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高校物理 東京工業大学2007 (平成19)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[1]はかなり癖が強いが、全体的には易しい。

[1]

(c)

箱はベルトコンベアと付着しているときは等速運動をしている。したがって滑り始めた後は更に右側に動く。

この点が分かってないと答えを間違えることになる。箱についてのt-xグラフを描けば見落としを防げる。 外力が掛かっていても、衝突時のような撃力でなければ、微分可能な”滑らかな”曲線になるからだ。

( d)

バネ定数k0, k1. k2 のバネをそれぞれバネ1, 2, 3とする。

問題文に次のような2つの欠陥がある。こういう時は考え方を簡単に述べて逃げるのが最適だ。

バネ0の長さが最大になるのは左箱の単振動が左端に来たときだが、この問ではそうは考えない。「箱が滑り出してから付着するまでの時間は短い」というのは「左箱がベルトに再び付着したときをバネ0の長さが最大になったときとする」という意味であるが、曖昧な表現だ。

「箱が滑り出してから付着するまでの間のベルトの動きは無視できる」というのは「箱が滑り出したときの速度は0として考える」という事を示唆しているが、これも曖昧な表現だ。

(f)

「非常に」という表現があれば、定数を極端な値として考えるという事だ。バネ0が非常に弱い場合では、”k0 = 0″つまりそもそもバネ0が存在しないと考える。非常に強い場合では、2つの箱がバネではなく剛体の棒で繋がれていると考える。

[2]

(d)

一般的なPVグラフの領域を求める問題では、断熱容器内の気体における外部との仕事のやり取りのサイクルを扱う。しかしこの問題では気体は一方的に仕事をされているだけであり、気体Bがした仕事と遠心力を区分することで閉区間が生まれる。

(e)

複数な解答が考えられる問いだ。

  • (d)を利用して「(Aの内部エネの変化) -(BがAにした仕事)」を立式する。
  • 「〔A〕の結果を用いてもよい」というのは、〔A〕と〔B〕では「気体Aが断熱で体積変化が同じだから内部エネの変化も同じ」という事を示している。

気体Aは断熱変化しているからポアソン公式を適用して、p2 = 2R/Cvp0 とおける。 p2 はあくまで(d)で与えられた文字だから、(e)では用いないのが望ましい。

[3]

(a, d)

有効数字に注意。

(f)

(g)の問題文に「このように~」と(f)を解く上でのヒントが書いてあるので、この大問に取り掛かるときに最初に問題文全体を軽く読むと良い。

高校化学 東京工業大学2006 (平成18)年度 前期入試問題の解説

有機分野に難問が多い印象だ。

[1]

  • (5)イオン化エネルギーは、原子から電子を奪うのに必要なエネルギー。電子親和力は、原子が電子を受け取った時に放出するエネルギー。両者は基本的に正の値なので0にはならない。両者の和は電気陰性度に対応している。

[2]

  • (1)中和反応と燃焼反応は物質に依らず発熱反応である。
  • (5)黒鉛は固体なので、圧力は”CO2 (気) +C(固)”の方が小さい。

[5]

反応前後で温度と圧力が一定という条件なので、”モル比 = 分圧比”の考え方を使える。

[6]

(B)鉄や酸素の物質量について情報を纏めながら解くと良い。答えからFe2O3と判断できるが、勘で答えられない様に答えは0.67ではなく0.68となっている。

[8]

水酸化物で有色なのは鉄と銅だ。

  • (1)錯イオンのうち、銅を過剰なNH3で再溶解した場合のみ深青色になる。銅アンモニアレーヨンの再生に使われるシュバイツァー試薬も深青色だ。
  • (2)酸性にするとNH3 の中和により錯イオンから金属イオンに戻る。硫化物は、イオン化傾向Al以上は溶解し、ZnS, FeSは中性・塩基性でのみ沈殿する。
  • (5)ろ液Bは元々塩酸酸性だが、NaOHを加えてアルカリ性にするとZnSやAl(OH)3の沈殿が生じる。

[11]

硫酸鉄(II)が還元剤である事を知っている必要がある。硫酸鉄(III)は酸化還元反応に関与しない。先に問iiの答えが出る。

[14]

  • (1)SnCl2ではなくSn単体との酸化還元反応を考える。Snは酸化するとSn+4となるが、細かい知識だ。

[15]

選択肢6, 7に答えるには、考えられる化合物を全て書き出す必要があるが、高々7個なので意外と時間はかからない。

[16]

「アクリル酸」や「実験式」は恐らく現行課程では教わらない。

[17]

計算が煩雑で、時間内に解き終えるのは困難。簡易表記の構造式を描いていく方がミスも少ないし効率的に解けるだろう。

[18]

糖類1mol のアルコール発酵でエタノールとCO2が2molずつ発生する。

高校化学 東京工業大学2006 (平成18)年度 前期入試問題の解説

[2]

  • (イ)常温常圧では不導体だが融解すると導体になるのはイオン結晶の性質。
  • (エ)希ガスの気体は単原子分子。

[4]

(問i)問題文に、ある瞬間の反応速度はその時の[H2O2]に比例すると書かれているので、[H2O2] を求めよう。その為には最初の[H2O2] を求める必要がある。

(問ii)値を代入するだけ。

[5]

H2 (1.000 atm)捕集時、”水蒸気の分圧” = “水の飽和蒸気圧”。0.500 atmの場合は最初より低い圧力なので、水蒸気を蒸気圧を考慮しないで普通の気体として扱える(状態方程式を適用できる)。4.000 atmの場合は最初より高い圧力なので蒸気圧の考慮が必要。

0.500 atmの場合と4.000 atmの場合とでは水の物質量は変わってしまっているが、H2については不変なのでボイルの法則を適用できる。

[6]

問i

  • (5)硫酸はアルカリ土類金属以外となら可溶性の塩を作るので次第に反応が進むが、鉛の塊に希硫酸を加えると、表面だけ反応したあと緻密な皮膜を作るのでそれ以上は水素を発生させない。

問iii

この問題だけでかなり時間が掛かりそうだ。Mg, Ni, H原子の物質量をそれぞれx, y, zとおく。

  • (ア)金属が塩酸に溶けた際に発する水素と吸蔵されていた水素の和が0.41 molである。
  • (イ)電解質にはMg2+とNi2+が含まれているが、イオン化傾向が小さいNiが析出する。Mgはイオン化傾向がAl以上なので析出しない。この問題では陰極ではNiと水素が現れるが、現実の実験では水素のみが発生してもおかしくない。

[7]

(4)イオン化傾向がAl以上の金属は融解塩電解で生成する。

[8]

  • (4)どちらも硝酸銅を発生するが、気体は濃硝酸がNO2, 希硝酸がNOなので酸化還元反応式が異なる。
  • (5)ヨウ化カリウムデンプン紙は、KIが酸化されてI2 になり、これがデンプンの環構造の入り込む事で呈色する。

[9]

5, 6は「全ての異性体」なので注意。

[10]

問i, iiは細かい知識を要する難問。

  • (1)アセチレンに硫酸水銀を触媒として水を付加するとアセトアルデヒドが出来る。この過程で使った水銀が水俣病の原因となったので、現在はエチレンに(4)塩化パラジウムと塩化銅を触媒として工業的に生産されている。
  • (2)10族元素Ni, Pd, Ptを触媒として脂肪族やベンゼンの二重・三重結合に水素を付加する事が出来る。
  • (3)ナトリウムフェノキシドを高温高圧下でCO2と反応させサリチル酸を作る。
  • (7)十酸化四リンに水を加えて加熱するとリン酸が生じる。
  • (9)エチレンにリン酸を触媒として水を付加するとエタノールになる。

[13]

実験キの「もとの化合物であるかどうかを調べる」という記述が曖昧なので不適切問題。

高校物理 東京工業大学2008 (平成20)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[2]

非常に不親切な問題文で何をすればよいか分からないが、ポワソンの式の導出過程を記述するだけ。暗記&忖度だけが要求されるので殆ど不適切問題だ。

(a)

ΔV = (正)ならば、気体は外部に仕事をしているのでΔE = (負)の筈だ。同時に、U = 3/2 PVだからΔP = (負)の筈だ。

断熱過程では体積だけでなく圧力も変化するが、ピストンを動かす際は力が釣り合っていると近似するので、ΔE = -pΔVとなる。

(c, d, e)

近似式が示されている場合はそれを元に立式する。示したい式にはTが含まれてないので、T +ΔTを近似式で変形した後に関係式T = CVaを近似式の形にするためには微小量の項が必要なので、ΔTとΔVを加える。を用いてTを消去するというシナリオを考える。

関係式 T = CVa を繰り返し使うのが印象的。

[3]

〔A〕までは基礎的だが〔B〕からは状況把握が難しく時間を浪費しそうなので後回しが良いだろう。題材が面白いが、装置が特殊なため、状況把握の程度が成績に大きく影響してしまう。よって物理の学力を試す観点からは劣っている。

(c)

ローレンツ力により円運動する荷電粒子の周期(角速度)は、比電荷q /mと磁束密度Bによって決まり、速度には依存しないのだ。

(d)

〔A〕では、粒子はYによる加減速に関わらず周期的な円運動をすると判明した。

図を描いて考察してみれば、粒子が通過するYは1回目と2回目で電位差の符号が逆になっているものと分かる。さらにりるらるのように、粒子の周期Tと交流電圧の周期1 /fn をプロットしたグラフを描いてみよう。

(f, g )

最初の半周と最後の半周では円運動の半径・速度が等しい。

粒子がスリットをd /2ズレて通ったという事は、スリット内のギリギリを通ったという事だから、質量の誤差の最大値を示す。

[4]

(d)

弾性力kxと静止摩擦力4kl/3を比較する。μ = 2μ’, kl = 3μ’mgと指定されているので、動くか静止するかの判断が出来る。

(e)

(c)と同じように、xは二次方程式の解なので候補が二つ現れる。(c)の場合は解の正負で判断できたが、今回は一筋縄ではいかない。Eの大きさが分からないせいでxの大きさも分からないのだから、(c)で得た式においてx > lとすればE > 8kl2 と分かる。

(f)

具体値を求めなくても良いなら、イメージでほぼ正しいグラフを描ける。

高校化学 東京工業大学2005 (平成17)年度 前期入試問題の解説

[2]

  • (2)沸点とは、液体の蒸気圧が外圧と等しくなる温度のこと。特に断りが無ければ外圧は大気圧を指す。よって溶質が溶解しているか否かに関わらず、溶液の沸点における蒸気圧は大気圧に等しい。
  • (4)シュルツ・ハーディの法則によると、電解質のイオン価数が1増えると凝析効果は60倍になる。
  • (5)デンプンは親水コロイドなので、多量の電解質によって塩析する。

[3]

圧力の単位が[atm]だが、[Pa]と同じように計算できる。問iiはモル比 = 分圧比を使うと速い。

[5]

速度定数は、温度と触媒によってのみ変化する。

[6]

  • (4)NaHSO4 は強塩基NaOHと強酸H2SO4 による塩だが、H2SO4 は二段階電離するので溶液は酸性となる。一方NaHCO3も酸性になりそうだが、HCO3 は水溶液中で不安定なため、H2O +CO2 に分解するため塩基性となる。
  • (5)一般に、二段階電離において、二段階目の電離度は一段階目と比べて遥かに小さい。

[7]

(4)銑鉄は数%の炭素が含まれているため脆い。そこで転炉で酸素と反応させCO2 として除去して鋼とする。

[8]

  • (エ)熱濃硫酸は酸化剤として働いた後はSO2となる。ちなみにSO2 は還元剤として働いた後は SO42-となる。
  • (オ)硫酸の第二電離は、電離度が小さい事とHClの存在によって起きにくい。

[10]

チオ硫酸ナトリウムの酸化還元反応はマニアックだが、反応式は与えられているので大丈夫。酸素飽和濃度という概念が見慣れないので、現行課程では扱ってないのかもしれない。

[11]

(問iv)燃焼に際して化合物Aが持つ酸素原子も燃焼に寄与することに注意。

[13]

  • (2)グリセリンの硝酸エステルはニトログリセリンと呼ばれ、爆薬や狭心症治療薬となる。ニトロセルロースも硝酸エステルだ。
  • (6)酵素は強い選択性を持つのが特徴で、主な酵素と基質は一対一に対応している。スクロースにはインベルターゼ、デンプンにはアミラーゼ、マルトースにはマルターゼが作用する。

[14]

ゴムが一種類のモノマーから構成されている場合、そのモノマーの炭素数は4である。具体的にはイソプレン(天然ゴム)、1, 3-ブタジエン(BR)、クロロプレン(CR)がある。

合成繊維や熱硬化性樹脂が主に縮合重合なのに対して、ゴムや熱可塑性樹脂は主に付加重合だ。

高校化学 東京工業大学2004 (平成16)年度 前期入試問題の解説

[2]

(4)ショ糖水溶液の蒸気圧は純水のそれより常に低いので、純水が蒸発し続けていずれ空っぽになる。

[3]

NaCl型は面心立方格子に似た構造。CsCl型は体心立方格子に似た構造。

[5]

(問A)生成熱は、生成物1 molあたりの反応熱を指す。

(問B)未定係数法で3元連立方程式を解く事で熱化学方程式の係数を確定できる。そして「生成熱 = (生成物の反応熱) -(反応物の反応熱)」を利用する。

[6]

低濃度の酢酸水溶液に高濃度の酢酸水溶液をx (mL)加えて電離度を高めたい、という問題。初めの電離平衡から新たな電離平衡に移るが、平衡定数は不変という点に着目する。Ka = Cα とする問題はよくあるが、ここでは電離度が与えられているので、Cα2 /(1 -α)でKaを求める。

[7]

(3)CuSO4 は五水和物の青い結晶が有名だが、無水物は白色。

[8]

  • (2)生成物のH2SiF6 の酸化数を確認すれば分かるように、ガラスの腐食は酸化還元反応ではない。
  • (4)緩衝液のpHは、弱酸(弱塩基)とその塩の濃度比に依存する。

[9]

  • (1)酸の強さはH2SO4 > HCl > HSO4 なので、H2SO4 が第二電離まですることはない。
  • (4)可逆反応なので反応式からは判断できない。
  • (5)次亜塩素酸はオキソ酸の一つなので酸化剤となる。さらし粉はアニリンと反応して赤紫色になるという知識からも分かる。
  • (6)AgF は電気陰性度の差が大きいので水溶性がある。
  • (7)そもそもヨウ素デンプン反応にヨウ素ヨウ化カリウム溶液を使うのは、ヨウ素が水に難溶だから。KI水溶液にCl2を加えると酸化力の違いによりI2が遊離してヨウ素デンプン反応を起こせる。

[10]

やや細かい知識だが、CrO42-はAgと赤褐色沈殿を生じる。ちなみにPb やBaとは黄色。さらに酸性条件下で酸化剤の Cr2O72- となる。クロム酸の物質量の変化に注意。

[13]

微妙な判断を迫られる難問。

  • (ア)ヒドロキシ基やアミノ基は親水基だが、アニリンは難溶で、フェノールはある程度溶ける。
  • (イ)NaOHと中和反応を起こすのはどれかという問い。

研究: (ア)について、受験で登場する化合物の範囲内ならば、「親水基数 : 炭素数 = 1 : 3以下」なら水によく溶けると言っていい。 サリチル酸やフタル酸も難溶性だ。

[14]

(6)はベンゼン環のCも含む引っ掛け。また、ケトエノール互変異性にも注意。

[16]

分子量と、CとHの存在比の情報から(1, 5), (2, 5)の組み合わせに絞れる。後は、炭素が24mg含まれているという事が分かっているので、これを利用して、Cと全体の質量比で絞るのが速い。

[18]

(問i)幾何異性体も考慮する必要がある。

高校物理 東京工業大学2009 (平成21)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[1]

(a)

最初からイメージし難い問題だが、Aが壁から受ける垂直抗力が減少していき、0になった時に壁から離れる。

(c)

バネ定数はkなのでT = 2π√(m /k)…としたいところだが、バネの両端に錘が付いているので挙動が異なる。重心を基準にすれば両端は同周期の単振動と見做せるので、点Pから見た運動方程式を組み立てる必要がある。

直感的な説明としては、両端に錘があるので弾性力が2倍になると言える。またはバネの中点が実質的なバネの端となるのでバネ定数が2倍になる(直列バネなので”1 /K = 2 /k”が成り立つ)とも言える。

いずれにしても、二つの錘の質量が異なると直感的に答えを出すのは難しいので運動方程式を作れるようになっておこう。

(d)

バネの長さは、初期値 = L –l だったのでLs = L –l となりそうだがそうはならない。t≧0では重心が運動エネルギーを持っているし、二体が単振動するのでバネ定数と振幅が変わっている。これらを考慮すればエネルギー保存則に基づいて解ける。

小問の流れを沿えば、単振動の方程式に特殊解を代入するのが自然な解法。

エネルギー保存則を確認すればミスを防げる問題だった。

[2]

(b)

静電エネルギーを時間微分する事で静電気力を得た。これはF = QE /2 と表される極板間引力である。

(c)

極板には下向きに静電気力と重力が掛かり、上向きに弾性力が掛かる。これらが釣り合う位置が振動中心xcである。振幅はD -xc である。

3種類の力の釣り合いを扱うので、複雑な式になる。

(d)

直列コンデンサの合成容量は、バネの直列接続や抵抗の並列接続と同じ逆数和になる。並列コンデンサの場合は板を繋げ合わせればよい事を考えれば思い出せる。

(f)

(e)で得た式Q = C0V0(1 -3b /2D) はbの部分がtの一次関数である。よってdQ /dt = -3C0V0 /2D・db/dtは、平行線が交互に出現する。

[3]

熱気球が題材だが、2原子分子の内部エネルギー = 5 /2・nRTが当然の様に出てきている。

計算過程で似たような文字が大量に出てくるので慎重に計算する必要がある。しかもpとρが紛らわしいので併用するのは止めるべきだ。

(e)

張力なしで力が釣り合う状態を立式すればよい。使ってよい文字に指定が無いので、T3 = T0(mn +M) /mn のままでも正解とすべきだろう。

高校化学 東京工業大学2013 (平成25)年度 前期入試問題の解説

分析

[1]

  • (1)浸透圧はπ = nRTと表されるので重力加速度は無関係。
  • (2)ショ糖は二糖類スクロースのことだが、糖類は非電解質だ。
  • (5)凝固点降下度や沸点上昇度は分母が溶液ではなく溶媒となっているので注意。

[2]

様々な数値が出ており把握しにくいので、図と共に整理するのが良い。

問ii

ある物質の気体に対するヘンリーの法則は、容器内の気体部分が混合気体となっていても成立する。2020年度入試[4]でも同じ考えを使う。

状態A, Bでの不変量は温度や酸素の物質量なので、これを元に立式する。

気液平衡の問題では、状態変化の前後でボイルの法則(PV = const.)を適用する場合が多い(実験5で気体と溶解した酸素の物質量が示されている事も気づく為のヒントだ)。このときVには溶解した気体も加味するのだが、体積で見たヘンリーの法則で算出する。

問iii

燃焼反応が起きているので、反応式を立てて物質量の増減を確認することになる。

ところが物質量について分かっているのは酸素のみなので、メタンと酸素の分圧を状態方程式を使って物質量で表す。物質量として溶解した気体の体積も含める必要があるので、ここでも体積で見たヘンリーの法則を使う。

[5]

情報量が非常に多く、如何にも時間が掛かりそうな中問である。

  • (実験1)アルカリ金属、アルカリ土類金属は水と激しく反応する。
  • (実験2)銀はイオン化傾向が非常に小さいので、単体になり易い。銀鏡反応はアルデヒドと硝酸銀の酸化還元反応である。
  • (実験4)Pb, Cu, Agは熱濃硫酸と反応し、かつZnと反応して黒色沈殿を生じる。青錆の正体はCu(OH)2である。酒石酸と来たらフェーリング反応だ。Cu2+(酸化数2)を還元してCu2O(酸化数1)となる。
  • (実験4)白い硫化物を生じるのでZnと容易に分かる。水酸化物はアルカリ金属・アルカリ土類金属以外は沈殿するので、KOHにより錯イオンを生じたと分かる。電気分解では、イオン化傾向はZn > Hなので単体が生じない。
  • (実験5)イオン化傾向がPb以上なら塩酸と反応する。

[6]

問題文から緩衝液がテーマだと分かる。

問i

計算は特に要らない正誤問題。

  • (1)NH3 は弱塩基なので[NH4+] = [OH] = √cK が成り立つ。
  • (4)弱塩基と強酸の中和なのでpH ≠ 7だ。中和後のH+ の在り処を探すとNH4+ にあるので、このイオンについて電離平衡を考えよう。

問ii

問i(1)で使った式を再利用して値を代入していく。

問iii

問iiを利用する事を念頭に置こう。Dは緩衝液なのでH+は追加投入した溶液Aに全て由来する。NH4+とNH3の濃度比を確定できるので、電離平衡の式と問iiの解を組み合わせる。

[7]

問iでは目的化合物は製法1~3は同じなので、xで割る計算は不要。

[8]

問i

  • (1)価電子数は最外殻電子の数、原子価は不対電子の数。
  • (2)意地悪な問題。「すべて」という言葉には要注意だ。

[9]

Dは自身がエステルの環構造を持っている。還元性があると言うのでアルデヒド基だと思ったらシュウ酸。とことん盲点を突いてくる難問だった。

高校物理 東京工業大学2011 (平成23)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[1]

二体が衝突を繰り返すので、運動量保存と反発係数を軸に考えていく。

(d)

(a)~(c)までは基本問題だったが、ここから急に難しくなる。

錘1, 2について2, 3, 4回目の衝突後の速度を順に算出していく単純な方法では計算が膨大になりそうだ。小問一つあたりの解答時間は高々10分と想定されている筈だから、この方法は誤りだと判断できる。

そこで、漸化式の様な手法を用いたい。速度について直接的に漸化式を作るのは困難だが、運動量と反発係数について漸化式が作れる。(c)を誘導問題と見なすのがポイント。解法を知っておかないと難しい。

(e)

単振り子の性質への理解が問われている。周期は錘の質量や速度に依存しないので、衝突しても周期は不変だ。衝突は常に最下点で起きるという条件があるので、振り子の軌跡が分からなくても衝突時刻は分かるという訳だ。

(f)

「初めて元の状態に戻った」というのは、錘の位置だけでなく速度も含まれる。よってt = 10t0のときに錘1, 2は静止している。ここから、錘1について衝突1の直前と衝突3の直後の速度が分かる。

最初の衝突錘1, 2は3回衝突するので、各回について運動量保存と反発係数の式を立てる。計算量が多いのでM1 /M2 = xとおくと快適。

答えに辿り着くまでが大変だから、 M1 > M2 だけでも示せば部分点が得られるだろう。

〔2〕

(a)

電磁誘導の法則は使いにくいので、導体中の電荷のローレンツ力で考える。

(b, d)

導体全体が抵抗を持っているが、回路図を書く際はルート毎に1つずつ抵抗器があるとすればよい。そして回路方程式を立てる。

(e)

グラフの通り、コイルがあると時間よって電流が変化するのが特徴である。よってこれを利用して回路方程式を連立して解く。

グラフと自己誘導起電力”V = -L dI /dt”を比べると、”dI /dt = I0 /T” が分かる。よって回路方程式”LI0 /T = E”が得られる。さらに前問で得た回路方程式と共に連立する。

(f)

t2は自己誘導に依存しているので、グラフから自己誘導起電力を含む回路方程式を立式する。

〔3〕

(a)

問題文が曖昧な悪問。(ア)は何と何の光路差を求めるのか明示されてない。(ウ)についても、「音波による反射」は音波自体が反射するとも受け取れるし、「与えられる」では何を示せばよいかわからない。

(d)

(b), (c)を元にΔf = w /dを得るので、Δfは音波の性質のみに依存すると分かる。

高校化学 東京工業大学2009 (平成21)年度 前期入試問題の解説

今年度までは常識的な難易度だったが、次年度から狂気が始まる。

分析

[1]

問i

  • (ア)亜硝酸アンモニウムは水と窒素に熱分解する。いきなりマニアックな問だが、〔iii〕を先に読んでアンモニアとの関係から推測すればよい。
  • (イ)ソーダ石灰は塩基性の乾燥剤で、これに通す事で水蒸気を除去している。
  • (オ)水がHClを吸収し、濃硫酸が水蒸気を吸収する。

問iii

平衡を扱うのでバランスシートを使う。物質量は窒素は1、水素は2としてよい。

[2]

(ii)は解を得る為の条件が足りてないように見える。しかしボーキサイトの質量のほか、融解塩電解時の物質量に関しても制約を受けるので連立方程式を立てれる。

[3]

問iii

  • (1)中和滴定と違い、酸化還元滴定は水溶液の水の量を考慮する必要はない。
  • (3)デンプンはヨウ素ヨウ化カリウム溶液と反応して紫色になる(ヨウ素デンプン反応)が、この実験とは関係ない。
  • (4)MnO4-は酸性条件下では還元されてMn2+ となるが、中性・塩基性条件下では MnO2となる。
  • (6)この実験は、シュウ酸を軟マンガン鉱で酸化し足りない分を過マンガン酸カリウムで補う事で軟マンガン鉱の量を測っている。

[5]

化合物AがO原子2個を持つことと、加水分解により化合物Bのみが得られたことから、Aは環状化合物と分かる。東工大化学の構造決定問題は環状化合物が頻出だ。

問i

ヨードホルム反応陽性となる官能基にOが付いていると反応しないが、アルデヒド基にOが付いていても還元性を持つ。

[6]

酢酸ナトリウムをNaOHで脱炭酸反応を起こすというメタンの製法の一つ。

[7A]

問i

セルラーゼ、アミラーゼは名前から分解対象となる基質を推測できる。ペプシンの名前はペプチドと関連している。

ペプチドを分解する酵素には、タンパク質をポリペプチドに分解するペプシンとトリプシン、ポリペプチドをアミノ酸に分解するペプチターゼがある。

問ii

ビウレット反応は、二つ以上のペプチド結合を持つ場合に二つのNがCuに配位結合することで赤紫色となる。 と言っても、Aから二つのαアミノ酸が得られると書かれているので、この情報は特に必要ない。

化合物Aの分子式と、これを分解すると二つのαアミノ酸が得られるという情報だけから化合物B, Cが特定できる。

問iii

化合物Aの分子式から、BとCのいずれかが塩基性アミノ酸・リシンであると分かるので、塩基性かそうでないかで電気泳動の結果に違いが生まれていると予想できる。

DはCにメタノールを作用させている(カルボキシ基を無くした)ので、DとEも塩基性だろう。したがって、構造決定するまでもなくCが答えと分かる。

[7B]

そもそもスチレンとブタジエンの構造を憶えている必要がある。行程が長いので、図で書き出すと良いだろう。平均分子量が与えられているので、外堀から埋めるイメージで情報を確定させていこう。