高校数学 東京工業大学1990 (平成2)年度 前期入試問題の解説

解答例

本年度は難易度が高い。しかも驚くべきことに全ての大問が小問を持たない。第2問や第3問を見るに、出題センスが未熟である。

第1問

いきなりゴツい数式を出してやる気を削いでくるが、コケオドシ問題である。

m, nについて小さい整数を代入してみると、m = 1, n = 2のときにxw = yz が出てくる。この事は、この式が必要条件であるという事を示している訳だが、実は同時に十分条件でもあるのだ。

十分条件である事を示すには、与式に xw = yz を代入して恒等式となる事を示せばよい。式の対称性を活かしてxw = yz = kとするのが筋が良い。

整数問題は実験が大事」の教訓が強く表れた問題だ。 必要なのは実験する心構えと地道な式展開の計算だった。

第2問

本年度の最難問。

左辺はΣ内がlog xi との積になっているので処理しにくい。そこで右辺の一部をΣ式に変えるわけだが、この操作が珍しい。そして移項して式を纏めるわけだが、ここまで構想できれば立派だ。

ここからはlog x≧x -1 /xの不等式を自力で思い付いて適用するのだが、普通は誘導で与えられる部分である。当時の東工大はこういう出題もあったようだが、今の受験生なら誰も解けない。

第3問

図形の問題で最大値を求めよというから、いつもの様に微分法だと思ったら沼に嵌る。

二つの円の中心が楕円の焦点になっている事に気付く事が全てである。さて、どうやって気づくかだが、「三つの曲線とPQ, PRのグラフを描いてみる」とか「東工大は有名性質を利用した問題が多い」とか「楕円が(0, √3)という中途半端な座標を通過する」といった点を意識することだ。

それに気付かずこの問題に時間を取られてしまうと不合格になるわけだ。単に受験生を振るい落とす役割しか持たない、受験生の学力を試せない悪問だ。2000年以前の東工大数学ではこの手の問題があった。

この問題は三角不等式の活用例でもある。

答えが6になるのはP(0, √3)やP(2, 0)のときを確認する事で予想できるので、解けなくても答えだけでも書いておこう。

第4問

標準的な難度の積分問題。そのまま微分すれば極小値をとるθが分かる。

分数関数の積分なので、強引に「∫(y’ /y)dx = log |y|」の形に持っていく。sin やcosは、2乗の形であれば容易にsin とcos の間で変形が出来る。また、t = tan (θ /2)と置換する手法もある。

第5問

また楕円の問題。この時代の東工大数学は楕円の性質を利用した問題が多い。

ある点から楕円に引いた二つの接線が直交するとき、その点の軌跡は円となる。これを「楕円の準円」という。それを知っていれば簡単に解ける。

準円の存在証明はした方が良いだろうが、他の問題が難しいので余裕がある場合のみするのが戦略的に良いだろう。

存在領域として(1 /√3, 0)が除外点になるのに注意。

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