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高校理科(化学) 筑波大学2016 (平成28)年度一般入試問題の解説

余りにも問題量が多く、制限時間内に全てを解答するのはセンター試験よりも遥かに困難だ。解答に時間が掛かる問題を見極めて捨てる技術が合否を分ける。

問3

問題の意味をよく理解しようとすると時間が掛かるが、与えられた式と数値で計算していくと簡単に正答を得られる。問2も同じようなものだ。

熱化学方程式の問題は一般に、単純に数値を代入して計算するだけだ。

問4

アンモニアソーダ法。生成したNH4Clは消石灰Ca(OH)2と反応してNH3とCaCl2になり、前者は再利用される。

問2

平均分子量 = (混合気体の質量) /(混合気体を構成する各分子の物質量の総和)

ここでは平均分子量は次の様に分圧を使うと速く計算できる。

(酸素の分子量) *(酸素の物質量比) +(水素の分子量) *(水素の物質量比) = (酸素の分子量) *(酸素の分圧) +(水素の分子量) *(水素の分圧)

問3

電池では、還元剤が電子を失うのが負極。酸化剤が電子を得るのが正極。

問4

(i)

H2O2 が酸化剤または還元剤のどちらとして働くかの見極めが重要。KIが明らかに還元剤なので酸化剤と判断できる。もしくは酸性水用液という条件から、水素イオンが多いので酸化剤として働くとも判断できる。

(ii)

H2O2 の物質量はx /10 molだ。H2O2 とKIのイオン反応式では、 H2O2 と生成物 I2 の物質量比は1:1 なので I2はx /10 molだ。

S2O32- の物質量は0.02molだ。

I2 と S2O32- のイオン反応式より、1 : 2 = x /10 : 0.02 となる。物質量で比を取ると分かりやすい。

問1

(a)

エステルを強塩基の水溶液で加水分解するとカルボン酸塩とアルコールになる。これを「けん化」という。

実験2では、二つのエステル結合がけん化されてONa基になった後、中和してヒドロキシ基になった。これらが不飽和脂肪酸Bとカルボン酸Cだ。

(b)

グリコシド結合と言えば糖類同士の結合を言うが、厳密には「糖類と有機化合物が脱水縮合して形成する結合」である。

ちなみにエーテル結合は結合力が強いため加水分解はされないので、(b)の結合には該当しない。

結構マニアックな問題だった。

問2

Bは脂肪酸なのでカルボキシ基を持つ。

問3

光学活性とは、光学異性体を持つという事。

問4

マルトースは最も簡単な二糖類の一つで、二つのαグルコースの1, 4結合から成る。1, 1結合した物はトレハロース。ちなみに、 αグルコースのみから成る多糖類はデンプンだ。

セルロースはβグルコースから成る多糖類。ちなみに、二つのβグルコースから成るのがセロビオース。

化合物Gは βグルコースと比べると、炭素4位が上下回転しているが、これをβガラクトースという。 βグルコースとの1, 4結合でラクトースになる単糖だ。

問7

環式構造同士が水素結合を作るという点が重要なので、「水素結合」という語を盛り込もう。

高校数学 筑波大学2014 (平成26)年度一般入試問題の解説

難しくはないが、手間のかかる問題ばかりだ。

〔1〕

(1)

(2)で点Gの座標を表す必要があるが、三次方程式の解を求めるのは難しいので「解と係数の関係」を用いてエレガントに導き出す。

α+β+γ, αβ+βγ+γα, αβγ が出てきたら三次関数の「解と係数の関係」を使うのは確実。α, β, γ はP(a, b)からf(x)に引いた接線のx座標であり、f(x)と直線との交点ではないので気づきにくい。しかし接線の座標を(p, q)として方程式を立てて(a,b)を通る情報を与えると…

2t3 -3at2 +a +b = 0 ※g(p)とおく

となり、pの解が α, β, γ となる。

ここで「解は3つある」という条件を確認しよう。まずグラフの形からa ≠ 0であると分かる。加えてg(p) の極値はg(0) = a +b, g(a) = -a3 +a +b であるから、(a +b>0 ∧ -a3 +a +b < 0)∨ (a +b < 0 ∧ -a3 +a +b>0) となるが、よりシンプルに(a +b)(-a3 +a +b) < 0 とも表せる( a ≠ 0 も含まれている)。

三次関数の解と係数の関係は次の通り。

  • α+β+γ = −b/a
  • αβ+βγ+γα = c/a
  • αβγ = −d/a

解と係数の関係には、方程式の次数に依らず次の法則が成り立つ。これを知っていれば関係式を憶える必要はない。

  • 左辺の次数が偶数の場合は右辺は正数、奇数の場合は負数となる。
  • 「左辺の次数」と「右辺の分子が対応するxの次数」の和は、その関数の最大次数に等しい。(二次関数では2、三次関数では3)

(2)

α333 = (α+β+γ){(α+β+γ)2 -3(αβ+βγ+γα)}を憶えている必要がある。

重心の問題は2016年度〔1〕でも出題されている。

(3)

(1)で説明した「解は3つある」という条件がここで必要となってくる。問題(1)を解く上では必要のない条件なのでスルーしてしまいがちなので厄介。大問を解く前に各小問に目を通しておくと良いかも。

y = 9x3 /4 -2x, y = -x, f(x) = x3 -x の三つのグラフを交点に気を付けながら描く必要があるので大変だ。 y = 9x3 /4 -2xとf(x)の大小を比較する際は次のやり方が速い。

  • 両関数を辺々引いて交点のx座標を導く。
  • (1, 0) がf(x) とx軸との交点なのでx = 1を代入して比較。

「境界は除く」という事も書こう。

〔3〕

(3)

Z(a)の極限は、Y(a)とY(b)で分けると速い。Y(a)の極限は(1)で求めた通り1。 Y(b) はbをaに置き換えるのではなく、b = 1/a を利用して”a → +0″を “b → ∞” とすることで(1)の結果を再利用できる。

Z'(a) /a の極限について。Y'(b) = {Y(1 /a)}’は合成関数の微分で(-1 /a2)・Y'(1 /a) とできる。この後、東進やパスナビの模範解答ではaを再びbに置き換えて”b → ∞”とする事で証明なしで使える極限の形に持って行っているが、極限の速度は多項式より指数関数が大きい事を知っていればすぐに答えを出せる。

〔4〕

(4)

隣接三項間漸化式の一般項を求める。特性方程式または数学的帰納法を使う。

〔6〕

(1)

楕円の方程式は x2 /a2 +y2 /(a2 -c2) = 1 、双曲線の方程式は x2 /a2 -y2 /(c2 -a2) = 1 で表される。式変形すれば両者は同じものである事が分かる。違いは前者がc < a, 後者がa < c であるという事。要は焦点が曲線の内側か外側にあるかの違いだ。

「点Pの座標をaを用いて表せ」とは、tも消去する必要がある。

(2)

C1, C2 の接線公式から傾きを求め、それらの積が-1になる事を利用する。このほか、方程式の偏微分で法線ベクトルを導き、内積が0になる事を利用する方法もある。

(3)

aが媒介変数となっているのでaを消したx, yの方程式を作る。

計算過程で、点Pは第一象限にある事や正負の条件により範囲が絞られることに注意。

高校理科(物理) 筑波大学2016 (平成28)年度一般入試問題の解説

2016年度の物理は直近10年間で最も難しく、最難関大学レベルだった。

単振動を含む二体問題が題材。受験物理のサイトに類題が詳しく解説されている。

問2

問7で台の重心位置を求める為の前準備。

物体は外力を受けなければ重心の速度は一定である(重心運動方程式)。そして面白いことに、これは単振動を含む系の場合も成立するのだ。

運動量保存則を考えると容易に分かる。この法則が二物体間の衝突や分裂以外に利用できる例だ。

初めに小球に速さv0 (運動量: mv0) が与えられているので、全体の速さは (mv0) /(M +m) となる。

問3

問4で、バネが最も縮んだ時の「2体系の速さに基づく運動エネルギー」 を求めるが、この時に小球の速度が台に対して0である事に着目する。

問4

d1 を含む式といえば弾性エネルギーだ。2体系の力学的エネルギーは保存されるので、これを立式する。

t = 0 の時、台の速さは0でなので、速さv0 が与えられた小球の運動エネルギーが2体系の力学的エネルギーだ。そしてバネが最も縮んだ時、「バネのポテンシャルエネルギー」と「2体系の速さに基づく運動エネルギー」の総和が力学的エネルギーだ。

問5

問6(a)で立てた式には台の加速度Aが含まれているので、これを消すために台とバネの間に成り立つ運動方程式を立てる。

運動方程式とは「力の釣り合いの式」である。この問題で力を生み出しているのは弾性力であり、バネの右端が台を押し、作用反作用により釣り合っている。

問6

問7で台の重心位置を求めるが、2体系の重心位置は容易に分かるのに対して小球の重心位置は常に動いているので、これを分析していく。

(a)

(b)では「台に対する単振動のバネ定数」が未知なので、「台を基準とする小球の運動方程式」を立てる。

台とともに動く観測者の立場から考えるので、「台が固定されている」として考えたいところだが、問5のように台には力が掛かっているので慣性力を考慮する必要がある。

(b)

問7で台に対する単振動の変位を表すには角速度を知る必要がある。

単振動をしている事を示すわけだからF = -kx の形で示す。台に対する単振動なので左辺は小球の質量mと台に対する加速度aを用いてmaとする。

角振動数ωを求めるには、 F = -kx = -mω2x と弾性力を角振動数を含む式に変形して解く。

問7

2体系の重心位置の式に小球の重心位置を当てはめる事で台の重心位置が分かる。

小球の重心位置は台の重心位置と単振動の変位に依存しているので、相対位置の式”x -X = d1 sin(ωt) -X0“を立てる。

問1

問2でローレンツ力を求める上で、F = IBl は使えないのでF = qvB を使う。vが未知なので運動エネルギーを利用して求める。(よく似た式にV = vBlがあるが、これは誘導起電力の式だ。)

問2

選別装置内の電場によって生じるクーロン力(F = qE)と釣り合う逆向きのローレンツ力(F = qvB)が必要。

ちなみにローレンツ力と電磁力は実質的に同じもの。

問4

問5で描くグラフに磁束密度の値を書き込む為には、電極a, bで電流を検出できる磁束密度の範囲を調べる必要がある。

荷電粒子は検出器内の磁場によってローレンツ力が働き、時計回りに曲がる事で電極で検出される。したがって磁束密度の範囲は、「円運動する荷電粒子の半径」と「検出器入口と電極の距離」の関係から導ける。

問5

磁束密度の値の算出に恐ろしく時間が掛かる。本番では誰も完答できなかったと思われる。 磁束密度を記入しないでグラフを書けば部分点を効率的に稼げる。

Z = 1 よりZ = 2の粒子の方がローレンツ力を受けやすく、電極で流れる電流も大きい。煩雑な計算を楽にするため、B = √(2mEad /e) /l とおくと良い。

問6

難問の問5が分からなくても解ける簡単な問題なので飛ばさない様にしよう。

解答の表現方法は複数あるが、できる限りシンプルな式になるのが良いだろう。

問題の流れがややこしいので、過程毎に圧力、温度、体積の値を整理しておくと非常に便利だ。

問1

(a)ピストンは自由に動くので圧力は一定。温度が2倍なので体積も2倍だ。

(b)この仕事は、ピストンが外部にした仕事も含まれる。定圧変化なのでnCpΔT = nCpT0 、またはΔU +ΔpV = 5/2・nRT と表せる。

問2

(d)密度は「質量 /体積」なので体積に反比例する。この事と状態方程式から、密度は「圧力 /温度」に比例すると分かる。

問3

(f)等積変化なので圧力は温度に比例する。地表面の気温はT0 、シリンダー内の温度は2T0 だ。過程2の温度は、温度の方程式に(d)の式を代入して4T0 /5 である。

高校数学 筑波大学2016 (平成28)年度一般入試問題の解説

〔1〕

「解と係数の関係」を活用する小問が多い。根号を含む解となる二次方程式を扱う問題は、「解と係数の関係」を意識するとよいという事だ。

誘導が非常に丁寧。

(1)

係数kの範囲を求めるので解を求める必要はなく、判別式を使えばいい。

異なる二つの正の解を持つという条件で範囲を求める方法は色々あるが、「解と係数の関係」を用いると「α +β>0且つ α β>0」と置き換えれる。

(2)

三角形の重心の座標はXG = (xA +xB +xC) /3, YG = (yA +yB +yC) /3 で表される。そのまま計算するより、解と係数の関係を利用した方が楽だ。

三角形の五心の性質は憶えると便利だ。

(3)

座標系の三角形の面積を求めるにはサラスの公式が有用。これと「解と係数の関係」を組み合わせる事で難なく答えが出る。

SではなくS2 を求めさせているのは、(4)で最大値を求める際にSは根号を含むので扱いにくいからだ。

〔2〕

(1)

y = (tan 2θ)x は係数がtan 2θ なので、x軸と作る角度が2θという事だ。

(2)

PQ = 4 sin2 θ (1 -sin θ) と表される。最大値を求める為に微分する必要があるが、そのまま微分するとcos θも含まれる式になり増減が分かり難い。したがってt = sin θ と置き換えよう。

(3)

方針によっては計算量が多くなる。それを回避するには誘導を活かすのが無難だ。三角関数を扱う問題なのでそこに着目すると良いだろう。

〔3〕

(1)

(2)を答える為の誘導。MがPQの中点であるという情報を数式に落とし込むのは自然な流れだ。

(2)

|OM|2 = |BM|2 をそのままa, b, cを含む式に置き換えて計算すると量が多くて大変。工夫する事で時間やミスを大幅に減らせる。

|OM|2 や |BM|2 の計算に時間が掛かるのは、3項式の2乗を計算しているからだ。ベクトルを分解してOB を含む式に置き換えると上手くいく。これは(3)でも活かせる。

(3)

OA = OC を証明した後、AB = AC または∠AOB = ∠BOCを証明すればよい。

ab = bc である事からcos ∠AOB = cos ∠BOC が導ける。MがPQの中点という事はMが立体内に存在するという事だから、∠AOB = ∠BOC と断定できるわけだ。

〔6〕

(1)

図形的に解くと、虚軸に線対称な同半径の二つの円の交点として説明できる。

代数学的に解くと、両辺は絶対値を表しているので二乗して解く事で説明できる。

(2)

与式をzについて解いた後、(1)で与えられた式に代入して解いていく。

(1)の誘導が無いなら、虚軸上にあるという情報を「z = –z (z ≠ 0)」などと表現して等式を立てていく事になる。いずれにしても、 虚軸上にあるという条件をどう表現するかがカギだ。

この問題の場合は、(z +1) /z = 1 +1 /z として、z = bi を代入するだけでグラフが書ける。

(3)

これも与式をzについて解き、zが虚軸上にあるという情報を数式に組み込む。ここでは(1)で与えられた式を利用すればいい。

複素数平面の問題は、与えられた条件で表される図形は直線、円、放物線くらいしかない。この問題を解いていくとwの次数が2となるが、これは円である事を示唆している。この場合は平方完成により半径と中心が分かる。

高校理科(化学) 筑波大学2014 (平成26)年度一般入試問題の解説

問3

アンモニアを過剰に加えるのでアンミンが配位子となり、テトラアンミン亜鉛(II)イオンとなる。

配位数が4の錯イオンは基本的に正四面体となるが、Cuは正方形として扱われる。

問5

Al, Zn,Fe は高温水蒸気と反応する。

問7

減極剤は、しばしば正極で発生したガスを取り除く為のものとして説明されるが、実際はH+より酸化しやすいものとして投入する事で分極を防ぐのが目的である。

問5

状態方程式においてPとVは反比例の関係である事からV2 /V1 = P1 /P2 と置き換えるのは誤り。なぜなら、容器1と2の中の平衡状態の気体の物質量は異なっているからだ。物質量を問3の結果を利用して補正する必要がある。

問5

  1. アルカリ金属やアルカリ土類金属の炎色反応。
  2. OH基と反応しONaとなる。
  3. フェノール類の系統分離に利用される。
  4. 銀鏡反応。試験管内壁に銀が付着し鏡のようになる現象が観察される。
  5. ハロゲンを銅線に付着させて炎にかざすと、ハロゲン化銅として気化し青緑色の炎色反応を示す(バイルシュタイン試験)。
  6. 臭素が炭素間の二重・三重結合と付加反応する事で赤褐色が消える。
  7. ヨードホルム反応。特有の臭気を持つヨードホルムの黄色沈殿が観察される。
  8. ニンヒドリン水溶液にアミノ酸を加えて加熱すると紫色になる。指紋検出などに利用されている。

問7

トルエンでも同じ物質が作られるというのが大きなヒントで、ここから置換基の炭素原子は一つだけと分かる。

高校理科(物理) 筑波大学2014 (平成26)年度一般入試問題の解説

問4

錘と糸による接触力が追加されたのでこれらの力を問1の解答に書き足せばよい。

問5

問2と比べて状況が複雑になっているが、同じように水平方向、垂直方向、力のモーメントの釣り合いの三つを立式していく。

水平方向と垂直方向の力に関しては、力を分解しなくてもNA‘ = FB‘ 、NB‘ = (M +m)gなのは分かる。

交流コンデンサーが題材。正弦波を模した導体の上で導体棒を動かす事で交流電源を再現している。

交流を扱うので、電場や力の向きに注意を払う必要なのが大変。

問1

ローレンツ力はevBで表される。

電磁力の式F = IBl を使って表そうとすると上手くいかない。I = e /t なのは間違いない。l はx = vt なのを利用してl = f(vt)と書けそうだが、電子の動く向きはy軸方向ではなくx軸方向なので金属棒Mを導線として扱えないのだ。正しくはl = vt であり、この式とI = e /t を F = IBl に代入すると結局 evB が得られるので、無理やり電磁力の式を使うことも出来る。

問2

ローレンツ力により金属棒内で正電荷と負電荷の分離が進むが、次第に静電気力も強まりこの二つの力が釣り合う。

静電気力は「電荷 ×電場」で表される。これは力学の「質量×加速度」に対応付けられる。

問3

OとP1 の電位は、それぞれの導線が金属棒Mに接している点の電位に等しい。

金属棒Mにはy軸正方向が負に帯電するのでP1 はOより低電位である。

問4

V0 は、誘導起電力V1 が含むsin関数が0になる時に関数全体が0になるような値にする。

誘導起電力V1 は問3の結果を利用できるが、微積を用いても出せるので軽く説明しておこう。

誘導起電力は磁束(刈り取る面積×磁束密度)の時間微分であるので、f(x)・Bをxで積分してx = vtに置き換えた後tで微分する。P1 はOより低電位なのでマイナスをつける。

これは、電磁誘導はローレンツ力が元になっている事を示している。

問5

電流の向きは、電位差を考えるとP1 < P2 なので時計回りだが、問題文で反時計回りと定義されているので、マイナスをつける必要がある。

微積を用いて、I = -dQ /dt , Q = CV よりI = -C・dV /dt と書ける。

問6

交流なのでローレンツ力の向きは時間とともに変わる。だから式の符号に注意し、力の正の向きは明記しよう。

もし誘導が無ければ

ゴールであるF = IBl のうち、Bとl は明らかなので電流Iを調べることになる。

まず交流電流として振舞う事を見抜く事が必要。そして電流の状態は電圧に由来し、電圧は金属棒を動かす事による誘導起電力によって特徴づけられている。

問1

開管の固有振動数はfn = nV /2l である。ちなみに閉管は f2n-1 = (2n -1)V /4l で表される。

問2

「空気の密度は0 < x < 0.1L の範囲では最大にも最小にもならず」というのは振動数の上限を示している。

変位のグラフにおいて、曲線の傾きが小さい(マイナス)ほど密度が高い。

「音が無い時」とは、時間変化する定常波の振幅が0になる時を指す。物質の密度は常に非負なので、曲線はx軸の上に位置する。

問3

波長は、共鳴している場合なので気柱の長さに依存する。振動数は、音源が近づいてドップラー効果で変化した結果として共鳴しているのでこれを踏まえて立式する。

問4

基本振動する場合なので、n = 1である。近づく音源と遠のく音源のそれぞれの振動数fa , fb と気柱内の振動数の関係式を作り、fa – fb = |δ| に代入する。

問5

うなりの振動数はf = |fa -fb| で表されるので、fa -fb = ±10 という事だ。

高校理科(化学) 筑波大学2015 (平成27)年度一般入試問題の解説

問2

一つの殻に18個の電子を持つ原子番号が最小の元素はKrである。

問4

極性が打ち消しあう事を記すのが肝。

問5

H3PO4 はリン酸、H2SO4 は硫酸、 HClO4 は過塩素酸。一般に、同周期元素の最高酸化数のオキソ酸は、中心原子の原子番号が大きいほど酸性度が高い。

過塩素酸は硫酸や硝酸に並ぶ強酸である。

文中に「電気陰性度は分子の酸性度に大きな影響を与える」と書かれているのでP, S, Clの電気陰性度の大きな順に並べればよい。

問6

酸化剤と還元剤を隈なく暗記している必要があるので難しい。

  • (i)HCl は、Cl が酸化して Cl2 になる還元剤である。次亜塩素酸ナトリウムNaClOは、次亜塩素酸HClOのナトリウム塩であり、ClO が還元してCl になる酸化剤だ。
  • (ii)水素化ナトリウムNaHは、電気陰性度がNaよりHが高いのでNa+ +H となる。H は不安定なので酸化してH2 になる。
  • (iii)シュウ酸H2C2O4 は酸化してCO2 になる還元剤だ。 過酸化水素は酸性溶液中では酸化剤となる。
  • (iv)希硝酸はNO, 濃硝酸はNO2 に酸化剤として働いた後に変化する。

問3

凝固点降下や沸点上昇のΔT は質量モル濃度に比例し、比例定数をそれぞれモル凝固点降下、モル沸点上昇という。蒸気圧降下や浸透圧もモル濃度に比例する性質を持ち、これらは「束一的性質」と呼ばれる。

問4

アセチレンが題材になっている。三重結合で結ばれた炭素2個を持ち、工業的に最重要の物質。ちなみに二重結合を持つのはエチレン。

熱化学方程式は化学反応式と違い「→」ではなく「=」を使う。また「黒鉛」や「気体」など状態も記す必要があるので注意。

反応熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和) を使うと速い。

問1

フェノールはオルト-パラ配向性を持つ。

問2

  • ビウレット反応は、NaOH水溶液、CuSO4 水溶液を順に加えるとトリペプチド以上のポリペプチドに反応して赤紫色を呈する。
  • テルミット反応は、酸化鉄をアルミニウムで還元する反応。
  • ニンヒドリン反応は、アミノ酸が持つアミノ基に反応して赤紫~青紫色を呈する。

化合物Aが分からなくても2, 4, 5は明らかに違うと分かる。銀鏡反応はアルデヒドの検出方法だがヨードホルム反応でも検出できるので不適。したがってヨードホルム反応が正解。

アミノ酸やタンパク質の検出法は、キサントプロテイン反応も含めて化学のグルメの記事が分かりやすい。

高校理科(物理) 筑波大学2015 (平成27)年度一般入試問題の解説

問1

衝突時にBとCの間に静止摩擦力が働くならば、BとCを一つの物体として扱うので質量を2mとする必要がある。しかし「静止摩擦力は考えなくてよい」と指示されているので、AとBの関係で運動量・力学的エネルギーの保存則を立式出来る。

問2

摩擦力は左向きに働くが、正の向きは右向きなので、負の符号が付く。

問3

BとC には、摩擦力の作用反作用を通して速さの移譲が次第に進む。両者の速さが等しくなった時にその移譲は完了する。

BとCの運動量の合計は、t = 0 ではmvB0 、tBC では2mvBC なので運動量保存則を用いて等式化する事でvBC を速く算出できる。

問4

仕事 = 力 ×距離で表されるが、この距離は「力を与えている間に進んだ距離」であり、「力によって進んだ距離」ではない。

「力によって進んだ距離」と誤解すると WB = (-μmg) *(1 /2 *μgtBC2) となってしまうので注意。

問5

反発係数は衝突前後の相対速度の比である。負の符号は反発している事を表している。

結論として得られる式は問題文中で明記されているので、変化量について立式した後は途中計算をせずに結論の式を書いてしまうとよい。

もし誘導が無ければ

問1と同じ導出をするのが難しい。なぜなら、静止摩擦力が働かない事に着目して2つの保存則を立式する必要があるからだ。

動摩擦力が働くと作用反作用でBとCの両者に逆向き・同じ大きさの力が働く。そして「CがBに対し静止するようになった」という状態も重要で、動摩擦力・加速度が0になりBとCの速度が等しいという情報が含まれている。

問4で仕事量を求めるが、これには力と距離の情報が必要であり、距離を求めるにはBとCが等加速度運動をしている事から「A, Bの衝突からB, Cの速度一致」までの時間を調べる。

頭の中で、力・加速度・速度のを確かめながらシミュレーションするのが大事だ。

問1

電磁誘導に伴って発生する誘導起電力は、電池の様にどこか局所的に生じているわけではない。

もし誘導が無ければ、消費電力はIV = I2R = V2 /R と表されるので、どれか2つの情報を得る。導体棒を動かして誘導起電力を起こしているので、電磁誘導の式を利用する。

問3

2つの導体棒を考えるので複雑になる。

(a)

A1 とA2 が作る閉回路は磁束が減少するので、電磁誘導によりA2 にはy軸の負の方向に流れる筈だが、ここでは逆に流れると仮定している。

逆向きに流れると仮定する理由は何だろうか?キルヒホッフの法則に基づく立式は電流の流れが異なっていても正しい電流が分かるはずなのだが、 y軸の負の方向に流れるとすると計算結果が合わなかった。この理由は、2つの閉回路でA1 を共有しているが a~a’~ A1 回路では電位差があり A1~A2 では電位差がないものとして扱っているところに矛盾が生じている為ではないか?

(b)

(a)の「A2 にy軸の正の方向に電流が流れる」という設定が引き継がれている。問題文中で明示すべきだろう。

閉回路はa~a’~ A1とa~a’~ A2 に作られるので、それぞれオームの法則の式を作る。

(c)

答えの式を書いただけでは加速度の向きが分からないので、向きも明記しよう。

A2 はローレンツ力により右向きに動き出しそうだが、 答えの式から、A1の存在により左向きになると分かる。

この問題は次の(d)を考える手掛かりとなっており、「無限時間後の状態を調べる上で、最初の状態を調べるのが大事だ」という教訓と言える。

(d)

v2 = 1 /2・v0 なので、「十分時間が経過した」後は衝突してしまいそうだが、問題文に「衝突しないものとする」と書かれている。

球面鏡を題材にした問題だが、この大問だけ異常に簡単である。ⅠとⅡは難易度も分量も大きいので、この大問に辿り着く前に解答時間を使い切ったとしたら非常に勿体ない。「難しい問題はガンガン飛ばして行く」という事を教訓にしよう。

高校理科(化学) 筑波大学2018 (平成30)年度一般入試問題の解説

アンモニアソーダ法の問題。

  • 気体A: CO2
  • 固体B: CaO
  • 化合物C: NaHCO3

問2

(i)

  1. Clは青緑色の炎色反応を示す
  2. Naは黄色の炎色反応を示す
  3. NaCl +AgNO3 → AgCl↓ +NaNO3
  4. H2S と反応して硫化物となり黒色沈殿を生じる金属はPb, Cu, Agなど。

(ii)

マニアックな問題。尿素は二酸化炭素とアンモニアを高圧下で反応させる。高分子化合物の尿素樹脂は、二つのアミノ基がホルムアルデヒドと脱水縮合して繋がっている。

問4

結晶の蒸気圧が空気の水蒸気圧より高いと風解が進む。潮解はその逆の反応。

問5

状態図の曲線は蒸気圧曲線、融解曲線、昇華圧曲線に分けられる。

問7

金属結晶の構造には主に面心立方格子、体心立方格子、六方最密構造がある。イオン結晶の構造には主にCsCl型とNaCl型がある。

問題のイオン結晶はCsCl型である。 CsCl型と 体心立方格子はよく似ているが違う。金属結晶の構成粒子は全て半径が同じだがイオン結晶の場合は異なっている。

解く際は陽イオンと陰イオンが混交する場合もあるので簡単に図にすると良い。

問8

イオン結晶を例えると、磁石のS極とN極が交互に取り付けられた板を、二枚重ね合わせたようなものだ。板同士のS極とN極 が引き合ってくっ付いているが、この板同士をずらすと同磁極が向かい合うため反発して剥がれ易くなる。

問3

FeCl +3H2O → Fe(OH)3 +3HCl

金属元素は水と反応して塩基性酸化物になる(Al, Zn, Sn, Pbは両性酸化物)。逆に非金属元素は酸性酸化物になる。化学のグルメが詳しい。

OH イオンはアルカリ金属、アルカリ土類金属以外のすべての陽イオンと沈殿を生じる。ちなみにFe(OH)3 は赤褐色だがFe(OH)2は淡緑色だ。

水を沸騰させているのは、この反応が「発熱を伴う中和反応」の逆反応だからだ。

問4

(i)

親水コロイドと疎水コロイドの見分け方は、親水コロイドは極性があり有機物(デンプンなど)。疎水コロイドはその逆(粘土など)。

分子コロイドとは、タンパク質や寒天、ゼラチンに代表される高分子のコロイドのことだ。

保護コロイドとは、親水コロイドが疎水コロイドを取り囲む事で凝析を防ぐ場合に言う。例は墨汁の膠や写真フィルムのゼラチン。

(iii)

Fe(OH)3 が正に帯電する理由は調べた限り諸説あるが、塩酸の影響というのが専門家の説明。

問6

袋から流出したCl が金属イオンと化合して沈殿を生じる。塩化鉛が沈殿する理由は難溶性の皮膜が生じるという特殊な理由なのだが、温水には溶解する。

C6H12 はCnH2n なので「脂肪族アルケン」もしくは「一つの環式構造を持つアルカン」だ。

生成物のアルコールは、元の化合物の分子式と比べると、ヒドロキシ基に加えてHが1個増えている。この事から、二重結合部分と水が付加反応したと分かる。

表1より、化合物A, Bはヘキサンを得られるので直鎖アルケン。

また、化合物Aは二種類のアルコールが得られるという事は、 二重結合が炭素骨格の真ん中には無いという事。逆に化合物Bは真ん中。

問1

臭素との付加反応で不斉炭素原子が一個のみなのでAとFは構造が確定する。

問2(iii)

  1. ヨードホルム反応。この反応はアルデヒドを検出する方法としてよく紹介されるが、エタノールの構造でも陽性となる知識を突いた問題。
  2. アニリンをジアゾ化して塩化ベンゼンジアゾニウムを作る材料。
  3. アルデヒドに用いて銀鏡反応を呈する。
  4. アルコールは単体のNaと反応して水素が発生し、ナトリウムアルコキシド R-ONa になる。化合物Iはエーテルなので反応しない。
  5. フェーリング反応はアルデヒドを加えて穏やかに加熱すると酸化銅(I)の赤色沈殿を生じる。

問3

二重結合部分は回転できない為、シス-トランス異性体が生じる。

問4

メチル基を二つ持つ事と、メチル基のHとBrを置換した分子に不斉炭素原子がある事で絞り込む。

問5

シクロヘキサンの表記は、CH2 を明記する方法とただの正六角形を描く方法があるが、どちらでも正答だろう。

高校理科(物理) 筑波大学2018 (平成30)年度一般入試問題の解説

問2

鉛直ばね振り子の周期「T = 2π√(m /k)」は憶えておくべき基本知識だが、微小振動の単振り子の周期「T = 2π√(l /g)」と混同してしまう可能性もあるので、円運動の正射影として導出できる方が良い。(この問題では式に用いる記号が与えられており、lやgは無いので混同はしない)

周期はT = 2π /ω と表せるので、ωと与えられた単位(x0, V0 M, k, π)を含む式を導けばよい。

また周期は明らかにバネ定数kに依存しているので、kを含む式を思い出そう。F = -kx である。つまり運動方程式をωを含む別の形で表現すればよいのだ。

円運動の正射影の変位は「x = A・sin (ωt)」であり、速度はt微分なので「v = A ω・cos (ωt) 」。加速度は更にt微分して「a = -A ω2・sin (ωt) 」 であるが、これに変位の式を代入すると「a = -ω2x」。運動方程式は「F = ma = -mω2x = -kx」となるので「mω2 = k」が得られる。

「mω2 = k」と「T = 2π /ω」の組み合わせで周期は得られる。


振幅は円運動の半径A に等しい(直径ではない。ちなみに波の振幅も高さの半分だ)。振動中心とは即ちt = 0 であり、tと与えられた単位を含む式「v = A ω・cos (ωt)」よりV0 = Aω なのでA = V0 /ω である。

単振動のエネルギー保存則から導くとより速い。振動中心では運動エネルギーが最大(1/2・mv2)、位置エネルギーが0である。逆に両端では運動エネルギーが0、位置エネルギーが最大( 1/2・kA2 )である。つまり単振動の力学的エネルギーは1/2・MV02 = 1/2・kA2 と立式出来る。運動エネルギーと位置エネルギーの最大値を等式で結ぶのは一般的なテクニックだ。

問4

反発係数と運動量保存則の方程式をそれぞれ立てる。上向きが正であるである事に注意。

反発係数を立式する際、小球と板は衝突前後で運動量が変化するので、相対速度を用いる。

式を整理する過程で分数になる形を作ってしまうと計算が面倒になるので回避しよう。v0 は最後に代入するのが楽。

問5

小球と板は、衝突後、原点Oに戻ってくる時間が等しいのでこれを立式する。

小球は、最初に速度v0 で運動していたが速度-gtを受け取った結果 -v0 となったわけだから、v0 -gt = -v0 となる。

板の振動は、初速が異なっていても、振幅は異なるが周期は「T = 2π /ω」で一定である。

もし問1からここまで誘導が無ければ、まずは最初の状態を式に落とし込む事だろう。それが問1の答えになっている。釣り合いのほか、保存則(問3, 問4)にも注目しよう。そして問5のように時間について等式を立てる。

問6

(a)

Hを含む式としてH = gt2/2 と Mv2/2 = MgH (力学的エネルギー保存則)が挙げられる。

前者の式のtとバネの1/4周期が等しい(バネの振幅に関わらず周期は一定)という事を組み合わせるのが速い。

後者の式を使って解こうとすると、vを消すためにバネの力学的エネルギー保存則を用いてMv2/2 = kX2/2 が出てくるが、Xが残ってしまう。ただしこの式も後で使うので分かりやすく書き残しておく方がいい。

(b)

ここでMv2/2 = MgH とMv2/2 = kX2/2 を利用する。M, g, kは(a)の解答を利用するとうまく消せる。

(c)

小球とバネはどちらも「質量」と「衝突時の速さ」が同じで反発係数が1なので、衝突前後で速さが同じだ。したがって衝突を周期的に繰り返す。

小球が放物線運動をする時間とバネの半周期が同じなのだが、与えられた単位がkを含みgを含まないので、バネの半周期から考える。

最初に衝突までにバネの1/4周期分の時間が掛かっている事に注意。混乱しない様に図を描いても良いだろう。

もし問6に誘導が無ければ、まずは小球と板がどのように振舞うかを調べる。そしてやはりつり合いと保存則を立式する。

「アラゴーの円盤」が題材。

問2

電磁誘導の法則によれば誘導起電力はV = -N・Δφ /Δt で表される。円盤上のコイルの巻き数は1なので V = -Δφ /Δt に(1)で得た式を代入する。

誘導電流は磁束の時間微分に比例するので、平らな直線で表される。

レンツの法則により誘導電流は時計回りに流れる。電流の向きは上から見て反時計回りが正と定義されているので、 グラフでは0 < t < t0 の領域で負、t0 < t < 2t0 で正だ。

問3

導線と磁束の距離の変化に伴うローレンツ力は、円盤の接線方向に垂直なのでここでは無関係。

電磁誘導によりコイルに電流が流れ、辺LM, JKの部分で磁場により生じるローレンツ力を計算する。

「0 < t < t0」と「t0 < t < 2t0 」では電流の向きがそれぞれ時計回り・反時計回りだ。結局どちらの辺にも同じ向きのローレンツ力が加わることになる。

問5

円盤の回転が磁石と速さが同じ事と向きが同じ事を書けば満点だろう。

ここまで誘導が無ければ、電磁気の分野なので電磁誘導とローレンツ力を調べる。条件を単純化して円盤を固定したものとして円盤の振舞いを調べる。電磁誘導の法則はコイル一個に対して記述したものなので、円盤の一つのコイルの振舞いに注目する。