高校数学 東京大学1992 (平成4)年度 理系前期入試問題の解説

全体的に難度が高いが全く歯が立たないという問題もない。多様性に富み良問が多い。大学入試として稀に見る傑作である。

「大学への数学」における各大問の難易度: C, C, C, D, C, D

解答例

第1問

シンプルな問題設定でありながら極限に関するセンスを試される良問。

(1)

題意から S1 -S2 が最小値となるbを求めると分かるが、そもそもS1は定数なので、S2 の最大値を求めるだけで良い。

(2)

極限計算の手法として、定数項を絞り出して残りの項が0になるように式変形するというものがある。それに従い本問では、発散速度が最大の項”a log a”で分母分子を割る。

{log (a -1)}/log a について。対数関数は、真数の積を和で表せるという特徴がある。そこでこの分数について定数を”絞り出す”ことで極限値を得られる。2003年度第5問でもこの手法を用いる。

対数関数が多く出てきているので対数の極限公式を用いるという発想も自然だろう。

答えが1になりそうなのは直感的に分かる。解けなくても部分点を得る為に予想した極限値を書いておこう。

第2問

「直線上の格子点は等間隔に並ぶ」「x,y が互いに素な整数であるとき、原点と(x, y)を結ぶ線分上には格子点はO, Pしかない」という事実は証明が必要。鉄緑会の問題集を参照。

どこまで詳しく論証すればよいか悩むところだが、手を付けないよりは大雑把に証明を完了した方が良い。

第3問

a, bの関係式を求めると、対称式になっている。更に不等式証明問題であることから、相加相乗平均を意識して対称性を崩さない様に処理していこう。

円に外接する三角形の面積は、3辺の長さと内接円半径から求められるのは有名だが、この定理は円に全ての辺が外接する多角形に一般化できる。更に、球に外接する多面体にまで一般化できる。体積 = (多面体の表面積)×(内接球半径) /3 となる。

この四面体に直角が多く含まれるのがrを求めるヒントだ。

相加相乗平均を用いることを書く事で部分点が得られるかも。

第4問

これは当時としては言うまでもなく、現代に於いても風変わりな問題。体積を求める問題で座標軸平行な断面を”スキャン”するのはよくあるが、本問は角度θでスキャンしていく。

展開図を作るためにx = f(θ)の式を作る。

解法が分かったとしても、斬新な問題であるだけに先の見えない処理を続けねばならない。しかし解き進めていくと案外楽だ。

Bの概形を調べるとz = ±1で重解を持つのでAを2分すると分かる。これを書けば部分点が得られるかも。

第5問

微分方程式の問題。時間と速度の情報が与えられているので、曲線の長さを求める。初期値に注意。

第6問

じゃんけんグリコを題材にしたゲーム理論を背景とする問題。

(1)

A, Bの出し手を表を作って纏めるのが、記述の負担が少なくて分かりやすい。

(2)

変数が多くて途方に暮れるが、必要条件で絞ると上手くいく。

そもそも、Aの如何なる戦略(手の出し方の比)に対してもE > 0になるBの出し方があるというのは有り得ない、と直感的に分かるだろう。つまり高々E = 0にしかなり得ないのだ。とすると、Eの式をa, b, cの各項で纏めて、それらの係数が0になるようにすればよい。

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