高校理科 東京大学2002 (平成14)年度 物理・化学 前期入試問題の解説

物理

第1, 2問は難問だ。

解説

第1問

[I]

パイプの重心をGとする。

まず、支点a, bの両方に力を加えているのにbだけが動き出した理由を把握する必要がある。これは、A点, B点での最大静止摩擦力がA > Bとなっている為で、重心がA側に偏っていることを示す。

(1) 初めに支点bが動き出し、重心が近づくにつれて支点bの動摩擦力が大きくなり遂に支点aの最大静止摩擦力に等しくなる。

(2)パイプ中に小球が2個入っているという設定に惑わされ易いが、小球それぞれの位置や質量は無視して重心の位置のみに単純化してよい。

支点bがC点に到達すると、代わりに支点aが動き出すが、この時に支点bの摩擦係数が μ’→μ となり、逆に支点aは μ→μ’ となる。支点bが動いていた時と立場が逆転するのだ。この状況把握が難しい。

(3) (1)~(2)が誘導となっている。実は、(1)の結果をμ’/μ = Na/Nb と比の形にしてみると、AG : CG = μ : μ’と分かる。同様に CG : DG = μ : μ’も成り立っており、簡単に答えを得られる。理科の問題は比を見出すのが一つのポイントだ。

[II]

第2問

相互誘導の問題。微分方程式を利用する。

[I]

(2)式(イ)を区間[0, T]で積分する。時刻t = TではV1 = 0 だがΦ = 0というわけではない。

(4b)V1 = 0 からコイルに流れる電流は一定だと分かる。よってΦ も一定だ。

[II]

(1)スイッチSのOn/Off に関わらずV1 は図2-2のように保たれているので、式アを使わず式イだけで求められる。

第3問

各状態において状態方程式を適用する作業ばかりの基本的な問題。

化学

解説(第3問)

第1問

[II]

エ.(2)式ではCOとメタノールのモル比が等しい。問ウでCOが0.33 mol 生成すると分かったので、1 + 0.33 = 1.33 molである。

[III]

温度としてTを用いるよう指示されているが、気体の溶解度は温度に依るので、この指示は不適切だ。

オ.解は一通りではなく、V = 0.4(1 -PCO2)RT, V = 0.4PH2RT でも良い。

第2問

[I]

問題文が曖昧なので手を付けにくい。 更に、第3, 4文に言及されている数値は利用しないので何故載せているのか不明。

海水にはカルシウムなどの1~2族元素がミネラルとして多く含まれている。また、空気中の二酸化炭素が溶解して HCO3 となっている。問題文の「海水において過飽和になっていた炭酸カルシウム」という記述は非常に紛らわしい。

  • ア.Yは溶解物、Zは液体であるという情報から、電荷の和は両辺とも0だと分かる。CO2は酸性気体 だから、Yが酸性またはZが塩基性と推測できる。
  • オ.硫酸カルシウム二水和物が石膏であるという知識があれば、計算せずに解答できる。

[II]

. H2O2が H2O に変化した事から酸化剤として働いたと分かる。また、H2O2 の係数がそれを元に係数決定できる。

キ. H2O2が酸化剤として働いた結果、Co2+ → Co3+ +e と酸化して錯体を作るが、この反応は高校範囲では見かけないので難しい。

第3問

[I]と[II]でそれぞれ扱う油脂は同一の物であり、[I]で得た結果を[II]で用いたりするのが紛らわしい。

[I]

  • イ.油脂を実際に加水分解した場合には、その分解が完全に進むことはない。問題文にある「収量」とはそのように不完全な反応によって得られた生成物の量を指している。この収量は掲載する必要のない数値。
  • .2001年度でも類題が出題されたが、極性の小さい物質が有機溶媒として適当。
  • オ.ハロゲンの付加が一般的で、臭素なら色の変化が観察できる(赤褐色→無色)。また、過マンガン酸カリウム(赤紫色)で酸化することで褐色の酸化マンガンを観察できる。

[II]

キ.fは計算に時間がかかるが、二量体を形成するのは容易に分かり、整数値で答えるので解だけ書いておくのもアリ。

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