G 中小企業経営・中小企業政策
試験問題の内容が暗記偏重で、例年と比べて質が極めて低い。中小企業診断協会は、再試験であるため問題作成の吟味ができなかったが、受験者数が少ないため悪影響は少ないと判断したのだろう。
第1問
- 企業数は、大:中:小 = 1%:15%:84%
- 従業員数は、 大:中:小 = 3:5:2
第2問
中小企業の従業員数は、製造 > 小売 > 建設
第3問
設問1
自己資本比率は、製造 > 卸売 > 小売 > 宿泊・飲食サービス。自己資本比率は固定資産が多い業界では高く、流動資産が多い業界では低い。
自己資本比率は借入金依存度と逆の指標。
設問2
付加価値率は、価格競争に陥りやすい小売業は低く、そうでない宿泊・飲食サービス業は高い。ただし、宿泊・飲食サービス業は労働集約型なので労働生産性は低い。
第4問
情報通信業の労働生産性は、大企業と中小企業との格差が大きいのが特徴。情報通信業は人材不足なので、高度人材が大企業に集中しているためと思われる。
第5問
設問2
2021年度の商店街来街者数が減った最大の理由は「魅力ある店舗の減少」となっているが、これはアンケートが複数回答形式であることから説明できる。「近郊の大型店の進出」と「地域の人口減少」は「魅力ある店舗の減少」の原因になりうるので、「近郊の大型店の進出」と「地域の人口減少」を選択した回答者は「魅力ある店舗の減少」も選択している可能性が高いのだ。
またこの背景にはECの普及も考えられる。
第6問
このアンケートは複数回答形式であるため、価格で勝負している企業のみが選ぶ「商品の価格競争」が最下位になり、ブランドを重視している企業のみが選ぶ「自社ブランド認知度向上の難しさ」が二位になり、あらゆる企業に当てはまる課題である「販売先に関する情報不足」が一位になる。
第7問
販売先との交渉の機会が設けられていない要因として、「取引関係が長く交渉の機会が不要であるため」が最も多い。これは、複数回答形式であることが最大の要因だろう。
「販売先の意向が強いため」と「交渉の経験が少なく提案することが困難」という選択肢が「交渉を必要としている」という前提に立っている一方、「取引関係が長く交渉の機会が不要であるため」は「そもそも交渉を必ずしも必要としていない」というより広い前提に立っている。
第9問
設問1
フリーランスは企業と短期労働契約をするのが特徴。
情報通信業はプロジェクトベースであるので、フリーランスが多い。
製造業は一般的に、企業に長く従事することでスキルを習熟する性質を持つ。よって製造業はフリーランスと親和性が低い。
設問2
「フリーランスや副業人材の管理・調整」の回答が少ないのは、この選択肢だけ実際に雇ってみないと課題として認識できないからだろう。
第10問
グロース市場への上場要件の一つに「時価総額5億円以上」というものがある。記述bは1億円となっているが、これでは多くの中小企業が含まれてしまうので誤りだと分かる。
第11問
設問1
2020年度と2022年度の試験問題では厚生労働省「雇用保険事業年報」に基づいて「廃業率は、2010年度から低下傾向で推移している」という知識を問うた。
本試験では、東京商工リサーチ「2021年「休廃業・解散企業」動向調査」に基づいて「2014年 から2021年の期間について、休廃業・解散件数の推移を見た場合、 増加傾向にある」という知識を問うている。
休廃業・解散した企業は、実は黒字が多い。後継者が見つからないことが背景にあり、メッセージ性のある出題だ。
設問2
休廃業企業の代表者の年齢は70歳前後で、年々上昇している。
第12問
設問1
大企業と中小企業の比較なので、企業数の圧倒的な差に着目しよう。中小企業は大企業より圧倒的に多いので、商標権の出願件数が強いと分かる。一方で大企業は技術力で中小企業を圧倒しているので特許権の出願件数が強い。
設問2
中小企業の産業財産権の出願件数比率は増加傾向だが、これには大企業の「出願数を絞る」という戦略の変化も大きく影響している。
第13問
設問1
大企業経営者は60代がボリュームゾーンであるのに対して、中小企業は70歳前後を最頻値として裾野が広い。
設問2
初期費用が小さい業種は開業のハードルが小さいので、「創業者」の割合が「同族継承」の割合を上回る傾向がある。
第14問
設問1
このアンケートは複数回答形式なので答えが分かる。ICT活用が必要な企業は限られているので三位、一方で第一次産業ですら必要とされる「人材」が一位となっている。
設問2
「コミュニケーション力」が一位なのは不思議と思うかもしれないが、このアンケートは複数回答形式なので、最も汎用性の高いこの能力が一位になる。
第15問
中小企業
製造業その他 | 3億円 or 300人 |
卸売業 | 1億円 or 100人 |
サービス業 | 5000万円 or 100人 |
小売業 | 5000万円 or 50人 |
小規模企業者
製造業その他 | 20人 |
商業・サービス業 | 5人 |
第16問
設問1, 2
ものづくり補助金(第18次)
ものづくり補助金の事業計画は、経営革新支援事業の経営計画とほぼ同じ。
事業計画( 3~5年)
- 付加価値額の年率平均3%↑
- 給与支給総額: 年率平均1.5%↑
- 事業場内最低賃金: 地域別最低賃金+30円
ものづくり補助金に最低賃金の要件が追加された2020年には、最低賃金が800円を下回る地域もあった。その状況を考慮すると「100円以上向上」は非現実的だと判断できる。
設問3
枠は毎年改編されており、最新版では、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠がある。
(エ)「ものづくり基盤技術の高度化に向けた研究開発を支援する」のは「成長型中小企業等研究開発支援事業(go-tech事業)」である。
第17問
SBIR (SBIR、Small/Startup Business Innovation Research)
根拠法: 科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律
支援内容
- 指定補助金(信用保証の特例、特許料等の減免)
- 特定新技術補助金
- 日本政策金融公庫の特別利率による融資
第18問
女性、若者/シニア起業家支援資金制度の対象者は、事業開始後7年以内かつ35~55歳男性以外の人である。
償還の据置期間は2年間と普通。一方、貸付限度額は7億2000万円、償還期間は設備資金20年・運転資金7年と起業家支援制度にしては大盤振る舞いで、セーフティネット貸付や高度化事業と同規模。差別的な支援対象といい、大衆迎合の感がある。
第19問
根拠法 | 商店街振興組合法 | 中小企業等協同組合法 | 中小企業団体の組織に関する法律 | |
名称 | 商店街振興組合 | 事業協同組合 | 企業組合 | 協業組合 |
設立要件 | 1地区1組合 | 4人以上 | ||
発起人 | 7人以上 | 4人以上 | ||
議決権 | 平等 | 平等/出資比例 | ||
株式会社へ組織変更 | × | 〇 | ||
他 | 半数が小売業・サービス業 | 半数が組合に従事 |
第20問
設問1
- (ア, イ)中小企業等海外侵害対策支援事業(模倣品対策支援事業)は産業財産権の侵害を受けている企業の侵害対策を支援するものなので不適。
- (ウ)経営法務で扱う内容だが、地域団体商標は組合、商工会、商工会議所、NPO 法人が出願できる。地域団体商標への侵害については当然、それらの組織が支援の対象者となる。
設問2
IT導入補助金通常枠の上限額が450万円なのを勘案すると、800万円は高すぎると判断できる。
第21問
設問1
- (ア、エ)「創業期」は創業5年以内を指す。
- (イ、ウ)事業計画立案から時間が経つと市場環境が変化して計画通りにならなくなる恐れがある。立案から3カ月経って操業は遅すぎるのだ。
設問2
(エ)保証限度額が2,000万円なのは予約保証である。
第22問
設問1
(エ)二重徴求はこの保証制度の趣旨に反する。二重徴求は2020年度第9問でも題材となった。
設問2
流動資産は「1年以内に現金化できる資産」と定義されているので、それを担保にしている以上、保証期間は1年以内とせざるを得ない。
第23問
設問2
雇用調整助成金制度は労働法規に絡んだ問題。
法定労働時間の上限が「日8時間、週40時間」、残業時間の上限が「月45時間、年360時間」というように、労働法規には短期と長期で二重の上限を設けるのが慣例。雇用調整助成金制度でも1年間と3年間とで二重の上限を設けられている。