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高校物理 東京工業大学2012 (平成24)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[1]

(b)

衝突についての問題なので運動量保存則を利用する。

非弾性衝突でも運動量保存則が成り立つ。それを確認するには、物体の速度が「一方が0」または「正負が逆」のように単純な条件でイメージすると良い。

(c)

力が釣り合っている状態を立式するとθとωを変数とする式になるので、θの範囲に当てはめればよい。

ωに下限があるというのが直観に反するので難しい。円錐振り子の回転を想像すると分かりやすい。

ωが負の値を取ることも可能なので、出題の詰めが甘い。

(d)

「重力加速度gを使わずに」という部分は、(c)が伏線になっている。

(e)

(d)で得た力の式(Fとする)を近似を用いてF = -kx の形に変形していく。具体的な方針としては、Fに含まれる変数はcos θとsin θであるのでこれを一つに纏める。Δθ = θ -θ0 なのでこれを代入して近似を適用しよう。

後は単振動の周期 T = 2π√(m /k)に代入する。周期の式はF = -kxからも再現できる。

(f)

空間的に考察するが、問題文で描かれる状況を丁寧にイメージすれば難しくない。

[2]

(a)

直列コンデンサの合成容量は、バネの直列接続や抵抗の並列接続と同じ式になる。

(b)

板PにはQ個の正電荷があり、板A, Bにペアとなる負電荷が集まってくる。回路がアースされている事でQA +QB = -Q が成り立つ。

電場はE = Q /εS で表される。また、スイッチが閉じているのでキルヒホッフ第2法則が使える。

(c)

電場は正負の電荷のペアがあって生まれるものなので、板Pの電荷もコンデンサの電荷として扱う。

(d)

静電エネルギーの変化量は、xとx +Δxのときの静電エネルギーの差を求めるだけだが、(c)で得た静電エネルギーの式をxで微分してΔx倍するのが速い。力についても静電エネルギーの式をxで微分するだけだ。

微小な項を無視できると指示されている場合は、「微分しても答えが出せる」というメッセージだ。

(e)

x = d /2 は静電気力としては不安定な釣り合いだ。一方でバネにとっては安定な釣り合いだ。つまり、安定な釣り合いが優位となる条件を求める。バネは2個ついているので弾性力は2倍となる。

(f)

(e)の結果は無関係。問題文にあるように、I = dQA /dt を解いていく。

[3]

(a)

音波は疎密波である。最も密なときと疎なときは変位が0なのは憶えておくと得だ。

(e)

「必要ならば近似式を用いよ」と指示されているが、こういうのは無理やりにでも与式を近似式の形が出てくるように変形していく。

(g)

第3問はここまで簡単だったが、これだけ難問だ。しかし(e)(f)の誘導を活かして素直に式変形と近似を使っていけばよいだけだ。

高校物理 東京工業大学2010 (平成22)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[1]

(c)

衝突時のBの鉛直方向の変位は0なので、 運動量保存則を考えると最高点は”P→Q”の軌道における最高点と同じになりそう。ところが運動量保存則は、無条件に水平方向・鉛直方向に保存されるわけではない。それは、ボールを壁に斜め45°から当てる様子をイメージすると分かる。運動量保存則は”壁に対して”水平方向・鉛直方向に保存されるのだ。小球は斜面に垂直に衝突しているので、衝突後は速度ベクトルが逆向きとなる。

衝突後にBが変位するのだから、小球の衝突前後の速さは異なる。

変位の方程式やエネルギー保存則を使った解法がある。また、軌道が通過する2点が分かっているので、数学的に放物線の方程式を確定させる方法もある。

(d)

衝突時に小球は水平方向の運動量の一部をBに奪われる。同じ大きさの鉛直方向の運動量を床に撃力として吸収される。斜衝突では角度が大きいほど小球の運動量保存に於いてロスが生じるのだ。

水平方向は運動量保存則が成り立つ。また弾性衝突なので力学的エネルギー保存の法則も成り立つ。計算過程で次数下げのテクニックが使える。

「m, M, v0 を用いて表せ」と指示されているが、m, Mを用いなくても表せる。これは(f)の問題を示唆している。

りるらるで述べられているように、小球の衝突後の軌道を(c)で想定したものを前提としない場合は異なる解になる。

(f)

衝突時の保存則、小球の軌道が確定しているので、質量比を求められる。(d)を利用して解くのだが、この問題も小球の衝突後の軌道を(c)で想定したものを前提としない場合は異なる解になる。

[2]

(a)

イメージし難いかもしれないが、天体内部の重力と同じ仕組みだ。地球トンネル(万有引力による単振動)を知っていれば受け入れやすい。

(b)

ここでの静電気力は弾性力と同じなので、rで積分すればよい。

(e)

次の小問(f)の記述がヒントになる。

[3]

(d)

温度が幾つになったのか文字が置かれてないが、自分で文字dを置いて(c)と同じように熱力学第一法則を立式する。問題文中で使われている文字としてdが飛ばされている事からもこの方針に気付ける。

方程式を解くためにdについてもう一つ式が欲しい。気体のdは温度に関する文字なので、気体の状態方程式を作ろう。

多くの式が入り乱れて計算が煩雑だ。

高校物理 東京工業大学2013 (平成25)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

今年度辺りから問題は基本的だが深い理解を問う形式に変化してきた。簡単なようで意外と思考力を要し、各予備校も評価を誤った。

[1]

(a)

エネルギー保存則の式を変形して「vA2 -vA2 = vB2 -vB2」、運動量保存則の式を変形して「vA -vA‘ = vB‘ -vB」 とすれば煩雑な計算を回避できる。二次式を差の形に誘導する数学的テクニックだ。

2物体の弾性衝突と同じように速度が交換するのが面白い。

(c)

〔B〕では速度に動摩擦力、重力の影響が加味された。

(d)

このような条件下でも、紐の撃力による速度交換が起きる。

文字T1は中問では与えられてないので使ってはいけない。

(e)

重力gに慣性の加速度が加わり見かけの重力√(g2 +a2)となる。そして「十分に振幅の小さな周期運動」とあるから単振り子の公式に当てはめる。

(f)

周期性があり、バネの挙動に似ている。

加速度運動の影響を除けば運動量保存則が成り立っている。

[2]

(b)

実験の様子をイメージすると、棒2がx正向きに力を受け加速する一方で、棒1はx負向きに力を受け減速する。これによりいずれ両棒は速度が一致する。

起電力を発生させる因子は、V = vBl より「棒の速度」「磁束密度」「棒の長さ」の三つだ。電流が0という事は起電力の総和が0という事であり、v1 -v2 = 0と分かる。

電流が流れてないからと言って、電位差が0とは限らない。それは棒内の電子におけるローレンツ力の発生を考えると分かる。二つの棒が磁場中を動くから逆向きの誘導起電力を生じるのだが、二つの電池を逆向きに配置している様なものなので、レール間で電位差が生じるのだ。当然ながら、磁場中でなければ電位差は生じない。

(d)

  • (オ)(b)が足掛かりになっている。運動量 = 力積の等式を使うだけだ。
  • (カ)IとΔtからΔqを連想し、そこからCを使う事を考えよう。
  • (キ)マイナスが付くのに注意。

(e)

(b)の応用。

[3]

(b)

(カ)は発想を要する。LAC -LBC≒da /L というヒントや、Sをlずらしてもスクリーン上のdズレた位置では光路差が不変である事実から、光路差について立式しよう。

(c)

(ケ)は煩雑な三角関数の計算が必要だが、そこまで手が回らないだろう。

高校化学 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (1)原子番号は陽子の個数。原子量は陽子と中性子の総和にほぼ一致する。原子量は12Cを基準とした量だから、同位体を持つ水素の原子量は1より大きい。原子量は元素の存在比で補正されたもので、同位体の区別がない。
  • (2)三重水素(トリチウム)は放射性同位体。
  • (3)予備校の間でも正誤判断が分かれた。
  • (4)クーロン力は距離の2乗に反比例する。

〔2〕

  • (2)ボイル・シャルル則はP, V, Tの関係式だ。
  • (5)モル分率の考え方で瞬殺できる。

〔3〕

  • (1)生成熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和)
  • (2)生成熱は単体から生成する際に生じる熱の事だから、エタノールの反応式は2C(黒鉛) +3H2 +1 /2 O2 = C2H5OH +Q となる。左辺の物質の生成熱の方程式の熱量を、係数を掛けた上で足すだけ。

〔4〕

(i)

気液平衡がテーマなので、ヘンリーの法則を意識しよう。V0の数値もヘンリーの法則から出せる。

分圧の考え方から、アルゴンの注入は酸素の溶解に影響しないと気づこう。

操作毎に新しい気液平衡になる。V1 はヘンリーの法則から求められるはずだが、その為には「操作1回目での気体部分の酸素の分圧」を知る必要がある。そこで、操作前後で「ピストン内の酸素の1×105Pa での体積」が不変である事を利用して立式する。

(ii)

まるで数列の問題だ。実際、公比1/5の等比数列となっており、東工大らしさが出ている。

計算できなくても予想はできる。解答欄は2桁用意されているが、手計算なので計算を多く繰り返させるとは考えにくい。またこの手の問題は切りの良い数字が答えになっている場合が多い。

〔5〕

Kc = [X]2 /[X2] = (2nα /V)2/ {n(1 -α) /V}

である。X2が分解して同じものが二つできるので、Xのモル濃度は二つ合わせたものを2乗する。

第II問

〔6〕

(5)の様な選択肢を出すのはやめて欲しい。勉強が個人や社会にとって単なる浪費でしかないことを感じさせる。

  • (1)Cr, Mnなどの8族までの遷移元素は、その族番号が最大酸化数になる事がある。
  • (2)NH3 が配位子となって錯イオンを作るのはAg+, Cu+, Zn2+である。
  • (5)Fe3+ は基本的に赤系の沈殿を生じるが、ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウムK4[Fe(CN)6]では例外的にベルリン青と呼ばれる濃青色沈殿を生じる。憶えにくいが頻出だ。ちなみに Fe2+ では青白色であり、この色の違いを利用したのが青写真だ。
  • (6)Cu(OH)2は60~80℃で分解してCuOとなる。

〔7〕

フッ素は暴れん坊である。

(3)KClO3とH2O2 はMnO2を触媒として酸素を発生する。

〔8〕

(6)ファラデー定数は「電気素量とアボガドロ定数の積」と定義されている。

〔9〕

酸化還元滴定の典型問題だが、酸化還元反応の知識が必要で、半反応式を立てたり長い計算があり意外と大変。

硫酸が存在するのは過マンガン酸カリウムを酸性条件下の酸化剤とする為だが、解答に有効数字が指定されていないのが引っ掛けで、硫酸のモル濃度の有効数字である2桁に合わせてしまうと、この数値は計算で使用していないので誤りとなる。

総合的には難問だ。

第III問

〔11〕

  • (2)ケトン基はC-C(=O)-C、アルデヒド基は C-C(=O)-Hであり、いずれもカルボニル基の一種。
  • (4)カルボニル基は求電子性が高い為、NH2 は陽性を帯び塩になりにくい。
  • (5,6)ホルムアミドの様に、HC=O やNH2の部分だけでも加水分解できる。

〔12〕

  • (1)ナイロン6とナイロン66はいずれもカルボキシ基とアミド基を持つ。
  • (3)加水分解するとポリビニルアルコールとなり水溶性を持つ。

〔13〕

  • (2)一次構造はポリペプチド鎖を形成するアミノ酸配列、二次構造はタンパク質を形成するポリペプチド鎖同士の水素結合(α-helix, β-sheet)、三次構造はタンパク質を立体化する側鎖間の結合。ジスルフィド結合は三次構造の一つ。
  • (4)アミノ基は塩基性条件下そのままなので、中性である。
  • (5)ニンヒドリン反応はアミノ基の検出法。

高校物理 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[2]の荷電粒子のドリフト、[3]の気液共存線など、大学教育のウォーミングアップ的な色の強い出題だった。

[1]

二体問題は運動量保存則や相対運動や重心を意識しよう。

(d)

単振り子の周期は一般に2π√(l /g)と表せる。ちなみに単振動の周期は2π√(m /k)である。ど忘れした時は単位がs(時間)である事を利用して組み立てよう。

Qの軌道はx軸方向と平行と近似して計算する。a = -ω2x を憶えていれば組み立てられる。

  • (ア)C点は単振り子の振動中心と見做せる。
  • (イ)振動中心の速さは「振幅×角振動数」で速く導ける。力学的エネルギー保存則も使える。

(e)

運動量保存則の式は対称性があるが力学的エネルギー保存則の式はmghがあるので対称性が無いのに注意。

(g)

二体問題だから相対運動に着目するのが筋が良い。何をさせたいのか分かり難い問題文な上に計算が煩雑なので捨てても良いだろう。

(h)

重力gに慣性の加速度が加わり見かけの重力√(g2 +a2)となる。そして「十分に振幅の小さな周期運動」とあるから単振り子の公式に当てはめる。

(i)

難問。

Qが斜面上で周期運動をするという事は、斜面に垂直な方向の力が釣り合っているという事だ。これを立式する。

さらに、外力Tを加えているときにQが存在しないとするとT = Maだが、Qがあると垂直抗力のx成分が加わる。

[2]

〔C〕では荷電粒子のドリフトがテーマだった。荷電粒子は常に垂直方向に力を受けるので、電場の方向に”落ちる”ことなく、横に移動していく。直感的には予想しにくい動きなので、知っていないと難しい。

(b)

直観的に導き難いが、これはy軸を90°時計回りするとx軸に一致し、 x軸を90°時計回りするとy軸逆向きに一致する性質に由来する。

(f)

相対運動の設定なので、相対速度に着目する。そして前小問を利用して立式する。

ここで、(e)で求める文字に「F’」とダッシュが付いていることに注目。これは出題者による「(b)と比較せよ」というメッセージだ。

相対運動への深い理解が試された。

(g)

荷電粒子の動き始めの速度の向きに注目しよう。前小問において観測者から見ると荷電粒子は動き始めはx負の方向に速度を持つので、この円運動はx軸を接線に持つと分かる。

マトモに考えると難問だが消去法でも選べる。粒子はx軸方向に移動していくので9, 10は消去。5, 6, 7, 8の形は、次問(h)で直径などを調べさせるのを考慮すると、定数が定まらない(1, 2, 3, 4を包含する)ので正答である確率が低い。荷電粒子の電荷を考えると2, 4も消去。

[3]

気液共存がテーマ。2009年度東大物理で同様のテーマで出題されているので、これを参考にして問題作成したのかもしれない。数学だけでなく物理も10年以上前の東大入試を研究する意義はありそうだ。

定義される文字が多い上に文字設定も非合理的で混乱を来す。やる気を激しく削ぐ配慮に欠けた問題文だ。効率を上げる為に文中の文字の定義の部分に下線を引いたり図に書き込むと良いだろう。

(a)

化学寄りの問題。

蒸発熱は、沸点温度(T0)の液体が気体に状態変化する為の熱量。(ア)は水をその温度まで引き上げるのに必要な熱量である。

ちなみに化学では比熱(J /(g・k))、物理ではモル比熱(J /(mol・k)) が用いられる。

(e)

蒸発により水の体積が減少しているのが要所。

(f)

「仕事 = 力×距離」だが、圧力P0 が一定なのに対してバネは漸増するので注意。イメージすると間違えない。

(g)

水を T0 からT2まで引き上げる熱量も含まれる。

高校化学 東京工業大学2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (1)硝酸や熱濃硫酸に溶けるのはAgまでで、AuやPtは王水(濃硝酸3:濃塩酸1)で溶けるツートップだ。
  • (2)Cr2O72-は酸化数6で、Crは第6族だから最高酸化数になっている。ゆえに還元剤にはなれない。
  • (3)水溶液やその沈殿の色は、Fe2+は緑系、Fe3+は赤系が多い。赤錆がFe2O3で表される事を憶えていれば間違えにくい。
  • (5)触媒として働いて酸素を発生させるのはKMnO4 ではなくMnO2だ。
  • (6)ハロゲン化銀は感光性を持ち、金属の微粒子は黒く見える。

〔2〕

引っ掛けが含まれる難問。電気分解と電池の問題が混ざっているので、構造の区別に注意。

  • (2)塩化ナトリウムは水溶液中で電気分解しようとすると代わりに水素を生じてしまう。そこで塩化ナトリウムを融解することで水を使わないので電気分解が可能になる。その代償として大きな融解熱が必要になる。
  • (3)電池では正極に電子が供給されるので金属イオンが析出する。ちなみにボルタ電池もダニエル電池も陰極にZn, 陽極にCuを使っている。
  • (4)イオン化傾向はZn < Mnだが、これが引っ掛け。負極はZn, 正極はMnO2 だ。
  • (5)水は安定性が高いので、Agが先に酸化される。

〔3〕

周期表を広範囲で把握していないと難しいが、元素A~D自体は全て馴染み深いものだ。両性金属が多く含まれているのも特徴的な出題。イオン化傾向に登場する元素の周期表配置くらいは知っておけという事か。

加えて選択肢もマニアック。東進の分析は余りに手抜きだ。

  • (ア)3~11族は遷移金属。
  • (イ)Hgは12族。
  • (カ)13から17族まで金属元素が一つずつ減っていく。14族が非金属C, Siを含む。
  • (3)遷移元素の中で酸化数+4となるのは14族以降。
  • (4)アルカリ金属・アルカリ土類金属以外の酸化物と水酸化物は沈殿する。ちなみにZnの沈殿は全て白い。
  • (5)PbOやPbCrO4やPbI2、HgOは黄色沈殿。

〔4〕

弱酸を中和させていくと、弱酸とその塩を含む緩衝液になる。プロピオン酸は聞きなれないが弱酸であるのは分かるので緩衝液を連想しよう。

滴下後のプロピオン酸は緩衝作用により電離度0となっており、プロピオン酸ナトリウムは完全電離している。よって電離定数の式に当てはめられるわけだ。

第II問

〔6〕

(5)ヘンリーの法則が成立する気体は、溶媒と反応せず、溶解度が低いもの。

〔7〕

A, B, Cの時間経過による濃度変化を表に纏めれば分かりやすい。

Aの濃度は指数関数的に10分毎に0.6倍となっていく。反応速度式が一次関数である事から、一次反応と言えるので(5)のような半減期の考え方が成り立つ。

〔9〕

時間が掛かる捨て問。

問1~3が実験1、問4~6が実験2に関する問題なので、片方の実験に関する問題に答えとなる選択肢が2つ含まれるとは考えにくい。よって、勘で答えるなら問1~3から1問、問4~6 から1問選択しよう。

  • (2)〔4〕とやることは似ているが、弱酸(塩基)の中和滴定ではなく強弱酸(塩基)なので緩衝液として計算しない。
  • (3)滴下しているのは水酸化ナトリウムではなく、水酸化ナトリウムの水溶液(pH = 14)。

〔10〕

文字式の問題にしては簡単だった。希薄水溶液の濃度が十分小さい事から、溶液と溶媒の質量を等しいとみなすのがポイント。

第III問

〔12〕

鎮痛剤のアセトアニリドとサリチル酸メチルとアセチルサリチル酸は、メチル基とO(二重結合)を持つという共通点がある。

  • (イ)NaNO3と来ればジアゾ化だ。アニリンにHClと NaNO3 水溶液を0~5℃で加えると塩化ベンゼンジアゾニウムが出来て、それ以上の温度でフェノールに分解する。
  • (エ)高温高圧下でCO2を反応させる事でカルボキシ基を付加する(コルベ・シュミット反応)。更にカルボキシ基をメチル化して消炎鎮痛剤のサリチル酸メチルが出来上がる。
  • (オ)アミド結合して、解熱鎮痛作用のあるアセトアニリドとなる。
  • (1)ナトリウムフェノキシドは、セッケンと同じく「弱酸と強塩基からなる塩」なので、加水分解して弱塩基性となる。
  • (5)鎮痛作用を持つ物の中でサリチル酸メチルは例外的に液体。

〔13〕

オゾンを反応させたあとZnで還元する事で酸化開裂させる操作をオゾン分解という。

東工大は捻って環状化合物を出題する事が多い。分解後のカルボニル化合物はOを二個持っているのでAが環状化合物と容易に分かる。

次に、二重結合を数をxとして反応前後で質量と分子量の関係式を立てれば良い。反応前の分子式は C33H66-2x (75g)、反応後はC33H66-2xO2x (107g)となるが、分子量の桁が大きく計算が大変になるので、反応後の物質ではなく付加した酸素O2x (32g)を利用した方が良い。

〔14〕

天然ゴムはポリイソプレンから出来ており、そのままだと強度が低く、酸化して弾性を失いやすい。そこで加硫によって分子同士を架橋してこれらの弱点を補う。

〔15〕

アミノ酸Bはアスパラギン酸だ。酸性アミノ酸の側鎖のカルボキシ基を繋ぐ炭素は1または2個。主なαアミノ酸の側鎖における「炭素の節」は3は無い。

酢酸カルシウムを乾留するとアセトンと炭酸カルシウムが生成する脱炭酸反応を知らないと正答するのは難しい。脱炭酸反応には、酢酸ナトリウムと水酸化ナトリウムからメタンと炭酸ナトリウムを作るものもある。

高校物理 東京工業大学2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[1]

二体問題なので運動量保存則を使うはずだ。

(a)

重心の公式は数学の内分点の公式と同様だ。

(b)

(a)も含めてここまで解いた式を組み合わせて(エ)を導くという構成。

複数の物体間で運動量保存則が成立していれば、それらを合わせた重心は等速運動をするという有名事実を示している。これは憶えておくべきことだ。

(g)

力がテーマになっているので小球についての運動方程式を立てる。小球に作用する力は重力と垂直抗力なので、垂直抗力に平行な力を抽出する。

[2]

一様でない磁場がテーマ。〔A〕は電磁気学と力学が融合している。

(a)

ジュール熱はIVt = I2Rt = V2t /R で表せるが、tは解答に使えないし、落下中のコイルの磁束の変化率は一定でないので誘導起電力を算出するのが困難だ。そこで、ジュール熱を落下するコイルの力学的エネルギーの減少分と見なす。

保存則にはこういう出題の仕方があるわけだが、発想の転換が必要なのでいきなり難しい問題だった。

コイルが発熱した分だけ落下速度が下がるというのが面白い。

(b)

電磁誘導の法則またはV = vBl を使って起電力を算出できる。

(g)

(f)が解けなくても、「(f)の解をvfとおく」として答えを書けば部分点は得られるだろう。

(h)

電流の向きが実際のものとは逆に定義されているので、I’を含む項の符号を逆にする必要がある点に注意。

(i)

直感で解ける問題。

[3]

誘導を如何に活かせるかが重要だった。

(b)

回折格子の実験装置の間に凸レンズがあるが、これがどの様に働くかを検証させている。

回折格子により光は縦方向に回折する。光軸に平行でない平行光線が一点集中するという事実は無名だろう。

横並びの平行光線はレンズが無ければそのままスクリーンに届いて縞模様が映し出されるが、レンズによって一点集中する。

(c)

(a)と(b)の考察を元に導く。sはm = 1の場合の明点なので、d sin θ = λ となる様なθ に対応している。

(f)

(d), (e)の考え方を利用した問題。(d)から、スクリーン上の点はG1, G2,G3の配置場所に依存しないと分かる。また(e)から、格子の角度を変えるとスクリーン上に原点を中心に回転した点列が現れると分かる。

パズル的な性質がある。tanの値は中途半端な数値にはならないと予想して0や1を適当に書いておく手もある。

(h)

(g)の考え方を利用する。

高校化学 東京工業大学2016 (平成28)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (イ) 標準状態で気体となる元素は、希ガスを除くと5種類に限られる。
  • (オ)結合エネルギーは一般には原子間距離が小さいほど大きいが、H2 < N2 である。
  • (2)CaCl2, MgCl2, NaOH は潮解性があり、中でも CaCl2 は潮解し凝固点降下を起こす性質から融雪剤として利用されている。
  • (3)地殻中や人体では酸素が5割を占める。

〔2〕

  • (ア)CrO42- (黄)はH+を加えると、水と Cr2O72- (赤橙)に変わる。これは酸化還元反応ではないのでCrの酸化数は不変だ。
  • (ウ)( エ) MnO4(酸性)と MnO2は還元するとどちらもMn2+ になる。
  • (3)酸化剤、還元剤が反応後に何を生じるかを知っていればよい。
  • (4) O2は空気の平均分子量29に近いので水上置換が最適。

〔3〕

一風変わったテーマだが、状態の段階ごとに情報を整理して、平衡状態の段階で平衡定数の式を立てる原則は同じだ。

混合前のギ酸水溶液・酢酸水溶液は電離度0として扱う。混合後に生じたギ酸イオン・酢酸イオンの量が不明なのでx, y と置き、電離平衡の式を立てる。

切りの良い値が答えになっている確率が高い。

〔5〕

空間図形の計算を扱っており難しいと評価されているが、東工大受験生は数学が得意なので朝飯前だろう。有効数字を考慮すると有理化はしない方が良いようだ。

第II問

〔6〕

見慣れない問題だが、反応熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和)というお馴染みの式を使えば瞬殺だ。生成熱と結合エネルギーは等価である。

〔7〕

アミノ酸の電荷の総和が0となるpHが等電点である。等電点の問題では[陽イオン] = [陰イオン]が重要だ。

〔8〕

  • (1)電子を得るのが還元、失うのが酸化だ。これは酸化数の増減が電荷の増減に対応している事を知っていれば間違えない。
  • (2)リチウムイオン電池は二次電池、リチウム電池は一次電池。
  • (5)両極でPbの酸化数が異なるので、放電時に両極でPb2+が生じてこれが水溶液中のH2SO4と反応してPbSO4 となる。
  • (6)燃料電池にはリン酸型とアルカリ型があるが、負極にやってきたH2が導線にeを渡してH+ は水溶液中を通過して正極側の O2と反応してH2Oとなるのは一致している。

〔9〕

(4)反応速度vはモル濃度の曲線の傾きである。その時点でのH2O2の平均モル濃度cに比例するので、 直線にはならない。

〔10〕

難問と言われているが、凝固点降下や熱量について状況を整理すれば難しくはない。食塩(NaCl)が電離して質量モル濃度が2倍になるのは見落としやすい。

第III問

〔11〕

原子は表面が負に帯電している為、原子間で斥力を生じる。これにより、HだけでなくCもクネクネとした形になる。

二重・三重結合を持つ炭素とその炭素に結合している原子は必ず同一平面上にある。

(6)だけは同一直線状を問うている。この問題を最後に持ってきたという事は引っ掛けるつもりだったのか?

〔12〕

付加する水素の量を調べるには化合物Aの分子式が知りたい。

量的関係より、 13.2g(CO2)/ 44で化合物A(0.01mol)に含まれるCの物質量が分かる。同様に4.5g (H2O) /18 *2 でHの物質量が分かる。

〔13〕

  • (ア)クメンを態々イソプロピルベンゼンという別名で呼んでいるのはクメン法とバレたくないからだ。フェノール樹脂は、ノボラック(酸触媒)&加熱&硬化剤またはレゾール(塩基触媒)&加熱の二通りで作れる。
  • (1)熱硬化性樹脂は立体網目構造である。
  • (2)アセタールとはアルデヒドやケトンをアルコールと脱水縮合する事を指すが、専らビニロンの製法で使われる表現だ。
  • (4)二重結合がO3により酸化され劣化する。シリコーンゴムは二重結合を持たないので酸化に強い。

〔14〕

問i

  • (1)αグルコースとβグルコースは区別しない。
  • (2)グルコースのみから成る二糖類はマルトース、トレハロース、セロビオースがある。
  • (3)酵母が糖類をエタノールと二酸化炭素に分解する反応は、酒やパン(CO2の発生により膨らむ)の製造に利用されている。

高校物理 東京工業大学2016 (平成28)年度 前期入試問題の解説

本年度は歴史的な高難度。比較的易しい第3問を出来るだけ解けるように、第1, 2問に時間を使い過ぎない様にしよう。

〔1〕

例年の力学問題と比べて誘導が少なく、発想力を要する。

(a)

錘の位置は立方体の位置に従属するので、立方体が持つ変数で表せる。

(b)

わざわざ比の形式で答えさせているのは、T1, T2の具体値を求める必要がない事を示している。ここでは力がテーマなので運動方程式を利用しよう。

「糸に繋がれた物体の運動」という点に着目すると、立方体や壁にとっては錘は同じように円運動をしていると気づける。この対称性を利用すると、壁にとっては T2cosθ -T1cosθ、立方体にとっては慣性力に注意してMa/ 3 -T2cosθ +T1cosθ となり、これらが等しい。

(c)

「弛んでない糸に繋がれた物体の運動」という点に着目すると、壁にとって錘は円運動をしている。つまり、軌道が特定されているので、水平方向の速度が決まれば鉛直方向の速度も確定するのである。これは円運動に限った事ではなく、放物線運動などでも成立する。

円運動に気づけないと詰み。「長さが一定の物が動く」というのが円運動の本質。

(d)

ここでも円運動の束縛条件を利用する。円運動に対するT1の法線方向成分を求めるのも難しい。

(e)

「質量を持つ弛んだ糸」という珍しい設定で、考察が難しい。力が釣り合っているので、とりあえず垂直・水平方向に分解しよう。

各錘が静止しているという事は力が釣り合っているという事だから、各錘を結ぶ糸の水平方向の張力は全て等しい。つまり立方体への水平方向の張力はTだ。糸が張っていなくても、水平方向の張力はどの地点も等しいのである。

また、10個の錘を立方体と壁で平等に支えているので、垂直方向の張力は5mgだ。

(g)

立方体の垂直抗力は、立方体の質量に加えて張力の鉛直方向成分も含まれる。

〔2〕

速度や力の計算に於いて、回転子と絶縁体棒を混同しないように注意。

(a)

誘導起電力は閉回路でなくても生じる。電磁誘導の法則と同じように単位時間あたりの電荷が移動した面積を求めよう。

PQを磁場中を動く導体棒と捉え、V = vBl で求めた方が速い。その際は、PQの中点の速度をvとしよう。

ローレンツ力により電子はP側に集まるので、電場の向きはQ→Pとなる(電場の向きは混乱しやすいが、コンデンサの電場を思い出すと良い)。

これが手回し発電機と同じ役割を果たして、今後の設問に発展していく。

(b)

スイッチを入れた瞬間は、抵抗とコンデンサを含む並列回路におけるコンデンサの電位差が0なので、電流は全てコンデンサ側に流れる。よって回路全体の抵抗はRだ。

充分に時間が経つと、コンデンサは電位差が抵抗の電位差と等しくなり、電流は流れなくなる。よって回路全体の抵抗は2Rだ。

仕事率と消費電力の等価性Fv = V2 /R またはF = IBl で導ける。

(c)

前問が分からなくても感覚で解ける問題。

(e)

回転子が等速円運動する事で交流電源となる。

(f)

IL0 = V0 /ωL, IC0 = V0ωCなので、 IL0 /IC0 = 1 /ω2LC となる。

それぞれの振幅はリアクタンスに比例する。リアクタンスはQ =CVについて微分、V = L dI /dt について積分することで得られる。

(h)

磁場中で導線を動かしても力が生まれないのは不思議だが、これはコイルの逆起電力により電流が打ち消されている為だ。この時に共振回路が生まれる。

vh を求める上では IL0 = V0 /ωL, IC0 = V0ωC を知っている必要があるが、これを忘れていても「IL0 = IC0」は書いておこう。

〔3〕

熱と力学が融合した問題。

(a)

容器A, Bの水面の高さが同じである時、理想気体の圧力はp0である。なぜなら、容器A, Bは細管で繋がれているので液体はパスカルの原理によりどの面に於いても等しくなり、理想気体の圧力と大気圧が間接的に釣り合っていると言えるからだ。

容器Bの高さを変えた場合は水位の差の分の液体の重力を圧力として加算する必要がある。化学で学ぶ水銀柱でも同じ考え方を用いる。

ここで「容器Bの高さを変えると大気圧も変わるのでは?」と思った人は鋭い。大気圧は、高度が高いほど低くなっていくのは知られているが、数メートルの差ではその変化は無視できるほど小さい。したがって大気圧は不変であると近似しているのである。この考え方は重力においても同様である。

(c)

Wa‘は「Wa – (液体の位置エネルギーの増分)」で求めうる。

しかしより簡単に、「大気にした仕事」に着目すると大気圧は常にp0 で、理想気体が大気をΔVだけ押しのけたのだから p0ΔV と求めうる。

(d)

複雑なので図を描いて確認しよう。

(e)

keは、前問が解けなくても「pd = p0と代入してkについて解く」と書こう。Qeは、等圧変化なのでQ = nCpΔT で求められる。

(f)

ここまでの問題が解けなくても答えられる。

  • EL: (e)に於いて、加熱しても容器Aの圧力が変わらないという事は、常に大気圧と等しいという事だ。つまり常に容器A, Bの水位は等しい。
  • EL +EE: ヒーターが与えた熱量は、「理想気体の内部エネルギーの変化」「大気への仕事」「液体の位置エネルギーの変化」「弾性エネルギーの変化」の4つに変換されたはずだ。しかし、容器A内が圧力p0の定圧変化をしているということは、この実験系を位置エネルギーや弾性エネルギーを無視して「容器Aのピストンが直接に大気を圧力p0で押している」と単純化することができるのだ。

(g)

(d)が解けなくても分かる。

高校化学 東京工業大学2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • 1.電子軌道のエネルギーは4s < 3pとなっているため、第4周期の遷移金属には4sに1または2個入った元素が並ぶ
  • 2. CrO42− は黄色。Cr2O72−は橙色で、還元すると緑色のCr-3になる。
  • 3.ハロゲンは電気陰性度が高いのでハロゲン化物には溶解度が高いものが多いが、銀は金属の中でも電気陰性度が高くAgCl(白), AgBr(淡黄色), AgI(黄色)は沈殿する。しかしFは電気陰性度が極めて大きいので溶解する。
  • 4.両性元素の単体は、酸・塩基のどちらと反応しても水素を生じる。Alの配位数は6だが、ヒドロキソOHは4配位しか作らない。
  • 5.OH化物はアルカリ金属・アルカリ土類金属以外は全て沈殿する。

〔2〕

  • ウ.熱濃硫酸は硫酸が熱によりSO3に分解しておりこれが酸化剤として働いてSO2に還元される。
  • 1.有色気体はF2(淡黄), Cl2(黄緑), NO2(赤褐), O3(淡青)の4つ。
  • 3.硫化物は基本的に黒だが、ZnSは白, CdSは黄。
  • 5.ヨウ素ヨウ化カリウム溶液は、水に難溶な I2がヨウ化カリウム水溶液には解ける事を利用した水溶液であり、ヨウ化カリウム(還元剤)とは異なる。SO2は酸化剤・還元剤どちらにもなり得るが、I2は酸化剤なので還元剤として働く(SO42−)。
  • 7.自己酸化還元反応によりHCl +HClOとなる。自己酸化還元反応は、 H2O2 をMnO2を触媒としてO2を発生させる場合やNO2からHNO3 を作る場合に起こる。

〔3〕

Clは強酸由来のイオンなのでその化合物は溶解しやすいが、Pb, Ag, Hgについては沈殿する。

〔4〕

CuSO4 +H2S ⇄ H2SO4 +CuS↓

CuSが沈殿しているという事は水溶液に溶けているCuSは飽和状態なので溶解度積を使える。

CuSO4 のモル濃度の値は計算に直接関係しない。

〔5〕

(問ii)CとDの関係は、原子量と密度について分かっているので、密度に関して関係式を作る。原子量は単位格子内の質量を求める際に使う。

第II問

〔6〕

  • 2.HeとNe以外は閉殻ではないが、オクテット則により安定している。
  • 3.第一イオン化エネルギーは同周期では貴ガスが最大。
  • 4.「天然に同位体が存在しない」という事を証明するためには、地球上の全ての元素を調べ上げる必要があるので厳密には不精確である。無視できるほど天然の同位体の数が少ない元素にはF, Na, Pなどがある。

〔7〕

  • 1.ArrheniusはH+を持ちそれを放出する物を酸、 OHについて塩基と定義した。しかしこれは水溶液中の物質しか適用できず、 NH3 も塩基として扱えない欠点があり、これをBrønsted & Lowryが改良して「H+を放出するのが酸、受け取るのが塩基」とした。
  • 3. 弱酸(塩基)の電離定数はKa = Cα2である。濃度が高まればルシャトリエの原理により電離度は下がるので分かる。ちなみに緩衝液においては Ka = [H+]Cs /Ca, 加水分解定数はKh = Ch2 だ。

〔8〕

反応熱の問題は、エネルギー図を書くと把握しやすい。

  • 1.反応熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和)
  • 2.水素の燃焼熱の反応式と水の生成熱の反応式は同一。
  • 3.二酸化炭素の生成熱は「C(黒鉛) +O2(気) = CO2(気) +Q」で表されるが、「二酸化炭素のC=O結合」で言及されている二酸化炭素は気体であるので、黒鉛の昇華熱が必要。
  • 6.蒸発熱・融解熱・昇華熱は状態変化のための熱(冷却曲線における平坦な部分に当たる)なので、温度変化のための熱も必要。

〔9〕問ii

どの窒素酸化物の濃度を未知数として置くかで解法は異なってくるが、大筋は同じだ。

容器にO2 を加えた後は、NOは無くなりNO2, N2O4, O2 のみになった。大事なのは、この時点での容器内の気体は、NO2, N2O4の間では正・逆反応が起きて平衡状態になっている一方でO2は何も反応を起こしていない(無視できる)点だ。したがって問iで導いた平衡定数の式を利用できる。

状況を把握する為に流れを書き出してみると良い。

各物質の量的関係を立式する必要があるが、バランスシートで確認する方法のほか、化学受験TUBEのようにNの物質量が不変なのを利用する方法もある。

〔10〕

沸点上昇・蒸気圧降下の理解を問う良問だ。

液体が受ける外圧は、沸点では蒸気圧に等しい。

蒸気圧曲線は一般に下に凸の曲線なので、このような一次関数にはならないので取っつきにくいが、化学を思考力を試す問題に仕立てる為にこうなっている。

状況把握が難しいが、わざわざ一次関数にしている点に着目してグラフを描いてみると、純溶媒と溶液のΔtb に関する関係が明らかになり各段に分かりやすくなる。

第III問

〔11〕

  • (1)2,4,6-トリブロモフェノールの白色沈殿を生じる。よく似た構造にニトロ基を持つ黄色のピクリン酸があるが、ピクリン酸は爆発性を持つのに対してこれは難燃剤に用いられるのが対照的だ。
  • (2)アルカリ融解法では、ベンゼンスルホン酸ナトリウムの官能基(-)を電離させる事でヒドロキシ基を結合させる。これは昔の製法で現代では(ア)のクメン法が用いられる。
  • (3)ナフタレンをV2O5を触媒に酸化するとCを2個失ってフタル酸になる。
  • (4)ヒドロキシ基と酢酸が濃硫酸を触媒に脱水縮合する。
  • (5)無水フタル酸は加水分解するとカルボキシ基を持つようになる点に注意。

〔12〕

「最も~」という問題は、その指名されている物質から評価するのが効率的。なぜなら、次に別の物質を評価して反証となっていれば、その時点で「誤り」と結論付けて次の問題へ進めるからだ。

ベンゼン環の二重結合と単結合は区別する必要がない。

〔13〕

  • (2)けん化とは、エステルに塩基を加えて酸の塩とアルコールに加水分解すること。ここではポリ酢酸ビニルをNaOHでけん化して ポリビニルアルコールと酢酸ナトリウムに加水分解した。
  • (4)スチレンとp-ジビニルベンゼンを共重合させ、濃硫酸でスルホン化させたのが陽イオン交換樹脂だ。
  • (5)架橋構造を持つポリアクリル酸ナトリウムは、水に溶けるとNa+ が電離して分子内での電気的反発が生じるため膨張し高吸水性高分子として働く。
  • (6)イオン交換樹脂は高分子なので水に不溶。
  • (7)縮合重合で作ることも可能だが、ア~オに書かれた製法には縮合重合は含まれていない。誤解を生む問題文だが、これが東工大の方針という事だ。

〔14〕

各予備校によるとこの問題が最も難しいようだが、私は逆に最も簡単だと思った。実験1の情報だけで確定するのでは?