「個別試験」カテゴリーアーカイブ

高校物理 東京工業大学2016 (平成28)年度 前期入試問題の解説

本年度は歴史的な高難度。比較的易しい第3問を出来るだけ解けるように、第1, 2問に時間を使い過ぎない様にしよう。

〔1〕

例年の力学問題と比べて誘導が少なく、発想力を要する。

(a)

錘の位置は立方体の位置に従属するので、立方体が持つ変数で表せる。

(b)

わざわざ比の形式で答えさせているのは、T1, T2の具体値を求める必要がない事を示している。ここでは力がテーマなので運動方程式を利用しよう。

「糸に繋がれた物体の運動」という点に着目すると、立方体や壁にとっては錘は同じように円運動をしていると気づける。この対称性を利用すると、壁にとっては T2cosθ -T1cosθ、立方体にとっては慣性力に注意してMa/ 3 -T2cosθ +T1cosθ となり、これらが等しい。

(c)

「弛んでない糸に繋がれた物体の運動」という点に着目すると、壁にとって錘は円運動をしている。つまり、軌道が特定されているので、水平方向の速度が決まれば鉛直方向の速度も確定するのである。これは円運動に限った事ではなく、放物線運動などでも成立する。

円運動に気づけないと詰み。「長さが一定の物が動く」というのが円運動の本質。

(d)

ここでも円運動の束縛条件を利用する。円運動に対するT1の法線方向成分を求めるのも難しい。

(e)

「質量を持つ弛んだ糸」という珍しい設定で、考察が難しい。力が釣り合っているので、とりあえず垂直・水平方向に分解しよう。

各錘が静止しているという事は力が釣り合っているという事だから、各錘を結ぶ糸の水平方向の張力は全て等しい。つまり立方体への水平方向の張力はTだ。糸が張っていなくても、水平方向の張力はどの地点も等しいのである。

また、10個の錘を立方体と壁で平等に支えているので、垂直方向の張力は5mgだ。

(g)

立方体の垂直抗力は、立方体の質量に加えて張力の鉛直方向成分も含まれる。

〔2〕

速度や力の計算に於いて、回転子と絶縁体棒を混同しないように注意。

(a)

誘導起電力は閉回路でなくても生じる。電磁誘導の法則と同じように単位時間あたりの電荷が移動した面積を求めよう。

PQを磁場中を動く導体棒と捉え、V = vBl で求めた方が速い。その際は、PQの中点の速度をvとしよう。

ローレンツ力により電子はP側に集まるので、電場の向きはQ→Pとなる(電場の向きは混乱しやすいが、コンデンサの電場を思い出すと良い)。

これが手回し発電機と同じ役割を果たして、今後の設問に発展していく。

(b)

スイッチを入れた瞬間は、抵抗とコンデンサを含む並列回路におけるコンデンサの電位差が0なので、電流は全てコンデンサ側に流れる。よって回路全体の抵抗はRだ。

充分に時間が経つと、コンデンサは電位差が抵抗の電位差と等しくなり、電流は流れなくなる。よって回路全体の抵抗は2Rだ。

仕事率と消費電力の等価性Fv = V2 /R またはF = IBl で導ける。

(c)

前問が分からなくても感覚で解ける問題。

(e)

回転子が等速円運動する事で交流電源となる。

(f)

IL0 = V0 /ωL, IC0 = V0ωCなので、 IL0 /IC0 = 1 /ω2LC となる。

それぞれの振幅はリアクタンスに比例する。リアクタンスはQ =CVについて微分、V = L dI /dt について積分することで得られる。

(h)

磁場中で導線を動かしても力が生まれないのは不思議だが、これはコイルの逆起電力により電流が打ち消されている為だ。この時に共振回路が生まれる。

vh を求める上では IL0 = V0 /ωL, IC0 = V0ωC を知っている必要があるが、これを忘れていても「IL0 = IC0」は書いておこう。

〔3〕

熱と力学が融合した問題。

(a)

容器A, Bの水面の高さが同じである時、理想気体の圧力はp0である。なぜなら、容器A, Bは細管で繋がれているので液体はパスカルの原理によりどの面に於いても等しくなり、理想気体の圧力と大気圧が間接的に釣り合っていると言えるからだ。

容器Bの高さを変えた場合は水位の差の分の液体の重力を圧力として加算する必要がある。化学で学ぶ水銀柱でも同じ考え方を用いる。

ここで「容器Bの高さを変えると大気圧も変わるのでは?」と思った人は鋭い。大気圧は、高度が高いほど低くなっていくのは知られているが、数メートルの差ではその変化は無視できるほど小さい。したがって大気圧は不変であると近似しているのである。この考え方は重力においても同様である。

(c)

Wa‘は「Wa – (液体の位置エネルギーの増分)」で求めうる。

しかしより簡単に、「大気にした仕事」に着目すると大気圧は常にp0 で、理想気体が大気をΔVだけ押しのけたのだから p0ΔV と求めうる。

(d)

複雑なので図を描いて確認しよう。

(e)

keは、前問が解けなくても「pd = p0と代入してkについて解く」と書こう。Qeは、等圧変化なのでQ = nCpΔT で求められる。

(f)

ここまでの問題が解けなくても答えられる。

  • EL: (e)に於いて、加熱しても容器Aの圧力が変わらないという事は、常に大気圧と等しいという事だ。つまり常に容器A, Bの水位は等しい。
  • EL +EE: ヒーターが与えた熱量は、「理想気体の内部エネルギーの変化」「大気への仕事」「液体の位置エネルギーの変化」「弾性エネルギーの変化」の4つに変換されたはずだ。しかし、容器A内が圧力p0の定圧変化をしているということは、この実験系を位置エネルギーや弾性エネルギーを無視して「容器Aのピストンが直接に大気を圧力p0で押している」と単純化することができるのだ。

(g)

(d)が解けなくても分かる。

高校数学 東京工業大学2015 (平成27)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

どの解答例も一般項を推測で導いているのが心もとない。特性方程式を使えるようになっておくべきだ。

(2)

数列問題に特有の「数式を裁量で調整して不等式に合わせる」という技術を要する。これには慣れが必要だ。

Σ(k ak) を計算する上で、anの分母にあるnが足枷になっているので、これを定数に置き換えて不等式を作る。

an = n(6n -1) /(2n -1)を、分母にnを含む項の分子が定数になるように多項式を作ると良い。n→∞ とした時にこの項が0になるわけだ。

上記の解法とは別に、「すべてのnについて」とあるので数学的帰納法でも証明できる。「a1 +2a2 + … +n an」を何度も書くのは手間が掛かるし気が散るので、これをSnと置こう。bn の場合に成立すると仮定して、bn+1 の式を立て、これを bn を含む形に強引に変えて不等式を作るわけだ。

(3)

極限値を求める問題であり、(2)で不等式を証明している事から挟み撃ちの原理を使うと分かる。

(2)の問題文で与えられた不等式から3に収束するのは明らかなので、(1)と(2)が解けなくても堂々と3 < bn を示して挟み撃ちの原理を用いればよい。

第2問

(1)

p, q, r, s, tについて解くので、これらを含むベクトルOH, AH’について注目して、垂直をなすベクトルと内積をとる。さらに、内分点の位置ベクトルを表す為に用いている媒介変数は和が1になるので、p +q +r = 1, s +t = 1だ。

(2)

四面体の高さを求める為に|AH’|2を計算するが、s = t = (2 -x2)/3 はそのまま文字で置いたまま計算した方が、ab = ac =3t/2 と置けるし楽だろう。ちなみにこのxの式は、(1)の誘導を使わなくても余弦定理などで解ける。

x = √2 において四面体が成立する十分条件を満たしている事を示すために図を描くのが手っ取り早い。

OA ⊥ △OBCのときにVは最大になるのは自明なので、(1)が解けなくても部分点は得られる。

第3問

ガウス積分を題材とした難問。こういうのを出してくるのが東工大である。(2)まで解ければ大したものだ。

(1)

これは簡単。

逆関数に変換するのがポイント。「x =」の式では積分できないが、回転体なので「x2 =」で構わないから積分できるわけだ。

バウムクーヘン分割を使えば逆関数にする必要はない。ただし一般的手法ではないので減点されるかも。

(2)

回転体の断面積を求めるが、類例が見られないので自力で構想する必要があるだろう。

「s2 +t2」 の部分が三平方の定理を使って断面積の関数を作るヒントになっている。「三平方の定理を使って断面積の関数を作る」と書いておけば部分点は得られるかも。

右辺が断面積の最大値を表していると気づけば、予想でS(t)を書いておけば部分点は得られるかも。

(3)

体積の平方根と断面積を比較していることから、「Vは S(t)を-a < t < a で積分する事でも得られる」という事に気づくのがカギ。それだけでも部分点狙いで書いておこう。体積が曲線の二重積分である事が学べるが、大学レベルの話だ。

e-x2 を積分するのは高校数学範囲では恐らく無理。

第4問

(1)

θではなく内積を使ってcos θ から求める。cos θ → 0 を求めた後は、0 ≦ θ ≦ π を書こう。

(2)

(1)より簡単なように感じた。

第5問

(1)

a, bをそれぞれ最小公倍数で割ったα, βは互いに素であり、f(a, b) = αβ と書けるのでnの約数と言える。

(2)

aは約数として素数の整数乗は持たない、つまり「異なる素数の積」なのでa =1 だ。どう表現すれば良いか少し悩む。

(3)

整数問題全般で使える事だが、a = 6, b = 10 といった様に具体化してみると一気に見通しが良くなる。

高校化学 東京工業大学2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • 1.電子軌道のエネルギーは4s < 3pとなっているため、第4周期の遷移金属には4sに1または2個入った元素が並ぶ
  • 2. CrO42− は黄色。Cr2O72−は橙色で、還元すると緑色のCr-3になる。
  • 3.ハロゲンは電気陰性度が高いのでハロゲン化物には溶解度が高いものが多いが、銀は金属の中でも電気陰性度が高くAgCl(白), AgBr(淡黄色), AgI(黄色)は沈殿する。しかしFは電気陰性度が極めて大きいので溶解する。
  • 4.両性元素の単体は、酸・塩基のどちらと反応しても水素を生じる。Alの配位数は6だが、ヒドロキソOHは4配位しか作らない。
  • 5.OH化物はアルカリ金属・アルカリ土類金属以外は全て沈殿する。

〔2〕

  • ウ.熱濃硫酸は硫酸が熱によりSO3に分解しておりこれが酸化剤として働いてSO2に還元される。
  • 1.有色気体はF2(淡黄), Cl2(黄緑), NO2(赤褐), O3(淡青)の4つ。
  • 3.硫化物は基本的に黒だが、ZnSは白, CdSは黄。
  • 5.ヨウ素ヨウ化カリウム溶液は、水に難溶な I2がヨウ化カリウム水溶液には解ける事を利用した水溶液であり、ヨウ化カリウム(還元剤)とは異なる。SO2は酸化剤・還元剤どちらにもなり得るが、I2は酸化剤なので還元剤として働く(SO42−)。
  • 7.自己酸化還元反応によりHCl +HClOとなる。自己酸化還元反応は、 H2O2 をMnO2を触媒としてO2を発生させる場合やNO2からHNO3 を作る場合に起こる。

〔3〕

Clは強酸由来のイオンなのでその化合物は溶解しやすいが、Pb, Ag, Hgについては沈殿する。

〔4〕

CuSO4 +H2S ⇄ H2SO4 +CuS↓

CuSが沈殿しているという事は水溶液に溶けているCuSは飽和状態なので溶解度積を使える。

CuSO4 のモル濃度の値は計算に直接関係しない。

〔5〕

(問ii)CとDの関係は、原子量と密度について分かっているので、密度に関して関係式を作る。原子量は単位格子内の質量を求める際に使う。

第II問

〔6〕

  • 2.HeとNe以外は閉殻ではないが、オクテット則により安定している。
  • 3.第一イオン化エネルギーは同周期では貴ガスが最大。
  • 4.「天然に同位体が存在しない」という事を証明するためには、地球上の全ての元素を調べ上げる必要があるので厳密には不精確である。無視できるほど天然の同位体の数が少ない元素にはF, Na, Pなどがある。

〔7〕

  • 1.ArrheniusはH+を持ちそれを放出する物を酸、 OHについて塩基と定義した。しかしこれは水溶液中の物質しか適用できず、 NH3 も塩基として扱えない欠点があり、これをBrønsted & Lowryが改良して「H+を放出するのが酸、受け取るのが塩基」とした。
  • 3. 弱酸(塩基)の電離定数はKa = Cα2である。濃度が高まればルシャトリエの原理により電離度は下がるので分かる。ちなみに緩衝液においては Ka = [H+]Cs /Ca, 加水分解定数はKh = Ch2 だ。

〔8〕

反応熱の問題は、エネルギー図を書くと把握しやすい。

  • 1.反応熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和)
  • 2.水素の燃焼熱の反応式と水の生成熱の反応式は同一。
  • 3.二酸化炭素の生成熱は「C(黒鉛) +O2(気) = CO2(気) +Q」で表されるが、「二酸化炭素のC=O結合」で言及されている二酸化炭素は気体であるので、黒鉛の昇華熱が必要。
  • 6.蒸発熱・融解熱・昇華熱は状態変化のための熱(冷却曲線における平坦な部分に当たる)なので、温度変化のための熱も必要。

〔9〕問ii

どの窒素酸化物の濃度を未知数として置くかで解法は異なってくるが、大筋は同じだ。

容器にO2 を加えた後は、NOは無くなりNO2, N2O4, O2 のみになった。大事なのは、この時点での容器内の気体は、NO2, N2O4の間では正・逆反応が起きて平衡状態になっている一方でO2は何も反応を起こしていない(無視できる)点だ。したがって問iで導いた平衡定数の式を利用できる。

状況を把握する為に流れを書き出してみると良い。

各物質の量的関係を立式する必要があるが、バランスシートで確認する方法のほか、化学受験TUBEのようにNの物質量が不変なのを利用する方法もある。

〔10〕

沸点上昇・蒸気圧降下の理解を問う良問だ。

液体が受ける外圧は、沸点では蒸気圧に等しい。

蒸気圧曲線は一般に下に凸の曲線なので、このような一次関数にはならないので取っつきにくいが、化学を思考力を試す問題に仕立てる為にこうなっている。

状況把握が難しいが、わざわざ一次関数にしている点に着目してグラフを描いてみると、純溶媒と溶液のΔtb に関する関係が明らかになり各段に分かりやすくなる。

第III問

〔11〕

  • (1)2,4,6-トリブロモフェノールの白色沈殿を生じる。よく似た構造にニトロ基を持つ黄色のピクリン酸があるが、ピクリン酸は爆発性を持つのに対してこれは難燃剤に用いられるのが対照的だ。
  • (2)アルカリ融解法では、ベンゼンスルホン酸ナトリウムの官能基(-)を電離させる事でヒドロキシ基を結合させる。これは昔の製法で現代では(ア)のクメン法が用いられる。
  • (3)ナフタレンをV2O5を触媒に酸化するとCを2個失ってフタル酸になる。
  • (4)ヒドロキシ基と酢酸が濃硫酸を触媒に脱水縮合する。
  • (5)無水フタル酸は加水分解するとカルボキシ基を持つようになる点に注意。

〔12〕

「最も~」という問題は、その指名されている物質から評価するのが効率的。なぜなら、次に別の物質を評価して反証となっていれば、その時点で「誤り」と結論付けて次の問題へ進めるからだ。

ベンゼン環の二重結合と単結合は区別する必要がない。

〔13〕

  • (2)けん化とは、エステルに塩基を加えて酸の塩とアルコールに加水分解すること。ここではポリ酢酸ビニルをNaOHでけん化して ポリビニルアルコールと酢酸ナトリウムに加水分解した。
  • (4)スチレンとp-ジビニルベンゼンを共重合させ、濃硫酸でスルホン化させたのが陽イオン交換樹脂だ。
  • (5)架橋構造を持つポリアクリル酸ナトリウムは、水に溶けるとNa+ が電離して分子内での電気的反発が生じるため膨張し高吸水性高分子として働く。
  • (6)イオン交換樹脂は高分子なので水に不溶。
  • (7)縮合重合で作ることも可能だが、ア~オに書かれた製法には縮合重合は含まれていない。誤解を生む問題文だが、これが東工大の方針という事だ。

〔14〕

各予備校によるとこの問題が最も難しいようだが、私は逆に最も簡単だと思った。実験1の情報だけで確定するのでは?

高校数学 東京工業大学2006 (平成18)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

簡単すぎて何を書いていいか分からないタイプの問題だが、積分の途中計算くらいは書くべきだろう。

(2)

不等式の左辺と右辺をそれぞれ証明するよりも、不等式の中の三つの式を一つの座標系に表すのが手っ取り早い。

(3)

ここまでの誘導と積分法をいかに活用して中辺を変形していけるかが試されている。式変形の手順は、誘導の小問の順序と一致している。

中辺と(1)の式を見比べると、sin(at) と積分範囲に関して異なっているので、置換積分する事によって合わせる。積分範囲におけるπ /2の係数を自然数にしたいので、積分範囲を分割する。すると[a] /aともう一つの積分関数が得られる。

次はこの積分関数を(2)の式の形に持ち込みたいのだが、ここが難所である。絶対値記号が付いているし、そもそもcosではなくsinなのだ。[a]が奇数であるという事とsinとcosは位相がπ /2ズレているという事から気づけるかもしれないが、グラフで確認するとよい。

東進の解答の様に、(2)の不等式を(3)の不等式を目標に変形していくというのもアリだ。

解き方が分からなくても、「与式の中辺を(1), (2)の形に変形していく」と方針を書いておけば部分点が得られるだろう。

第2問

(2)

条件(b)は、変数x, yを固定してtの関数と見なし、その最小値がm以上であればよい。その最小値は(1)で求めたわけだが、この誘導が無くても解けるようになっておくべきだろう。

微分を用いて関数の形を調べるときは増減表を書く。電数とMath Stationの解答はどちらも増減表の関数表記に誤りがあるので注意。

領域を示す問題では、境界を含むか否かを示す事を忘れてはならない。

第3問

東工大らしい多変数関数の最大・最小値問題だ。まず和集合の面積の関数式を立て、変数を減らしたり固定してから増減を調べる。

東進の解答のように、正弦曲線の内側の三角形の重心に置き換えるという考え方もある。

以下の証明は数学的な計算を全くしていないが、論証としては成立している。

3つの円盤のPでない共有点をそれぞれX, Y, Zとおくと、∠XPY = ∠YPZ = ∠ZPY = 2π /3 である事は直感的に分かる。この状態から円盤をずらすとPX, PY, PZはいずれも重なりが小さくなる線分は小さくなっていき、重なりが大きくなる線分は大きくなっていくので最初の状態が最大値になると言える。

第4問

(1)

証明すべき内容が対称性を持つので、対称性を意識して式を組み立てるのが筋が良い。

東進の解答のように、K, L, M, Nが各辺の中点であるという性質を利用して中点連結定理を用いるのがエレガントだ。

(2)

三角形を正、二等辺、不等辺三角形に場合分けして証明する必要があるかは意見が分かれるところだが、私は不要だと思う。

(3)

BDの中点をQとしよう。

(1)より、MKLN である。さらに、対称性を利用して MKPQ , PQLN も言える。

この四面体が立方体に収まるという性質を利用している模範解答が多いが、これは証明が必要になるだろう。誘導を利用して解いているのはCFVだ。

高校物理 東京工業大学2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

(a)

O’を原点とする単位円を考えると、O’P上の万有引力は負であるから、そのx成分も負号を付ける。

(b)

問題の題材が単振動である事を見抜くコツは、「物体にかかる力が、ある地点からの距離に比例する」という点に気づく事だ。一般的には誘導によって気付かせるようになっている筈だ。

(c)

「振動中心での速さ = 振幅×角振動数」を用いると速い。

(e)

ここでも「振動中心での速さ = 振幅×角振動数」を用いてXP = vP‘ /ω, XQ = vQ‘ /ωとすると速い。

(h)

弾性エネルギーと動摩擦力がした仕事との間でエネルギーの原理の式を立てる方法と、小物体Pの運動方程式からPが単振動をする事を示して振動中心の等式を立てる方法がある。

〔2〕

(a)

「重力 = 質量 ×重力場」と同じように「静電気力 = 電気量 ×電場」が成り立つ。同様に「磁気力 = 磁気量 ×磁場」も成り立つ。

(b)

xの値によって弾性力の符号が変わるのが難しいところ。こういう場合は具体的に位置を設定して立式してみよう。

(e, f)

ここまでの誘導問題が解けなくても感覚的に解ける。

〔3〕

(c)

ポアソンの式は、ある気体の断熱変化について述べたものだ。したがって、状態Aの気体全体にこの式を適用する事は出来ない…状態Bへの過程で気体の一部が失われているからだ。そこで、状態Aの気体の中で、状態Bと等しい物質量の部分の断熱変化に適用する。

証明すべき式から逆算してPVγの形を復元する方法も有効だ。

(d)

問題文から、x = h1 /P0 やx = h2 /P0 と置くと良いと分かる。後は試行錯誤して近似式の形を作る。

どの近似式を採用するかで近似方法は幾つかに分かれるが、近似計算に慣れてないと難しい。東工大は近似計算の問題が多いので鍛えておこう。

(e, f, g)

ここまでの問題とあまり脈絡がないし、急に簡単になっているので、この答えで本当に良いのかと疑ってしまう。

こういう事もあるから、終盤の設問でも考えてみよう。

高校数学 東京工業大学2007 (平成19)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

東工大らしく未知数だらけの問題で題意を把握しにくい。具体的な数値を入れてみると把握できるようになるし、検算にもなる。

(1)「pmで割り切れるならばpm +1でも割り切れる」という記述はすべきだろう。

第2問

(1)

複素数平面で回転させる方法を思い付きやすいが、tanが直線の傾きを表す事を利用して加法定理を用いる方が速い。実用的な加法定理の使い方だ。

tanのこういう使い方は珍しく感じる。複素数平面の回転の問題もtanを使った方が良いものもありそうだ。

(2)

T(a)を求める為にy = x2 と直線l の共有点を求める。一方のx座標がaと分かっているので因数分解できる。ただし、ここでは解と係数の関係「α +β = -b /a」を使えば速い。

直線と放物線で囲まれた面積を求めるので、お馴染みの1/6公式が使える…というか使わないと計算量が膨大になる。

第3問

点P, Q, Rが正八角形の頂点だけでなく辺上も動くので注意。こういう時は、初めに「ある辺上を動く点は、頂点にあるときに高さが最大になるので面積も最大になる」と書いておけば、後は動点が頂点にあるときだけを論証できるようになる。

この手の論証は詳しく書こうとすると幾らでも詳しく書けるし時間もそれだけ掛かるので、ポイントを押さえておけば減点はされないだろう。

(1)

△PQRの面積を求める方法には、余弦定理を使って外接円の半径を求める方法と、正八角形の頂点同士を結んで格子を作る方法がある。

第4問

(1)

計算が面倒そうで気が引けるが、淡々と解いていけば答えにたどり着く。

(2)

与式fn(x) = an(x -n)(n +1 -x) は単項式なので、x = n, n+1を解に持つ。更にこの二つの解が隣り合う整数である事から、数列に関わっていると予想できる。

隣り合う放物線の共有点は必ずx軸上にある事に気づくのは大事なところなので、求めるべき領域を図示するだけでも部分点が得られるかもしれない。

lim(n→∞)ではSnは0に近づくので、Tn < S0 + S1 +…+Sn < Tn +1 かつlim(n→∞)Tn = lim(n→∞)Tn +1 となる事を示して挟み撃ちの原理で極限を求めるのが一般的なようだが、無限級数で直接求めるのが手っ取り早い。

高校化学 東京工業大学2015 (平成27)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • 3.SiO2は水とは反応しないが、塩基と反応してケイ酸塩を生じるので酸性酸化物である
  • 5.SiO2 +6HF(aq) → H2SiF6 +2H2O

〔2〕

  • ア.アルカリ金属とアルカリ土類金属以外はOHと結合して沈殿する。
  • ウ.AgOHは不安定なのでAg2Oの褐色沈澱に変化する。
  • エオ.錯イオンになる金属は、OH配位子が両性金属、 NH3がAg, Cu, Zn である。
  • カ. Fe(OH)2は淡緑色、Fe(OH)3は赤褐色。

〔3〕

体積の値は与えられているので「原子1個の質量 × 格子内の粒子数」が分かればいい。原子1個の質量は「原子量 /NA」で求められるので、原子1個の体積を計算する必要はない。

意外にもCuの原子半径が最も小さい。

〔5〕

5番はデータを見ると明らかに最も沈殿しにくいと判断できるので、計算するまでもなく正解の一つと分かる。

そうなれば、あと一つ沈殿しないものを見つければ残りの水溶液について計算する必要はないので、5番の次に沈殿しにくそうなものをデータから探し出す。すると3番と4番だけを調べればよいと分かる。

第II問

〔6〕

  • 1.イオン化エネルギーはアルカリ金属において最も小さくなるが、負にはならない。
  • 3.いずれも電子配置は同じだが、陽子との引力が最も弱いのはO2- である。
  • 4.半径が大きいほど電子と陽子の引力は弱くなる。

〔7〕

  • 3. Fe(OH)3 は親水基を持たないので疎水コロイドである。構造上は分散コロイド。
  • 6.ブラウン運動は分散質が熱運動する分散媒から押されて動く現象。

〔9〕

温度が一定ならば平衡定数は不変であるという性質を利用して、状態I, IIを等式で結ぶ。 等式を作ったら、[X2] = [Y2] なので両辺の平方根を得る事が有効になる。

実験2でXYを追加したことでX2, Y2とXYの濃度は変化したが、この濃度は パスナビの様に [X2] = [Y2] = n -A /2 +α /2, [XY] = A +B -αと差の形で表せる一方、 [X2] = [Y2] = n -A /2 +(1 -t)B /2, [XY] = A +tB と割合で表しても解ける。

〔10〕

(ii)

水を追加したことで塩の溶解度が増え、溶液は更に吸熱された。難しいのは、この吸熱によって溶解度が下がっている事だ。溶解度を25℃の場合として設定できないので、ここではtと置く。

水の量が100gから200gへと条件が変わっているので、40℃だったときからの吸熱量を求める事は難しい。よって25℃のときからの変化を立式していく。

難問だが、問iは30,問2は20と切りの良い数値が答えなので、解けなくても切りの良い値を適当に書いておくのは有効かも。

第III問

〔11〕

  • 1.CaOは塩基性酸化物なので、Ca(OH)2に変化する点に注意。
  • 4.130~140℃で分子間脱水によりジエチルエーテル、160~170℃で分子内脱水によりエチレンが生成する。
  • 6.酢酸ビニル(E)を加水分解するとビニルアルコールと酢酸(G)が出来るが、ビニルアルコールはケトエノール互変異性によりアセトアルデヒドに変わる。アセトアルデヒドはヨードホルム反応陽性なので、ヨードホルムCHI3とギ酸ナトリウムが生じる。

〔12〕

  • 1.スルホン酸とカルボン酸は炭酸より強い酸である。
  • 4.アルデヒド基を持つものはない。

〔13〕

1.断りが無ければ幾何異性体と光学異性体も全て数え上げる必要がある。

〔14〕

化合物Aは3-ヒドロキシプロピオン酸または乳酸である。

環状化合物の混合物と鎖状化合物の混合物はそれぞれ、各分子の重合度が不明だが、こういう問題は平均分子量で処理していく。環状・鎖状化合物の平均重合度と物質量について、x, y, m, nのように未知数を四つも設定する必要があるので気が引けるのが難しいところだろう。

この問題も難問だが切りの良い値が答えになっている。

高校数学 東京工業大学2008 (平成20)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

ex log yの様にeの指数部に対数が含まれている場合は、yx と単純化できる。またlog bs は、bsが真数であるという性質を考えると、log b +log s とせずにそのままにしておいた方が指数関数的な計算がしやすい。

(2)

h log h のh→0の極限は証明しなくてもよい。証明した方が良いのか分からない事は、後回しにして時間が余ったらやれば良い。

第2問

床関数(ガウス)がテーマなので、「定義に基づく不等式」と「挟み撃ちの原理」を使う事を想定しよう。

関数f が存在するせいで、そのままでは極限を求めることはできない。挟み撃ちの原理で代替となる式の極限値を求めるか、関数f を極限を求められるような形に変形する必要がある。

実のところ、この問題では「定義に基づく不等式」と「挟み撃ちの原理」を使わなくても解ける。寧ろカギは場合分けが出来るかという点にある。

一般に、 lim(x→∞)xnはn = 0のときに収束する。{1 /f(ax -7)} -{1 /f(bx +3)} (A式とおく) の極限を求める為に、 xcからxを幾つか分配することになる。この分配の過程で場合分けが必要になるのだ。

a = b とa ≠ bの場合では、A式のxの次数が異なる。故にcの最大値に分岐が生じる。

第3問

確率の問題だという観念に縛られると、代数的な発想が出てこない。「いびつなサイコロ」という時点で確率の要素は薄いと見るべきだ。

相加相乗平均、平方完成、Schwarzの不等式といった不等式の証明に使う様々な武器をふんだんに利用する問題だった。

Schwarzの不等式は便利なのだが、それを使えるという事に気づくのが難しい。ポイントは「2乗の和」や「和の2乗」があるという点だ。

不等式の証明として平方完成を利用する場合は、完全平方式の中身が差の形「(a -b)2」(a,b≥0)となる必要があるので注意。等号成立条件を意識すれば間違えないだろう。

(1)

Schwarzの不等式を利用すると簡潔・エレガントに求められる。この不等式は(2乗→和→積)≧(積→和→2乗) となっているが大小関係を忘れやすい。そんな時は、a1 = b1 = 0, a2 = b2 = 1 を代入してみるとすぐに分かる。

p1 + p2 + … + p6 = 1 となるのは当たり前だが、代数的に処理していく上では重要な式になる。

(2)

相加相乗平均、Schwarzの不等式が使える。

第4問

点Rの座標x, yの関係式を作り、それが楕円の方程式になっている事を示す。R(x, y)は原点Oからの距離や角度により定義されているので、ベクトルや複素数平面の手法が有効だ。

P, Qの座標は自分で設定する必要があるが、直線上にあるのでそれぞれ変数は一つで良いと分かる。原点を通る半直線上にあるので、方向ベクトルで表す。

そして距離と角度の情報を元にR(x, y)を組み立てる。PQ = 1という情報も組み込む。

高校物理 東京工業大学2015 (平成27)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

u とvは書き分け難いので同じ問題中で文字として指定するのはセンスがない。

(a)

錘Aが円運動をしているという事は、Aにかかる力(遠心力, 張力, 重力)の半径方向の合力は向心力となる。

(c)

運動方程式はある物体にかかる力を記述するものである。その事に注意すると、F1, F2 はそれぞれ「錘A ,Bが棒Sに対して掛ける力」であるので、作用反作用の法則を考えて「棒S が錘A ,B に対して掛ける力」は -F1, -F2 となる。

力の作用を書き込んだ図では、力が掛かっている物体がどれなのか明示しておく習慣を付けておくと、この様な問題で勘違いする事が無くなるだろう。

(d)

m < M なので、0 < θ < π では a < 0であると確認できる。

(f)

u -v = u’ -v’ ⇔ (u’ -v’) /(u -v) = 1 なので反発係数は1であり、力学的エネルギーが保存されていると分かる。

(g)

回転子Rが台に固定している様子を想像すると、物体Cが衝突したときに台にまで衝撃が及ぶと分かる。つまり力積が台に吸収されているのだ。

釘も含んだ運動量保存則の式を立式するのが手っ取り早い。

(h)

錘A, B両者の運動・位置エネルギーの合計が力学的エネルギーとなる。各錘の位置エネルギーの最大・最小値が入れ替わるという面白い問題。

〔2〕

(a)

E = Q /εS の公式を憶えていれば速い。

(c)

電場と重力場という二つの場の非接触力が働いている。

(f)

極板を上昇させる事で装置が右に動き、それに伴い極板も右に動くので新たにローレンツ力が働く。ローレンツ力の連鎖がテーマであるが、実験の様子をイメージしないと気づきにくい。

F = qvB を使う方法が思い付きやすいが、 「装置が得た運動エネルギー = 張力の増分 ×z」 という力学的エネルギー保存の法則を利用する方法もある。

(g)

放電回路については、大問の説明文に「鉛直に置かれた」と定義されているので(d)で調べたジュール熱以外の物理現象が生じると予想できる。

放電回路を流れる電流が電磁力を生み出すので、今度は公式F = IBl を使う。

(h)

物理学ではMKS単位系を使う。

〔3〕

センター試験レベルなので全問正解したいところ。

(j)球面波は波源の断面が連続的でなく縦軸対称となっているので、yが負の領域では定常波になる。