事例Ⅰ
第1問
「株式会社化する以前」という条件が付されているのが不思議だが、与件文に「有機野菜事業の譲渡のタイミングで株式会社化した」と書かれているので恐らく有機野菜事業に着手する前の段階を分析させることで第3問と切り離したかったのだろう。
- 強み
- 「経験豊富な従業員」との連携による「多品種の生産」(第3段落)
- 「人と環境に優しい農業」=「最終消費者の求める野菜を生産」=「有機JASとJGAPを取得」(第4段落)
- 洋菓子の人気(第5段落)
- 弱み
- 不明確な役割分担(第6段落)
- 需給調整の困難(第6段落)
- 採用難(第7段落)
- 低い従業員定着率(第7段落)
「需給調整の困難」という弱みは農業一般に言えることなので、重要度は低い。
第2問
「獲得し定着させる」と指示されているので、獲得と定着は分けて書くのが望ましい。
- 事業への理解度を向上し獲得
- 就労体験や従業員へのOJT
- 従業員・農業関係者との交流促進
- 勤労意欲を向上し定着させる
- 残業や時間外労働に割高報酬
- 年功賃金導入
- シフト勤務導入
- 従業員の職務充実
就労体験とインターンシップはほぼ同義なので、併記する必要はないだろう。
第3問
- 当業者からの信頼維持
- 要求水準を満たす
- 当業者への依存度を下げ経営リスク低減
- 直営店や食品加工業務の強化して他業務の売上増
- 他の取引先との取引拡大
「それに加え、主要な取引先からは、安定した品質と出荷が求められていた」という不自然に付け加えられた文は注目点。
「大手中食業者への依存度を下げる」だけでなく、それが経営リスク低減をもたらすという効果にも言及すると良い。
第4問
設問1
- 各業務の専門化と役割明確化
- 機能別組織へ移行
- 機能別組織のデメリットのカバー
- 業務間の情報共有に留意
再現答案を参考にすると、機能別組織・事業部制組織のどちらを答えても良さそうだ。
設問2
- 権限委譲
- 段階的委譲
- 後継者に他業務の管理も経験させて経営者としての全社的視点の強化
- 人員配置
- 管理業務に適性のある若手従業員の管理職への登用
- 役割を明確にし適材適所
事例Ⅱ
第1問
字数制限は150字なので、3つのCについてそれぞれ40字程度を目安に書こう。
与件文には多くの情報があり全てを記載することはできない。こういう場合は、続く設問と関連する内容を選ぶのが望ましい。そのため、回答を後回しにするのも有効だ。
- Customer
- 主に宿泊施設や飲食店だったが、コロナ禍で急減(第11段落)
- コロナ禍で直営店の消費者が急増(第11段落)
- Competiter
- 直営店周辺のスーパー(第4段落)
- スーパーに納入する大手食肉卸売業者(第5段落)
- ネットショップ上の同業者(第11段落)
- Company
- 「自社工場を保有」=「顧客要望に対応可能」(第8段落)
- 取引先へのコンサル業務(第9段落)
- 卸売事業への高依存(第13段落)
備考
- Customer: 「ホテル・旅館」を「宿泊施設」と言い換えることで字数を節約している。
- Customer: 与件文の「卸売事業が9割、直営小売事業が1割」という情報はコロナ禍前なので、そのまま記述するのは不適切。
- Customer: 予備校の多くは「周辺住民や現役世代の家族」を挙げているが、与件文中にこれらが顧客であるという根拠は書かれていないので不適切。顧客が遠方から来ている可能性もある。KECとMMCの回答は妥当。
- Competiter: 直営店周辺のスーパーは、直販事業に対する競合となる。スーパーに納入する大手食肉卸売業者は、卸売事業に対する競合となる。
- Company: 3C分析はマーケティング環境を分析するためのものであることを考慮すると、「取引先へのコンサル業務」は重要。
第2問
「商品コンセプトと販路」と指示されているので、商品コンセプトと販路を明確に分けて記述するのが望ましい。
与件文の「山の幸、海の幸の特産品にも恵まれ、大規模な集客施設もあれば、四季それぞれに見どころのある観光エリアもある」という記述から提携先を絞り込もう。設問に「第一次産業を再活性化」とあるので第一次産業と提携するのが自然だが、B社の製造加工技術は食肉に特化していると思われるので、山の幸や海の幸に応用できるかは現実問題としては怪しい。X県は地元産業の振興を期待しているので、地域商標の活用も有力だ。
第3問
「顧客ターゲットと品揃え」と指示されているので、顧客ターゲットと品揃えを明確に分けて記述するのが望ましい。
アフターコロナでは消費意欲旺盛な訪日外国人などの旅行客の需要が見込める。そこで彼らにB社が得意とする高級加工品を提供するのが良いだろう。また、コロナ禍中に増えた客層を維持する努力も必要なので、調味料やレシピ提供といった品揃えの拡充も望ましい。
第4問
「どのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また、この際、協業が長期的に成功するためにB社はどのような提案を行うべきか」と指示されているので、協業対象と長期的成功の為の提案を明確に分けて記述するのが望ましい。
協業の提案としてはクライアントが中小企業であることを考慮して、コストとリスクが小さいものを選ぼう。そうなると、ミールキットのような事業に絞られてくる。
長期的成功のための提案が難しいところ。B社が長期的成功を収めるには「食品や加工技術を活かしたブランド価値の向上・浸透」や「市場独占のための仕組みづくり」が挙げられる。
事例Ⅲ
第1問
問われている「課題」とは「今後乗り越えるべき問題」という意味で、SWOT分析における「弱み」とは異なるので注意。ただし「弱み」をベースとして「課題」を考案するのは良い方法だ。
課題は解答欄に書ききれないほど多くあるので、続く設問を先に解くことで重要な課題を絞り込むのが効率的だろう。
- 販売面
- 売上回復や販売先開拓(第3段落)
- 生産面
- 設計業務の統制(第7段落)
- 人材育成(第8段落)
- 小ロット受注への対応(第11段落)
- 情報共有の効率化(第12段落)
- 納期短縮(第17段落)
第2問
「課題とその対応策」を指示されているので、課題と対応策を明確に分けて記述するのが望ましい。
- 設計業務の合理化
- 量産受注(プレス加工)と個別受注(板金加工)の担当者を分けるか、優先順位をつける(第7段落)
- 設計期間短縮
- 3D CADを導入し、取引先とより正確な情報を共有(第7段落)
- プレス加工の効率化
- 若手育成で役割分担(第8段落)
- 外段取化や段取作業者増員(第10段落)
第3問
第2問では短納期化を求められていたので、本設問では小ロット化に限定して記述できるのが望ましい。
- 総合的な生産効率向上
- 全工程における生産計画を立案
- 小ロット化に伴う在庫費用と発注頻度の増加への対応
- 生産計画を週一で改定
- 小ロット化に伴う段取作業増への対応
- 外段取化、段取作業の増員と標準化
第4問
「C社で優先すべきデジタル化の内容と、そのための社内活動」と指示されているので、デジタル化の内容と社内活動を明確に分けて記述するのが望ましい。予備校の多くは「デジタル化の内容」を「デジタル化の対象」と誤解しており、正しく読解できていたのはKECとAASだった。
社内活動については、令和3年度一次試験の「経営情報システム」第16問が参考になる。
- デジタル化の内容
- 社内連絡ソフトを導入し即時共有
- 情報のDB化
- 社内活動
- トップダウンで改革推進し確実な成果を得る
- 各課の要望を尊重する
- 研修を実施しデジタル化をスムーズに進める
- 混乱を防ぐ為段階的導入
- デジタル化を支援する補助金の活用
第5問
社長の意向として与件文に「当該事業の市場成長性と自社の強みを考慮」と「今後高価格な製品に拡大することも期待している」とあるので、これを基本方針として立案する。
- アウトドア向けという新市場開拓
- 取引先にコスト減や生産性向上の提案
- 高級品市場に進出
- 高度な金型製作技術という強みを活かす
- 市場撤退が必要な可能性
- アフターコロナで海外供給網が復活しうる
事例Ⅳ
歴史的な高難易度で、20点ほど下駄を履かされたのではないか?第1問と第2問は思考力を要する良問だが、第3問は例年にも増して煩雑で悪問。
第1問
設問1
経営分析は解答方法が定型化しているが、それに挑戦するかのように生産性指標を求めてきた。与件文の取って付けたような従業員数の記述が重要。
課題となる指標として労働生産性が想定されているのは明らか。労働生産性の定義は「付加価値額÷従業員数」である。付加価値額の定義は複数あるが、平成28年度一次試験「中小企業経営・中小企業政策」第29問において「営業利益+人件費+減価償却費」という定義が用いられたので、これを使えば正解になる。労働生産性の単位は「万円」ではなく「万円/人」である。
労働生産性の定義が分からなくても「従業員数一人当たりの営業利益」等を書いておけば部分点を貰えるだろう。
設問2
「その要因について財務指標から読み取れる問題」は、設問1で挙げた財務指標を利用する必要がある。つまり労働生産性について指摘することになる。「問題」についてはD社の課題を述べても良いだろう。
第3問
販売台数が月間で表されているので、計算ミスに注意。
設問1
問題文に「間接費のうち、30%は変動費、70%は固定費の配賦額」とある。固定費は個別固定費ではなく共通固定費配賦額なので埋没費用として扱われる点に注意。
問題文中に「取得原価は1台あたり平均50万円」と書かれているので、正解は50万円前後となるはず。この数値から大きく外れた解は誤りだと分かる。
設問2
設問1では間接費が変動費と固定費で構成されることが明示されていた一方、本問では明示されていないので違和感を覚える。問題文が曖昧な場合、自分に都合の良いように解釈して良い。
「設備投資額と在庫投資の増加額は新規の工場が稼働する2年目期首にまとめて支出される」と書いてあるが、在庫投資については大問問題文に「期首に中古車販売台数1か月分の在庫投資が必要」と書いてあるので、「CFに取得原価を考慮する必要がない」という解釈は誤り。
年間の減価償却費は残存価額を減じた値を使う必要がある。
設問3
次の理由により、予備校によって解答が分かれている。
- 「5年間の販売期間終了後には増加した在庫分がすべて取り崩される」という説明が意味不明。
- 「年間150万円のキャッシュフローが継続的に発生する」とあるが、設備には耐用年数がある。
第4問
口述試験
出典: AAS
事例Ⅰ
- 事業承継にあたり、後継者が農業経験がないことによる留意点
- 代表や常務から後継者への承継をどのように進めるべきか
- A社では新規事業の展開を考えているが、今後どのような組織体制をとるべきか
- 農業と直営店の発展に向けて必要な方策
- A社は今後、どのように事業展開していくべきか
- A社は、直営店も営んでいる中で、取引している大手中食会社とは、どういう関係構築をしていくべきか