1990
後期日程が初めて施行されたのがこの年度だが、どちらの問題も欠陥がある。
解答例
第1問
まず、「負数の四捨五入」の定義で迷うが、コンセンサスと言えるものはないので欠陥のある問題という事になる。
四捨五入はガウス記号(床関数)の振舞いとは異なるが、ガウス記号と同じように不等式を使って論証できる。それ以外の方法としてグラフを使った論証も可能。
第2問
チェビシェフ多項式がテーマの超難問。類題の経験が無いと歯が立たない。
(1)から論証が大変だ。Pk(x)とQk(x)はそれぞれ、nが増えるごとに符号が入れ替わる。それを示す事でPk+1(x)にはk次、Qk+1(x)にはk+1次の項があると示せるのだが、二つの数学的帰納法を並行して論証するので複雑なのだ。
(2)は問題文に欠陥があり、「Pn(x)は(1)の与式を満たす」という説明が必要だった。その説明があったとしても、「与式の解はx = sin2(kπ/2n)である」という事に着目して(1)の式を利用する必要があるので難しい。
(3)次は「与式= “(2)の与式の展開式におけるxの係数” ×(-1)」である事を見抜く。更に「チェビシェフ多項式がテーマなら漸化式を作ってみる」という知識が必要。
1991
解答例
第2問
答えがπ /6になるのは予想できる。どこを詳しく論証してやれば良いのか迷う問題だ。
東工大だし出題者は微分を使って論証させたいのだろうが、微分を使わなくても説得力のある論証はできる。微分を使わなかった場合にどの程度の得点になるか分からないので、使うのが望ましい。
微分を用いるならば、Pを動かしたときのθの変化を調べたいので、x軸とOPとの角度αを設定して、内積の定義を用いてcos θの関数を作る。
1992
解答例
第2問
Mathematics Monsterでは行列を用いて説明されているが、複素数平面で複素数列の問題としても解ける。
1993
解答例
第1問
空間上斜軸の回転体の体積を求める。問題内容はシンプルだが、方針建てを全てやり、空間認識も必要なので難しい。
立方体をxyz座標系に置き、回転軸を新たな座標軸wとして考え、w軸上の点P(t, t, t)を設定する。このときw = √3・tである。
回転体の半径がwによって刻々と変わるので、”w軸に垂直な平面αと立方体の辺の交点Q”を設定し、PQの関数を求める。αの方程式は、w軸がベクトル(1, 1, 1)で表せてαが(t, t, t)を通るから、1・(x -t) +1・(y -t) +1・(z -t) = 0となる。
半径を求めたら積分するが、半径がxyz座標系で記述されているのに対して回転軸はw軸なのでスケールが異なる。よってw = √3・t で置換積分する。
1994
解答例
第1問
関数方程式の問題。
f(x)が連続という事はF(x)が常に微分可能である事を示しているが、F(x)は絶対値を含む項を持つので、aやbが取り得る値が限定される。
絶対値と来たら場合分けだ。F(x)は絶対値を含む事からx≧bとx≦bで別の関数が得られる。f(x)が連続なのだからF'(b)はどちらも同じ値になる必要がある。
後は(ii)と(iii)を使って定数を確定させる。(ii)はx = 1における情報だから、x≧0の場合の関数にしか代入できないので注意。
第2問
数学的帰納法で示せるが、一筋縄ではいかない様になっている。その解法はMathematics Monsterで紹介されている。nが小さい場合で実験してみると、(2 -√3)n = √(an2) -√(3bn2) となることに気付く。そこで全てのnについて an2 -3bn2 = 1を満たす an, bnが存在する事を示す。
別の解法として、式の形から共役無理数の積を思い付ければ筋が良い。Math Station のように二項定理を使う事で (2 -√3)n = √(an2) -√(3bn2) が示せるが、ここまで辿り着くのも大変なので数学的帰納法が楽だ。
1995
解答例
第1問
空間認識が必要なので題意が把握しにくいが、理解すれば簡単。
第2問
準円とパップスギュルダン定理を既知とする事で、この大問は全ての小問を合わせて3分で答えを出す事が可能だが、それでは方程式や微積の扱い方を測れないので、半分以下の点数になるだろう。
(1)
楕円の準円の方程式を求める。これにはお決まりの解法があり、接線の傾きをmとして楕円と連立してmの二次方程式を作り、二つの解の積が-1となる事と”解と係数の関係”を利用してエレガントに解く。
前期1990、2002年度でも登場している。Pの軌跡が準円となることを既知とすれば瞬殺できる。
(2)
前期2011年度が類題。
[円の回転体] -[楕円の回転体]として体積を求めるが、「∫π(2a +x)2dy -∫π(2a -x)2dy 」という風に回転体の空洞部を除く。その後は積分関数が円や楕円の面積に等しい事を示せば積分計算する必要がない…これはパップスギュルダン定理と実質的に同じことをしているが確実に得点する為のテクニックだ。