第I問
〔1〕
- (1)ハロゲンは原子価が1なので、1価の陰イオンに最もなり易い族である。つまり単原子分子の状態よりイオンの状態を好むのだが、ハロゲンの間でも小さい周期の方が電気陰性度が高いので、KBrからKClに入れ替わる。
- (2)O3 は強い酸化力を持つので、KIを酸化してI2の単体を生じさせる。このI2 がデンプンと反応して青紫色を呈する。但しAは臭素なので誤り。
- (5)KIは標準状態では反応が起きないのでエネルギーを与える必要がある。ただし原子間結合を完全に断ち切らずとも活性化状態になれば反応が進むので、結合エネルギーより少ないエネルギーを与えればよい。
〔2〕
- (イ)刺激臭を持つ気体(分子量)はCl2(71), HCl(36), NH3(17), NO2(46), SO2(64), HF(20) の6つだが、 Cl2 は黄緑、NO2 は赤褐色なので除外。空気の平均分子量は29なので NH3(17), HF(20) が残る。
- (ウ)石灰水とCO2 の反応だ。錯イオンの生成過程にも似ているが、AがNaOHでもNH3でも無い事、炎色反応、「通じる」という奇妙な表現から違いに気づける。炎色反応は、アルカリ金属ではCaは橙赤、Srは紅、Baは黄緑。
- (2)N2, H2 を Fe3O4を触媒として高圧下(低温でも可能)で反応させてNH3 を作るのがハーバーボッシュ法。
- (3)Ca(OH)2 は溶解時に発熱することが原因で温度を上げると溶解度が下がる。温度を上げると溶解度が上がるのは一般的なので疑うべき問題文だ。
- (4)H2CO3はH2OとCO2 に分解する。
〔3〕
問i
酢酸の物質量は0.01mol、NaOHはV *10-4mol となり大小関係が不明だが、pHの範囲が3.5~5.0なので酢酸の方が多いと分かる。
ちなみに、緩衝液は弱酸(塩基)とその塩の混合溶液から成り立つので、NaOHが多いと緩衝液にはならない。緩衝作用の本質はルシャトリエの原理によるH+(OH–)の電離の抑制にあるが、強酸(塩基)は電離度が1なのでこれが持つH+(OH–)の電離を抑えられない為だ。
電離定数は、水溶液中のあるイオンのモル濃度が変わっても一定なので、 [CH3COOH]と[ CH3COO–] を Kaの式に代入する事で[H+]が分かる。
問ii
和が最小になるのは緩衝作用が最強の場合な(札幌医科大の資料)ので、[HA] = [A–]を満たす。pHの選択肢は3桁だが、どれも2桁目が異なるので3桁で計算していけば十分。
体積は [HA] = [A–] を利用する。
〔4〕
電池の仕組みと電気分解を組み合わせた問題。
問i
電子が流れ込んでくる極板は、電解槽では陰極、電池では正極だ。
問ii
密度とは硫酸ではなく水溶液全体を指している。
第II問
〔5〕
(5)強酸・強塩基の溶解熱は発熱である。
〔6〕
問i
熱化学方程式は、どの項を1 mol として立式するかがカギだ。燃焼熱は燃焼させたい分子、生成熱は生成させたい分子を1 molとする。
問ii
- (1)反応熱(kJ /mol)は、一般に25℃、105Pa という条件下でのものを指す。つまり温度や圧力が異なれば、反応熱は別の値になるのだ。これは反応に用いられる物質の運動エネルギーが異なる事を考えれば自然なことだ。
- (2)イオン化傾向はAl > Fe であり、酸化物の安定性はAlの方が高い。またテルミット反応では2Al +Fe2O3 → Al2O3 +2Fe の過程で激しい熱と光を生じるので、アルミナの生成熱の方が大きいと分かる。
〔7〕
水の分圧を状態方程式を使って求め、飽和蒸気圧と比較するようにしよう。
〔8〕
この手の問題は、物質の状態が温度変化と共に変わる様をイメージするのが良い。
問i
溶解度曲線をイメージすると解きやすい。
問ii
水溶液の温度を下げていって氷が析出した事で、溶解平衡の状態になった。これによりモル凝固点降下の式に当てはめる事が出来るのだ。
モル凝固点降下は Kf = Δtf・kg /mol で表される。しかしこれは唯の係数なので変形して、モル凝固点降下度Δtf = Kf・mol /kg とした方が”mol /kg”が質量モル濃度を表しているので分かりやすい。
とにかく計算が面倒。
問iii
状態Cは気液平衡なのでモル沸点上昇の式に当てはめる事が出来る。
モル沸点上昇もモル沸点上昇度Δtb = Kb・mol /kg とした方が分かりやすい。どちらも質量モル濃度に比例するのだ。質量モル濃度という単位はこの二種類を表す場合でしか使わない。
カギは状態Cの気体の温度を求められるかにある。沸騰している水溶液の沸点は100 +Δt(℃)であり、気体の温度も同じだ。沸点上昇の理解度を問う良問だ。
第III問
〔9〕
- (ア)CaC2 +2H2O → Ca(OH)2 +C2H2 という反応になる。有機化学の問題なのでC2H2 である。
- (イ)付加反応は付加する物質の全ての原子が加えられる反応だ。
- (エ)塩化パラジウムと塩化銅を触媒としてアルケンを酸素でカルボニル化合物へ酸化する方法をワッカー法という。
- (オ)フェノールの製法の一つ。Clは電気陰性度が高い為にOHに置換される。
- (1)イソプロピルベンゼンの別名がクメンだ。これを酸化、分解するとフェノール(化合物F)とアセトンが出来る。
- (2)酸の強さは「フェノール < 炭酸 <カルボン酸」なので、NaHCO3 と弱酸遊離反応を起こすのは化合物C・Eだ。
- (3)化合物C(酢酸)は酸性なので、ヨードホルムと中和してしまいヨードホルム反応が起きない。
- (5)アセチレンに硫酸水銀を触媒として水を付加するとアセトアルデヒドが出来る。この生成過程で使った水銀が水俣病の原因となった。
〔10〕
不飽和度は9だから、ベンゼン環(不飽和度4)を二個、二重結合を一つ持つと分かる。この二重結合はエステルのCO結合だ。
ヨードホルム反応を起こした試料はC(O)ONaとなる。この塩を塩酸で処理するのカルボキシ基が出来る。
- (2)アルケンと言っても、ベンゼン環は残っている。脱水すると、O原子と結合していたC原子が二重結合を持つことになる。
- (3)ナトリウムフェノキシドを高温高圧下でCO2と反応させサリチル酸を作る事をコルベシュミット反応という。
- (5)どちらも塩基性化合物ではないのでHClと反応しない。
〔11〕
問i
- (2)マルトースはαグルコース同士の1, 4結合なのでヘミアセタール構造を一つ持つ。反応式を憶えていないと答えられないが、「アルデヒドと水酸化銅の反応」と考えると解ける。ちなみに銀鏡反応は「アルデヒドと酸化銀の反応」と考えて1 mol, 2molずつ生じると分かる。
- (3)単糖類は全て還元性を持つ。
- (5)デンプンはデキストリン、マルトース、αグルコースという過程で分解される。
問ii
単糖類はどの種類もヒドロキシ基を5個持っているので、化合物Aの繰り返し単位のヒドロキシ基は3個(これが分からなくても答えの見当は付く)。
そして鎖の両端のヒドロキシ基も計上するのが肝。「デンプンを部分的に加水分解した」と説明されているので、高分子と想定してはいけないのだ。
化合物Aはアミロースではなくアミロペクチンである可能性がある事に気づいただろうか?アミロペクチンの場合は分岐を考慮する必要があるが、繰り返し単位のヒドロキシ基は3個になるので結果的に「化合物Aはアミロースである」と想定しても正解に辿り着く。