勢。ところが、これらの答案の中に「新工場の組織体制」「専用設備」「X社の意向」といった要素を組み込んだ説得力のあるものは一つもなかった。

一方で、妥当でないとする判断をしたがくじんさんは75点ひつじさんは73点Makiさんは72点という高得点を得ているので、妥当性の評価自体は重要ではないだろう。AASの解説者も言うように、妥当性に対する理由付けと留意点で評価されると思われる。妥当でないとする方が理由や留意点を書きやすいので、得点しやすそうだ。

模範解答が良質な予備校のうち、KECは妥当とし、AASとEBAは妥当でないという解答だった。

そもそも投資判断には事例Ⅳのような定量分析が必要で、与件文のような定性的情報のみから助言するのは実務上ありえない。

事例Ⅳ

相変わらず不適切問題だらけだが、第2問は悪問の域を超えて不祥事レベル。少なくとも作問者をクビにすべきだ。

第1問

与件文中の人件費は、今後の方針について書かれていると解釈するのが自然なので優先順位は低い。資格の大原は「仕入原価が上昇している」という解答しているが、仕入原価の上昇は予測なので誤り。「感染症の影響で売上が減少した」という回答は、与件文からの推理として悪くない。何が正解なのか予測不能なので、多くの要素を盛り込む必要がある。

第2問

設問1

問題が不完全なだけでなく、無用な煩雑な計算まで要求する歴史的悪問。

固定費=総費用-変動費=総費用-(売上高✕変動費率)

問題文には指定されていないが、R3年度とR4年度の固定費が等しいと仮定しないと答えが出ない。

指示通りに変動費率63.31%を用いて固定費を計算するとR3年度は1141564、R4年度は1141590となる。固定費は一定という前提が崩れているので、問題が破綻している。いずれにしても、年度を指定されていないのでどちらを答えても正解。

目的入力画面表示
総費用=売上高-営業利益4547908, -, 527037, M+4020871
変動費=売上高✕変動費率4547908, ×, .6331, =2879280…
固定費=総費用-変動費M-, MRC1141590…
電卓で固定費を計算する際の効率的入力方法

BEP=固定費÷限界利益率=固定費÷(1-変動費率)

目的入力画面表示
限界利益率=1-変動費率1, -, .6331, M+0.3669
BEP=固定費÷限界利益率1141590, ÷, MRC, =3111447…
電卓でBEPを計算する際の効率的入力方法
設問2

(1)実は「X製品の生産を継続すると貢献利益が正になるから」という説明は不十分。何故ならば、生産停止しても個別固定費が0にならないという特殊な状況下にあるため、生産を継続する場合と停止する場合の貢献利益の大小を比較する必要があるからだ。

第3問

設問1

正味運転資本とは簡単に言うと「売掛金-買掛金」である。売掛金や買掛金は「現金のやり取りが現時点では生じない勘定科目」だが、会計上の利益はこれらと現金収支を区別しない。正味運転資本が大きいと、現金収入が会計上の利益より少ない。正味運転資本が増減したということは、現金収支が変動したということなので、CFを算出する際に加味する必要がある。

目的入力画面表示
各年度共通の税引前利益10000, -, 4000, -, 2200, -, 2200, =1600
各年度共通の税引後利益税抜1120.00…
各年度共通の税引後CF+, 2200, ×3320.00…
各年度共通の税引後CFのPVの和3.993, M+13256.76
正味運転資本は1年目に生じて5年目に回収する.681, -, .926, ×, 800, M+-196
設備を処分価額1100で売却.681, ×, 1100, =, 税抜, M+524.37…
初期投資額を引く11000, M-, =, MRC2585.13
電卓で税引後CFを計算する際の効率的入力方法

解けなくても、NPV公式、各年度共通の税引後CFは書いておこう。

設問2

わざわざ設備投資の実行タイミングを一年遅らせる理由は、2年度以降の予測販売量が初年度末に判明するため、判明してから設備投資するかどうか見極めたいからだ。予測販売量が判明して採算が取れないと分かった場合は設備投資は実行しない。したがって「設備投資の実行タイミングを一年遅らせる」という問題文は不適切で、正しくは「設備投資の判断を一年遅らせる」である。

年間販売量が5000個の場合はNPVが負になるような問題設定でないと出題の意味をなさないので、メタ推理によってこの場合の計算を省くことができる。

第4問

様々な財務的利点が考えられるが字数制限が厳しいので、多様な解答が存在しうる。ここでは、より適切と考えられる解答を絞り込むために「財務」という語を財務的CFという文脈における狭義の「財務」と捉えてみよう。

また、第一問の経営分析の様に多面性を意識して利点を挙げよう。

設問1
  • 工場建設の為の資金調達や投資が不要な為、経営の安全性・効率性が高い
  • 固定費削減で収益性が安定する
設問2
  • 研究開発費を回収して経営の安全性が改善
  • 競争が緩い市場なので高収益が期待できる

中小企業診断士 令和三(2021)年度第二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ), 口述の解説

事例Ⅰ

用語の解説

ビジネスフォーム
事務処理用に用いられる書式の決まった帳票
オフセット印刷
版を必要とする印刷手法
オンデマンド印刷
版を作る必要が無く、デジタルデータを直接印刷する手法

先代社長の経営戦略を分析させる問が多かった。

第1問

クライアントからの質問への回答というより、元社長の経営戦略を分析させる問題だ。

  • 印刷業が技術革新により低収益化する中
  • 差別化による生存を図る為
  • 高収益美術印刷への資源集中を選び
  • ファブレス化専門企業に外注化して
  • 顧客の細かいニーズに応じるという判断をしたこと

印刷業が低収益化している理由に字数を割くのは的確とは言い難い。なぜなら技術革新に投資するという事業戦略もあり得たからだ。

事例Ⅰは組織戦略の科目なので「専門企業に外注化」という要素は重要。

第2問

模範解答

これも経営戦略を分析させる問題。「考えられるか」という推測を求められる問題なので、与件文に根拠が無くても蓋然性が高ければ書いて良い。

  • 2代目はデザインと印刷コンテンツのデジタル化を目指していた
  • 社内に適した人材がおらず
  • 当分野に知識と人脈のある3代目を採用統括を任せる事で
  • デザイン部門の成功将来の後継に期待したからと考えられる

問題文中の「A社での経験のなかった」という部分への直接の答え「社内に適した人材がおらず」が書けていた受験者は少なかったようだ。

回答の戦略

中小企業診断協会は本問の出題趣旨を「先代経営者からの事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げに関して、経営組織の視点から分析する能力を問う」と公表しているが、問題文から事業承継という観点を読み取ることは難しいので悪問。しかし以下の戦略によって出題趣旨を忖度し高得点が得られるような回答をすることができる。

  • 第4, 第5問では事業承継がテーマとなっている為、回答欄に清書する前に全ての問題を読んで「問いの流れ」を把握する
  • 事例Ⅰは組織・人事がテーマであることを意識する

第3問

これも経営戦略を分析させる問題。

利点
印刷事業とのノウハウや資源のシナジー効果
成長するドメインに拡大する事で生存力強化できる事(差別化)
多角化による収益安定化
欠点
営業活動が必要となり財務負担が増した事
多角化によるセクショナリズム

出題趣旨は「事例企業の競合との差別化や新規事業と既存事業とのシナジー効果について、事業戦略の視点から分析する能力を問う」。回答欄に「差別化」というワードを書くだけでは説明不足。

事例Ⅰは組織戦略の科目なので「営業活動が必要」「セクショナリズム」という要素は重要。

第4問

ようやく現れた質疑応答問題。

競争優位に立つ
取引先と長期的関係を築きノウハウ蓄積し、専門化を進める
ノウハウ流出を防止、取引コスト減
関係良好な取引先を子会社化・採用
業務効率化と需要創出
双方向の情報交換

自由度の高い設問だが、事例Ⅰは組織戦略の科目なので「関係良好な取引先を子会社化・採用」という要素は重要。

第5問

3代目が自社内外の印刷業の知見を深めること(第2問)
印刷業界の人と交流を深める
全社的売上の回復(第10段落)
社長も含めた営業力強化(第10段落)
インターネットを活用した、既存客の情報に依らない販路開拓(第10段落)

問題文の「印刷業を含めた全社の経営を引き継ぎ」という要素を盛り込む必要がある。ここでは、第2問で示されている「3代目がA社での経験が浅い事」に注目すべき。

第10段落から全社的売上の回復が課題であることが分かる。同段落では弱みとして「3代目は営業を行わず」、「地場的な市場を引き継ぎ、販路が既存顧客からの紹介や口コミに依存していること」が挙げられているので、これを解消するような提案をしよう。

事例Ⅱ

与件文の第8段落のインスタント・メッセージ(IM)なんてあまり聞かないのだが、出題者が時代遅れなのではないか?

第1問

S
良質な地元大豆と、それを活かした豆腐丼などの製品
Y社との関係
収穫祭での愛顧拡大
試食という販売手法
W
受注用サイトを持たない
主婦層の顧客が少ない
移動販売の売上減
O
食事にこだわる家庭の増加
ECサイトでの売上増
置き配需要の増加
口コミでの顧客獲得
T
感染症に伴う売上減
ECサイトやスーパーの競合製品の存在

第2問

読みやすいように、「ターゲット」「販売対象」「販売の工夫」に文を分けた方が良い。4P戦略に則って、製品、価格、チャネル、プロモーションの全てに言及できていると望ましいだろう。

ターゲット
主婦層
食事にこだわる家庭
どの商品
手作り豆腐セットで出来立ての味を届ける
どのように販売
Y社サイトで販売
地元の新米や地下水とセットにして豆腐丼を販売
豆腐丼などのレシピを紹介
地元産や水質を訴求し高価格帯で差別化

第3問

高得点者でも回答に窮したらしく、チラシ・アンケートなどの定型句で回答欄を埋める人が多かった。「置き配」や「高齢者顧客」といった特徴を捉えた回答が必要となる。

フランチャイザー
新商品の定期投入
フランチャイジーへ、顧客への配布用として試食品や冷蔵BOXを無償提供
チラシの作成
アンケートで需要把握
フランチャイジー
顧客へ置き配についての事前確認
チラシの配布
電話対応
高齢者は感染リスク高いので必ずマスク着けて配達
宅配は口コミで評価が広がりにくいので、知人に商品を紹介するよう要請

第4問

製品戦略
地元和菓子店と共同開発
主婦の子も標的とするため、子供ウケが良い見た目・味の開発
コミュニケーション戦略
子供ウケの良い広告
IMで需要把握と情報発信し関係強化
地元産をアピール

事例Ⅲ

第1問

強み
手作り感ある高級な自社ブランドの販売・修理
一貫受注体制
オンライン販売体制
弱み
受託品の収益性が低い
熟練職人の高齢化
企画開発・製造の能力不足
低い需要予測精度

第2問

一つの課題に対して80字も書くのは厳しいので、課題を「生産計画の改善」のように広い概念を設定することで多くの改善策を書けるようにしよう。

計画変更や欠品が生じる生産計画の改善
受注や在庫情報の一元管理する担当者の設置
調達チャネル拡大や代替資材の検討で欠品を防ぐ
計画立案の週次化
小ロット化で受注に対応し在庫適正化
製造全体の技術習熟を進めること
OJTによる多能工化
作業のマニュアル化で効率的な習熟
自社ブランドの製造・修理の専任化
自動化による工程の効率化

第3問

第2問と内容が重複する項目も出てくるだろう。第2問の方が書きにくいので、第2問を優先して書いて、残った項目を第3問に書くと重複を減らせる

「課題」は弱みや問題点とは異なるので注意。課題だけでなくその対策まで書いてしまっている予備校や受験生がいるが、得点にならない恐れがある。

製品企画面
ニーズ収集による企画立案の強化
生産面
受注生産の割り込みによる生産計画の混乱を防ぐ
修理作業の負担軽減
縫製・仕上げ技術の継承
発注と在庫の適正化
工程の自動化

第4問

回答欄が140字と大きいので、十分な分量を書ける方を選ぶことになる。とは言え、第3問からの流れを考慮すると手作りに拘る方針を選ぶのが自然だ。他の設問と内容が被らないように対応策を書くのは難しい為、方針を選んだ理由も、説得力を増すことも兼ねて書こう。

手作りに拘るか否かの判断自体よりも説得力のある説明ができているかで点数が決まると思われる。多くの受験生は手作り路線を選んだが、まんさんはアイテム数を増やす路線を選んで71点という高得点を獲得した。

事例Ⅳ

第2問は不備があったものの会計理論を深く理解する上では良いテーマなので、深堀りして解説している。

第1問

財務指標を4つ答えさせるのは異例。優れている指標として棚卸資産回転率、有形固定資産回転率、売上高総利益率が候補になるが、以下の理由で、棚卸資産回転率と売上高総利益率を選ぶべきだ。

  • 指標は多様である方が望ましいので、効率性と収益性から一つずつ選ぶべき
  • 有形固定資産回転率は同業他社より優れているのだが、「移動販売事業は不採算」、「販売用のトラックはすべてD社が保有」と書かれているので、優れている指標として選ぶのは望ましくない。
  • 一定数の固定客がいる ⇒ 需要予測が容易 ⇒ 在庫量が少ない ⇒ 棚卸資産回転率が高い

第2問

2022年度以降の予想PLが示されていないので、CFを求めることはできない(出題の趣旨には差額CFと書かれているのに…)。事例Ⅳに不適切問題があるのはいつもの事だが、出題意図は「フルセルフレジを導入した場合としなかった場合の差額CF」を求めさせることだと判断して計算しよう。この他にも説明に不備があるため予備校によって解答が分かれているが、90点を獲得した再現答案が作問者が想定した正解だろう。

設問1「セミセルフレジ売却収益の扱い」

設問1, 2では、「現在保有しているセミセルフレジは1台当たり8万円で下取りされ、フ
ルセルフレジの代価から差し引かれる」という条件の解釈が難しい。この一文は「セミセルフレジの下取り価格を0円にする代わりにフルセルフレジを8万円値引きする」という意味ではない。それは設問3の「セミセルフレジの下取り価格が0円となるものの、フルセルフレジを値引きしてくれる」という表現と差が付けられていることからも推定できる。

そもそも資産に対して減価償却が行われる理由は、費用を収益に対応させることにある。資産売却するとその資産を利用した収益は得られなくなるので、減価償却費の計上もできない。

償却期間の途中で旧セミセルフレジを売却すると帳簿価額が残るが、これを売却収益と対応付ける。帳簿価額と売却収益の差額は特別損失として計上する。「フルセルフレジの代価から差し引かれる」という条件によって、売却時の現金収入が無いものとして扱われるため、旧セミセルフレジを巡る収支全額をタックスシールドの対象として処理できるようになっている。

解けなくても、NPV公式は記述しておこう。

設問2「旧セミセルフレジの売却収益は投資額に含める」

旧セミセルフレジ売却で収益が得られているのだが、この収益は22年度期末には含まれていないことに注意が必要だ。この収益分は特別損失に加味されているが、あくまで税効果に影響しているだけだ。その証拠に、法人税率をゼロと仮定して計算してみると、差額CFは2500万円(人件費削減分のみ)となる。

それでは売却収益についてはどこで帳尻を合わせるかというと、「フルセルフレジの代価から差し引かれる」という記述があるので22年度期首の投資額である。この時、フルセルフレジの減価償却費から売却収益を差し引いてはいけないので注意。差し引いて年間償却額を算出すると整数値にならないので誤りだろうと推測できる。

解けなくても、NPV公式や「2023 期末~2027期末の差額CFは全て同額」は記述しておこう。設問3の内容が、フルセルフレジの投資判断を可決した上での話になっているので、話の流れを考慮すると設問2は「可決」が正解だと推定できる。

設問3

「23年度期首にフルセルフレジに更新する場合とセミセルフレジに更新する場合の差額CF」を求めて、設問2の解と比較すれば良い。設問2より計算は楽だ。

解けなくても、NPV公式や「”23年度期首にフルセルフレジに更新する場合とセミセルフレジに更新する場合の差額CF” > “設問2の解”」、そして「2023 期末~2027期末の差額CFは全て同額」は記述しておこう。

第3問

設問2

問題文の最後に「小数点以下を切り上げすること」という指示が書いてある。四捨五入ではない処理を求めるのは異例である。この指示を見逃して四捨五入してしまうと2点くらい失いそうだ。

第4問

設問1

「財務指標をあげながら」と書かれているので、「効率性が改善する」などだけでなく具体的な財務指標を記述する必要がある。

第1問と同じように多様性が重要なので、収益性・効率性・安全性の面からできるだけ多面的に指標を選んで説明できるのが望ましい。とは言っても字数制限が厳しいので、挙げられる指標は高々2つだろう。

短期的なメリットを挙げるよう指示されているので、移動販売事業のリソースをネット通販事業に移す前に効果が現れるような指標を挙げるのが理想だ。例えば、販売用トラックを売却して現金を得たことによる有形固定資産回転率・当座比率の改善である。トラックの限られた容量が不採算の要因であることが与件文で示唆されている点を考慮しても理に適っている。この解答ができた予備校はAASだけだった。

設問2

「企業価値」という語は数理的な背景のある用語で、一次試験の財務会計科目でも企業価値の計算問題が出題される。企業価値をブランド価値のような情緒的な概念だと誤解してしまうと、「移動販売事業を通して企業イメージが良くなる」といった説得力のない回答をしてしまう。

中小企業診断士 二次試験 事例Ⅳの解説 H25, H26, H27, H28, H30年度

H25 (2013)年

全ての大問が異例の出題傾向なのだが、知識を広げるには役に立つ。

第1問

与件文には、工場はD社によって設立されるかのように書かれている。ところが第2問では独立開業という形態である事が示唆されている。出資金はBSの借方では固有資産の「投資その他の資産」として表示される。

PLも予想BSもなく、当期のBSだけが示されている。収益性・効率性・安全性の三面から財務指標を取り上げる定番の方法は使えないので、当時の受験者は相当に困惑したことだろう。

金額に変化のあった項目を元に財務指標を選ぶならば、次の三つが順当だろう。

  • 固定比率=固定資産÷純資産
  • 当座比率=(流動資産-棚卸資産-その他流動資産)÷流動負債
  • 負債比率=負債÷自己資本

与件文の冒頭に売上高が記されているので、効率性指標も指摘できる。有形固定資産回転率は出資直後は変化しないが、遊休工場の活用がテーマなので「遊休工場の活用によって今後の効率性改善が期待できる」というストーリーを組み立てることができる。

第2問

設問1

(a)200%定率法はR5年度一次試験でも出題されたので、今後二次試験で再び現れてもおかしくない。

(b)植物工場は子会社として設立されるようだが、それは問題文には明示されておらず、与件文に至っては単なる新事業としか読めない。また、支払利息は財務CFの区分に記載する方法もあるので、計算上無視しても良い。

設問2

字数制限が厳しいが、「タックスシールド」は「節税効果」という日本語を使えば字数節約できる。

設問3

「支払利息=借入金残高✕金利」。借金は早めに返そう。

第3問

一次試験でも問われたことのない「品質コスト」の知識を問うた問題らしい。マニアック過ぎるので、品質コストとは異なる解答をしても部分点が得られただろう。

H26 (2014)年

用語の解説

セントラルキッチン
複数のレストラン・学校・病院などの大量に料理を提供する必要のある外食産業や施設の調理を一手に引き受ける施設

第2問

設問1

「売上原価は売上高に比例している」と説明されているので、売上原価に含まれる固定費はゼロで、売上総利益も売上高に比例している。

問題文の「税引後CF」は、投資額を差し引かないCFなのか差し引いたFCFなのかで議論がある。71点以上を獲得した6つの再現答案は全てCFを回答しており、設問2の誘導と捉えればそれが自然だろう。

ある年度の期末に改装を行ったということは、改装された店舗の営業は翌年度となるので、「その他経費」がH26年度より10%大きくなるのは翌年度からである。

結論としては、H26年度末に改装する方が税引後CFが大きい。

解けなかったとしてもCFの公式を書いて部分点を貰おう。H26年度については、固定資産除却損は特別損失に計上されるので営業利益や経常利益には含まれず、「税引前当期純利益✕0.6+減価償却費+固定資産除却損」と書く必要がある。H27年度は固定資産除却損は計上しないので「営業利益✕0.6+減価償却費」でも構わない。

設問2

「改装した場合は、その他経費が、H26年度よりも10%増加する」という記述は、改装した年度のみ増加するのか、継続して増加したままなのかが不明な悪問。

H28年度以降のCFはどちらの投資判断を選んでも同じなので、差額CFを求めれば現在価値に換算する手間が大幅に省ける。R3年度第2問の問題文で、CFという語が差額CFの意味で用いられていた事もあったので、この計算方法でも正解扱いにならなければならない。

解けなかったとしてもNPVの公式を書いて部分点を貰おう。

問題文が曖昧なせいで本問も投資判断の見解が分かれてしまっているのだが、71点以上を獲得した6つの再現答案は全て「H26年度改装」を回答している。適当でもとにかく答えを書いた者勝ちだ。

第3問

設問1

「小数点第3位を四捨五入すること」と指示されているので、71.70%を71.7%と書いてしまうと誤りになる。

設問2

連続ナップザック問題が登場。解を求めると、5:3:2という綺麗な整数比が得られる。

ところで、この解のもとでは商品Zの貢献利益が負になるのが気になるところ。商品Zの生産をプロジェクトごと停止すれば理論上はこの貢献利益をゼロにできるのだが、そのためには機械設備売却や人員削減等の面倒なことを考慮する必要が出てくる。需要予測は年度によって異なるので、来年度は商品Zの貢献利益が正になるかもしれない。その時は再び機械設備の購入や人材採用をすることになるのだが、ただでさえ珍しい線形計画問題の出題なのに、作問者がそこまで求めているとは考えにくい。

71点以上を獲得した6つの再現答案は全て貢献利益は考慮せずに回答している。迷ったら自分の都合の良いように解釈するのが合理的戦略だろう。

第4問

回答欄がそれぞれ二行分と小さいので、大雑把な説明でも満点が来るはずだ。

H27 (2015)年

問題文中で指定される法人税率は、この年度から40%から30%に変更になった。

第1問

設問1
優れている指標
D社の技術は市場から一定の評価を受けている(第2段落)一方、与件文には販管費が嵩んでいるという記述はないので、売上高営業利益率より売上高総利益率の方が良い。
課題となる指標
X社への依存が大きいため債権の回収効率が低い⇒売上債権回転率
売上債権回転率の低下による短期の資金繰り悪化⇒流動比率
設問2
  • 技術力があるため収益性は高い。
  • 売上債権回転率の悪化が流動負債の返済の不透明性を招いているというシナリオを書けると素晴らしい。

第2問

設問2

(a)設問1で売上高減少に言及されているので、このことに触れる必要がある。

(b)営業レバレッジといった指標に言及できていると良い。

設問3

(1)目標売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率

(2)損益分岐点売上高BEPは、目標売上高の式において「目標利益=0」とすることで得られる。つまり「BEP=固定費÷限界利益率」。本問では営業外損益を固定費として扱う必要があるのがカギ。

第3問

設問1

この設問には以下の二点の難点があり、不適切問題の可能性があるので取り組まない方が良い。

  • 機械設備g の減価償却費をCFに含めるべきかどうか議論が分かれている。KECは含めるべき、「資格とるなら」は埋没費用なので含めるべきでないとしている。
  • 第✕3期の投資額の意味が不明。

「プロジェクトZを採用したことによって増加するCF」と述べられているのて、CFに他事業の損失を含めてはいけない点に注意。

設問2, 3

設問1を捨てると設問2のNPVは計算できないのだが、実は採用するべきプロジェクトは正しく選べる。

設問3を読んでみると、「プロジェクトの流動性を考慮するべき」と書かれている。両プロジェクトの損益予測を比べると、プロジェクトEの方が収益性は高いが初期投資額の回収に時間がかかることが読み取れる。このことから、設問2~3は「投資評価方法の特徴の違い」の理解度を問うために「収益性から判断するとプロジェクトEが望ましいが、安全性の観点からはプロジェクトZが望ましい」という結論を用意したものだと推測できる。

よって、設問2で採用するべきプロジェクトはE。そして、設問3における適切な財務指標は回収期間法であり、その評価方法を用いるとプロジェクトZが望ましいという結論になることが分かる。

第4問

設問2

与件文にある「既存事業との需要動向が異なる」ということを書く必要がある。設問1との繋がりから、「収益と資金繰りが安定する」という解答がベストだろう。

財務の勉強をすれば分かるが、「リスク分散」という語は使わない方が良い。なぜなら、「リスク=分散」だからである。

経営リスクという語には「収益が改善するリスク」も含まれているのだが、この種のリスクはデメリットではないので、この語を答案に使用するのは不適切。「収益の安定化」と表現するのが妥当。

H28 (2016)年

第1問

設問1
食材にこだわり(第5段落)
材料費の高騰⇒棚卸資産回転率(効率性)の悪化
事業は好調なので課題にする必要性は低い。
創作料理店の業績不振が全社業績に影響(第6段落)
売上高総利益率(収益性)の悪化
当期に特別損失を計上しているが、与件文には原因が書かれていない。売上高純利益率を採用するとこの特別損失を加味することになるが、設問2でこのことを説明できないため、避けた方が無難だろう。
新社屋の用地として市内の好適地を取得(第8段落)
短期借入金計上に伴う流動比率(安全性)の悪化
有形固定資産回転率(効率性)の悪化
設問2

例年、第1問設問2では財務の収益性、安全性、効率性について分析するのが定番。しかし本問では「課題が生じた原因」を問われているので、収益性、安全性、効率性の良し悪しを述べると不正解となる。

第2問

設問2

「税引後CFの増加分のPV+売却資産(6年後)のPV>当初投資のPV」というNPVの式から導出するので、法人税率を用いて計算する必要がない。

問題文中に意思決定モデルや割引率が指定されていないため、没問になる可能性がある。時間を有効利用するために、「①で導出した数値を用いて、NPVの式を作る」とでも書いて後回しにしよう。

入力画面表示
4.9173, -, .9434, M+3.9739
320, -, 226, +, 443, -, 264, ÷, MRC, ×, 5, =343.49…
電卓で計算する際の効率的入力方法

「税引後キャッシュフローの増加分」は2年後~6年後の総額と捉えるのが自然だ。

第3問

bは次の要素を満たす必要がある。

  • 共通固定費配布額は料理店にとって埋没費用であり、
  • 貢献利益が正なので、
  • この配布額を一部相殺できる為。

第4問

設問1
収益
ネット上の露出増
営業時間外の予約受付
費用
予約システムの利用料と管理費の増加
設問2

送客手数料とは、店舗に予約や入客が入った際、これに関与した旅行代理店に支払われる手数料のこと(出典)。一般的でもなく一次試験でも扱われない用語を解説なしに用いるのは不親切だ。

損益分岐点売上高BEP=固定費÷限界利益率

H30 (2018)年

第1問

棚卸資産回転率は同業他社と大差が付いているが、71点以上を取得した受験者は全て有形固定資産回転率を選んでいる。与件文から業種等の情報を読み取って分析する必要がある。

第2問

問題文では「キャッシュフロー(CF)」を求めさせているが、正しくはFCFである。FCFの定義は、「投資家(債権者および株主)に対して利払いや配当などにあてることのできる、債権者と株主に帰属するキャッシュフロー」である。投資家が要求する利子や配当の総額は、企業の立場からは資本コストである。したがって、企業価値の向上や成長のためには、FCFが資本コストを上回る必要がある。

設問2

(c)キャッシュフローは「CF」と略すことで字数節約しよう。単に要求CFと実際のCFの大小を比較するのでは説得力に欠けるので、「資本コストを賄えない」等という記述も加えよう。

設問3

定率成長モデルは、毎期の配当額から理論株価を算出する際にも用いられる。企業価値なら「FCF÷(WACC-FCF成長率)」、理論株価なら「配当÷(株主資本コスト-配当成長率)」である。この公式を憶えていただけでも立派なのだが、本問は曲者で、公式中のFCFには「1年後のFCF」を用いるのが一般的なようだ。したがって今年度のFCFに(1+g)を乗する必要がある。

第3問

設問1

問題文に「来年度は外注費が7%上昇すると予測される」と書かれているが、これは日本語としては嘘で、7%上昇するのは外注単価である。この様に、変動費については単価として読み替える必要があるのは財務会計業界の奇習なので慣れよう。

設問2

費用構造を問われた場合は営業レバレッジを論じるのが定番のようだ。

設問3

「営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通し」に関わってくるのが与件文で述べられている人手不足(第6段落)である。これに言及できていた受験者は少なく、予備校でもユーキャンだけだった。

第4問

与件文第5段落の「協力個人事業主等の確保・育成および加盟物流業者との緊密な連携とサービス水準の把握・向上がビジネスを展開するうえで重要な要素」がほぼ答え。いかに表現を工夫して多くの要素を盛り込めるかの勝負だ。

中小企業診断士 令和元(2019)年度第二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ), 口述の解説

事例Ⅰ

第1問

補修用性能部品の保有期間とは、販売した製品が故障したときに修理ができるようにするため補修用性能部品(製品の機能を維持するために必要な部品)を家電メーカーが保有している期間のこと(JEMA)。

「最大の理由はなにか」と問われているが、直接の理由として第4段落に売上減少と費用増大が併記されているし、100字も一つの理由を語るのは難しいので、一つに絞る必要はないだろう。

全社的な売上減少(第4段落)
たばこ市場の縮小
乾燥機の買い替え需要を奪った
費用増大(第4段落)
メンテナンス事業は部品確保と在庫が必要
高コストな組織体質は改善しなかった
備考
  • 「売上減少」と書くだけではメンテナンス事業のみに対する記述と誤解されうるので、「全社的な売上減少」と書くべき。
  • 事例Ⅰは「組織・人事」がテーマなので、高コストな組織体質にも言及しよう。

第2問

「古い営業体質」として第5段落に「期限切れ部品の補修の個別対応」や「前近代的な経理体制」が挙げられているが、このままでは企業風土とは呼べないので言葉を補う必要がある。

  • 期限切れ部品の補修の個別対応など非収益性
  • 前近代的な経理体制などの非効率性
  • 昔の成功体験を忘れなれない古参社員に危機感が足りず、改革への意志や協力が不足していた

第3問

問われているのが「成功の背景にどのような要因があったか」という漠然としたものなので、何を答えても良さそうに思えるが、設問に「HPに期待する目的・機能とは異なる点に焦点を当てた」とわざわざ書かれているので、インターネットの利点に焦点を当てて記述するのが良い。

第9段落に取って付けたように書かれている営業部隊の件は、事例Ⅰのテーマが「組織・人事」であることを考慮しても重要に思えるので答案に組み込みたい。

  • インターネットの双方向性を活かし、潜在顧客のニーズを把握し、かつては困難だった潜在市場へのアプローチを可能とした。
  • 営業部隊による優れたプレゼンで、潜在顧客の自社サービスへの関心を高めた。

第4問

問題文には「事業領域を明確にした結果、積極的に取り組むようになった」と説明されており、その要因を問うているが、答えは当然「事業領域を明確にしたこと」である。問題文が論理的におかしいのだが、受験者の回答を正しい方向に誘導しようとしてこうなったのだろう。こういう場合は無難に「事業領域を明確にしたこと」を詳述しておくのが点数を稼ぐうえでは大事である。

その他の要因については、Kotter の組織変革の8段階モデルが参考になる。

営業部門の労働意欲向上
農作物の乾燥技術をコア・テクノロジーとして明確に位置づけし社内に共有
リストラを通じて社内に危機感を醸成
成果報酬制導入

第5問

組織再編には指示系統やチームの混乱やコスト増のリスクも伴う。期待の大きい新規事業が成長中の最中、組織再編するのはタイミングが悪い。事業が安定してから着手しても遅くはない。

機能別組織のメリットを挙げることで組織形態の知識があることを試験官にアピールするという方向性もアリだろう。

口述試験

  • 事業承継にあたり、後継者が農業経験がないことによる留意点
  • 代表や常務から後継者への承継をどのように進めるべきか
  • A社では新規事業の展開を考えているが、今後どのような組織体制をとるべきか
  • 農業と直営店の発展に向けて必要な方策
  • A社は、直営店も営んでいる中で、取引している大手中食会社とは、どういう関係構築をしていくべきか
  • コアテクノロジーをより浸透させる方法
  • A社は正規社員が大半であることのデメリット
  • 業績向上のためにA社の社員を活性化させる手段

事例Ⅱ

第1問

この設問を回答するのは後回しにして、他の設問を解くために与件文を読む際に、同時にSWOT情報を集めるのが効率的だろう。

S
技術力、顧客への提案力(第6段落)
賃貸料が安いため固定費が低い(第3段落)
顧客から店の雰囲気が落ち着くと好評(第3段落)
W
店舗が商店街中心から離れているため集客力が低い(第3段落)
顧客の年齢層の偏り(第6段落)
O
商店街の他社と関係良好で協業の可能性(第3段落)
デザイン性が強みなので、SNSでの拡散効果に期待できる(第6段落)
ネイルサロン市場に成長余地(第5段落)
T
大手チェーンによる低価格ネイルサロンの出店(第7段落)
X市周辺に競合が多数おり、市場成長鈍化と立地の悪さから顧客を奪われる可能性(第5段落)
備考
  • O: ネイルサロン市場に成長余地があるという機会は競合にも当てはまることなので記述の優先度は低い。
  • T: 「小型ショッピングモール開業を控えた時点の状況」という指定は、低価格ネイルサロンに言及してはいけないとも解釈できる。仮にそうだとしても、言及により減点されることはないだろう。

第2問

表でわざわざ価格体系が示されているので、「顧客にオプションを注文してもらい客単価を高める」という説明は大事だろう。

デザイン面で競合と差別化しオプション注文を促す
季節や様々な行事に合うネイルデザインの提案
顧客の属性に合うネイルデザインの提案
デザインを写真付きで送ることで訴求力を高める

第3問

設問1

「どのような協業相手と組んで、どのような顧客層を獲得すべきか」と指示されているので、協業相手と顧客層を明確に分けて書いた方が良い。

図1で年齢別人口構成比が示されているので、年齢で標的を絞るのが望ましい。協業の具体的内容は問われていないので書く必要はない。

協業相手
商店街のファッション関連店
顧客層
ファッションに敏感な中年女性
理由
デザイン性が強み
商店街の他店と友好的
Y氏は中年女性への接客に評判がある
オプション注文で収益増が見込める
設問2

「協業を通じて獲得した顧客層を…」と書かれているので、設問1と設問2の回答の一貫性が得点に影響すると思われる。「リピートに繋げる」という要件を満たすのが難しいが、「イベント前に毎回来店してもらえる」とか「満足度向上」と書いていれば自然だろう。

  • X市は様々なイベントが盛んなので、Y氏の接客力を活かして顧客の要望を聞きつつ参加イベントの雰囲気に合わせたデザイン性の高い提案を行う(第2段落)
  • 顧客が理解しやすいように写真を用いて説明する(第4段落)

口述試験

  • 新規顧客に対し、クーポンを配るとすれば、どのようなクーポンにすべきか
  • B社の強みとそれを活かした戦略
  • ショッピングモールに出店する大手チェーンのネイルサロンの弱み、それに対するB社の戦略
  • B社は顧客データベースを作成予定だがどのような情報を載せるべきか、そしとそれをどのように活用するか
  • B社はジェルネイルの施術前後の写真をSNS等で活用すること考えているが、その効果は

事例Ⅲ

第1問

問題文に「C社の事業変遷を理解した上で」と条件付けられているので、熱処理業務と機械加工業務の関係に焦点を当てる必要がある。

  • 熱処理と機械加工を一貫生産できる(第2段落)
  • 多品種少量生産に対応(第3段落)
  • 金属熱処理と機械加工における優れた技術者(第6段落)
  • 扱いやすく効率的な加工機を複数保有(第5段落)
  • 明確な経営方針を持つ社長(第13段落)

「強み」は同業他社に対する優位性や差別化できている点を指す。第2段落の「一般に金属加工業では」という記述は、同業他社の能力が続いて記述されていることを示す重要な表現。この一文から、「熱処理と機械加工を一貫生産できる」というC社最大の強みを見いだせる。このように、他社の状況を把握することで相対的な自社の強みを導出することができる。

第2問

「効果とリスク」と指示されているので、この2つを明確に分けて書いた方が良い。リスクとして「設備投資の負担」を挙げている受験者は多いようだが、これは生産面のリスクではない。

効果
量産体制導入で全社的な生産性向上や新たな技術の獲得
リスク
作業員の不足
新たな生産体制導入による混乱
X社依存度の更なる高まりによる生産体制の硬直化

第3問

設問1

書ける事項は色々あるが、「C社社長の新工場計画についての方針に基づいて」と指示されているので、第13段落で社長が挙げている方針を具体化した手段を書く必要がある。

回答を「在り方は」で始めるのは日本語として不自然なので注意。

稼働効率の最適化
X社に限定しない汎用的な生産ラインの導入
製品別レイアウトの導入
人材難への対応と作業者のスキルに頼らない加工品質の維持
作業のマニュアル化
多能工化の為の研修実施
作業の自動化
設問2

「受注生産方式とカンバン方式の違い」と「生産管理の定義」をよく理解していないと解けないので難問。

後工程引取方式導入の為の生産体制整備
機械加工・熱処理の生産計画の統合により生産リードタイム短縮して納期厳守
X社の外注に機動的に対応できる日程計画、在庫管理、人員配置の策定
納品予定内示に基づいて材料発注し、リードタイム短縮と欠品防止
工程への負荷変動抑制の為の平準化生産の推進

第4問

第13段落の社長の方針に基づく必要があるだろう。方針1では将来の方針が明示されているので、これについて戦略立案するのは必須。ただ、それだけでは120字は埋まらないので、方針4の「近年の人材採用難」も将来続くであろうと考えて戦略立案しよう。

「戦略を述べよ」という具体性の欠片もない指示なので、深く考えずに、他の設問への答案と内容が被らないように自由な発想で回答欄を埋めれば十分だろう。

口述試験

  • 繰り返しの受注生産を行うことに伴うC社にとっての問題点
  • X社は機械加工をC社への移管を検討しているが、その意図は?

事例Ⅳ

第1問

設問1

収益性、安全性、効率性から指標を一つずつ挙げるのが定石だが、与件文を元に分析するという基本に立ち返れば、棚卸資産回転率と有形固定資産回転率という2つの効率性指標を挙げるのが自然だ。

与件文で原価高騰が問題視されているので、売上原価率と売上高総利益率のいずれかは挙げる必要がある。
棚卸資産回転率(効率性)は3.13⇐4.74で0.7倍。
D社の賃貸収入は唯一の強み。有形固定資産回転率(効率性)は1.64⇐1.49で1.1倍。
設問2

与件文から、財政状態と経営成績の特徴の原因を拾ってくる必要がある。

建材・マーケット事業の不振が負債増加による財政悪化と経営成績悪化を招いている。賃貸収入は経営に好影響。

第2問

設問2

損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)=固定費÷限界利益率

設問1で導出した変動費率を用いると答えは4345になる。「固定費÷限界利益率」で導出すると4343になるが、設問1の解答を利用して計算するよう指示されているので、不正解とされるので注意。

入力画面表示
1, -, .8909, ÷0.1091
474, ÷0.00023016877
=4344.6380671
電卓で計算する際の効率的入力方法
設問3

一般に、売上高が変化したという条件が与えられた場合、単価の変動は考慮せず売上数量の変化のみを考慮する。よってマーケット事業部の変動は売上高に比例して10%増加する。

「設問1の解答を利用」という指示は意味不明。

第3問

設問1

「全社的利益(課税所得)は十分にある」という条件は、回りくどいが「税引前利益が負になっても課税対象になる」という意味だ。したがって第1期も課税を考慮する。

設問2

回収期間の年数は整数で答えてはいけないので注意。

入力画面表示
20, M-20
.9, ×, .952, M-0.8568
6.1, ×, .907, M+5.5327
14.5, ×, .864, M+12.528
9.6, ×, .823, M+7.9008
9.6, ×, .784, M+7.5264
MRC12.6311
NPVを電卓で計算する際の効率的入力方法
設問3

煩雑な計算が必要なので後回しにしよう。

高性能設備によって削減できる原材料費・労務費の割合をx (0≦x≦1)で表すと、煩雑な計算を経て、

70.342x +5.229 ≧ 12.631

を解くことになる。設問通りに四捨五入すると不等式を満たさなくなるが、指示通りに答えて減点されることは流石にないだろう。

第4問

設問1

企業経営理論における組織形態の問題と同じ発想で解ける。子会社化は分権化を意味しているので、機能別組織に対する事業部制組織の特徴を当てはめれば良い。

財務会計科目なので、財務会計面での指摘が望ましい。

メリット
損益・責任の明確化
投資家の投資判断がし易くなる
業務の専門性向上
子会社役員の裁量拡大
別の労働条件を適用可能
デメリット
管理費増
短期的判断の傾向
親子間の役割重複・排他的傾向
設問2

EDI導入の直接の効果は、与件文にある通り「取引先との在庫情報の共有」だから、これを盛り込むのは必須。その上で、在庫や配送の適正化、受注業務効率化などに言及する。「どのような財務的効果が期待できるか」と問われているので収益性・効率性強化まで記載しよう。

口述試験

  • 建材事業でEDIを導入することで、どのような財務的メリットがあるか(第4問設問2)
  • 今期施行した建売住宅が来期になって売れた場合の経営成績と財政状態
  • 全社的に変動費を削減する方法
  • 全社的な損益分岐点を利益計画に使うことに対して勘案すべきこと
  • 音響事業参入に際する財務への影響

中小企業診断士 令和四(2022)年度第二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ), 口述の解説

事例Ⅰ

第1問

「株式会社化する以前」という条件が付されているのが不思議だが、与件文に「有機野菜事業の譲渡のタイミングで株式会社化した」と書かれているので恐らく有機野菜事業に着手する前の段階を分析させることで第3問と切り離したかったのだろう。

強み
「経験豊富な従業員」との連携による「多品種の生産」(第3段落)
「人と環境に優しい農業」=「最終消費者の求める野菜を生産」=「有機JASとJGAPを取得」(第4段落)
洋菓子の人気(第5段落)
弱み
不明確な役割分担(第6段落)
需給調整の困難(第6段落)
採用難(第7段落)
低い従業員定着率(第7段落)

「需給調整の困難」という弱みは農業一般に言えることなので、重要度は低い。

第2問

「獲得し定着させる」と指示されているので、獲得と定着は分けて書くのが望ましい。

事業への理解度を向上し獲得
就労体験や従業員へのOJT
従業員・農業関係者との交流促進
勤労意欲を向上し定着させる
残業や時間外労働に割高報酬
年功賃金導入
シフト勤務導入
従業員の職務充実

就労体験とインターンシップはほぼ同義なので、併記する必要はないだろう。

第3問

当業者からの信頼維持
要求水準を満たす
当業者への依存度を下げ経営リスク低減
直営店や食品加工業務の強化して他業務の売上増
他の取引先との取引拡大

「それに加え、主要な取引先からは、安定した品質と出荷が求められていた」という不自然に付け加えられた文は注目点。

「大手中食業者への依存度を下げる」だけでなく、それが経営リスク低減をもたらすという効果にも言及すると良い。

第4問

設問1
各業務の専門化と役割明確化
機能別組織へ移行
機能別組織のデメリットのカバー
業務間の情報共有に留意

再現答案を参考にすると、機能別組織・事業部制組織のどちらを答えても良さそうだ。

設問2
権限委譲
段階的委譲
後継者に他業務の管理も経験させて経営者としての全社的視点の強化
人員配置
管理業務に適性のある若手従業員の管理職への登用
役割を明確にし適材適所

事例Ⅱ

第1問

字数制限は150字なので、3つのCについてそれぞれ40字程度を目安に書こう。

与件文には多くの情報があり全てを記載することはできない。こういう場合は、続く設問と関連する内容を選ぶのが望ましい。そのため、回答を後回しにするのも有効だ。

Customer
主に宿泊施設や飲食店だったが、コロナ禍で急減(第11段落)
コロナ禍で直営店の消費者が急増(第11段落)
Competiter
直営店周辺のスーパー(第4段落)
スーパーに納入する大手食肉卸売業者(第5段落)
ネットショップ上の同業者(第11段落)
Company
「自社工場を保有」=「顧客要望に対応可能」(第8段落)
取引先へのコンサル業務(第9段落)
卸売事業への高依存(第13段落)
備考
  • Customer: 「ホテル・旅館」を「宿泊施設」と言い換えることで字数を節約している。
  • Customer: 与件文の「卸売事業が9割、直営小売事業が1割」という情報はコロナ禍前なので、そのまま記述するのは不適切。
  • Customer: 予備校の多くは「周辺住民や現役世代の家族」を挙げているが、与件文中にこれらが顧客であるという根拠は書かれていないので不適切。顧客が遠方から来ている可能性もある。KECとMMCの回答は妥当。
  • Competiter: 直営店周辺のスーパーは、直販事業に対する競合となる。スーパーに納入する大手食肉卸売業者は、卸売事業に対する競合となる。
  • Company: 3C分析はマーケティング環境を分析するためのものであることを考慮すると、「取引先へのコンサル業務」は重要。

第2問

「商品コンセプトと販路」と指示されているので、商品コンセプトと販路を明確に分けて記述するのが望ましい。

与件文の「山の幸、海の幸の特産品にも恵まれ、大規模な集客施設もあれば、四季それぞれに見どころのある観光エリアもある」という記述から提携先を絞り込もう。設問に「第一次産業を再活性化」とあるので第一次産業と提携するのが自然だが、B社の製造加工技術は食肉に特化していると思われるので、山の幸や海の幸に応用できるかは現実問題としては怪しい。X県は地元産業の振興を期待しているので、地域商標の活用も有力だ。

第3問

「顧客ターゲットと品揃え」と指示されているので、顧客ターゲットと品揃えを明確に分けて記述するのが望ましい。

アフターコロナでは消費意欲旺盛な訪日外国人などの旅行客の需要が見込める。そこで彼らにB社が得意とする高級加工品を提供するのが良いだろう。また、コロナ禍中に増えた客層を維持する努力も必要なので、調味料やレシピ提供といった品揃えの拡充も望ましい。

第4問

「どのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また、この際、協業が長期的に成功するためにB社はどのような提案を行うべきか」と指示されているので、協業対象と長期的成功の為の提案を明確に分けて記述するのが望ましい。

協業の提案としてはクライアントが中小企業であることを考慮して、コストとリスクが小さいものを選ぼう。そうなると、ミールキットのような事業に絞られてくる。

長期的成功のための提案が難しいところ。B社が長期的成功を収めるには「食品や加工技術を活かしたブランド価値の向上・浸透」や「市場独占のための仕組みづくり」が挙げられる。

事例Ⅲ

第1問

問われている「課題」とは「今後乗り越えるべき問題」という意味で、SWOT分析における「弱み」とは異なるので注意。ただし「弱み」をベースとして「課題」を考案するのは良い方法だ。

課題は解答欄に書ききれないほど多くあるので、続く設問を先に解くことで重要な課題を絞り込むのが効率的だろう。

販売面
売上回復や販売先開拓(第3段落)
生産面
設計業務の統制(第7段落)
人材育成(第8段落)
小ロット受注への対応(第11段落)
情報共有の効率化(第12段落)
納期短縮(第17段落)

第2問

「課題とその対応策」を指示されているので、課題と対応策を明確に分けて記述するのが望ましい。

設計業務の合理化
量産受注(プレス加工)と個別受注(板金加工)の担当者を分けるか、優先順位をつける(第7段落)
設計期間短縮
3D CADを導入し、取引先とより正確な情報を共有(第7段落)
プレス加工の効率化
若手育成で役割分担(第8段落)
外段取化や段取作業者増員(第10段落)

第3問

第2問では短納期化を求められていたので、本設問では小ロット化に限定して記述できるのが望ましい。

総合的な生産効率向上
全工程における生産計画を立案
小ロット化に伴う在庫費用と発注頻度の増加への対応
生産計画を週一で改定
小ロット化に伴う段取作業増への対応
外段取化、段取作業の増員と標準化

第4問

「C社で優先すべきデジタル化の内容と、そのための社内活動」と指示されているので、デジタル化の内容と社内活動を明確に分けて記述するのが望ましい。予備校の多くは「デジタル化の内容」を「デジタル化の対象」と誤解しており、正しく読解できていたのはKECとAASだった。

社内活動については、令和3年度一次試験の「経営情報システム」第16問が参考になる。

デジタル化の内容
社内連絡ソフトを導入し即時共有
情報のDB化
社内活動
トップダウンで改革推進し確実な成果を得る
各課の要望を尊重する
研修を実施しデジタル化をスムーズに進める
混乱を防ぐ為段階的導入
デジタル化を支援する補助金の活用

第5問

社長の意向として与件文に「当該事業の市場成長性と自社の強みを考慮」と「今後高価格な製品に拡大することも期待している」とあるので、これを基本方針として立案する。

アウトドア向けという新市場開拓
取引先にコスト減や生産性向上の提案
高級品市場に進出
高度な金型製作技術という強みを活かす
市場撤退が必要な可能性
アフターコロナで海外供給網が復活しうる

事例Ⅳ

歴史的な高難易度で、20点ほど下駄を履かされたのではないか?第1問と第2問は思考力を要する良問だが、第3問は例年にも増して煩雑で悪問。

第1問

設問1

経営分析は解答方法が定型化しているが、それに挑戦するかのように生産性指標を求めてきた。与件文の取って付けたような従業員数の記述が重要。

課題となる指標として労働生産性が想定されているのは明らか。労働生産性の定義は「付加価値額÷従業員数」である。付加価値額の定義は複数あるが、平成28年度一次試験「中小企業経営・中小企業政策」第29問において「営業利益+人件費+減価償却費」という定義が用いられたので、これを使えば正解になる。労働生産性の単位は「万円」ではなく「万円/人」である。

労働生産性の定義が分からなくても「従業員数一人当たりの営業利益」等を書いておけば部分点を貰えるだろう。

設問2

「その要因について財務指標から読み取れる問題」は、設問1で挙げた財務指標を利用する必要がある。つまり労働生産性について指摘することになる。「問題」についてはD社の課題を述べても良いだろう。

第3問

販売台数が月間で表されているので、計算ミスに注意。

設問1

問題文に「間接費のうち、30%は変動費、70%は固定費の配賦額」とある。固定費は個別固定費ではなく共通固定費配賦額なので埋没費用として扱われる点に注意。

問題文中に「取得原価は1台あたり平均50万円」と書かれているので、正解は50万円前後となるはず。この数値から大きく外れた解は誤りだと分かる。

設問2

設問1では間接費が変動費と固定費で構成されることが明示されていた一方、本問では明示されていないので違和感を覚える。問題文が曖昧な場合、自分に都合の良いように解釈して良い。

「設備投資額と在庫投資の増加額は新規の工場が稼働する2年目期首にまとめて支出される」と書いてあるが、在庫投資については大問問題文に「期首に中古車販売台数1か月分の在庫投資が必要」と書いてあるので、「CFに取得原価を考慮する必要がない」という解釈は誤り。

年間の減価償却費は残存価額を減じた値を使う必要がある。

設問3

次の理由により、予備校によって解答が分かれている。

  • 「5年間の販売期間終了後には増加した在庫分がすべて取り崩される」という説明が意味不明。
  • 「年間150万円のキャッシュフローが継続的に発生する」とあるが、設備には耐用年数がある。

第4問

口述試験

出典: AAS

事例Ⅰ

  • 事業承継にあたり、後継者が農業経験がないことによる留意点
  • 代表や常務から後継者への承継をどのように進めるべきか
  • A社では新規事業の展開を考えているが、今後どのような組織体制をとるべきか
  • 農業と直営店の発展に向けて必要な方策
  • A社は今後、どのように事業展開していくべきか
  • A社は、直営店も営んでいる中で、取引している大手中食会社とは、どういう関係構築をしていくべきか

中小企業診断士 二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ)の高得点(71点以上)の再現答案

中小企業診断士 二次試験における、高得点(71点以上)の再現答案を集めた。

事例Ⅰ事例Ⅱ事例Ⅲ事例Ⅳ
R595?, 91, 88, 87, 85, 83, 75, 74, 73, 72, 84, 81, 77, 76, 76, 76, 76, 73, 73, 73, 72, 71, 7174, 72, 71, 7181, 72, 72, 78, 78, 76, 76, 75, 74, 73, 73, 72, 72, 7179, 79, 78, 76, 76, 76, 76, 76, 74, 74, 73, 72, 72, 71, 72, 72, 72, 72, 71
R494, 90, 85, 81, 80, 79, 77, 75, 74, 74, 73, 73, 71, 71, 71, 7175, 75, 73, 74, 7181, 78, 72, 77, 76, 74, 73, 72, 72, 7193, 91, 86, 85, 85, 72, 84, 83, 81, 79, 79, 78, 78, 77, 77, 77, 76, 75, 74, 72, 71
R395, 87, 79, 76, 75, 91, 84, 81, 80, 78, 76, 75, 75, 73, 73, 72, 7284, 77, 75, 74, 77, 75, 75, 73, 73, 73, 7279, 72, 71, 71, 72, 71, 7190, 79, 79, 78, 75, 73, 73
R285, 83, 77, 75, 74, 73, 73, 72, 71, 7286, 82, 80, 80, 77, 72, 72, 72, 72, 7172, 72, 7187, 85, 81, 79, 73, 71, 78, 76, 76, 74, 71, 71
R196, 83, 76, 74, 82, 78, 76, 75, 74, 74, 74, 74, 72, 7284, 78, 76, 77, 77, 76, 72, 7177, 72, 72, 72, 71, 71, 71, 7185, 83, 82, 79, 76, 75, 78, 78, 77, 76, 75, 74, 73, 73, 73, 72, 71, 71, 71
H3089, 78, 76, 71, 73, 73, 7385, 83, 76, 75, 74, 74, 7273, 73, 73, 72, 71, 71, 7177, 75, 74, 72, 74
H2983, 79,7378, 7883, 81, 8375, 71
H28
H2787, 75, 81, 81, 79, 75718173
H2675, 73, 73, 72, 7182, 73, 7390, 86, 81, 79, 75, 71
H2571
H2478100, 8879, 78, 73
H2381, 75

各年度試験の難易度と出題傾向

一般的に、今後の試験の出題傾向に近い過去問を解くのが望ましいので、新しい過去問を優先した方が良い。

中小企業診断士 一次再試験 令和五(2023)年度 G 中小企業経営・政策の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

試験問題の内容が暗記偏重で、例年と比べて質が極めて低い。中小企業診断協会は、再試験であるため問題作成の吟味ができなかったが、受験者数が少ないため悪影響は少ないと判断したのだろう。

第1問

  • 企業数は、大:中:小 = 1%:15%:84%
  • 従業員数は、 大:中:小 = 3:5:2

第2問

中小企業の従業員数は、製造 > 小売 > 建設

第3問

設問1

自己資本比率は、製造 > 卸売 > 小売 > 宿泊・飲食サービス。自己資本比率は固定資産が多い業界では高く、流動資産が多い業界では低い。

自己資本比率は借入金依存度と逆の指標。

設問2

付加価値率は、価格競争に陥りやすい小売業は低く、そうでない宿泊・飲食サービス業は高い。ただし、宿泊・飲食サービス業は労働集約型なので労働生産性は低い。

第4問

情報通信業の労働生産性は、大企業と中小企業との格差が大きいのが特徴。情報通信業は人材不足なので、高度人材が大企業に集中しているためと思われる。

第5問

設問2

2021年度の商店街来街者数が減った最大の理由は「魅力ある店舗の減少」となっているが、これはアンケートが複数回答形式であることから説明できる。「近郊の大型店の進出」と「地域の人口減少」は「魅力ある店舗の減少」の原因になりうるので、「近郊の大型店の進出」と「地域の人口減少」を選択した回答者は「魅力ある店舗の減少」も選択している可能性が高いのだ。

またこの背景にはECの普及も考えられる。

第6問

このアンケートは複数回答形式であるため、価格で勝負している企業のみが選ぶ「商品の価格競争」が最下位になり、ブランドを重視している企業のみが選ぶ「自社ブランド認知度向上の難しさ」が二位になり、あらゆる企業に当てはまる課題である「販売先に関する情報不足」が一位になる。

第7問

出典

販売先との交渉の機会が設けられていない要因として、「取引関係が長く交渉の機会が不要であるため」が最も多い。これは、複数回答形式であることが最大の要因だろう。

「販売先の意向が強いため」と「交渉の経験が少なく提案することが困難」という選択肢が「交渉を必要としている」という前提に立っている一方、「取引関係が長く交渉の機会が不要であるため」は「そもそも交渉を必ずしも必要としていない」というより広い前提に立っている。

第9問

設問1

フリーランスは企業と短期労働契約をするのが特徴。

情報通信業はプロジェクトベースであるので、フリーランスが多い。

製造業は一般的に、企業に長く従事することでスキルを習熟する性質を持つ。よって製造業はフリーランスと親和性が低い。

設問2

「フリーランスや副業人材の管理・調整」の回答が少ないのは、この選択肢だけ実際に雇ってみないと課題として認識できないからだろう。

第10問

グロース市場への上場要件の一つに「時価総額5億円以上」というものがある。記述bは1億円となっているが、これでは多くの中小企業が含まれてしまうので誤りだと分かる。

第11問

設問1

2020年度と2022年度の試験問題では厚生労働省「雇用保険事業年報」に基づいて「廃業率は、2010年度から低下傾向で推移している」という知識を問うた。

本試験では、東京商工リサーチ「2021年「休廃業・解散企業」動向調査」に基づいて「2014年 から2021年の期間について、休廃業・解散件数の推移を見た場合、 増加傾向にある」という知識を問うている。

休廃業・解散した企業は、実は黒字が多い。後継者が見つからないことが背景にあり、メッセージ性のある出題だ。

設問2

休廃業企業の代表者の年齢は70歳前後で、年々上昇している。

第12問

設問1

大企業と中小企業の比較なので、企業数の圧倒的な差に着目しよう。中小企業は大企業より圧倒的に多いので、商標権の出願件数が強いと分かる。一方で大企業は技術力で中小企業を圧倒しているので特許権の出願件数が強い。

設問2

中小企業の産業財産権の出願件数比率は増加傾向だが、これには大企業の「出願数を絞る」という戦略の変化も大きく影響している。

第13問

設問1

大企業経営者は60代がボリュームゾーンであるのに対して、中小企業は70歳前後を最頻値として裾野が広い。

設問2

出典

初期費用が小さい業種は開業のハードルが小さいので、「創業者」の割合が「同族継承」の割合を上回る傾向がある。

第14問

設問1

このアンケートは複数回答形式なので答えが分かる。ICT活用が必要な企業は限られているので三位、一方で第一次産業ですら必要とされる「人材」が一位となっている。

設問2

「コミュニケーション力」が一位なのは不思議と思うかもしれないが、このアンケートは複数回答形式なので、最も汎用性の高いこの能力が一位になる。

第15問

中小企業

製造業その他3億円 or 300人
卸売業1億円 or 100人
サービス業5000万円 or 100人
小売業5000万円 or 50人

小規模企業者

製造業その他20人
商業・サービス業5人

第16問

設問1, 2

ものづくり補助金(第18次)

ものづくり補助金の事業計画は、経営革新支援事業の経営計画とほぼ同じ。

事業計画( 3~5年)

  • 付加価値額の年率平均3%↑
  • 給与支給総額: 年率平均1.5%↑
  • 事業場内最低賃金: 地域別最低賃金+30円

ものづくり補助金に最低賃金の要件が追加された2020年には、最低賃金が800円を下回る地域もあった。その状況を考慮すると「100円以上向上」は非現実的だと判断できる。

設問3

枠は毎年改編されており、最新版では、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠がある。

(エ)「ものづくり基盤技術の高度化に向けた研究開発を支援する」のは「成長型中小企業等研究開発支援事業(go-tech事業)」である。

第17問

SBIR (SBIR、Small/Startup Business Innovation Research)

根拠法: 科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律

支援内容

  • 指定補助金(信用保証の特例、特許料等の減免)
  • 特定新技術補助金
  • 日本政策金融公庫の特別利率による融資

第18問

女性、若者/シニア起業家支援資金制度の対象者は、事業開始後7年以内かつ35~55歳男性以外の人である。

償還の据置期間は2年間と普通。一方、貸付限度額は7億2000万円、償還期間は設備資金20年・運転資金7年と起業家支援制度にしては大盤振る舞いで、セーフティネット貸付や高度化事業と同規模。差別的な支援対象といい、大衆迎合の感がある。

第19問

根拠法商店街振興組合法中小企業等協同組合法中小企業団体の組織に関する法律
名称商店街振興組合事業協同組合企業組合協業組合
設立要件1地区1組合4人以上
発起人7人以上4人以上
議決権平等平等/出資比例
株式会社へ組織変更×
半数が小売業・サービス業 半数が組合に従事

第20問

設問1
  • (ア, イ)中小企業等海外侵害対策支援事業(模倣品対策支援事業)は産業財産権の侵害を受けている企業の侵害対策を支援するものなので不適。
  • (ウ)経営法務で扱う内容だが、地域団体商標は組合、商工会、商工会議所、NPO 法人が出願できる。地域団体商標への侵害については当然、それらの組織が支援の対象者となる。
設問2

IT導入補助金通常枠の上限額が450万円なのを勘案すると、800万円は高すぎると判断できる。

第21問

設問1
  • (ア、エ)「創業期」は創業5年以内を指す。
  • (イ、ウ)事業計画立案から時間が経つと市場環境が変化して計画通りにならなくなる恐れがある。立案から3カ月経って操業は遅すぎるのだ。
設問2

(エ)保証限度額が2,000万円なのは予約保証である。

第22問

設問1

(エ)二重徴求はこの保証制度の趣旨に反する。二重徴求は2020年度第9問でも題材となった。

設問2

流動資産は「1年以内に現金化できる資産」と定義されているので、それを担保にしている以上、保証期間は1年以内とせざるを得ない。

第23問

設問2

雇用調整助成金制度は労働法規に絡んだ問題。

法定労働時間の上限が「日8時間、週40時間」、残業時間の上限が「月45時間、年360時間」というように、労働法規には短期と長期で二重の上限を設けるのが慣例。雇用調整助成金制度でも1年間と3年間とで二重の上限を設けられている。