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高校数学 東京大学2010 (平成22)年度 理系前期入試問題の解説

発想力を要する問題が多い。

「大学への数学」における各大問の難易度: C,C,C,C,C,C

解答例

第1問

(2)

東大らしい良問で、2変数関数の範囲の求め方が試されている。字数下げを用いることで、煩雑になり易い微分計算を回避する方針で行こう。

基本対称式を利用した置換をするためにbを消去する。そしてa +cを固定するとacの一次関数になる。

第2問

(2)

(1)の与式を活用する。

(2)の与式に級数が含まれているのが最大のヒント。log (m /n) = log m -log n となる事や、最左辺と最右辺が「和の中抜け」で表されている事からも(1)式を足していくのだと分かる。

(2)式の中辺のlogは、(1)の積分関数を解いたものだ。

最左辺の証明で不等式の評価を必要とするのが難所。

ちなみに、(1)だけでなく(2)も図形的考察で解くことも可能。

第3問

確率漸化式の難問。

(1)

Pm(x)と Pm-1(y)では、最初にLに入っているボールの個数が異なっているため、 「m-1回目からm回目への推移」という定石が使えない。

xの値が異なるという事は、初期値が異なる数列を組み合わせて漸化式を作るという事なので、1回目の推移を元に作る。

(2)(3)

「PnではなくP2nやP4nを求めなければならないのだから尚更難しいのだろう」と予想してしまうが、P2nやP4n だからこそ漸化式が解ける問題となっている。

りるらるの様に樹形図を描くという解法もある。

第4問

(2)

y1とy2を用いよと指示されているので、逆関数を作る。Cの方程式が2次方程式の解に似ている事からも着想できる。

(2)では(1)の結果を用いて図形的な考察をするのだが、ここでもセンスが要求される。

よく練られた問題だ。

第5問

△PQPは二等辺三角形という条件を数式化する。∠POR, ∠QORを一般角で表すのが計算が楽。

整数問題の様に両辺の偶奇の条件でmを絞ると良い。

第6問

ベクトルや相似の手法の運用を試される。方針は建て易いが計算量が非常に多い。(2)と(3)は方針だけ書いて逃げるのもアリだ。

(2)では、0 < t ≦ 2 /9のときは断面が相似の三角形なのでt2に比例するが、2 / 9 < t < 1 では相似ではないので t2に比例しない。

高校数学 東京大学2016 (平成28)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度:B,B,B,C,C,C

解答例

第1問

不等式の証明なので、微分の問題だと判断しよう。対数関数に変換してから微分する。対数関数の係数にxが含まれたまま微分すると再び対数関数が現れてしまうので、うまく式変形しよう。

第2問

問題文を読んだだけでは推移をイメージしにくく難しそうだが、1試合目から推移図を書き出してみると、思いのほか単純なパターンだと分かる。(2)で「3m回」という数が示されているのも、3試合で1パターンになっていることを示唆している。

第4問

鋭角三角形の必要十分条件を複素数平面で扱いやすいように数式で表そう。複素数平面は角度を扱いやすいのが特徴なので、「3つの内角が90°未満」を数式化する。

∠C について、公式「(γ -α) /(β -α) = (γ’ -α’) /(β’ -α’) ⇒ △αβγ ∽ △α’β’γ’」を利用すると、(z2 -1) /(z -1) = (z +1 -0) /(1 -0) である事から、「1, z, z2が作る三角形は0, 1, z +1が作る三角形と相似」と言える。この様に置き換える事で計算を楽にできる。

第5問

(1)や(2)は難問で、問題内容の把握からして大変だ。把握が難しいときはK = 1や2で実験してみよう。

(3)は(1)や(2)を誘導にした問題ではなく、無理数が無限小数である事を示す典型問題なので(1)や(2)よりも易しい。

第6問

空間図形の求積問題。この手の問題に慣れてしまえば非常に易しいと感じるようになる。

まずは点Aの動く領域を調べよう。すると円の内部を動くと分かるから、Kはz軸周りの回転体だと分かる。そこでKをxz平面で切断して考察する。

高校数学 東京大学1982 (昭和57)年度 理系前期入試問題の解説

解答例

第2問

空間図形の問題は対称性に着目するのが常道。与えられているデータは球Sの半径で、求めるのは正四面体Tの一辺の長さだから、これらが現れる断面を考察するのが筋がいい。

正三角形の重心は高さ1/3の位置にあるが、正四面体の重心は高さ1/4の位置にある。この知識を使っても解ける。

この問題にはエレガントな解法がある。頂点を正四面体Tと共有する立方体を考えると、球Sはその内接球である。

第4問

難しい微分方程式の問題。

x, yはtの関数として不明なので、tを消去する方針で行こう。まずは、合成関数の微分を利用してyを消去。するとv1, v2をxで表せる。さらにそれらを用いてdv1/ dt, dv2/ dtを作れる。

問題の簡素さとは裏腹に計算量は多く、尚且つ答えは非常にシンプルなのが面白い。

第5問

zの不等式は複雑だから一先ず置いておいて、x, yの不等式で範囲を確認してみよう。すると立体の底面は平行四辺形の内部だと分かる。y軸に垂直な平面で切断すれば断面の幅は一定値で求めやすい。

zの不等式の右辺はyの2次式になっており、yを固定すると断面が単純なものになると期待できるのだ。

高校数学 東京大学1981 (昭和56)年度 理系前期入試問題の解説

解答例

第1問

「空集合になる場合の数」と「f(n, k) = f(n, 1)を満たすn, k」の2つを答える必要があるが、小問に分けるべきだろう。前者を解答するだけでも10点得られるだろう。

第2問

頂点A1を固定することで場合の数が1/6に激減し、数え上げも可能になる。

第3問

点P(a, b)、点R(a, t2)とする。

法線の傾きは-1 /2tだ。ここで、PQに根号が含まれているという不自然な特徴に着目すると、直角三角形PQRの三角比から、b = yが簡単に導ける。

面積は、Cがxの関数、C’がyの関数となっているので、y = xで分割するのが良い。

第4問

明らかに図形的対称性のある問題なので、まずは図形的に考察していこう。平面z = tで考察すると、点A, B, Cを頂点とする円錐の断面がそれぞれ現れる。

点Pはxz平面上で動くのは明白だから、この平面上で条件(ロ,ハ)に基づく軌跡1と条件(ニ)に基づく軌跡2を調べよう。軌跡1は、円錐を母線に平行でない断面で切断しているので双曲線になる。結局は共有点の個数の問題に帰結する。

第6問

(1)条件から、f(x)とy = 1 -|x|がx = ±1で共有点を持つと分かる。故に両式を連立した際に(x ±1)で割ることができるので、字数下げが出来る。

(2)積分関数は(1)が解けなくても容易く解ける。

高校数学 東京大学2017 (平成29)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: A, B, C, B, B, C

本年度は丁寧な誘導となる小問が付いた大問が多い。誘導無しで解けるようになっておこう。

分析: 東進, Z会, 河合塾

解答例

第1問

g(θ)にθ = 0を代入してみると分母と分子がいずれも0になるので、x -1で約分できる。これに気付かないと計算が面倒になる。

(1)の誘導が親切過ぎて非常に易しい大問になっているので、(1)は不要だったと思う。

ちなみに、f(θ) = F(x)とおくと、g(θ)には「点(1, F(1))と点(x, F(x))を結ぶ直線の傾き」 という意味がある。

第2問

(1)点Pがy = x 上にあるとき、「上+右の移動回数の和」と「下+左の移動回数の和」が等しい。6秒という設定を4秒にして実験すると気づきやすい。

(2)(1)とは独立の方法で解ける。(2)の方が易しい。

第3問

(1)と(2)は別の問題のように思えるが、どちらもzが直線上を動くという設定。(2)は、(1)の直線が線分になり、α = -1としただけ。

第4問

誘導が異常に丁寧。

(4)実験によって最大公約数は常に2であると分かる。

第5問

(2)グラフを描いてみれば、傾きa = -1の共通接線が存在することは一目瞭然。但し、(1)で求めたbの式はa ≠ -1という条件なのでa = -1を代入してはいけない。

第6問

(2)円錐の底面の円周は、原点からの距離が常に1だ。よって、その円錐をx軸回転させると球の一部が現れる。これに気付けば、軸回転の求積法が楽だ。断面x = tで求積しても難しくはない。

高校数学 東京大学1995 (平成7)年度 理系前期入試問題の解説

東大数学が最も難しかった90年代の中で例外的に易しかった年度。

解答例

第1問

シンプルながら次のような工夫が求められる問題。

  • 同次式なので1変数に置換する
  • 不等式なので相加相乗平均やシュワルツ不等式を利用する

第2問

図形的には、g(x)が下に凸の関数であることを証明するという意味があるが、積分を解いて不等式を証明する方法でも良い。

第4問

整数問題ではあるが、f(n)が下凸の関数であることは容易に気付ける。

第5問

(2)座標系の持つx軸とy軸に関する対称性に着目する。

高校数学 東京大学1980 (昭和55)年度 理系前期入試問題の解説

全体的に易しい。

解答例

第1問

(1)△ABPと△BB’Pの相似に着目するのが良いだろう。

(2)△ABCと△A’B’C’も相似なので、面積を求めるまでもなく、辺の比が√2であることを利用すれば良い。

第2問

東大らしい空間図形の良問。曲面上の曲線の長さというと如何にも難しそうだが、球面Kと円弧ABがどちらも直線NSを軸としている点に着目するのがコツ。

図形に関する問題なら、対称性や角度などの図形的考察を必ず行うようにしよう。

第4問

x2 +y2 の式を作ったら、そのまま微分すると煩雑な計算になるのでz = (sin t・cos t) /2 と多項式に変換する。解の配置の問題ではなく、最大最小値の問題なので、変換時に単調性の確認は不要。ただしkの値で場合分けは必要になる。

三角関数の微分という選択肢がない分、文系の方が解きやすい問題かも。

高校数学 東京工業大学1980 (昭和55)年度 前期入試問題の解説

解答例

第2問

Math Stationのような三角関数を導入した解法より、角の二等分線の性質である”AB : BC = AD : CD”と”BD2 = AB・BC -AD・CD”を活かしてBD2 の式を作り、微分や極限を行う方が計算量が少ない。

微分するとBDは単調増加だと分かるが、BD→∞ となるとは限らない。

三角関数や根号を含む式の微分は煩雑になりやすいので避けよう。

第3問

直観的に答えが分かってしまう問題。答えを先に書いておいて、別の大問に取り掛かり、最後に本問を解くと良いだろう。

第4問

(2)

与えられた式からは平方完成が出来る事が気づきにくいのが面白い点だ。

高校数学 東京工業大学1981 (昭和56)年度 前期入試問題の解説

大問毎に難易度の差が大きく、第2, 4問は易しく第1, 3問は難しい。数学センスの良さが求められる辺りに東大入試の雰囲気がある。

解答例

第1問

漸化式と極限の問題。nが奇数と偶数の場合で振る舞いが異なるので、a2n, a2n-1でそれぞれの漸化式を作る必要がある。そのために、与えられた方程式を2n, 2n-1に関するものに変形し、それらを連立する。

これは方針で迷う難問で、数学的帰納法が使えそうだから小さいnで実験してみても、αが1/3に収束しそうだという予想が付くくらいで、手がかりは得られない。裏を返せば、「a2n, a2n-1で漸化式を作って極限を取る」という記述で部分点が得られる可能性があるということだ。

第2問

⊿ORSの面積が最大になるときの点R, Sの座標は、ほぼ直観的に分かる。この部分についてどの程度の論証が求められているかで計算量が大きく変わってくる問題だ。

計算量が増えない範囲で論証するならば、

  • 点Sを固定すると、線分OSと点Rの距離が最大になる点Rの座標は常に(1, 4)である。
  • Rの座標が(1, 4)ならば、線分ORと点Sの距離が最大になる点Sの座標は(-16/9, 4)である。

という二点は記述するべきだろう(Math Stationの論証は雑すぎる)。この程度の論証の精度で満点を得られるか定かでないが、更に高い精度を目指して時間を掛けるよりは、別の大問に注力する方が戦略的に正しい。

第3問

一般に、複数の動点がある問題の場合、相対運動と見做すことで変数を減らせる。物理学なら慣性力を考慮する必要が出てくるから安易に導入できないが、数学の問題ならそういう心配がない。

本問でも、Pを固定することで動点を2つに減らせる。厳しい制限時間があるから意外と気づきにくいのだが、これが最重要で、このことを示すだけで部分点が得られるはずだ。

三角形の面積公式は多種だが、頂点の座標が判明しているのでサラスの公式を使う。数値計算が煩雑だが、Math Stationみたいに綺麗に纏めなくても減点されないだろう。

第4問

(2)

0 < t≦1/2のときF(t) = (sin πt)/2tだが、分数関数の微分は面倒。要は(sin πt)/2t≧1 を満たすtを求めればよいのだから、(sin πt)≧2t と変形して図形的に考察するのが速い。1/2 < t≦1のときも同様。

高校数学 東京工業大学1982 (昭和57)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

半径1/nの円を半径1の円の周りに敷き詰めていくと、anとnを含む不等式を得られるので、 an/n を挟む形に変形することではさみうちの原理に持ち込める。

変数θは三角関数なので、三角関数の極限公式を利用する。

第2問

本年度の最難問。

(1)

証明すべきことが感覚的に正しいとは分かるが、如何に論証するかで悩む。

Aを(1, 0)に固定しても一般性を失わないので、この状態でBを動かしてみよう。そしてBがどの位置にあればLが 1, |a +b|, |a -b|になるか調べる。すると角度の範囲によって分けられると分かるので、角度θを導入する。

第3問

α = ±1のときは接線は最大で3つしか引けないことも明示しておいた方が良い。

図示するグラフは、縦横比や”Cの極値の座標”まで丁寧に描く必要はないだろう。

第4問

題意を勘違いし易いので要注意。「楕円を45°傾けたときの通過領域」と書けば分かりやすいのに、問題文は紛らわしい。当時の入試でも勘違いした解答が多かったはずだ。

問題自体は易しい。直線y = x で領域を分割すると楕円で囲まれる部分と円で囲まれる部分に分けれる。楕円で囲まれる部分の求積は、置換積分を使わず√(12 -x2)の形にして円の面積として求めれば速い。