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高校理科 東京大学 物理・化学 2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

どの大問も穴埋め問題は易しいので全問正解すべき。

第1問

大学で学ぶ「極座標での運動」を考察する。最も易しい大問なので7割を目指そう。

[II]

(1)r2 = x2 +y2に気づかないと解けない数学的問題。K = m(vx2 +vy2 )/2だけでも書いておこう。

(2)計算するまでもなく、[I](3)や[III]で円運動を扱っているのだから、流れを読めば明らかに円運動が正解で、面積速度は一定なので等速円運動だと分かる。力学的エネルギーの値を求めるには前問を利用してKrを導入する。

[III]

ここまでの問題が解けなくても解ける。

第2問

微積を使わせたいけど叶わないということで、微小の概念を導入している。普通に微積を用いて計算できる様になっておこう。

[I]

(3)(2)で微小量の関係式を求めたことに着目する。(2)で用いた微小量⊿s,⊿t,⊿Vのうち、総和が判明している量はs = V0 /Bd, V = V0であるから、これらのうち一つと⊿q との関係式を作れば積分できる。

(4)問題文が示唆しているので、躊躇いなくコンデンサーの静電エネルギーの公式を適用しよう。⊿q = I⊿t, ⊿V = (IB2d2)⊿t/mより、XY間に於ける電荷と電位の増加は時間に比例すると分かるが、これはまさにコンデンサーの充電と同じなのだ。

(5)(4)が解けなくても、XY間がコンデンサーと同じ振る舞いをするという話題なので一瞬で解ける。

[II]

スイッチを切ると、起電力が生じるが電流は流れないという状態になる。

第3問

[III]

(1)この大問に於いて、装置がヒートポンプであることが明かされる。熱効率は常に1未満であることを考えると、ウはあり得ない。

(3)Wは気体がされた仕事の”総和”だから、全操作を俯瞰して収支を確認しよう。

化学

第1問

[I]

糖類と別の有機化合物がそれぞれ持つOH基が脱水縮合した結合をグリコシド結合というが、高校では糖類同士の結合として学ぶ。更に、酵素が二糖類を加水分解する条件も高校課程範囲内と言えるか際どい。何れにせよ難問となっている。

(イ, エ)高校化学の範囲では、「スクロース以外の糖類は全て還元性を持つ」「全ての二糖類には、グルコースが構成要素として必ず含まれる」と覚えておいて良い。

[II]

(ク)繰り返し単位を単量体とするので、Jとエチレングリコールが一つずつ縮合したものを単量体とする。

(サ)Gのヨードホルム反応によりKが生じることを裏付ける事はできない。東大が出題するから「難問」と呼ばれるのだろうが実際は単なる悪問だ。

第2問

(ア)(1)価電子数とは、最外殻電子の内で反応に関与しうる電子の数。 (5)電気的引力が分子間力に大きく寄与している。

(ウ)混合気体の問題なので「モル比 = 分圧比 = 体積比」を利用する。d /M = P /RT (分子量: M, 密度: d)だからdとMは比例する。

(エ)Feはイオン化傾向がCuと比べて大きく、水蒸気とも反応する。

[II]

(キ,ク)共有結合は、価標の本数が最大になるように結合する。要するに電子を共有したがる。

第3問

[I]

(イ)共通テストのように誘導が下手で何を書けば良いか分からない穴埋め形式だが、a, b, e, fは誘導を無視しても解答できる。[H+] = √K1K2を導出させるという出題意図なのだが、丸暗記している人が有利だ。

(ウ)トロナ鉱石の質量が4.52gと中途半端なのは計算が楽になるように配慮してある兆候だから、計算問題だからといって捨てるのは勿体ない。

(オ)炭酸は弱酸で二段階電離するという2つの性質により、単独で緩衝作用を持つ。

[II]

(キ)与えられた計算式を使うと面倒になるという謎の引っ掛け問題。

(ク)反応熱の問題は、熱化学方程式をそれぞれ作って組み合わせるだけなので解いておこう。

高校理科 東京大学 物理・化学 2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

第1問

[I]

(3)x軸方向に移動しないことから、Qは二体の重心と見做せる。

(4)単振り子となっているので、公式を適用すれば良い。

[II]

慣性力への理解を問う中問。慣性力を考察する問題では、観測の基準を適宜切り替えることを心掛けよう。

(1)台を基準にすると、小球は最下点で静止しているが、台に力を掛け始めた後は振り子には慣性力が働くので、小球は速度を持つ。よって振り子は単振動する。単振動することに気づかなかった人は多いだろう。単振動を考慮せず立式しても部分点は得られるだろう。

(2)「仕事 = 力×距離」ではあるが、力は時間の関数となっていて算出できないので、力学的エネルギーから求める。加速度は定数aなので速度をat0と求められる。(1)で間違っていても部分点は得られるだろう。

(3)butsurikyousiの動画解説が分かりやすい。 台から見ると、小球が単振動中心にある際は加速度を持たないので二体は一体化していると見做せるので、F = (M +m)aとなる。最大値が(M +2m)aになるとは限らないので紛らわしいグラフではある。

(4)[I](3),(4)と比べると、問題内容は「二体が等速直線運動をしている」という違いしかない。東大物理の問題なので、「前の中問と問題文が似ている」というだけでT2 = T1と判断してよい。

第2問

計算量が非常に多い。

[I]

問題文で「重力の影響は無視できる」と述べつつ、わざわざ金属板を「上下」と表現しているのは不適切だ。ただでさえ制限時間が厳しい東大理科でこのような混乱を齎す表現をしている過失は大きい。

(1)極板間引力はF = QE/2

(3)運動方程式を建てるが、極板にかかる重力は無視するので注意。

[II]

(2)全電気容量q/Vは、直列コンデンサーの合成容量とは異なる。「全コンデンサーの電位差の和 = V」を立式する。

(3)(2)で用いたVの式においてV = 0とする。式が再利用できないか常に注意しよう。

(4)(1)で建てた運動方程式を再利用する。中問を解く前に問題文全体を先に読んでおくと見通しが良くなる。

第3問

[II]

この装置は、各容器の底面にかかる圧力が常に等しくなるのが特徴。よって、問題を解く際は各容器の圧力を等式で表していくのが基本方針になる。どんな物理の問題であれ、装置の性質を理解して数式で表す感覚が大事なのだ。

(1)容器A, Cの底にかかる圧力は常に等しいので、液面の上昇量も等しい。勘で書いても当たる。

(2)(1)を利用する為に、別の容器との液面に於ける圧力の比較から立式する。

(4)容器が全て外気と接していれば、液面は全て等位になろうとするのは直感的に分かる。水位の差が大きいほど、等位になった時の位置エネルギーの変位も大きくなる。

[III]

(1)勘で書いても当たる可能性がある。

化学

第1問

A, B, C, Dを構成するαアミノ酸を特定していく。解く際は、可能性のある側鎖をメモするだけでなく、可能性が排除された側鎖もメモしておこう。

(エ)ジスルフィド結合は、SH(チオール)基同士が酸化によって結合したもの。

(カ)空間認識力を要する数学的問題。

(ク)フェノール類にはオルト・パラ配向性がある。

第2問

(イ)イオン結晶では、陰陽イオン同士は接している。

(ウ)イオン結合の力はイオン中心間距離の2乗に反比例する。

(キ)配位子を6つ持つ錯イオンは正八面体となる。

(ケ)質量の単位がすべてkgで記されているので、計算を楽にするためにkgで処理しよう。

第3問

[I]

(エ)NaOH滴下により、弱塩基NH3が遊離する。

[II]

(ク)圧力を高めると、ルシャトリエの原理により平衡が右に移動する。更に、分子同士が衝突しやすくなるので反応速度が高まる。

高校理科 東京大学 物理・化学 2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

京都大学のような穴埋め形式が出題された。

到底75分で解ける難度と分量ではなく、東工大のように2時間は必要だろう。第3問が易しいのでここで8割程得点しよう。

第1問

[II]

変位xは lθ と表せるが、これをlで割っている。単位が”位置”から”角度”に変わっても単振動という本質を把握できるかを試されている。

(1)図1-3のベクトル「-ma」は誤りで正しくは「ma」だ。出題ミスなので符号が誤っていても正解。

(2アイ)t = 0, T/2を代入してグラフと照合すれば良い。

(2iii)「速度の変化」という表現がヒントだが誘導が分かりにくい。グラフを元に勘で書いても当たりそう。

第2問

[I]

Rについては、どんな場合に抵抗値が大きくなるかを考えれば良い。

[II]

(2)早くも難問の登場。電荷の流れの追跡は困難なので「全体の比」に着目しよう。コンデンサーが回路にどう繋がっていようが抵抗の消費電力の比は一定なので、各抵抗のエネルギーの取り分を考えよう。コンデンサーに蓄えられたエネルギーが解放される際に、各素子の電圧が全て等しいということは自明ではないが、そういうことになっている。

(3)素子の構成単位同士は直列しているので、1構成単位に流れる電流を調べれば良い。交流の場合、コンデンサーの電流は位相がπ/2先行し、I = ωCV1 cos ωtとなる。

[III]

(イウ)(ア)が誘導問題なので区間LMを分析することになるが、R2やC0にかかる電圧が不明なので、未知数を設定する。

(キク)2つの電流の式は等しい。ここにt = 0, π /2を代入すればR, Cが得られる。

第3問

[I]

(1)「sin θ1 /sin θ2 = n1 /n2」となるように屈折率の定義を変えて欲しいね。

[II]

(2)「nfとn1,n2の大小関係」とあるので、n1とn2の大小関係を示す必要はない。

(3)[I]での考察結果をここで適用するという筋書きだ。球面については計算せずとも定性的考察によって分かる。半径は勘で書いても当たる。

化学

第1問

些末な知識が必要な大問。

(実験1,2)フェノールにはオルト、パラ配向性がある。この知識の有無で大問全体の点数が大きく左右される。2018年度第一問(カ)でも問われた知識。

(実験3)アニリンの製法として、ニトロベンゼンをSnとHClで還元し、強塩基によりアニリンを弱塩基として遊離する方法がよく知られている。一方で鉄と酸性溶液でニトロ基を還元する方法をBechamp還元といい、ここでは強塩基としてNaHCO3を用いている。鉄は塩化鉄に酸化される。

(実験4,5)酸触媒を用いることでエステル結合を促進できる(フィッシャーのエステル化反応)。酢酸より無水酢酸の方が結合の収率が高い。

(エ)幾何異性体が生じるのは回転の障害となる配置があるからで、二重結合があるとは限らない。

(キ,ケ)フェノールはホルムアルデヒドの付加においてもオルト、パラ配向性がある。 Iはレゾールではなくノボラックなので出題ミス。

第2問

(ア)東大入試でよくある不明瞭な問題文。その意図は、反応式を足し合わせると与式になるということだ。

(キ)カリウムが使えない因子として温度が絡んでくる。

第3問

[I]

(オ)滴下量が大きいほど目盛りの誤差範囲は相対的に小さくなる。ヨウ素はそもそも滴下していない。

高校数学 東京大学1997 (平成9)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B, D, C, C, C, B

2, 3, 4は発想力を要する難問。全体的に計算量も多く、かなりハードだ。出来が運に依存する要素が大きく、東大の入試問題としては質が低い。

解答例

第1問

点CがDに含まれていればいいので、Cの座標を求める。正三角形の角度と長さの性質に着目して複素数平面を用いると楽だ。

第2問

本年度の最難問。整数問題というよりは「二次関数の解の配置問題」。

方針に依って難易度が大きく変わる。変数aが含まれているので分離するのが筋が良い。

mが整数であるのでややこしく感じられるのだが、mを実数扱いして十分条件のみ示せば部分点を得られる。

第3問

(1)r2をxの関数として微分する方法があるが、この方法だと(2)を解くのが困難になる(ちょぴん先生の解法を参照)。(2)を見据えると、(1 -r)の現れる形に変形するのが筋が良い。解く前に大問全体の方向性を確認しよう。

第4問

光の反射という状況設定で、物理学的な解法を用いると格子点に関する整数問題に帰着する。この手法を知らなければかなりの発想力を要する超難問だ。数学の問題として出題するのは不適切だろう。 せめてヒントを示すべきだった。

正三角形がタイルとして敷き詰めれる図形であり且つ、タイル同士が線対称性を持つからこそ成り立つ問題だ。同じ性質を持つ正方形や正六角形で考察してみるのも面白いだろう。

第5問

求積問題。

変数はいずれも2乗の形になっているので、領域はx, y軸のそれぞれに対称だと分かる。そこでY≦X(1 -X) -aと置き換えて第一象限のみで考察すると楽だ。

本年度の中では易しい方なので完答すべき大問。

第6問

(1)a = 0のときに共通接線は3本にならないのでa≠0の条件も必要。

(2)「1/12公式」を憶えていれば圧倒的に速く答えを出せる。

高校数学 東京大学1996 (平成8)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B, C, D, C, B, C

解答例

第2問

文字がたくさん登場しているので難しそうだが、こういうのは「意外と簡単に解けるものだ」と心得て、躊躇いなく式変形を進めていくのがコツだ。

まず問題の意味を整理しよう。P「題意の正数s, tが存在する」⇒Q「題意の範囲に2実数解が存在する」を示す。

2次方程式にはs, tが含まれていないので、与えられた不等式に含まれるs, tを消去していこう。

第3問

十分な空間認識能力がある人にとっては最も易しい大問だが、無い人にとっては難問になる。

空間図形の問題なので、解答に於いて図を用いた論証は困難だから、簡素な説明でも減点はないだろう。

(1)

答えは直感的に分かるのでどう論証するかが焦点になる。最も楽だと思われる証明を以下に記す。

xyz空間に、立方体を各辺が座標軸に平行になるように置く。対称性に注目すると、立方体の1頂点がSのx≧0, y≧0, z≧0の部分の全ての点から見えれば十分。(0, 0, r)から頂点が見えるにはl≧2rが必要であり、この時に十分条件も満たしているので証明完了。

第4問

期待値や確率変数を扱う数列・極限の問題。題意の把握が難しい。

(1)「anの期待値」とは、an が取りうる値は1~6なのでそれらに確率の重みを付けて足したものだ。

(2)確率変数や「期待値の和」について理解しておく必要がある。

第6問

(1)図形的に考察して、Dの円周とCが接する又は共有点を持たない場合を考えるのが分かりやすいが、曲線同士が共有点を持つ条件は見た目以上に複雑だ。

高校理科 東京大学 物理・化学 2016 (平成28)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

第1問は比較的易しい。全体的に式変形に技巧を要する印象がある。

第1問

[II]

(3)前問を手がかりにするとイとエに絞り込める。また、t = 0の前後で運動量は保存されてるのでイだと分かる。このグラフの傾きは加速度を表しており、これがt = 0で変化したのは重力が加わったからだ。エの様になるには撃力を与える必要がある。

[III]

(3)⊿lを無視するという設定のせいで分かりにくいが、要するに小球2が浮き上がる際にゴムは自然長であると見做すということだ。この時、小球1は上向きに速度を持つのでゴムが伸びる。その後自然長に戻るまでの時間は単振動の半周期に当たる。換算質量を知っていれば速く解ける。

第2問

[I]

RLC回路を覚えていなければ(1)から分からない問題で、解けるとしても計算量が非常に多いので捨てるのもアリだ。

(1)交流回路でも、直列であれば電源、抵抗、コイル、コンデンサーには全て同じ電流が流れる。そして抵抗、コイル、コンデンサーの電圧の和はVなのでこれを立式する。物理の問題でtangentの値を問われたら、三角関数の合成を使う場合が多い。

第3問

[I]

(4)条件式は正確にはxに絶対値を付ける必要があるが、以降の問題ではx > 0で考察しているので付けなくても減点は無いだろう。

(5)領域A, Bにおける波長と、領域Bがy < 0で定義されることから導く。sin θは屈折の法則「sin θ1 /sin θ2 = v1 /v2」を適用する。

化学

第1問

(ウ)解答に5分以上かかる捨て問。問題に登場する単位はgだけなので文字の単位もgにしよう。molにすると係数が大きくなり煩雑計算になる。

(カ,キ)混合気体の問題では「モル比 = 分圧比」を意識しよう。

第2問

(エ)過マンガン酸カリウムは塩基性条件下で還元するとMnO2の黒色沈殿を生じる。

(ク)「陽イオン性」とは「陽イオンとしての性質の強さ」ではなく「正電荷への傾き具合」を意味する。

(ケ)ファンデルワールス半径に関する難問。

第3問

[I]

構造決定を含む問題だが、実験過程を考察する必要があり面倒。

(イ)エステル結合やエーテル結合も官能基の一種だとは誰も知らなかっただろう。悪問。

[II]

問題文が長大だが解答に相当する部分が順に並んでおらず面倒なので、問題文に登場する問題箇所の順に解いていくのが良い。

高校数学 東京大学1985 (昭和60)年度 理系前期入試問題の解説

第5問が面白い。

「大学への数学」における各大問の難易度: B, B, C, C, C, C

解答例

第3問

空間認識能力を要する東大らしい求積問題だが、易しい。

問題文を読んだだけでは四面体の概形を想像することは難しいので、Q, Rの座標を求めてみよう。PとQはx軸を含む平面について対称だから、x軸に垂直な平面上で考える。RはQの座標のxとyを入れ替えるだけ。

すると四面体は平面x = yに対称だと分かるから、この平面で切断して合同な三角錐に分けて体積を求める。

第5問

これは期待値に関する発想力を要する難問だが、非常に面白い問題。

抽象的で取っつきにくいが、pnは何とか解きたいところ。一見すると如何にも難しそうだが、実験してみると案外単純だと分かる。確率や数列の問題は実験が大事なのだ。解法が分からなくても、数列の問題だから「数学的帰納法で示す」くらいは書いておこう。

p0を求める方法には意表を突かれる。更に期待値が1になるのも面白い。

第6問

意外と発想力が必要となる求積の難問。

(1)(2)で積分する為の誘導だから、z = 0の場合だけでなくz = tで一般化して立式しよう。空洞部分の面積を求めるのが難しく、分かったとしても計算が非常に煩雑になるので、この面積の部分だけSとでもおいて答えを書いておいても4点くらいは貰えるだろう。

(2)断面積の関数が求められなくても、これをS(t)とおいて体積を求める式を書けば2点は貰えるだろう。

高校理科 東京大学 物理・化学 2017 (平成29)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

第2問と第3問の最後の問題の答えが、それぞれ「β’ = β」「Q1 = Q2」 となっているのは、東大物理入試問題の講義的な性質を表している。

第1問

[I]

(1)単振動の中心は、物体にかかる力が0になる位置である。

(2)単振動では運動方程式を建てるのが基本。単振動はsinやcosを2階微分をすると元の関数が現れるという数学上の性質を持ち、位置と加速度が1次関数の関係を持つ。

[II]

(1)積木1を引っ張る紐の張力はMg sin θにはならないので、積木1のみで運動方程式を建てることは出来ない。この問題では紐は弛まないので、積木1, 2は一体と見做すことが出来る(質量2M)。

[III]

(2)(1)とは積木の組み方を変えることで受験者を混乱させる事を狙った、何とも憎らしい引っ掛け問題だ。引っ張られている積木と床との静止摩擦力の大きさがどうであれ、静止している以上は他の積木には影響しない。また、これに乗っている積木は上下の静止摩擦力を比較することで、常に下の積木と共に動くと分かる。

第2問

[I]

(3)(2)をヒントとして、単位時間あたりジュール熱(消費電力)を考える。

[III]

(1)半径r, 中心角θの扇形の円弧の長さはrθなので、速度はr・dθ/dt で表せる。θ = 0と近似して良い。

(2)問題文が不明瞭だが、誘導起電力と電源電圧の大きさが等しいということ。

(3)II(3)が誘導問題だと気付けば β’ = β に収束するのだと分かる。大問全体の流れを確認するのは大事だ。

化学

第1問

(エ)幾何異性体や環状構造にも注意。

第2問

[I]

(ア)(1)ハロゲン化銀は感光性を持つ。(2)還元性を持つカルボン酸と言えばギ酸。

(イ)金属元素の正体を突き止めるには、操作zの結果で沈殿する金属を探せば良い。

(ウ)(a)硫化物は液性により沈殿するかどうかが変わるという性質を利用するため、一旦煮沸してH2Sを抜いて液性を変えて再度投入する。(b)H2Sは還元作用を持つのでFe3+をFe2+にするが、Fe2+は比較的沈殿しにくいので希硝酸でFe3+に酸化する。

(オ)式変形していくと、水素イオン濃度を下げるには[S2- ]を最大限高めれば良いと分かる。そこで、ZnSの沈殿が生じるギリギリの[S2- ]を投入したいのでKsp(ZnS)から[S2- ]の値を得る。

[II]

(ケ)濃硫酸は不揮発性だが、硝酸と塩酸は揮発性。

第3問

[I]

(エ)当然ながら、1回目の実験の数値は除外して平均値を得る。

高校数学 東京大学1987 (昭和62)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B,C,B,B,C,C

解答例

第2問

(i)存在範囲の図示

単に「図示せよ」ではなく「概形を図示せよ」と指示されているのがポイント。これはa, bの関数のままで図示するのが困難なことを示唆しており、tの媒介変数表示で概形を示せば良い。

(ii)接点以外に共有点を持たない時の値

実は(i)が解けなくても簡単に解ける問題だ。

Cとy = 1/x を連立して三次方程式を作ると、「重解以外の解を持たない」という条件が必要になるので三重解を持つと分かる。そこで(x -1)3 = 0 と係数比較する。

第3問

A(X,0, 0), B(0, Y, 0), C(0, 0, Z)とし、「Kは球」と「KとLは接する」という情報を数式化する。△ABCの面積を求めるので、X, Y, Zをa, b, cで表す。

△ABCの面積を求めるには四平方の定理を使うと楽。

第4問

線分上の点は内分点として計算すると楽。

第5問

数学的帰納法を用いることは容易に分かるので、n = 2の場合のみでも証明しておこう。

高校数学 東京大学2019 (平成31・令和元)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B,B,C,C,C,C

大問が易しい順に並んでいる。

解答例

分析

第3問

東進等は難問扱いしているが、空間図形に慣れていれば難しくない。点差がつき易く、合否を分ける問題だ。

(1, 2)

(1)八面体と平面αがどれかを明示しておかないのは減点対象。pの値によって場合分けして図示する必要があるようだが、それならば問題文に明記すべきだ。

(2)△PBC, △PDCの内部をαが通る時に八角形となる。

これらの小問は、(3)を解かせる為の準備に過ぎないので、詳しい記述は必要ないだろう。その代わり、(1)ではpの値で場合分けするといった「忖度」が必要だ。大問が小問に分かれている場合は、(1)だけ読んで解き始めるのではなく、全ての小問を読んで流れを把握するのを習慣づけよう。

(3)

求めるのはpを動かした時の通過領域の面積ではない。ここではpは定数扱いされている。

「座標平面」という表現で困惑するが、要するにyz平面上に切り口の部分を正射影するという意味だ。八面体の辺PB, PCと平面αの交点の座標を求めることになるが、正射影するにはそれらのx座標の情報を無視するだけで良い。

第4問

(1)実験すれば偶奇で分けて調べる方針が建つ。

(2)整数は累乗することで剰余の種類が減るという性質を利用する。

第5問

有理関数と三角関数を含む方程式を扱うが、当然ながら解を得ることは出来ない。こういう場合は図形的な大小関係の考察が重要になる。

(1)

証明問題なので、グラフを描いて示すだけでは不十分。単調性とグラフの位置関係を説明しよう。

(3)

aは何はともあれ、グラフを考察しよう。

cは、極限を取ると(p -p)/(q -q)となる不定形なので微分係数の定義式を使う。a, bが解けなければ「微分係数の定義式を使う」と記述しておこう。

第6問

面倒臭すぎる複素数平面。

(1)

条件2を元に、実数係数の方程式は共役複素数解を持つという性質を利用する。そして条件3を元に、解のパターンを絞り込む。

(3)

図示をするので、x + yiの形を作る為に、αとβの解を求める。