中小企業診断士 一次試験 令和二(2020)年度 「G 中小企業経営・政策」の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

第2問

設問1

大規模企業や中規模企業の数が横ばいである一方、小規模企業数は減少傾向。

空欄Bでは個人事業者の中小企業に占める割合を問われている。設問3の選択肢を見ると、1999年から2016年の期間における個人事業者数の減少割合は約4割または約6割であることが分かる。このことから個人事業者数の減少率を約4割と控えめに見積もっても、2016年には1999年比で少なくとも約6割まで減っていることになる。したがって設問1の空欄Bに”7″が入ることはないため、選択肢(イ)と(エ)は消去できる。

設問2

業種別小規模事業者数の増減率の推移

業種別の小規模事業者数は、電気ガス水熱業以外は全て減少傾向。電気ガス水熱業は急増しているが理由は分からない。

設問3

ここでいう「減少」は比ではなく差である。個人事業者の総数が約200万であるのに対して「中規模企業である個人事業者」は約10万と絶対数が少ないことから選択肢(イ)と(エ)は消去できる。

ちなみに、インボイス制度の導入後、個人事業主数の推計値は380万と急増した。統計値の整合性が取れなくなってしまったので、今後数年間は個人事業主に関する統計の問題は出題されないだろう。

第4問

赤字企業の割合の統計値は集計元によっては約7割あるが、中小企業白書によると約4割となっている。

大企業は資本調達や信用のために赤字を出したくないというインセンティブが働くが、中小企業が節税のために財務的テクニックを用いて利益を小さくすることはよくある。よって中小企業の場合は景気変動によって赤字企業の比率が大きく変わることがないので、(ウ)は消去できる。

第5問

中小企業の労働生産性が横ばいであることは基礎知識なので(ア)と(イ)は消去できる。資本主義経済において労働生産性が急落することは稀なので(ウ)も消去できる。

一般的に、資本集約型産業は労働生産性が上がりやすい。これに加えて建設業は近年の人材不足や材料費高騰により労働生産性が上昇している。

第6問

設問1

開業率が廃業率より高いのに、日本企業の数が減少しているのは一見矛盾している。これについては中小企業白書において次のように説明されている。

雇用保険事業年報をもとにした開廃業率は、事業所における雇用関係の成立、消滅をそれぞれ開廃業とみなしている。そのため、企業単位での開廃業を確認出来ない、雇用者が存在しない、例えば事業主1人での開業の実態は把握できないという特徴があるものの、毎年実施されており、「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)でも、開廃業率のKPIとして用いられているため、本分析では当該指標を用いる。上記のような特徴があることから、第1-3-1図で確認した企業数の推移とは一致しない点に留意する必要がある。

企業数の増加率は人口動態の影響を大きく受けている。一方、「開業率-廃業率」は景気を反映した指標として役立つ。

設問2

不思議なことに、建設業の廃業率には5年周期の波がある。2017年度は開業率が廃業率を上回る年だったが、長期的にみると開業率は廃業率を下回り事業者数は減少傾向である。

第7問

事業承継ガイドラインは小規模企業や非公開会社を想定している。本ガイドラインでは親族内承継は「内外の関係者から心情的に受け入れられやすい」、「所有と経営の一体的な承継が期待できる」とされているが、大企業や公開会社ならばむしろ逆である。

第8問

この調査は複数回答形式。したがって「企業からの調達」、「企業へ販売」、「一般消費者へ販売」のうち、「企業へ販売」はBtoB企業のみが、「一般消費者へ販売」はBtoC企業のみが、「企業からの調達」はBtoB企業とBtoC企業の両方が回答することになる。したがって回答企業割合のうち「企業からの調達」が最も高くなると推測できるので、(ア)と(ウ)を消去できる。

ECの利用状況は、中小企業は45%、大企業は56%とされている。ここで言う「EC」には電子メールのようなコミュニケーション・ツールは含まれておらず、自社サイトや電子モールが想定されているようだ。このことは問題文からは読み取れないので不適切問題である。

第9問

設問1

日本では連帯保証制度が伝統的であるが、中小企業の融資においても2015年頃までは経営者保証が一般的で9割を占めていた。

設問2

民間金融機関と政府系金融機関の貸出残高はおよそ9:1と民間が圧倒的に多い。

空欄のある段落を読むと、「二重徴求の割合」と「二重徴求を含めた経営者保証の徴求の割合」に大差があることが推察できるので、(ア)と(ウ)は消去できる。

第10問

設問1

比較対象の期間がリーマンショックを跨いでいるので、2007年から2012年にかけての減少が大きいと推測される。よって(ア)と(イ)は消去できる。

運輸業の人材不足と小売業の淘汰が起きていることを知っていれば正答を得られる。

第12問

中小企業白書によると、中小企業の直接輸出は製造業・非製造業ともに増加している。対外直接投資も増加している。

第13問

国内特許出願件数は減少しているが、国際特許出願件数は増加している。中小企業向けの特許料金の減免制度や手続きの簡素化が奏功して中小企業の特許出願件数は国内・国際ともに増加している。

第14問

小規模企業には「生活基盤の形成」や「格差の是正」といった大それた役割は求められていない。

設問1

中小企業と小規模企業の定義の共通点は「従業員数や資本金は、商業・サービス業とそれ以外で約4倍の比がある」ということ。中小企業の定義でサービス業だけ「資本金 ÷ 従業員数=100万」となっていないのは、サービス業が労働集約型産業だからだ。

設問2

(ア)「活力ある経済と豊かな国民生活」は中小企業憲章に書かれた中小企業の役割。

(ウ)中小企業基本法第三条に「地域における経済の安定並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に寄与するとともに、創造的な事業活動を行い、新たな産業を創出するなどして将来における我が国の経済及び社会の発展に寄与する」と書かれており、成長性より地域への貢献が強調されている。

(エ)中小企業憲章の基本記念として中小企業は「創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える」と書かれている。

第15問

中小ものづくり高度化法は廃止され、令和2年に中小企業成長促進法が施行された。

第17問

(イ)事業承継・引継ぎ補助金の説明。

第18問

設問1

商店街振興組合の設立要件

  • (イ)企業組合は、組合の事業に従事する者の3分の1以上は組合員であることが必要。商店街振興組合は組合員としての資格を有する者の3分の2以上が必要。
  • (ウ)事業協同組合は、発起人は4人以上必要。商店街振興組合は7人以上必要。

第19問

設問1

事業協同組合の組合員は、自らの事業を持っているため、事業協同組合自体は共済の対象にならない。

設問1
  • (ア)経営セーフティ共済は掛金総額の10倍以内の範囲で事業資金の貸付制度を利用できる。

第20問

設問2

税制上は資本金1億円以下が中小企業とみなされる。

第22問

中小企業地域資源活用促進法は令和二年で廃止となり、中小企業成長促進法が施行した。

第23問

(ア)中小企業等経営強化法では、一定期間内に労働生産性を一定程度向上させるために先端設備等を導入する計画(先端設備等導入計画)を策定した場合に支援措置が受けられる。

(エ)失政をごまかすために、制度の趣旨とは無関係に強引に賃上げさせる条件を付すことはよくある。

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