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高校数学 東京工業大学2013 (平成25)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

指数部をnとして数学的帰納法を用いるのが典型的解法。

実はもっと楽な方法がある。αnn -3n = αnn -(α +β)n として、(α +β)n二項定理で展開したものを代入すると各項がαβ = 5の倍数になるのだ。

(2)

パスナビの解答が分かりやすい。

「4個が全て異なる目の場合」×「残り2個がすでに出た目の場合」で計算すると重複が出て上手くいかない。

数え上げでは、「サイコロをグループ分けして順に場合の数を確定して積算する戦法」と「出目が同様に確からしいという性質を利用した特殊(具体)化→一般化戦法」がある。

4個のサイコロの出目が全て異なるような目の組み合わせは6C4 = 15通りなので、この4個のサイコロの出目が1, 2, 3, 4だったと決め打ちして後から15を掛ける。

3個が同じ目になる6個のサイコロの出目の場合(A)と同じ目の2個が2種類になる6個のサイコロの出目の場合(B)は独立事象であるのでそれぞれを足せば求めたい場合の数を得られる。

(A)「3個が同じ目になる場合」を求めて、残りのサイコロの出目の場合を順列で求めて積とする。もしくは、同じ目になる3個の出目が1と決め打ちして、6個の並べ替えを考える。

(B)同じ目となっている2個×2のサイコロにおいて目が1, 2であると決め打ちして、後から4C2 = 6を掛ける。 そして6個の並べ替えを考える…もしくは 1の目が出るサイコロのパターンを確定して、次に2の目が出るサイコロのパターンを確定し、最後に残りの目の並べ替えをする。

第3問

かなりの難問と言われているが、単純な関数が題材なのでグラフが予想しやすく、道筋も一直線なので実は簡単だ。増減の厳密な評価に拘らず答えを書けば大きな得点が得られるだろう。

f‘(x) の増減は指数関数だから分かり難いので、e(ex -1 -xe -1)としてカッコ内の各項の対数を取った関数を評価するという手法がある。もっと自然なのは ex(1 -e1 -x xe -1)としてカッコ内を微分する。

第4問

私はこれが今年度最大の難問だと思う。不等式を単位円で処理するという方法の着想が必要だ。sin(4nx)≧sin x は加法定理を駆使してもnが含まれているので纏まらないのだ。

求めたいのは三角関数の値ではなくxの値(つまり角度)なので、グラフ(直交座標系)より単位円(極座標系)の方が相性がいい。 加えて、nをどれだけ大きくしても-1≦sin(4nx)≦1であり、特にxが定義域の最大値なら常にsin(4nx) = 0という点に着目すると単位円で考えるのが筋が良いと分かる。

その後の立式も慎重にする必要があるので経験が無いと難しい。nが1増すと4nxは単位円を一周するので、xの区間が一つ増えると分かる(グラフからも読み取れる)。

方針が立たなくても、n = 3くらいの時の図を描くとS = π /8に収束しそうな雰囲気があるので、予想だけでも書いておけば5点くらいは得られるかも。

第5問

(1)

楕円の横半径は1で定まっているので、縦半径を想像でビヨーンと伸縮させてみると、縦半径がある値以上になると接点が(1, 0)になるのが分かる。イメージしないと気づかずa = b√(1 -b2)だけ書いてしまうだろう。

この場合分けの計算が繊細なので避けたい。グラフでa = 1 /2となる条件を概説して、共有点が一つになる条件式を立てれば楽になりそうだ…満点が得られるかは分からないが。

(3)

p = 1 /√2 なので、楕円を半径1の円に戻したときにOPの偏角はπ /4になるのを利用すると積分計算が不要になり劇的に速くなる。

最後の√13 /12 -2 /27 の計算が面倒だが、模範解答によると計算せずそのままでも良い。

高校化学 東京工業大学2017 (平成29)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • 1.クーロン力はイオン価数と結合距離に依存する。
  • 6.説明文はモル質量を指している。用語の厳密な定義を問われている。
  • 7.理想気体では体積は等しいが、実在気体では分子間力があるのでH2の方が大きい。東工大は断りが無ければ気体を実在気体として扱うという方針の様だ。

〔2〕

  • 1.温度を下げる事で、活性化エネルギー以上のエネルギーを持つ分子が減るので反応速度が下がる。
  • 2.反応速度はv = k[A]m[B]n のように表されて、速度定数は濃度ではなく温度に依存する。
  • 4.触媒により活性化エネルギーが小さくなるので、正反応と逆反応はいずれも活発化する。その結果、平衡へ早く達する。
  • 5.圧力が上がると分子同士が衝突しやすくなるので反応速度は上がり得る。
  • 6.活性化エネルギーを超えるエネルギーを持つ分子が2倍になった時に反応速度が2倍になる。

〔3〕

「反応熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和) 」を使いたいところだが、与えられているのは燃焼熱。

問題自体は簡単だが、熱化学方程式の計算に時間が掛かる。計算する前に選択肢を読んで絞り込んでおけば、一部を計算せずに解答を確定できて時短になる。

〔4〕

東工大にしては気前よく体積や温度の数値が計算しやすいものに設定されている…と思ったら、「分圧比 = 物質量比」を使い体積や温度を使わずに計算した方が速い。まるで引っ掛けだ。

等積・等温の混合気体の問題では 「分圧比 = 物質量比」を使おう。この問題では一度、温度が変化しているので紛らわしい。

〔5〕

ヘンリーの法則に関する問題だが、「体積と圧力の関係」という発展的な内容を扱っている。

状態方程式によると「V ∝ n /P」なので、圧力がいくつであっても、溶媒に溶解する気体の体積は一定である(物質量は圧力に比例する)。これは

これを問題文で与えられた文字で当てはめると、圧力はP0またはPであっても溶解する気体の体積はV0V1 /2 だという事だ。

気体が水に全く溶けない(V0 = 0)と仮定すると検算になる。

第II問

〔6〕

  • 1.Rb, Csの炎色反応なんて誰も知らないだろう。ちなみに第二族元素は放射性元素のRa(第7周期)も洋紅色の炎色反応を示す。
  • 3.原子半径が大きいほどイオンのクーロン力が小さくなるので電気陰性度とイオン化エネルギーが小さくなる。それにしても「イオン化エネルギー」という表現では陰・陽イオンのどちらを指すのか分からないので直すべきだ。
  • 4.硫黄の3種類の同素体が有名だが、WikipediaにあるようにS, P, Oの同素体は意外といっぱいある。
  • 5.共有結合結晶としてdaiamond、黒鉛、Si, SiO2が挙げられる。黒鉛の原子は自由電子を持つため電気伝導性がある。それ以外は価電子が全て共有結合に使われている。その中でSiはクーロン力が小さい為に結合が脆く、僅かに電気伝導性がある。

〔7〕

  • ア.「石灰」の字が入っている物質にはCaが含まれる。
  • イ.Siの単体は天然には存在しないため、ケイ砂(SiO2)をコークスとともに加熱して粗製のSiが生産されている。
  • ウ.「2NaCl +H2SO4 → Na2SO4 +2HCl」とならない仕組みは、弱酸遊離反応と同じだ。 NaClとH2SO4 だとHClが遊離するが、NaHSO4とHCl では後者の方が酸性が強いので反応しない。
  • オ.硫酸の工業的製法「接触法」の過程の一つ。二硫化物イオンはS22- である。
  • 1.塩基性酸化物には金属が含まれるのでA, D, Eに絞られる。
  • 2.有色気体はF2, Cl2, NO2, O3 に限られる。ハロゲンの単体は有色だが、水素と結合すると無色になる。ドライフルーツの風味はSO2にも由来している。

〔8〕

  • ア.AgCl, PbClの(ともに白色)沈殿を生じる。
  • イ.Cu2+, Ag+, Pb2+, Zn2+ がS2- と反応して黒色沈殿(ZnSは白)するが、Zn2+は中性・塩基性条件下のみ。
  • ウ.H2Sは還元剤なのでFe3+をFe2+ にしてしまうので、H2Sを除いて酸化剤の希硝酸を入れて再びFe3+にしている。塩基によって両性金属、Cu2+, Ag+, Fe3+は沈殿し、さらにNH3と錯イオンを作るのがZn2+, Cu2+, Ag+ だ。
  • 1.希硫酸と反応して沈殿を生じるのはCa2+(石膏に含まれる), Pb2+(鉛蓄電池で析出)。
  • 2.クロム酸カリウムやヨウ化カリウムと反応して黄色沈殿を生じる。
  • 6.アルカリ土類金属は CO32- やSO42-と反応して沈殿する。

〔9〕

高純度のNaOHを生産する陽イオン交換膜法が題材。

陰極側では、イオン化傾向がNaよりH2 の方が小さいのでH2Oが分解されH2が発生する。ゆえにOHが多くなる。

陽極側では電解により陽イオンが多くなり、 陰極側では陰イオンが多くなる。陽極側のNa+がクーロン力により交換膜を通り陰極側に行くので陰極側のNaOH濃度が高まるのだ。

〔10〕

球の体積は4πr3 /3 である。初めに単位格子の辺の長さ、M+ , X の半径を 6*108で割っておくと計算が楽だ。

第III問

〔11〕

  • 1.アルカンは標準状態ではC5以上は液体、C18以上で固体だ。
  • 2.アルケンまたは環式アルカンがCnH2n となる。
  • 4.題意が不明瞭。例えばシクロプロパンの置換体も二重結合した化学式を考慮すれば構造異性体が存在する。

〔12〕

  • 3.アルコールのOH基は分極しているので水素結合をし易く、これが分子間力を齎す。アルコール級数が大きくなると近くの官能基が邪魔になり水素結合し難くなるので沸点が低い傾向がある。
  • 4.KMnO4は第一級アルコールをアルデヒドやカルボキシ基に、第二級アルコールをケトンに酸化する。この酸化還元反応によりMnO2の黒色沈殿を生じる。

〔13〕

  • エ.石油を分留すると、沸点の低い物から石油ガス、ナフサ(粗製ガソリン)、灯油、軽油、重油が得られる。
  • 1.ポリアクリロニトリルは毛糸の製造などに使われるが、燃焼すると猛毒のHCNが発生する。
  • 2.ポリ塩化ビニルは文字通りビニールと呼ばれるものの材料になっている。他にも消しゴムや水道管にも利用されており、吸水性はない。
  • 3.ダイオキシン類は塩素を含む物質の不完全燃焼や、薬品類の合成の際、意図しない副合成物として生成する。
  • 4.ナイロン6は、ε-カプロラクタムのアミド結合を開環したもの。
  • 5.高圧下では分岐の多い低密度のポリエチレンが出来る。
  • 6.主な熱硬化性樹脂はホルムアルデヒドの付加縮合を必要とする。

〔15〕

易しい構造決定問題。

FeCl3 水溶液はフェノール類を加えると、フェノールは紫色、o-クレゾールは青色、サリチル酸は赤紫色になる。従って(ウ)よりBはフェノールだと分かるが、実は色を憶えていなくても、炭素数6という事はベンゼン環以外に炭素原子を持たないので特定できる。

ゆえにBはエステル結合をしていたと分かる。

αアミノ酸はproline以外は中心の炭素原子にH, NH2, COOHの官能基を必ず持っている。Cは不斉炭素原子を持たないので側鎖はHである。よってCは炭素数2。

加水分解されたDは等電点3.2なので側鎖にカルボキシ基を含む。五員環なので、このカルボキシ基とアミド基がアミド結合したのがDであり、Dはカルボキシ基を一つ持つと分かる。ゆえにAの端の部分を構成する。

高校数学 東京工業大学2014 (平成26)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(2)

an -bnを表すnの多項式を愚直に展開していくと面倒なので、因数を保持したまま解き進めていきたい。ここでヒントになるのが(1)で示した6の倍数の十分条件で、これを使うと上手く証明できる。

ある式がn倍数である事の証明は、連続する整数の積で表す方法を使うのが一般的だ。

第2問

(1)

f(t) = et, g(t) = 1 +t et /2 と分けて大小比較する方法も思いつくが、グラフで表して考察するときは便利だが、この場合はg(t) をグラフ化しにくいので筋が悪い。

一階微分では傾き具合が分からないので、tの定義域端での値が0である事と二階微分での増減から単調関数である事を証明する。二階微分しても関数が相変わらず複雑であっても、tの定義域端での値が0 なら方向性は正しいと信じてよいだろう。

この問題を解けばa = 2が範囲の境界であると分かるので、(2)で場合分けする際の目安になる。

(2)

a > 2 の場合は与式と比べれば計算するまでもない。

誘導の(1)が無ければ、aの境界を自力で探る必要があるので手ごたえのある面白い問題になっただろう。カギはlog (1 -a)の符号が変わるaの範囲である。

第5問

微積の問題だが、「解と係数の関係」とβ関数を使って微積の計算を一切せずにすべての答えを出せる!

(1)

共有点を求める式は、曲線Cが接線とxk -1で接しているので、(x – xk -1)2 という因数を含んでいる。

そして電数の解答の様に、3次関数と接線の接点以外の共有点であれば、3次関数の解と係数の関係「α +β +γ = −b /a」を用いてxk の値を得られる。 接線の方程式を求めたり複雑な因数分解を回避できる凄いテクニックだ。

求積にはβ関数の公式を使える。

(2)

x0 = 1を出発点として、それに続くxk が次々と決まっていく様をイメージすると、数列を形成する事が分かる。

これも電数の解答の様に、(1)と同じく接線の方程式を求めたり複雑な因数分解をせずにxkの漸化式を得られる。

(1)で扱ったC上の点(1, 3)はk = 0に相当するので、等比数列の公式の次数は「k -1」ではなく「k」となるので注意。

(3)

何はともあれSk の一般項を求める必要がある。立式には(1)で行った手順を使うが、積分区間として現れるxk とxk -1を置き換えるのが(2)で求めたxkの一般項だ。

高校物理 東京工業大学2017 (平成29)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

(b)

円柱の単振動の弾性力は「浮力 -重力」なのでρS(L -x)g -(2 /3・ρSL)g と立式出来る。

(d)

時間に関する情報が与えられていないので、等加速度運動の公式「v -v0 = 2ax」を用いると速い。

(e)

図2(i)の円柱の位置では速度が0なので、ここを振動の端にしたいところだが、これが引っ掛けなのだ。(b)の弾性力の式の浮力の項は、xが小さいほど浮力が大きくなるという一次関数になっているのだが、円柱上面が液面より下になる場合には成立しない。単振動には色々な種類があるが、二つの向かい合う力の強さが連続的に変化して交互に入れ替わるという点で共通している。

結局、(ii)と(iii)の状態を比べてエネルギー保存則の式を立てることになる。

(ii)の状態は速度が0ではないので、単振動の端ではない。この単振動の振幅は更に大きいのだが、この実験では現れないのだ。(ii)と(iii)はどちらも単振動の端や中心ではないが、速さと位置の情報があればエネルギー保存則を立式できる。

(g)

(f)で求めた張力Tは距離xの一次関数であり、求めたい仕事は「力×距離」で表されるので、Tをx(0 ~ L /3)で積分すればよい。

「外部からした仕事」という不自然な表現から、以降の小問がエネルギー保存則を利用すると推測できる。

〔2〕

(a)

磁場中にある棒には電源によって電流が流れているので、電磁力が発生する。

棒が乗っているレールはθ rad傾いているので、重力と電磁力も影響を受ける。以降の小問では、レールの傾きに常に注意する必要がある。

(c)

(a)と同じように力が釣り合っているが、今度は棒が動いているので電磁誘導も発生している。(b)でI1 が減少したので電磁力が弱まり棒が転がり始めたが、加速する事により電磁誘導でI1 が増加したのだ。

磁場が生み出す力は電磁力(またの名をローレンツ力)しかない。棒をvの正方向に引っ張る力はmg sin θで不変なので、電磁力とI1 が再び(a)と同じ量になったということだ。棒の速度が一定なら、重力と電磁力が釣り合っているという事だから、電流も常に一定と言えるのだ。

ここで二つの回路方程式を立てれば、I2と v1 が分かる。

(e)

考え方は簡単だが、I2 の定義された向きとは逆に電流が流れるので注意。図を書いておけばミスはなくなるだろう。

(f, g, h)

ここまで求めた値を比較してグラフを選ぶ問題だが、値が求められなかったとしても雰囲気で絞り込める。

(h)は雰囲気で選ぶのは難しいが、I1 とI2が通る導線は並列なので、棒が減速するにつれて誘導起電力が減るとI2 も減る。

〔3〕

(a)

(ア)速度(velocity)はvector、速さ(speed)はscalarである点に注意。日頃から区別していないと分からない。偶然にも英語の頭文字が対応しているので、これを知っていれば間違えることはない。速度はvectorなので計算する上で都合がいいのでよく用いられる。

(b)

問題文で「u2を無視する近似を使う」と書かれている事から、計算過程で速度の2乗を使うと分かる。そこから運動エネルギーを立式すると推測できる。

気体分子の衝突後の速度の計算では、反発係数の式を利用して「1 = -(v’ -u) /(v -u)」と立式する。反発係数が1という事は、衝突前後で運動エネルギーの総和が等しい筈だ。ピストンの速度は衝突後に増加する筈だが変わっていないという事は、外部から抑え込む力が加わったことを示している。ここから運動エネルギーの総和の総和が減少していると言える。

(c)

(b)を誘導として、(1分子の仕事) ×(1分子がΔtの間にピストンに衝突する回数) ×(N個)として求める。

(d)

(c)を誘導として「圧力 = 仕事 /距離 /面積」で計算すれば瞬殺。

前問を誘導とする問が多いので前問に注目するのが良い。前問を誘導としているがそれが解けなかった場合、「前問の解をxとする」のようにして立式しておけば部分点が得られるだろう。

(e)

熱力学第1法則にはWを外力とする場合(ΔU = Q +W)と気体の仕事とする場合(Q = ΔU +W)がある。ここでは後者である。

与えられた記号から、W = p ΔV, ΔU = 3nR ΔT /2 を連想し、熱力学第1法則で立式する。

(f)

計算不要の簡単な問題なので、他の小問が難しくても解いておこう。

(g)

問題設定は少し複雑に見えるが、断熱変化なので内部エネルギーの変位を求めればよいだけだ。両領域とも物質量と温度は同じになっているので、内部エネルギーの変位はどちらも3nR(T’ -T0) /2 である。

(h)

T’ = TAなので、TA を使わずに解答できてしまうので良い問題ではない。

高校数学 東京工業大学2016 (平成28)年度 前期入試問題の解説

第1問

(1)三平方の定理でPQ2の式を立て、微分で極小値を求めるのが王道。それ以外の解法として、PQがC1の法線となる事を利用する事も出来るが、法線となる場合に最小値を取ることを証明する必要があるかもしれない。

(2)こちらの小問の方が易しい様に思える。

第2問

(1)簡単すぎて何を記述すればいいのか困るが、「△BPR ≡ △CQP ≡ △ ARQ」という必要十分条件くらいは書いておいた方が良さそうだ。

(2)対称性に着目して、T1とT2が正三角形になる場合の数を調べ、3C2倍する。

(3)多変数関数の最小値を求める問題として解くのが王道のようだ。三角形の底辺と高さがより小さいものの面積を求めるパスナビの解法もアリだろう。

第3問

(1)これは(2)への強力な誘導であり、これが無ければこの大問は「やや難」だろう。いずれにしても、軌跡を如何にして立式するかが大事だ。

(2)r1 = r2 のとき、軌跡は直線となる。 r1 ≠ r2 のとき、 P1, P2 との距離の比が一定なので「アポロニウスの円」となるが、自明なものとして扱っていいか分からないので立式した方が無難だ。

第4問

東進はこの大問を「やや難」と評価したように、今年度最大の難問である。また2011年AOでも同様の問題が出題された。

難しいのは(2)だが、具体的な数で試行錯誤すれば何を証明するべきかは見えてくる。

第5問

1989年度でも外サイクロイドが出題されたが、こちらの方が易しい。

(1)3倍角の公式を憶えていると速い。増減表の記述は必須だが、媒介変数tは定義域両端と導関数が0になる値を書けば十分。

(2)n次の三角関数の積分は、加法定理を用いて次数を下げるのが速い。

高校化学 東京工業大学2014 (平成26)年度 前期入試問題の解説

第I問

〔1〕

  • (1)ハロゲンは原子価が1なので、1価の陰イオンに最もなり易い族である。つまり単原子分子の状態よりイオンの状態を好むのだが、ハロゲンの間でも小さい周期の方が電気陰性度が高いので、KBrからKClに入れ替わる。
  • (2)O3 は強い酸化力を持つので、KIを酸化してI2の単体を生じさせる。このI2 がデンプンと反応して青紫色を呈する。但しAは臭素なので誤り。
  • (5)KIは標準状態では反応が起きないのでエネルギーを与える必要がある。ただし原子間結合を完全に断ち切らずとも活性化状態になれば反応が進むので、結合エネルギーより少ないエネルギーを与えればよい。

〔2〕

  • (イ)刺激臭を持つ気体(分子量)はCl2(71), HCl(36), NH3(17), NO2(46), SO2(64), HF(20) の6つだが、 Cl2 は黄緑、NO2 は赤褐色なので除外。空気の平均分子量は29なので NH3(17), HF(20) が残る。
  • (ウ)石灰水とCO2 の反応だ。錯イオンの生成過程にも似ているが、AがNaOHでもNH3でも無い事、炎色反応、「通じる」という奇妙な表現から違いに気づける。炎色反応は、アルカリ金属ではCaは橙赤、Srは紅、Baは黄緑。
  • (2)N2, H2 を Fe3O4を触媒として高圧下(低温でも可能)で反応させてNH3 を作るのがハーバーボッシュ法。
  • (3)Ca(OH)2 は溶解時に発熱することが原因で温度を上げると溶解度が下がる。温度を上げると溶解度が上がるのは一般的なので疑うべき問題文だ。
  • (4)H2CO3はH2OとCO2 に分解する。

〔3〕

問i

酢酸の物質量は0.01mol、NaOHはV *10-4mol となり大小関係が不明だが、pHの範囲が3.5~5.0なので酢酸の方が多いと分かる。

ちなみに、緩衝液は弱酸(塩基)とその塩の混合溶液から成り立つので、NaOHが多いと緩衝液にはならない。緩衝作用の本質はルシャトリエの原理によるH+(OH)の電離の抑制にあるが、強酸(塩基)は電離度が1なのでこれが持つH+(OH)の電離を抑えられない為だ。

電離定数は、水溶液中のあるイオンのモル濃度が変わっても一定なので、 [CH3COOH]と[ CH3COO] を Kaの式に代入する事で[H+]が分かる。

問ii

和が最小になるのは緩衝作用が最強の場合な(札幌医科大の資料)ので、[HA] = [A]を満たす。pHの選択肢は3桁だが、どれも2桁目が異なるので3桁で計算していけば十分。

体積は [HA] = [A] を利用する。

〔4〕

電池の仕組みと電気分解を組み合わせた問題。

問i

電子が流れ込んでくる極板は、電解槽では陰極、電池では正極だ。

問ii

密度とは硫酸ではなく水溶液全体を指している。

第II問

〔5〕

(5)強酸・強塩基の溶解熱は発熱である

〔6〕

問i

熱化学方程式は、どの項を1 mol として立式するかがカギだ。燃焼熱は燃焼させたい分子、生成熱は生成させたい分子を1 molとする。

問ii

  • (1)反応熱(kJ /mol)は、一般に25℃、105Pa という条件下でのものを指す。つまり温度や圧力が異なれば、反応熱は別の値になるのだ。これは反応に用いられる物質の運動エネルギーが異なる事を考えれば自然なことだ。
  • (2)イオン化傾向はAl > Fe であり、酸化物の安定性はAlの方が高い。またテルミット反応では2Al +Fe2O3 → Al2O3 +2Fe の過程で激しい熱と光を生じるので、アルミナの生成熱の方が大きいと分かる。

〔7〕

水の分圧を状態方程式を使って求め、飽和蒸気圧と比較するようにしよう。

〔8〕

この手の問題は、物質の状態が温度変化と共に変わる様をイメージするのが良い。

問i

溶解度曲線をイメージすると解きやすい。

問ii

水溶液の温度を下げていって氷が析出した事で、溶解平衡の状態になった。これによりモル凝固点降下の式に当てはめる事が出来るのだ。

モル凝固点降下は Kf = Δtf・kg /mol で表される。しかしこれは唯の係数なので変形して、モル凝固点降下度Δtf = Kf・mol /kg とした方が”mol /kg”が質量モル濃度を表しているので分かりやすい。

とにかく計算が面倒。

問iii

状態Cは気液平衡なのでモル沸点上昇の式に当てはめる事が出来る。

モル沸点上昇もモル沸点上昇度Δtb = Kb・mol /kg とした方が分かりやすい。どちらも質量モル濃度に比例するのだ。質量モル濃度という単位はこの二種類を表す場合でしか使わない。

カギは状態Cの気体の温度を求められるかにある。沸騰している水溶液の沸点は100 +Δt(℃)であり、気体の温度も同じだ。沸点上昇の理解度を問う良問だ。

第III問

〔9〕

  • (ア)CaC2 +2H2O → Ca(OH)2 +C2H2 という反応になる。有機化学の問題なのでC2H2 である。
  • (イ)付加反応は付加する物質の全ての原子が加えられる反応だ。
  • (エ)塩化パラジウムと塩化銅を触媒としてアルケンを酸素でカルボニル化合物へ酸化する方法をワッカー法という。
  • (オ)フェノールの製法の一つ。Clは電気陰性度が高い為にOHに置換される。
  • (1)イソプロピルベンゼンの別名がクメンだ。これを酸化、分解するとフェノール(化合物F)とアセトンが出来る。
  • (2)酸の強さは「フェノール < 炭酸 <カルボン酸」なので、NaHCO3 と弱酸遊離反応を起こすのは化合物C・Eだ。
  • (3)化合物C(酢酸)は酸性なので、ヨードホルムと中和してしまいヨードホルム反応が起きない。
  • (5)アセチレンに硫酸水銀を触媒として水を付加するとアセトアルデヒドが出来る。この生成過程で使った水銀が水俣病の原因となった。

〔10〕

不飽和度は9だから、ベンゼン環(不飽和度4)を二個、二重結合を一つ持つと分かる。この二重結合はエステルのCO結合だ。

ヨードホルム反応を起こした試料はC(O)ONaとなる。この塩を塩酸で処理するのカルボキシ基が出来る。

  • (2)アルケンと言っても、ベンゼン環は残っている。脱水すると、O原子と結合していたC原子が二重結合を持つことになる。
  • (3)ナトリウムフェノキシドを高温高圧下でCO2と反応させサリチル酸を作る事をコルベシュミット反応という。
  • (5)どちらも塩基性化合物ではないのでHClと反応しない。

〔11〕

問i

  • (2)マルトースはαグルコース同士の1, 4結合なのでヘミアセタール構造を一つ持つ。反応式を憶えていないと答えられないが、「アルデヒドと水酸化銅の反応」と考えると解ける。ちなみに銀鏡反応は「アルデヒドと酸化銀の反応」と考えて1 mol, 2molずつ生じると分かる。
  • (3)単糖類は全て還元性を持つ。
  • (5)デンプンはデキストリン、マルトース、αグルコースという過程で分解される。

問ii

単糖類はどの種類もヒドロキシ基を5個持っているので、化合物Aの繰り返し単位のヒドロキシ基は3個(これが分からなくても答えの見当は付く)。

そして鎖の両端のヒドロキシ基も計上するのが肝。「デンプンを部分的に加水分解した」と説明されているので、高分子と想定してはいけないのだ。

化合物Aはアミロースではなくアミロペクチンである可能性がある事に気づいただろうか?アミロペクチンの場合は分岐を考慮する必要があるが、繰り返し単位のヒドロキシ基は3個になるので結果的に「化合物Aはアミロースである」と想定しても正解に辿り着く。

高校物理 東京工業大学2014 (平成26)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

(b)

「重力」と「静電気力」はともに保存力なので、これらの位置エネルギーの合計は保存される。つまり、「重力の位置エネルギー + 静電気力の位置エネルギー +運動エネルギー = const.」である。ここからエネルギーの原理を立式する。

小球がPにある瞬間と、逆向きに運動し始める瞬間のエネルギーを等式とする。いずれの瞬間も運動エネルギーは0なので、重力の位置エネルギーと静電気力の位置エネルギーを足せばよい。

「振動の中心となる角度が釣り合いの位置である」というのは自明ではないので証明が必要だと思うが、この事からも答えを出せる。

(d)

まずは小球にかかる力を全て書き出す。そしてこの問題は、向心力や張力の意味を理解していないと解けない。

  • 向心力とは円運動する物体にかかる力の内で中心方向のものを指す。逆に言うと、向心力のお陰で物体は円運動しているのである。
  • 張力は、静止した物体を糸が引っ張るわけではない事を想像すれば分かるように、受動的な力である。この問題に於いては、向心力と重力とローレンツ力の関係を記述する上で帳尻合わせとして使われている。

(e)

糸が弛むのはT≦0 の時だが、vを消去する必要があるので、単にT = 0の式を解くだけでは駄目だ。

「B1 より小さいとき糸が弛まない」という事は、B1 は取り得る値の最小値でT≧0が成立なければならない。「B1 より大きいときある位置で糸が弛む」という事は、弛まない状態も含まれている。そこでvを纏めて平方完成(あるいは相加相乗平均)させ、vの範囲を評価するという難問。

〔2〕

(a)

コンデンサーの電気容量は、εS /d で表される。εは定数部1 /4πk を纏めたものだ。残りのS /d は、 極板の面積Sが大きい程、極板間距離dが小さいほど電気容量が大きくなることを表している。

(c)

スイッチを切った事で電気量は不変となるので電場も不変となる。コンデンサーの電場はE = Q/εS なので極板間距離に依存しないからだ。これは、極板間では全ての電気力線が平行である事からも分かる。

コンデンサーの電場Eは二つの極板がそれぞれ出す電気力線の和に基づく。つまり一つの極板が作る電場はE /2 である。よって極板Bの静電気力はqE /2である。

(d)

[注意]空間1と空間2が密閉された状態で静電気力により極板Bが動いたとすると、空間1, 2の気圧はどちらも変化しているので両者を計算する必要がある。ところが(b)で栓2を開けたままの状態が続いているので空間2に関しては気圧はP0 である。問題が不親切なのが悪いが、錯覚しないように条件変更の文毎に状態を纏めておくと良いだろう。

「空間1の気体が極板Bを押す力(P2S)」と「静電気力 + 空間2の気体が極板Bを押す力(P0S)」が釣り合っている。

(e)

検流計の値が0という事は検流計の両端の電位差が0である。そしてC1 左端の電位が V1sin ωt なのでC2 左端の電位も V1sin ωt だ(電流は同じとは限らない)。 また「R1の抵抗とC1 のコンデンサ」「R2の抵抗とC2 のコンデンサ」 がいずれも直列である事が分かる。

電流をR1 , R2 を用いずに表すというのは、コンデンサに流れる電流で表すという事だ。高校物理の備忘録に書かれている手順で、V1sin ωt をQ = CVに代入して、電流を求めたいのでQを時間微分する。

問題文には優しく sin ωt の微分の関係式が書かれているが、東工大受験生なら参考にしなくても解けるだろう。

(f)

(e)の答えを利用する問題だが、(e)が分からなくても、電流と電気容量は比例するので答えられる。

(g)

図に圧倒されるが、 (d)の解を利用しつつ、未知数を変形して気圧の関係と結びつける。

〔3〕

手際よく処理すれば高得点を得られる。

(c)

この問題では、弦が生じる二つの音は、張力Sやうなりに関して数学的な対称性を持つので、対称的な形を保って処理していくと効率的だ。

(e)

ここから、難しくは無いが計算が面倒になってくる。

[9] yn は2A・sin (2πfnb /v)が全て係数部だから、cos (2πft)を二階微分すればよい。

[11]m /b は線密度を表している。

高校数学 東京工業大学2010 (平成22)年度 前期入試問題の解説

Math Station の解答

〔1〕

(1)

0 < x < π /2で単調減少、π /2 < x < π で単調増加する事も記述しておくと丁寧だ。

(2)

これは問題文の「sin αの式で表せ」の意味が紛らわしいが、sin α を含む項のみによって式を記述するということ事だ。

(3)

αの推定範囲を絞り込んでから、Jをαの関数として評価する。この範囲内で減少関数である事に注意。

f(α) = 0 という性質を利用するとJ = 2 sin α という単純な式になるという(2)の誘導を利用しているが、この誘導が無いと気づきにくいだろう。 もし誘導が無ければ、√2という値から連想して、sin やcos にある角度を代入するとJがこのような値になると予想しよう。

〔2〕

Math Station の解答が分かりやすい。

ガウス記号と来れば、[x] ≤ x < [x] +1 ⇔ x−1 < [x] ≤ x を連想できなければならない。

√(a +1) -1 < x ≦ √a に於いて解の無いaを求めるコツは、左辺とxが等号なしの不等号の関係になっているのを利用する事。左辺を整数にする事でxが整数になる余地を奪うという訳だ。また、漸化式の様に両辺の係数や指数を同じになるように整えるのもコツだ。

(3)は(1), (2)の誘導によって一般項が想像し易くなっている。誘導が無くてもこうやって具体的な項を求めてみる事が大事だ。

与式の「解を持たない」値を元に無限級数を求めるというユニークな問題。 短い数式とその奥深さのギャップが面白い。

〔4〕

今年度最大の難問。

与えられた条件を汲み取りにくいが、点Qは任意の点を意味するので取り得る範囲全てで成立する条件を図示する。そこでAQ = tAP (0 ≦ t ≦ 2)と立式する。

結論の式を代数的に整理していくと、”x2 +y2“という形式から円の式を含む事が分かる。複素数平面もそうだが、この手の問題はx, y の形式から見定めて円や直線の式を強引に作るのが良い。そしてそれらの式を崩さずに処理していく。東進とMath Station で円の式の形(中心位置)が異なるが、いずれも答えを出せている。

Math Station の解答で「f(t)≧0 ⇔ f(0)≧0∧f(2)≧0 」と置き換えられる理由は、 f(t)≧0 が「0≦t≦2を満たす全てのtで f(t)≧0」を表しているからだ。 f(t)の傾きである”x2 +y2 -2ax”は正負がxにより変化するので、tの定義域の両端のどちらで最小値を取るか決まっていないので論理積にする。

条件式の分母に0を取り得るOQがあるから、OQ = 0となる領域を除外する。

角の二等分線を使った解法

ちなみに、内外角の二等分線の性質を使って平面図形の問題として解くことも出来る。

  • Pが中心(a /2, 0)、半径a /2の円周上にある場合、OPが△OAQの内角の二等分線だとすると、t = 2 のままQをA側に動かすと結論に反する。
  • x < 0 の場合、OPが△OAQの外角の二等分線だとすると、QをA側に動かすと結論に反する。

この方法は、点を移動するとQP /OQ > AP /OA となる事を証明する必要があるだろう。

高校数学 東京工業大学2009 (平成21)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

東工大にしては非常に簡単な問題。

点A, Bの座標を表すのに使う記号は、xA, xBなどの添え字付きの物だと書く時間が長いし見にくいので、α, βなどにしておこう。

式をα, βで表現したまま計算を進めていくのが王道だ。グラフを見ても分かるように左右対称性を持つ問題だから、 α, β のいずれかをもう片方で表して計算していくというのは筋が悪いのだ。

面積を定積分して求める際、積分範囲もα, βで表す事で、積分結果がα, βで表された簡潔な式になる。

最小値に関しても微分せずに相加相乗平均などで素早く求められる。

〔3〕

東進の解説

二次方程式について、与えられた条件を満たす解を持つような係数(m, n)の組み合わせの個数を数える。

問題の意味を捉えにくいが、まずは

  • 放物線の軸はn /2
  • 2N以下の正の整数(1 ≦ m ≦ 2N, 1 ≦ n ≦ 2N)
  • 解がN以上(N2 -Nn +m ≦ 0)
  • 実数解を持つ(n2 -4m ≧ 0)

といった条件を確認していき、立式・グラフ化する。ちなみに、「係数が未知数である二次方程式の実数解」と来れば「解と係数の関係」を使いたくなるが、この問題は特に使わない。

(m, n)の個数は、上記の4つの不等式を満たす組み合わせだ。不等式によって範囲が定まると言えば格子点なので、視点を変えて(m, n)を平面座標に置き換えて格子点として数え上げる。(m, n)という二つの未知数の組み合わせになっているのも、格子点として解くという事に気づくヒントだ。

一見すると実数解条件 “n2 -4m ≧ 0″という曲線で囲まれた領域の格子点を数えなければならない様だが、実際には「解がN以上」という条件により直線で囲まれた領域を扱うことになる。

複数の条件と照らし合わせて領域を確認して格子点を数え上げるのは骨が折れる作業で、馴れが必要だ。しかもこの問題ではN = 1 を例外として場合分けする必要がある…領域が狭いので” N2 -Nn +m ≦ 0 “という斜線部分に掛かってしまうからだ。

東進の解説では細かく場合分けしているが、却って分かり難くなっている。

〔4〕

東進の解説

(1)

直線l と垂直な平面πは内積で表せる。そしてxy平面と交わるという条件は”z = 0″を代入するだけで求まる。”x +y = t”だけでは平面を表す事になるので、”z = 0″も併記する。

(2)

今年度最大の難問。「斜軸回転体の体積」というだけでも発展的な内容だが、更に空間的に捉える必要がある。

(1)が誘導になっており、平面と領域Dが交わる線分をlを軸として円の面積を求め、tで積分することになる。放物線は平面π がt = 1 の時に丁度接するようになっているので0~1 の範囲で積分する。

tはx, y, z軸により定められておりl とはスケールが異なるので、tとsの関係式を作り置換積分する。

軸が空間的に傾いているので、RP, RQを算出してドーナツ状の面積を求める。

被積分関数の項の一つ”-2√(1 -t)・(t -2)”の積分方法については、東進は部分積分を使っているが、Math Stationのように”2√(1 -t) +2(1 -t)√(1 -t) “と分けた方が部分積分を使う必要が無いので速い。

高校数学 筑波大学2015 (平成27)年度一般入試問題の解説

〔2〕

(1)AQ = 1/tan (α /2), QC = 1/tan (β /2) という風に、半角を三角関数で表しても正解になる。

〔3〕

(1)

an+2, an+1 を数列を使ってα, βの式に置き換えて「解と係数の関係」を使う方法があるが、因数化や展開に手間がかかる。

二次方程式とそれが元となっている隣接三項間漸化式は親和性が高い。これを利用して、実数解を二次方程式に代入して漸化式を組み立てる方法が速い。

(2)

(1)の示された漸化式は係数が整数なので、an+2 も整数になるのは自明だ。

(3)

pとqの関係式は何の意味があるのか一見して分からないし、題意を掴みにくい。こういう時は取り敢えず示すべきものを現時点で分かっている材料を用いて作ってみる事だ。そうすると次のようになる。

bn = an +⌈-{p -√(p2 +q)}n -1 /2⌉

“⌈”, “⌉”は天井関数の記号。ここで、 pとqの関係式の不等号を等号に置き換えて代入してみると意味が漸く見えてくる。

βは負数なので、指数の偶奇に依って天井関数の符号が変わる。慣れてないと中々答えに辿り着けないだろう。

〔4〕

(3)

(2)と同じように両辺を微分すると大変な手間が掛かるし、微分しても大小比較は出来ない。

そこで両辺の項がよく似た形である事、両辺の2項目が(2)で証明した式と同じ形式である事に注目する。

(4)

問題の流れからして、素直に積分を試みるのではないのは分かる。

(3)の式は、lim (t → ∞)とすると両辺が0になる不等式なので、挟み撃ちの原理に用いると勘付くだろう。

b'(t)を導くという事には気づくが、計算方法を工夫しないと時間が掛かる。東進の模範解答の様に、b(t) = -t・f'(t) +f(t) からb'(t) = -t・f”(t)と具体的な計算を後回しにする方法に分がある。分母の形は最終形を維持し、分子は項数を減らそう。誘導の中で出ている式をそのまま使わない方が良いパターンだった。

極限の発散速度は「多項式 ≪ 指数関数」である事を知っていれば挟み撃ちの原理を使うくだりは不要だが、東進やパスナビの模範解答には書かれているので、挟み撃ちの原理を使って記述する必要があるのだろう。

〔6〕

(1)

zが描く図形を考える問題なので、zの項を一つに纏めていく。問題文中で円であると教えてくれているので、平方完成すればよい。

(2)

純虚数となるという条件を式に組み込む。

与式をωとおいて、ω +ω = 0, ω ≠ 0 と共役複素数を利用する方法がある。一つの項に含まれる記号すべてに「バーがある」または「バーが無い」状態に持ち込めば、項全体を「バーがある」または「バーが無い」状態として扱える。ここで注意すべきなのはβは正数なのでバーが有っても無くても同じという事。

若しくは与式をkiとおくという方法もある。式全体からバーを消すためにβ –αβ -α とした後に絶対値で処理する。

いずれにしても、β –α というバー無し、バー有りが混在する項は望ましくないのでβをβ に置き換えるのが肝。 バー無しと有りの混在が価値を持つのは、主に同記号同士の和(0になる)もしくは積(絶対値になる)の場合である。

長さは絶対値記号ではなく共役複素数を用いた形を使う。

(3)

正三角形といえば、各頂点が中心との距離が等しく偏角が等しいという性質があるが、そう考えると式が複雑になる。|β -α| = √3・|α| に着目すると、他の記号なしで立式出来る。βが実数なので2乗しても共役複素数が出てこないので代数的に処理できる。