中小企業診断士 令和四(2022)年度第二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ), 口述の解説

事例Ⅰ

第1問

「株式会社化する以前」という条件が付されているのが不思議だが、与件文に「有機野菜事業の譲渡のタイミングで株式会社化した」と書かれているので恐らく有機野菜事業に着手する前の段階を分析させることで第3問と切り離したかったのだろう。

強み
「経験豊富な従業員」との連携による「多品種の生産」(第3段落)
「人と環境に優しい農業」=「最終消費者の求める野菜を生産」=「有機JASとJGAPを取得」(第4段落)
洋菓子の人気(第5段落)
弱み
不明確な役割分担(第6段落)
需給調整の困難(第6段落)
採用難(第7段落)
低い従業員定着率(第7段落)

「需給調整の困難」という弱みは農業一般に言えることなので、重要度は低い。

第2問

「獲得し定着させる」と指示されているので、獲得と定着は分けて書くのが望ましい。

事業への理解度を向上し獲得
就労体験や従業員へのOJT
従業員・農業関係者との交流促進
勤労意欲を向上し定着させる
残業や時間外労働に割高報酬
年功賃金導入
シフト勤務導入
従業員の職務充実

就労体験とインターンシップはほぼ同義なので、併記する必要はないだろう。

第3問

当業者からの信頼維持
要求水準を満たす
当業者への依存度を下げ経営リスク低減
直営店や食品加工業務の強化して他業務の売上増
他の取引先との取引拡大

「それに加え、主要な取引先からは、安定した品質と出荷が求められていた」という不自然に付け加えられた文は注目点。

「大手中食業者への依存度を下げる」だけでなく、それが経営リスク低減をもたらすという効果にも言及すると良い。

第4問

設問1
各業務の専門化と役割明確化
機能別組織へ移行
機能別組織のデメリットのカバー
業務間の情報共有に留意

再現答案を参考にすると、機能別組織・事業部制組織のどちらを答えても良さそうだ。

設問2
権限委譲
段階的委譲
後継者に他業務の管理も経験させて経営者としての全社的視点の強化
人員配置
管理業務に適性のある若手従業員の管理職への登用
役割を明確にし適材適所

口述試験

  • 今後A社が伸ばすべき事業展開の方向性
  • 事業承継にあたり、後継者が農業経験がないことによる留意点
  • 代表や常務から後継者への承継をどのように進めるべきか
  • A社では新規事業の展開を考えているが、今後どのような組織体制をとるべきか
  • 農業と直営店の発展に向けて必要な方策
  • A社は、直営店も営んでいる中で、取引している大手中食会社とは、どういう関係構築をしていくべきか

事例Ⅱ

第1問

字数制限は150字なので、3つのCについてそれぞれ40字程度を目安に書こう。

与件文には多くの情報があり全てを記載することはできない。こういう場合は、続く設問と関連する内容を選ぶのが望ましい。そのため、回答を後回しにするのも有効だ。

Customer
主に宿泊施設や飲食店だったが、コロナ禍で急減(第11段落)
コロナ禍で直営店の消費者が急増(第11段落)
Competiter
直営店周辺のスーパー(第4段落)
スーパーに納入する大手食肉卸売業者(第5段落)
ネットショップ上の同業者(第11段落)
Company
「自社工場を保有」=「顧客要望に対応可能」(第8段落)
取引先へのコンサル業務(第9段落)
卸売事業への高依存(第13段落)
備考
  • Customer: 「ホテル・旅館」を「宿泊施設」と言い換えることで字数を節約している。
  • Customer: 与件文の「卸売事業が9割、直営小売事業が1割」という情報はコロナ禍前なので、そのまま記述するのは不適切。
  • Customer: 予備校の多くは「周辺住民や現役世代の家族」を挙げているが、与件文中にこれらが顧客であるという根拠は書かれていないので不適切。顧客が遠方から来ている可能性もある。KECとMMCの回答は妥当。
  • Competiter: 直営店周辺のスーパーは、直販事業に対する競合となる。スーパーに納入する大手食肉卸売業者は、卸売事業に対する競合となる。
  • Company: 3C分析はマーケティング環境を分析するためのものであることを考慮すると、「取引先へのコンサル業務」は重要。

第2問

「商品コンセプトと販路」と指示されているので、商品コンセプトと販路を明確に分けて記述するのが望ましい。

与件文の「山の幸、海の幸の特産品にも恵まれ、大規模な集客施設もあれば、四季それぞれに見どころのある観光エリアもある」という記述から提携先を絞り込もう。設問に「第一次産業を再活性化」とあるので第一次産業と提携するのが自然だが、B社の製造加工技術は食肉に特化していると思われるので、山の幸や海の幸に応用できるかは現実問題としては怪しい。X県は地元産業の振興を期待しているので、地域商標の活用も有力だ。

第3問

「顧客ターゲットと品揃え」と指示されているので、顧客ターゲットと品揃えを明確に分けて記述するのが望ましい。

アフターコロナでは消費意欲旺盛な訪日外国人などの旅行客の需要が見込める。そこで彼らにB社が得意とする高級加工品を提供するのが良いだろう。また、コロナ禍中に増えた客層を維持する努力も必要なので、調味料やレシピ提供といった品揃えの拡充も望ましい。

第4問

「どのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また、この際、協業が長期的に成功するためにB社はどのような提案を行うべきか」と指示されているので、協業対象と長期的成功の為の提案を明確に分けて記述するのが望ましい。

協業の提案としてはクライアントが中小企業であることを考慮して、コストとリスクが小さいものを選ぼう。そうなると、ミールキットのような事業に絞られてくる。

長期的成功のための提案が難しいところ。B社が長期的成功を収めるには「食品や加工技術を活かしたブランド価値の向上・浸透」や「市場独占のための仕組みづくり」が挙げられる。

口述試験

  • 直営店の混雑解消の方策
  • B社がふるさと納税による販売を始めるとしたら、どのような返礼品を始めるべきか
  • B社自社工場と高度な技術職人を用いて顧客にどのように訴求するか
  • 提携すべきでない一次産業はなにか
  • 百貨店からテナント出店の声がかかっている。品揃えをどうするか

事例Ⅲ

第1問

問われている「課題」とは「今後乗り越えるべき問題」という意味で、SWOT分析における「弱み」とは異なるので注意。ただし「弱み」をベースとして「課題」を考案するのは良い方法だ。

課題は解答欄に書ききれないほど多くあるので、続く設問を先に解くことで重要な課題を絞り込むのが効率的だろう。

販売面
売上回復や販売先開拓(第3段落)
生産面
設計業務の統制(第7段落)
人材育成(第8段落)
小ロット受注への対応(第11段落)
情報共有の効率化(第12段落)
納期短縮(第17段落)

第2問

「課題とその対応策」を指示されているので、課題と対応策を明確に分けて記述するのが望ましい。

設計業務の合理化
量産受注(プレス加工)と個別受注(板金加工)の担当者を分けるか、優先順位をつける(第7段落)
設計期間短縮
3D CADを導入し、取引先とより正確な情報を共有(第7段落)
プレス加工の効率化
若手育成で役割分担(第8段落)
外段取化や段取作業者増員(第10段落)

第3問

第2問では短納期化を求められていたので、本設問では小ロット化に限定して記述できるのが望ましい。

総合的な生産効率向上
全工程における生産計画を立案
小ロット化に伴う在庫費用と発注頻度の増加への対応
生産計画を週一で改定
小ロット化に伴う段取作業増への対応
外段取化、段取作業の増員と標準化

第4問

「C社で優先すべきデジタル化の内容と、そのための社内活動」と指示されているので、デジタル化の内容と社内活動を明確に分けて記述するのが望ましい。予備校の多くは「デジタル化の内容」を「デジタル化の対象」と誤解しており、正しく読解できていたのはKECとAASだった。

社内活動については、令和3年度一次試験の「経営情報システム」第16問が参考になる。

デジタル化の内容
社内連絡ソフトを導入し即時共有
情報のDB化
社内活動
トップダウンで改革推進し確実な成果を得る
各課の要望を尊重する
研修を実施しデジタル化をスムーズに進める
混乱を防ぐ為段階的導入
デジタル化を支援する補助金の活用

第5問

社長の意向として与件文に「当該事業の市場成長性と自社の強みを考慮」と「今後高価格な製品に拡大することも期待している」とあるので、これを基本方針として立案する。

アウトドア向けという新市場開拓
取引先にコスト減や生産性向上の提案
高級品市場に進出
高度な金型製作技術という強みを活かす
市場撤退が必要な可能性
アフターコロナで海外供給網が復活しうる

口述試験

  • 通過型物流センターと在庫型物流センターでリードタイムが短いのはどちらか
  • ホームセンターx社との取引が開始された場合、在庫型物流センターの利用を予定しているが、これが通過型物流センターに変更になった場合、C社にどんな影響があるか
  • 商談会に出るメリットは何か
  • 短納期化をするメリットは何か
  • プレス加工のメリット
  • C社の競合は生産拠点を東南アジアなどの海外から日本に戻す動きがあるが、そのメリットはなにか
  • コスト低減を進めていく注意点
  • 卸売業2社(業務用什器)の繰返し受注を行う上での注意点
  • 若手技術者への技能の伝承はどのようにしたらよいか

事例Ⅳ

歴史的な高難易度で、20点ほど下駄を履かされたのではないか?第1問と第2問は思考力を要する良問だが、第3問は例年にも増して煩雑で悪問。

第1問

設問1

経営分析は解答方法が定型化しているが、それに挑戦するかのように生産性指標を求めてきた。与件文の取って付けたような従業員数の記述が重要。

課題となる指標として労働生産性が想定されているのは明らか。労働生産性の定義は「付加価値額÷従業員数」である。付加価値額の定義は複数あるが、平成28年度一次試験「中小企業経営・中小企業政策」第29問において「営業利益+人件費+減価償却費」という定義が用いられたので、これを使えば正解になる。労働生産性の単位は「万円」ではなく「万円/人」である。

労働生産性の定義が分からなくても「従業員数一人当たりの営業利益」等を書いておけば部分点を貰えるだろう。

設問2

「その要因について財務指標から読み取れる問題」は、設問1で挙げた財務指標を利用する必要がある。つまり労働生産性について指摘することになる。「問題」についてはD社の課題を述べても良いだろう。

第3問

販売台数が月間で表されているので、計算ミスに注意。

設問1

問題文に「間接費のうち、30%は変動費、70%は固定費の配賦額」とある。固定費は個別固定費ではなく共通固定費配賦額なので埋没費用として扱われる点に注意。

問題文中に「取得原価は1台あたり平均50万円」と書かれているので、正解は50万円前後となるはず。この数値から大きく外れた解は誤りだと分かる。

設問2

設問1では間接費が変動費と固定費で構成されることが明示されていた一方、本問では明示されていないので違和感を覚える。問題文が曖昧な場合、自分に都合の良いように解釈して良い。

「設備投資額と在庫投資の増加額は新規の工場が稼働する2年目期首にまとめて支出される」と書いてあるが、在庫投資については大問問題文に「期首に中古車販売台数1か月分の在庫投資が必要」と書いてあるので、「CFに取得原価を考慮する必要がない」という解釈は誤り。

年間の減価償却費は残存価額を減じた値を使う必要がある。

設問3

次の理由により、予備校によって解答が分かれている。

  • 「5年間の販売期間終了後には増加した在庫分がすべて取り崩される」という説明が意味不明。
  • 「年間150万円のキャッシュフローが継続的に発生する」とあるが、設備には耐用年数がある。

口述試験

  • D社が海外進出する際のリスクは?
  • 中古車販売事業を行う際正規社員を活用するメリットやデメリット
  • 一般的に中小企業が生産性高めるためにはどういったことが必要か
  • D社が新事業展開する事のメリット
  • どのように新事業を行えば成功するか
  • D社の最適なセールスミックス
  • 材料の高騰への対策

中小企業診断士 二次試験 筆記(事例Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ)の高得点(71点以上)の再現答案

中小企業診断士 二次試験における、高得点(71点以上)の再現答案を集めた。

事例Ⅰ事例Ⅱ事例Ⅲ事例Ⅳ
R595?, 91, 88, 87, 85, 83, 75, 74, 73, 72, 84, 81, 77, 76, 76, 76, 76, 73, 73, 73, 72, 71, 7174, 72, 71, 7181, 72, 72, 78, 78, 76, 76, 75, 74, 73, 73, 72, 72, 7179, 79, 78, 76, 76, 76, 76, 76, 74, 74, 73, 72, 72, 71, 72, 72, 72, 72, 71
R494, 90, 85, 81, 80, 79, 77, 75, 74, 74, 73, 73, 71, 71, 71, 7175, 75, 73, 74, 7181, 78, 72, 77, 76, 74, 73, 72, 72, 7193, 91, 86, 85, 85, 72, 84, 83, 81, 79, 79, 78, 78, 77, 77, 77, 76, 75, 74, 72, 71
R395, 87, 79, 76, 75, 91, 84, 81, 80, 78, 76, 75, 75, 73, 73, 72, 7284, 77, 75, 74, 77, 75, 75, 73, 73, 73, 7279, 72, 71, 71, 72, 71, 7190, 79, 79, 78, 75, 73, 73
R285, 83, 77, 75, 74, 73, 73, 72, 71, 7286, 82, 80, 80, 77, 72, 72, 72, 72, 7172, 72, 7187, 85, 81, 79, 73, 71, 78, 76, 76, 74, 71, 71
R196, 83, 76, 74, 82, 78, 76, 75, 74, 74, 74, 74, 72, 7284, 78, 76, 77, 77, 76, 72, 7177, 72, 72, 72, 71, 71, 71, 7185, 83, 82, 79, 76, 75, 78, 78, 77, 76, 75, 74, 73, 73, 73, 72, 71, 71, 71
H3089, 78, 76, 71, 73, 73, 7385, 83, 76, 75, 74, 74, 7273, 73, 73, 72, 71, 71, 7177, 75, 74, 72, 74
H2983, 79,7378, 7883, 81, 8375, 71
H28
H2787, 75, 81, 81, 79, 75718173
H2675, 73, 73, 72, 7182, 73, 7390, 86, 81, 79, 75, 71
H2571
H2478100, 8879, 78, 73
H2381, 75

各年度試験の難易度と出題傾向

一般的に、今後の試験の出題傾向に近い過去問を解くのが望ましいので、新しい過去問を優先した方が良い。

中小企業診断士 一次再試験 令和五(2023)年度 G 中小企業経営・政策の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

試験問題の内容が暗記偏重で、例年と比べて質が極めて低い。中小企業診断協会は、再試験であるため問題作成の吟味ができなかったが、受験者数が少ないため悪影響は少ないと判断したのだろう。

第1問

  • 企業数は、大:中:小 = 1%:15%:84%
  • 従業員数は、 大:中:小 = 3:5:2

第2問

中小企業の従業員数は、製造 > 小売 > 建設

第3問

設問1

自己資本比率は、製造 > 卸売 > 小売 > 宿泊・飲食サービス。自己資本比率は固定資産が多い業界では高く、流動資産が多い業界では低い。

自己資本比率は借入金依存度と逆の指標。

設問2

付加価値率は、価格競争に陥りやすい小売業は低く、そうでない宿泊・飲食サービス業は高い。ただし、宿泊・飲食サービス業は労働集約型なので労働生産性は低い。

第4問

情報通信業の労働生産性は、大企業と中小企業との格差が大きいのが特徴。情報通信業は人材不足なので、高度人材が大企業に集中しているためと思われる。

第5問

設問2

2021年度の商店街来街者数が減った最大の理由は「魅力ある店舗の減少」となっているが、これはアンケートが複数回答形式であることから説明できる。「近郊の大型店の進出」と「地域の人口減少」は「魅力ある店舗の減少」の原因になりうるので、「近郊の大型店の進出」と「地域の人口減少」を選択した回答者は「魅力ある店舗の減少」も選択している可能性が高いのだ。

またこの背景にはECの普及も考えられる。

第6問

このアンケートは複数回答形式であるため、価格で勝負している企業のみが選ぶ「商品の価格競争」が最下位になり、ブランドを重視している企業のみが選ぶ「自社ブランド認知度向上の難しさ」が二位になり、あらゆる企業に当てはまる課題である「販売先に関する情報不足」が一位になる。

第7問

出典

販売先との交渉の機会が設けられていない要因として、「取引関係が長く交渉の機会が不要であるため」が最も多い。これは、複数回答形式であることが最大の要因だろう。

「販売先の意向が強いため」と「交渉の経験が少なく提案することが困難」という選択肢が「交渉を必要としている」という前提に立っている一方、「取引関係が長く交渉の機会が不要であるため」は「そもそも交渉を必ずしも必要としていない」というより広い前提に立っている。

第9問

設問1

フリーランスは企業と短期労働契約をするのが特徴。

情報通信業はプロジェクトベースであるので、フリーランスが多い。

製造業は一般的に、企業に長く従事することでスキルを習熟する性質を持つ。よって製造業はフリーランスと親和性が低い。

設問2

「フリーランスや副業人材の管理・調整」の回答が少ないのは、この選択肢だけ実際に雇ってみないと課題として認識できないからだろう。

第10問

グロース市場への上場要件の一つに「時価総額5億円以上」というものがある。記述bは1億円となっているが、これでは多くの中小企業が含まれてしまうので誤りだと分かる。

第11問

設問1

2020年度と2022年度の試験問題では厚生労働省「雇用保険事業年報」に基づいて「廃業率は、2010年度から低下傾向で推移している」という知識を問うた。

本試験では、東京商工リサーチ「2021年「休廃業・解散企業」動向調査」に基づいて「2014年 から2021年の期間について、休廃業・解散件数の推移を見た場合、 増加傾向にある」という知識を問うている。

休廃業・解散した企業は、実は黒字が多い。後継者が見つからないことが背景にあり、メッセージ性のある出題だ。

設問2

休廃業企業の代表者の年齢は70歳前後で、年々上昇している。

第12問

設問1

大企業と中小企業の比較なので、企業数の圧倒的な差に着目しよう。中小企業は大企業より圧倒的に多いので、商標権の出願件数が強いと分かる。一方で大企業は技術力で中小企業を圧倒しているので特許権の出願件数が強い。

設問2

中小企業の産業財産権の出願件数比率は増加傾向だが、これには大企業の「出願数を絞る」という戦略の変化も大きく影響している。

第13問

設問1

大企業経営者は60代がボリュームゾーンであるのに対して、中小企業は70歳前後を最頻値として裾野が広い。

設問2

出典

初期費用が小さい業種は開業のハードルが小さいので、「創業者」の割合が「同族継承」の割合を上回る傾向がある。

第14問

設問1

このアンケートは複数回答形式なので答えが分かる。ICT活用が必要な企業は限られているので三位、一方で第一次産業ですら必要とされる「人材」が一位となっている。

設問2

「コミュニケーション力」が一位なのは不思議と思うかもしれないが、このアンケートは複数回答形式なので、最も汎用性の高いこの能力が一位になる。

第15問

中小企業

製造業その他3億円 or 300人
卸売業1億円 or 100人
サービス業5000万円 or 100人
小売業5000万円 or 50人

小規模企業者

製造業その他20人
商業・サービス業5人

第16問

設問1, 2

ものづくり補助金(第18次)

ものづくり補助金の事業計画は、経営革新支援事業の経営計画とほぼ同じ。

事業計画( 3~5年)

  • 付加価値額の年率平均3%↑
  • 給与支給総額: 年率平均1.5%↑
  • 事業場内最低賃金: 地域別最低賃金+30円

ものづくり補助金に最低賃金の要件が追加された2020年には、最低賃金が800円を下回る地域もあった。その状況を考慮すると「100円以上向上」は非現実的だと判断できる。

設問3

枠は毎年改編されており、最新版では、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠がある。

(エ)「ものづくり基盤技術の高度化に向けた研究開発を支援する」のは「成長型中小企業等研究開発支援事業(go-tech事業)」である。

第17問

SBIR (SBIR、Small/Startup Business Innovation Research)

根拠法: 科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律

支援内容

  • 指定補助金(信用保証の特例、特許料等の減免)
  • 特定新技術補助金
  • 日本政策金融公庫の特別利率による融資

第18問

女性、若者/シニア起業家支援資金制度の対象者は、事業開始後7年以内かつ35~55歳男性以外の人である。

償還の据置期間は2年間と普通。一方、貸付限度額は7億2000万円、償還期間は設備資金20年・運転資金7年と起業家支援制度にしては大盤振る舞いで、セーフティネット貸付や高度化事業と同規模。差別的な支援対象といい、大衆迎合の感がある。

第19問

根拠法商店街振興組合法中小企業等協同組合法中小企業団体の組織に関する法律
名称商店街振興組合事業協同組合企業組合協業組合
設立要件1地区1組合4人以上
発起人7人以上4人以上
議決権平等平等/出資比例
株式会社へ組織変更×
半数が小売業・サービス業 半数が組合に従事

第20問

設問1
  • (ア, イ)中小企業等海外侵害対策支援事業(模倣品対策支援事業)は産業財産権の侵害を受けている企業の侵害対策を支援するものなので不適。
  • (ウ)経営法務で扱う内容だが、地域団体商標は組合、商工会、商工会議所、NPO 法人が出願できる。地域団体商標への侵害については当然、それらの組織が支援の対象者となる。
設問2

IT導入補助金通常枠の上限額が450万円なのを勘案すると、800万円は高すぎると判断できる。

第21問

設問1
  • (ア、エ)「創業期」は創業5年以内を指す。
  • (イ、ウ)事業計画立案から時間が経つと市場環境が変化して計画通りにならなくなる恐れがある。立案から3カ月経って操業は遅すぎるのだ。
設問2

(エ)保証限度額が2,000万円なのは予約保証である。

第22問

設問1

(エ)二重徴求はこの保証制度の趣旨に反する。二重徴求は2020年度第9問でも題材となった。

設問2

流動資産は「1年以内に現金化できる資産」と定義されているので、それを担保にしている以上、保証期間は1年以内とせざるを得ない。

第23問

設問2

雇用調整助成金制度は労働法規に絡んだ問題。

法定労働時間の上限が「日8時間、週40時間」、残業時間の上限が「月45時間、年360時間」というように、労働法規には短期と長期で二重の上限を設けるのが慣例。雇用調整助成金制度でも1年間と3年間とで二重の上限を設けられている。

中小企業診断士 一次再試験 令和五(2023)年度 E 経営法務の解説

E 経営法務

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

  • (ウ)会社形態に依らず、商号にはその会社形態を含む必要がある。ちなみに、商号として前株(株式会社○○)、後株(○○株式会社)、中株(○○株式会社○○)という表記が認められている。
  • (エ)会社形態に依らず、定款には目的、商号、所在地、出資金、発起人、発行可能株式総数を記載する必要がある。

第2問

(ア)非公開会社かつ取締役会非設置会社における株主総会の招集通知は、定款で一週間より短くすることができる。

第4問

定足数は原則として、株主総会と取締役会ともに過半数。

第5問

  • (ア)合資会社は有限責任と無限責任の社員それぞれ1人以上で設立する必要があるので2人以上となるが、それ以外の会社は1人で十分。
  • (イ、ウ、エ)持分会社は、株式会社と比べると資金調達手段が限られているなど閉鎖的ではあるが、運営の自由度は高い。

第6問

(ア)相続人が相続放棄すると相続分が再計算されるが、遺留分が放棄されても遺留分は再計算されない。

第8問

(ア, イ)会社が解散し清算会社になると事業活動はできなくなる、そのため、取締役や取締役会を置いたり、吸収合併の存続会社にはなれない。

第9問

「不当な取引制限」にはカルテルや談合が含まれ、経済活動における最も重い罪である。

第11問

(ア)知的財産権のうち、更新が認められているのは新規性の要件がない商標権のみ。

第12問

(イ)著作権は無⽅式主義なので、著作物が登録されずともに発生する。

第13問

(ア)法律に「該当しないこと」が記載されることは珍しいので不適切な選択肢だと判断できる。

第16問

[C]パリ優先権における優先期間は産業財産権によって異なっており、特許権と実⽤新案権は12カ⽉以内、意匠権と商標権は6カ⽉以内となっている。この理由は、これらの財産の複雑性や社会的重要性の差にある思われる。産業財産権のうち特許権と実⽤新案権が優遇されている点は、国内優先権と共通しているので、併せて憶えておこう。

第17問

[B]地域団体商標は商品だけでなく役務についても登録できる。たとえば横浜中華街や熱海温泉は地域団体商標だ。これらの例からも分かるように、地域団体商標を申請できるのは地域の事業協同組合や農業協同組合等の団体、商工会、商工会議所、NPO 法人に限定されており、権利の移転も禁止されている。

第19問

海上輸送における主な交易条件は次の通り。

  • CIF (Cost Insurance and Freight=運賃保険料込み条件)
  • CFR (Cost and Freight=運賃込み条件)
  • FOB (Free on Board=本船渡し)

これらの用語は売主側から見た表現となっている。

インコタームズの定義における費用負担は次の通り。

  • 輸出入時の通関費用
  • 船積み・荷下ろし費用
  • 運送費
  • 保険費用

第20問

即時取得は、動産であり、取引行為であり、善意無過失であることが要件。

第22問

(イ)債権譲渡では、第三者に対抗するときに「確定日付のある証書」が必要になる。

第24問

(イ)CBREの記事「転貸借のリスクを防ぐ法律関係を解説」に、マスターリースとサブリースを例にした分かりやすい解説がある。

(ウ)三井住友トラスト不動産の記事「オーナーチェンジと賃貸借契約~賃借人の承諾がなくても、賃貸人の交代は可能!」の例が分かりやすい。

中小企業診断士 一次試験 令和三(2021)年度 「E 経営法務」の解説

E 経営法務

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

  • (ア、イ)「社債の募集事項の決定」は経営に関わる判断なので取締役会で決議する。ただし決定事項の詳細については代表取締役等に委任できる。
  • (ウ)社債には普通社債、転換社債、ワラント債(新株引受権付社債)、劣後債などがある。社債の種類ごとに対応や権限が異なるため、個別に社債権者集会が組織される。
  • (エ)社債を発行する際には原則として社債管理者を設置しなければならないが、各社債の金額が1億円以上である場合、個々の社債権者自らが権利行使することに費用リスクはそれ程大きくなく、社債権者自らが社債管理することも十分可能と考えられるので、社債管理者の設置義務は免除される。

第3問

  • (ア)簡易合併では株主総会特別決議や株式買取請求といった手続きが省略される一方、債務は移転されるので債権者保護手続は必要。
  • (イ)株主保護手続について、吸収合併の場合は効力発生日の20日前までに株主に通知又は公告する必要がある。
  • (エ)簡易手続は株主総会の決議を省略するもの。合併に際して、合併差損が生じたり合併対価が譲渡制限株式であったりと株主に不利益がある場合は、株主総会の決議が必要なので簡易手続は利用できない。

第4問

(イ)別除権は担保権の一種なので、民事再生手続、破産手続、特別清算手続では行使できるが会社更生手続では行使できない。

第6問

  • (イ)「代表取締役等による職務執行状況の報告」や「取締役会の開催」は3か月に1回以上と法定されている。
  • (エ)監査役は独立性が重要であるため、半数以上が社外監査役であることが必要。一方、社外取締役には独立性の要件があり、公開会社の場合は2人以上が必要。

第8問

周知表示混同惹起行為が営業上の利益に焦点を当てているのに対して、著名表示冒用行為はブランドの保護に焦点を当てている。

第14問

特許協力条約は、外国への特許出願を自国の特許庁への申請をもって行うことで手続きを簡素化したものであり、大それたものではない。

第15問

(ウ)優先権には、パリ条約に基づく「パリ優先権」と実用新案法に基づく「国内優先権」とがある。パリ条約は外国出願に伴う時間的・予算的猶予を付与するためのものなので全四つの産業財産権を対象にしてパリ優先権を主張できる。一方、国内優先権は改良発明等の一括審査が目的なので特許及び実用新案のみが対象。※参考文献

(エ)商標以外の産業財産権には新規性の例外規定がある。商標にはそもそも新規性が登録要件ではないので例外規定がない。

第18問

「過失」と「重大な過失(重過失)」の違いを知らないと解けない難問。過失は「不注意にの状態」、重過失は「ほぼ故意に近い程度の不注意の状態」をいう。

民法上の債権者保護にも限界があり、先取特権の物上代位を行使したいなら差押を急ぐ必要がある。

第19問

(ア)例えば、着物レンタル業者に成人式で着る着物を注文したのに提供が間に合わなかった場合、式後に債務の履行を催告しても無意味。

中小企業診断士 一次試験 令和二(2020)年度 「G 中小企業経営・政策」の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

第2問

設問1

大規模企業や中規模企業の数が横ばいである一方、小規模企業数は減少傾向。

空欄Bでは個人事業者の中小企業に占める割合を問われている。設問3の選択肢を見ると、1999年から2016年の期間における個人事業者数の減少割合は約4割または約6割であることが分かる。このことから個人事業者数の減少率を約4割と控えめに見積もっても、2016年には1999年比で少なくとも約6割まで減っていることになる。したがって設問1の空欄Bに”7″が入ることはないため、選択肢(イ)と(エ)は消去できる。

設問2

業種別小規模事業者数の増減率の推移

業種別の小規模事業者数は、電気ガス水熱業以外は全て減少傾向。電気ガス水熱業は急増しているが理由は分からない。

設問3

ここでいう「減少」は比ではなく差である。個人事業者の総数が約200万であるのに対して「中規模企業である個人事業者」は約10万と絶対数が少ないことから選択肢(イ)と(エ)は消去できる。

ちなみに、インボイス制度の導入後、個人事業主数の推計値は380万と急増した。統計値の整合性が取れなくなってしまったので、今後数年間は個人事業主に関する統計の問題は出題されないだろう。

第4問

赤字企業の割合の統計値は集計元によっては約7割あるが、中小企業白書によると約4割となっている。

大企業は資本調達や信用のために赤字を出したくないというインセンティブが働くが、中小企業が節税のために財務的テクニックを用いて利益を小さくすることはよくある。よって中小企業の場合は景気変動によって赤字企業の比率が大きく変わることがないので、(ウ)は消去できる。

第5問

中小企業の労働生産性が横ばいであることは基礎知識なので(ア)と(イ)は消去できる。資本主義経済において労働生産性が急落することは稀なので(ウ)も消去できる。

一般的に、資本集約型産業は労働生産性が上がりやすい。これに加えて建設業は近年の人材不足や材料費高騰により労働生産性が上昇している。

第6問

設問1

開業率が廃業率より高いのに、日本企業の数が減少しているのは一見矛盾している。これについては中小企業白書において次のように説明されている。

雇用保険事業年報をもとにした開廃業率は、事業所における雇用関係の成立、消滅をそれぞれ開廃業とみなしている。そのため、企業単位での開廃業を確認出来ない、雇用者が存在しない、例えば事業主1人での開業の実態は把握できないという特徴があるものの、毎年実施されており、「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)でも、開廃業率のKPIとして用いられているため、本分析では当該指標を用いる。上記のような特徴があることから、第1-3-1図で確認した企業数の推移とは一致しない点に留意する必要がある。

企業数の増加率は人口動態の影響を大きく受けている。一方、「開業率-廃業率」は景気を反映した指標として役立つ。

設問2

不思議なことに、建設業の廃業率には5年周期の波がある。2017年度は開業率が廃業率を上回る年だったが、長期的にみると開業率は廃業率を下回り事業者数は減少傾向である。

第7問

事業承継ガイドラインは小規模企業や非公開会社を想定している。本ガイドラインでは親族内承継は「内外の関係者から心情的に受け入れられやすい」、「所有と経営の一体的な承継が期待できる」とされているが、大企業や公開会社ならばむしろ逆である。

第8問

この調査は複数回答形式。したがって「企業からの調達」、「企業へ販売」、「一般消費者へ販売」のうち、「企業へ販売」はBtoB企業のみが、「一般消費者へ販売」はBtoC企業のみが、「企業からの調達」はBtoB企業とBtoC企業の両方が回答することになる。したがって回答企業割合のうち「企業からの調達」が最も高くなると推測できるので、(ア)と(ウ)を消去できる。

ECの利用状況は、中小企業は45%、大企業は56%とされている。ここで言う「EC」には電子メールのようなコミュニケーション・ツールは含まれておらず、自社サイトや電子モールが想定されているようだ。このことは問題文からは読み取れないので不適切問題である。

第9問

設問1

日本では連帯保証制度が伝統的であるが、中小企業の融資においても2015年頃までは経営者保証が一般的で9割を占めていた。

設問2

民間金融機関と政府系金融機関の貸出残高はおよそ9:1と民間が圧倒的に多い。

空欄のある段落を読むと、「二重徴求の割合」と「二重徴求を含めた経営者保証の徴求の割合」に大差があることが推察できるので、(ア)と(ウ)は消去できる。

第10問

設問1

比較対象の期間がリーマンショックを跨いでいるので、2007年から2012年にかけての減少が大きいと推測される。よって(ア)と(イ)は消去できる。

運輸業の人材不足と小売業の淘汰が起きていることを知っていれば正答を得られる。

第12問

中小企業白書によると、中小企業の直接輸出は製造業・非製造業ともに増加している。対外直接投資も増加している。

第13問

国内特許出願件数は減少しているが、国際特許出願件数は増加している。中小企業向けの特許料金の減免制度や手続きの簡素化が奏功して中小企業の特許出願件数は国内・国際ともに増加している。

第14問

小規模企業には「生活基盤の形成」や「格差の是正」といった大それた役割は求められていない。

設問1

中小企業と小規模企業の定義の共通点は「従業員数や資本金は、商業・サービス業とそれ以外で約4倍の比がある」ということ。中小企業の定義でサービス業だけ「資本金 ÷ 従業員数=100万」となっていないのは、サービス業が労働集約型産業だからだ。

設問2

(ア)「活力ある経済と豊かな国民生活」は中小企業憲章に書かれた中小企業の役割。

(ウ)中小企業基本法第三条に「地域における経済の安定並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に寄与するとともに、創造的な事業活動を行い、新たな産業を創出するなどして将来における我が国の経済及び社会の発展に寄与する」と書かれており、成長性より地域への貢献が強調されている。

(エ)中小企業憲章の基本記念として中小企業は「創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える」と書かれている。

第15問

中小ものづくり高度化法は廃止され、令和2年に中小企業成長促進法が施行された。

第17問

(イ)事業承継・引継ぎ補助金の説明。

第18問

設問1

商店街振興組合の設立要件

  • (イ)企業組合は、組合の事業に従事する者の3分の1以上は組合員であることが必要。商店街振興組合は組合員としての資格を有する者の3分の2以上が必要。
  • (ウ)事業協同組合は、発起人は4人以上必要。商店街振興組合は7人以上必要。

第19問

設問1

事業協同組合の組合員は、自らの事業を持っているため、事業協同組合自体は共済の対象にならない。

設問1
  • (ア)経営セーフティ共済は掛金総額の10倍以内の範囲で事業資金の貸付制度を利用できる。

第20問

設問2

税制上は資本金1億円以下が中小企業とみなされる。

第22問

中小企業地域資源活用促進法は令和二年で廃止となり、中小企業成長促進法が施行した。

第23問

(ア)中小企業等経営強化法では、一定期間内に労働生産性を一定程度向上させるために先端設備等を導入する計画(先端設備等導入計画)を策定した場合に支援措置が受けられる。

(エ)失政をごまかすために、制度の趣旨とは無関係に強引に賃上げさせる条件を付すことはよくある。

中小企業診断士 一次試験 令和五(2023)年度 「E 経営法務」の解説

E 経営法務

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

  • (ア)株主総会議事録は、株主総会の決議事項などについて記載する書類。会社法において作成と保管義務が定められている。
  • (イ、ウ)公開会社、非公開会社のいずれも、株主全員の同意があれば「書面決議」や「招集手続の省略」が可能で、迅速な意思決定が可能。

第2問

定足数と評決数は単純な割合が設定されている。定足数については普通決議と特別決議ともに過半数。評決数については普通決議は過半数、特別決議は2/3以上である。

監査役は独立性が重要であるため、解任のために特別決議が必要となっている。

第3問

  • (ア)監査役には取締役会の招集など”司法機関”としての強い権限が与えられている。選択肢の文は「必要があると認めるときは」という文言に続く文言がぎこちないので誤りと判断できる。
  • (イ)「取締役会」と「株主総会」を入れ替えた文になっている。
  • (ウ)監査役会設置会社においては監査役は取締役会に強く関与する。取締役会の招集通知は監査役にも発する必要がある。また監査役は取締役会への出席義務がある。

第4問

  • (ア)取締役会と株主総会の決議事項の違いは、「所有と経営の分離」の観点から判断できる。「役員報酬に関する事項」は経営というより株主の利益に関わる事項なので株主総会で決議する。
  • (ウ)監査役には”司法機関”としての強い権限があり、取締役に不法行為の恐れがある場合は監査役会の決議なく差止請求ができる。
  • (エ)監査役は独立性が重要であり、監査する側とされる側を兼任するのは不適切である。

第5問

発起人は、企業の経営者というより所有者という立ち位置にある。よって株式を保有している必要があり、法人でも発起人となることができ、必ずしも取締役に就任する必要はない。

第7問

課徴金減免制度は囚人のジレンマゲームを利用して「仲間の裏切り」を誘発する仕組み。よってカルテルや入札談合は対象になるが、組織的な不法行為ではない優越的地位の濫用行為は非対象だ。

申請の順位によって減免率が大きく変わるため、申請の日時を確定できるように電子メールで申請する必要がある。

第8問

(ア)「継続的給付の義務を負う双務契約」の具体例として電気やガスの契約がある。債務者の弁済が困難になり再生手続を行う場合、その債務者を「再生債務者」、対象となる債権を再生債権という。再生手続開始後は、再生債務者が破産して弁済が完全に不可能になるという最悪の事態を回避するために、いったん弁済禁止の効力を与える。

(イ, ウ, エ)契約解除に関しては、債権者に有利である。

第9問

「物の発明」については、生産、使用、譲渡、輸出入によって発明の実施が認められる。他国の製品を輸入しただけで驚くことに自分が発明したことになるのだが、一方で特許侵害品は税関における輸入差止めの対象となる。

第10問

(ア)パリ条約による優先権制度は外国出願に伴う時間的・予算的猶予を付与するためのものである一方、国内優先権制度は改良発明等の一括審査のための制度である。ゆえにパリ条約による優先権主張の対象は特許・実用新案・意匠・商標だが、国内優先権制度の対象は特許・実用新案のみとなっている。

(イ)出願公開制度には、類似したアイデアの出現を牽制したり、公開された発明をベースとした新たな発明を促す目的があるため、特許と商標の出願は公開される。一方、意匠は権利化までデザインを秘密にする利点が大きく、実用新案は新たな発明を促すことに繋がりにくいことから公開制度がない。

第12問

不正競争の構成要件には混同惹起行為、著名表示冒用行為、信用毀損行為、商品形態模倣行為、営業秘密不正行為、限定提供データ不正行為等があるが、説明文を入れ替えた選択肢がよく出題される。

第13問

(ア)特許、実用新案、意匠は相互に出願変更できる。

(エ)防護標章制度は周知・著名商標の保護を目 的としているので、査定又は審決が確定した後の出願変更は不可能。

第15問

(A)一出願多区分制は欧州と足並みを揃えるために導入された。

(B)商標法では「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音」が登録の対象となっている。

第16問

設問1

“without reference to conflict of laws principle”は「抵触法の原則は適用しない」という意味の慣用句。

設問2

異例の出題内容!仲裁には裁判と同じく拘束力があり、尚且つ迅速な処理が可能。合意に至らなかった場合に不成立となるのは「調停」である。

第17問

経営承継円滑化法の特例は、「遺留分権利者の全員の合意」、「経産大臣の確認」、「家庭裁判所の許可」の三段階を踏む必要がある。この特例は基本的に中小企業が対象だが、遺留分に関する除外合意の特例は個人事業主も対象。

第18問

製造物責任法は民法で定められた不法行為責任の特例であり、製造業者等に重い責任を負わせるもの。製造業者等のリスクを下げるための保険もある。

第20問

著作権と産業財産権は、共有に関する法的扱いが異なる。これは著作権に著作者人格権が含まれることが一因。

第21問

中小企業診断士 一次試験 令和五(2023)年度 「G 中小企業経営・政策」の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

中小企業基本法における小規模企業の定義では、製造業その他は「従業員20人以下」、商業・サービス業は「従業員 5人以下」となっている。したがって本問では、建設業と製造業は「従業員20人以下」、小売業は「従業員 5人以下」を対象としている。売上高は従業員規模に概ね比例するので、小売業の売上高が最も低いと推測できる。

第2問

小規模企業数割合について

産業別規模別企業数を参照。小規模企業数割合は、建設業(95%)、製造業(84%)、小売業(81%)。

小売業は定義上「従業員 5人以下」なので小規模企業数割合が小さい。また、下請け構造があったり、ニッチな市場があったり、地域に根差した業種ほど割合が高いことが読み取れる。小売業は電子商取引の増加により小規模企業は淘汰されている。

中小企業庁によると、小規模事業者は、事業者数では小売業、建設業、製造業の順に多いが、従業員数は建設業、製造業、小売業の順に多い。卸売業と小売業を合わせた売上高では建設業より高い。

中小企業数について

中小企業基本法における中小企業の定義は、

  • 製造業その他(建設業を含む)は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」
  • 小売業は「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人」

業界への参入のしやすさが大きく影響している。

第3問

仕入れや設備投資が必要だと自己資本比率は低くなりがちだ。また、自己資本比率が高いと財務的に安定するが、小売業は日々の安定したキャッシュインがあるため自己資本比率が低くても耐えられる。

第4問

利益率の低い業種ほど開業率、廃業率が高い。

第5問

2021年初頭から円安ドル高が進み、さらに2022年初頭から物価高も進んだ。

第7問

産業別就業者数の推移をみると、第一次・第二次産業が減少傾向であるのに対して医療福祉分野を筆頭とする第三次産業は上昇傾向にあることが分かる。製造業の就業者数の減少の背景には、自動化や事業の海外移転もある。

第9問

我が国の製造業のノウハウを学びたい外国人が多いこと、留学生は自身の語学力を接客で活かせることから正答を選べる。

第10問

研究開発費割合のオーダーは、企業規模や業種に関わらず、0.1~10%。能力開発費割合のオーダーは、企業規模や業種に関わらず、0.01~0.1%。

つまり「研究開発費の差」と「能力開発費の差」は、そもそもスケールが異なるので比較する意味がないのだ。こういう悪問を出す傾向があることを知っておくと、逆手にとって正解できる。

第11問

中小企業の大部分を小規模企業が占めるわけだが、事業継続計画(BCP)の策定のコンサル費用の相場が数十万円であることを考慮すると、検討すらしていない事業者が大半だと分かる。

第12問

労働生産性は企業規模だけでなく業種にも大きく依存している。

第14問

設備投資額は景気動向に大きく影響される。リーマンショック後から15年経ってもリーマン前の投資水準に回復していない。

これについてNRIの木内登英氏は「リーマンショックをきっかけに、株価が低迷したことが企業の設備投資を慎重にさせたこと、金融仲介機能が低下し、企業が銀行あるいは市場から資金を借り入れることが難しくなったことが、投資率低下をもたらした」と結論付けている。

バブル崩壊後に無借金経営が称賛される雰囲気があったように、リーマンショック後も経営者や投資家の心理によって設備投資が抑制されている一面がある。

第16問

我が国は少子高齢化により、平均年齢が年平均0.2歳ずつ上昇している。実は、開業時の平均年齢も年平均0.2歳ずつ上昇しており、人口動態要因によるものだと分かる。

第17問

倒産件数の推移について、始点が2009年と指定されていることに注目。この年はリーマンショックによる倒産が急増した直後で、その後に金融緩和などで経営環境が改善していった。

Covid-19影響下で倒産件数が減少しているのは、本来倒産するはずの企業が政府の支援によりゾンビ化したためだ。この現象は世界各地で起きた。

第18問

債務保証とは、企業が返済できない債務を弁済してもらうこと。リーマンショック後の2010年からCovid-19騒動前の2019年までは景気拡大期だったので保証債務残高は減少していた

第18問

中小企業基本法における中小企業の定義は、

  • サービス業は「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人」
  • 製造業その他は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」

第19問

設問2

法令の穴埋め問題は、その法令の内容を知らなくても文の論理性を検証することで正答を選べることがある。

  • (A)解答群の「新たな価値を創造する」は、「新商品の開発又は生産」や「新役務の発又は提供」を言い換えたものに相当する。よって「新たな価値を創造する」で穴埋めすると文の因果関係が成り立たないので誤りだと分かる。
  • (B)経営資源は新商品等を生み出す際に利用されるものであるので、「創意工夫を凝らして生み出す経営資源」という表現は誤り。
設問3

中小企業憲章に「中小企業は、経済やくらしを支え、牽引する。創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える。」という文言がある。

第20問

新創業融資制度は令和6年3月31日をもって廃止し、以降はこの制度の適用なく、無担保・無保証人で各種融資制度を利用できる。

第21問

小規模企業共済制度

  • 経営者が対象
  • 共済金の受け取り方は、「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能
  • 掛金の全額を、その年分の総所得金額から所得控除できる
  • 掛金に相当する額の貸付を受けられる

中小企業退職金共済

  • 従業員が対象
  • 18,000円以下の掛金を増額する事業主に対して、増額分の3分の1を増額した月から1年間、国が助成する
  • 初めて加入した事業主に対して、掛金月額の2分の1を4カ月目から1年間、国が助成する

第24問

設問1

先端設備等導入計画に係る特例は、地方税法に基づく固定資産税を対象としたものであることが問題文に示されている。固定資産税は市町村税であることを知っていれば正答できる。それを知っていなくとも、「市町村(特別区を含む)」とわざわざ括弧書きが付されている点に着目することで正答できる。

設問2

営業利益=売上総利益-「販売費及び一般管理費」

「販売費及び一般管理費」には人件費、減価償却費、広告宣伝費、販売手数料、家賃などを含む。

第25問

IT 導入補助金は2024年版で次のように改編された。

  • 通常枠: ソフトウェア、クラウド
  • インボイス対応類型: インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェア
  • 電子取引類型: インボイス制度に対応した受発注システム
  • セキュリティ対策推進枠: 「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービス
  • 複数社連携IT導入枠: サプライチェーンや商業集積地で連携してITツールを導入

補助率は多くの枠が1/2以内だが例外もある。

第26問

期末資本金の額が1億円以下の一定の中小法人の場合、所得金額のうち800万円以下の部分について15%(本則19%)の軽減税率が適用される。

第27問

設問1

経営発達支援計画: 小規模企業の支援に取り組む商工会の支援計画

設問2

最新の「法人版事業承継税制(特例措置)」

  • 承継する株式にかかる贈与税・相続税のすべてが納税猶予の対象
  • 親族外を含むすべての株主から、代表者である後継者(最大3人)への贈与・相続が対象
  • 雇用維持 要件を満たせなかった場合でも納税猶予が継続可能
  • 将来、事業を売却・廃業する際に株価が下落していた場合には、その株価を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免

中小企業診断士 一次試験 令和四(2022)年度 「D 運営管理」の解説

D 運営管理(オペレーション・マネジメント)

問題(PDF), 解答(PDF)

第2問

設問1

サイクルタイムとは、生産ラインを稼働させたときに、製品一個を生産するのにかかる時間のこと。ステーション(工程)のうち作業時間が最大のものがボトルネックとなるので、この時間が実際のサイクルタイムになる。

本問では稼働予定時間と目標生産計画量が与えられているので、許容される最大のサイクルタイムを「稼働時間÷生産計画量」によって求められる。「設定サイクルタイムは分単位の整数値」という条件が与えられているので、「int(700 * 60 / 5900)」という計算によりサイクルタイムの許容値は7分である。

要素作業を組み合わせてステーションを構成する。サイクルタイムの許容値7分を逸脱した作業時間を持つステーションは不適である。

設問2

ライン・バランシングによって生産ラインの工程数やサイクルタイムは様々になる。サイクルタイムは短いほど生産速度が上がるが、一方で工程数が増えることによって作業スペースの増加、作業員や機械のコスト増を引き起こす。そこで適切なライン・バランシングを測る指標として編成効率がある。

編成効率=(各工程の作業時間の合計) ÷ (工程数 × サイクルタイム)

第5問

母分散が未知であるような母集団に対する母平均の区間推定については、統計WEBの解説が分かりやすい。

自由度はサンプルサイズから1を引いたものを選ぶ必要があるのがややこしい。分散は「偏差の二乗和をデータ数nで割ったもの」であるが、ここでは母集団から標本抽出しているので、分散は「偏差の二乗和をデータ数”n-1″で割ったもの」である。これが自由度がn-1である所以である。標本抽出を行う各種検定では、一般的に自由度はn-1が用いられる。

t値の公式は標本平均を検定統計量としているので、中心極限定理と類似している。

第16問

正味時間=観測時間の代表値 × レイティング係数

標準時間=正味時間+余裕

第17問

予防保全と保全予防が紛らわしいが、他の保全活動は単語の後半に「保全」とついているのに対して保全予防だけ前半である。保全予防のみ機械導入前に行う活動で、その他の保全活動は導入後の活動であることと紐づけて覚えると良い。

第19問

(c)7大ロス: 故障、段取り・調整、刃具交換、立上がり、速度低下、チョコ停、不良・手直し

第20問

工程分析には、製品の加工や運搬を効率化する製品工程分析、作業内容を効率化する作業者工程分析がある。

第23問

都市計画関連法については、以下の法律が問われやすい。

  • まちづくり三法(都市計画法、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法)
  • 都市再生特別措置法
  • 建築基準法

第24問

用途地域として近隣商業地域、工業地域、第一種住居地域、田園住居地域が問われている。

それぞれの用途地域についてイメージを持っておくと、どのような建築物が適しているかを判断しやすくなる。例えば、第一種住居地域にカラオケボックスは似合わないので(ウ)は偽だと判断できる。ちなみに、第二種住居地域ならばカラオケボックスを建てられる。

以下のページに用途地域毎の画像が掲載されており便利。

料理店は飲食店とは法律上異なり、キャバレーやナイトクラブといった店舗のこと。

第26問

五択の中で、aは正とするものが最も多く、bは誤とするものが最も多く、cは正とするものが最も多い。これらの正誤を組み合わせた(イ)が正解となっている。

第27問

変動費と売上原価の包含関係は、「売上原価は変動費と固定費に分けられる」というものなので、「変動費には売上原価は含まれない」という表現は不適切。「売上原価は変動費に分類されない」という記述が適切である。

第29問

(オ)「客動線を一筆書きのようにコントロールすること」という説明はあながち間違ってはいないが、ワンウェイコントロールの本質は客を店側の期待通りの経路を通ってもらうことにある。

第34問

(ウ)カテゴリー区分を細かく設定すると、コンテナ内に隙が生まれやすくなるので、積載効率が下がる場合がある。

第35問

パズル的問題。

取組案a, bではいずれも、区間によって積載率が変わるので、平均値を算出する必要がある。ただし直感的にも積載率が向上することは容易に分かる。

大原書籍によるとこの問題の正答率はなんと40%以下だったようだ。中小企業診断士の論理的思考力が疑わしい。

第37問

物流分野の設問では、以下のように省略された用語を憶えていることを問われる。

  • ASN: Advanced Shipping Notice
  • BMS: Business Message Standards
  • EAN: European Article Number
  • EDI: Electronic Data Interchange
  • EPC: Electronic Product Code
  • GCN: Global Coupon Number
  • GDS: Global Data Synchronization
  • GLN: Global Location Number
  • GTIN: Global Trade Item Number
  • GRAI: Global Returnable Asset Identifier
  • ITF: Interleaved Two of Five
  • JAN: Japanese Article Number
  • SCM: Shippng Container Marking
  • SSCC: Serial Shipping Container Code
  • UPC: Universal Product Code

これらを憶えるのは非効率だし中小企業診断士としてのスキルにも関係しない。次のように、略語のアルファベットは対応する単語がほぼ決まっているので、これらを憶えておけば用語の意味を推定できる。

  • C: Code
  • D: Data
  • E: Electronic
  • G: Global
  • N: Number
  • P: Product
  • S: Shipping

第39問

リフト値には次のような性質がある。

  • リフト値=併売率 ÷ 買上率
  • リフト値 ≧ 0
  • 「商品Aから見た商品Bのリフト値」=「商品Bから見た商品Aのリフト値」

中小企業診断士 一次試験 令和五(2023)年度 「B 財務会計」の解説

B 財務・会計

問題(PDF), 解答(PDF)

なんと正答の半分以上が(イ)だった。

第1問

  • (ア)先入先出法を用いた場合の払出単価。
  • (ウ)後入先出法を用いた場合の払出単価。この原価計算方法は廃止されている。
  • (エ)総平均法を用いた場合の払出単価。

移動平均法を知らなくても、他の原価計算方法を知っていれば絞り込める。

第2問

新収益認識基準が2021年4月から適用された。これにより、未収金は契約資産、前受金は契約負債にそれぞれ勘定科目が変更になっている。

  • (ア)受注制作のソフトウェアの制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理され、引渡時に売上原価として計上される。
  • (エ)無形固定資産の償却は定額法のみが認められている。

第3問

200%定率法における「200%」とは、「定額法を適用した際の各期の減価償却費」の2倍の額を、200%定率法の第一期の減価償却費とするという意味である。150%や250%の定率法も存在する。

ある期で減価償却費が「取得原価✕保証率」を下回ったときは、その期の減価償却費を「未償却残高✕改訂償却率」に切り替える。

第4問

(ア)親会社が連結貸借対照表を作成する際、連結する対象が子会社であれ関連会社であれ、その持分は純資産の部に表示される。

※子会社は親会社と一体のものであるという性質が強いため、子会社の財務諸表を全て合算した上で非支配株主持分を控除項目として表示する。一方で関連会社の場合は、親会社に帰属する分のみを表示する。このルールは損益計算書と貸借対照表のどちらにも当てはまる。

(ウ)企業を買収した際の、買収額の簿価を超過した分を「のれん」という。のれんは被買収企業の超過収益力を表し、無形固定資産として扱われる。一方で負ののれんは、「企業を簿価より安く買収できた」と解釈して特別利益として計上する。

第5問

計算書類財務諸表
貸借対照表
損益計算書
•株主資本等変動計算書
•個別注記表
貸借対照表
損益計算書
キャッシュフロー計算書
•株主資本等変動計算書
•附属明細書
全て会社が作る必要がある有価証券報告書を提出する会社(上場企業など)のみが作成する

第6問

課税所得は、税引前当期純利益に算入額と不算入額を加味して得られる。

第8問

  • (ア、ウ)売上債権や棚卸資産といった営業循環に含まれる勘定科目は一年基準の適用外である。
  • (イ)市場に流通しない有価証券や、他の企業を支配する等の目的で長期的に所有する有価証券は固定資産。

第10問

本問では月末仕掛品原価の算定方法として平均法が採用されている。資料には当月の原価の内訳が記載されているが、平均法では合計額のみを用いる。

度外視法とは、減損の費用をどう案分するかの方法の一つで、費用を文字通り無視してしまう方法だ。本問では、月末仕掛品原価に度外視法が適用されているので、減損の費用は完成品が負うことになる。減損費用は月末仕掛品原価に含まれないので、選択肢の中では金額の小さいものが正解だと推定できる。

第13問

営業循環における現金の支出から収入までの期間をキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)という。CCCが短いほど資金がショートするリスクが減る。仕入れを掛けで行うなどしてCCCを負の値にすることができる。

第15問

支払利息は営業外費用なので、問題文の「ここでの営業利益は税引前当期純利益に等しく」という記述を「支払利息を無視する」と解釈すると、ROEは20%という選択肢にない数値になってしまう。実際は負債5億円に利息1500万円が掛かるので当期純利益が減る。不適切に近い問題だが、負債利子率が3%なので20-3=17より正解を推測できる。

第17問

費用と収益を比較して投資判断するのと似たように、IRRと資本コストを比較する。

第22問

減価償却費は、実際には当期の現金支出はないので税引後純利益に加算する。その代わりに設備投資額を減算する。

正味運転資本増加額は、営業利益のうち現金ではない部分なので減算する。