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高校理科 東京大学2008 (平成20)年度 物理・化学 前期入試問題の解説

物理

前年度より難化。

「ネオンランプ」や「密度の勾配」といった目新しい設定が見られるが、もはや即応力を測る問題となっており、物理の学力を測るという本来の趣旨から外れている様に思える。受験生の得点分布を散らばらすにはこうせざるを得ないのだろう。

解説

第1問

[III]

どんな力の加え方をしても、箱を押す力以外の外力は加わってないので、与えた仕事は最終的な速度に依存する。

[IV]

最初に強い力で短時間の内に押すのが効率的だという事実は意外性があり面白い。ボールを遠くまで飛ばす為に、バットで打撃するのは理に適っているという事だ。

これは正に撃力の概念だが、理論上は幾らでも力を大きく、接触時間を短くすることが出来てしまうので、上限値 F0 が設定されている。

F(0) = F0, F(T)= 0のグラフが描けていれば部分点が得られるだろう。

第2問

ネオンランプを用いた回路図の問題。

ネオンランプの回路記号はコンデンサーの様に導線が接続されてない様に思える奇妙な物だが、改定した方がいいのでは?

[I]

計算量が多いが、手計算においてCA = a, CB = b, Von = n, Voff = f と置き換える事で効率化できる。

[II]

「Qは一定」というヒントがあるので電荷保存則を利用しよう。

第3問

難問。浮力による単振動というよくある問題を、液体を気体にして考える。

東大物理では目新しい定義の文字や関数が頻繁に登場する。混乱を避ける為に、問題文の中で定義している箇所に印をつけると良い。

[I]

(1)東大物理は導出過程を書く必要がないので、分からなければ適当に答えておこう。

(3)不要な文字を消していくのではなく、係数比較をする。物理というより数学的問題だ。これが解けなくても(5)は解ける。

(5)(*)式から微分方程式を建てる。実は、微分方程式を使わなくてもz = 0 に於ける力の釣り合いを立式する事でも解けるし、こちらの方が速い。

化学

東進の解説

第1問

[I]

計算問題は1問当たり10分程度掛かるのでコスパが非常に悪い。こんな問題を出題したいなら電卓を使用可能にすべきだ。時間が掛かる問題かを調べる時間が勿体ないので計算問題は全て後回しにしよう。(オ)だけ解けば良い。

[II]

.錯イオンは配位子が4つ以上あると必ず立体になる。銅は例外的に平面になると教わるが、実は水が配位子として上下に結合している。

第2問

[I]

.一部が酸化還元反応を起こしてしまったヨウ素の「昇華精製」の方法。

イ.フッ素は酸素を上回る電気陰性度を持つ。

ウ,エ,オ. 東工大化学の様な重厚な計算問題。思考力を要する良問。

[II]

ア.尿素は炭酸とアンモニアのアミド。

第3問

[II]

ケ.立体異性体は16個あるので不適切問題。

高校化学 東京工業大学2008 (平成20)年度 前期入試問題の解説

解説

[1]

問i

  • 3,4,5.エタノールはアセトアルデヒド→酢酸と段階的に酸化する。Ca(OH)2と反応するのは酢酸のみ。 巧い引っ掛け問題だ。Bがアセトアルデヒドだとすると、(5)ではビニルアルコールが生成し、ケトエノール互変異性によりアセトアルデヒドに変化する。よって正解が3つになってしまうので勘違いに気付ける。

問iii

炭素原子を追跡すると良い。脱炭酸反応で炭酸カルシウムが生じる時にCを一個失っている点に注意。

[2]

「ナイロン6, 6を扱った問題だろうから、ジアミンはヘキサメチレンジアミンだ」と思ったら間違い。

ポリアミドAの繰り返し単位の分子式はすぐに分かる。その後に構造式を描いて調べるのは非効率。繰り返し単位の末端と結合部位にH2Oを足せば、ジアミンとアジピン酸の分子量の和が得られる。

[4]

問ii

1.クラーク数とは、各元素の地表付近の地殻における質量パーセント濃度のこと。酸素は50%にも及び、意外にも大気中より高濃度。ケイ素は25%だ。

[5]

問ii

平衡定数の式を作っていくが、答えは対数の形式だから、式を10の累乗の形に整える。

[6]

問ii

  • B.鉛蓄電池では、放電すると正負の両極で同じ質量のPbSO4 が析出する。
  • D.酸性溶液中では、KMnO4は還元されるとMn2+になる。また、H2O2 は金属ではないので酸化された際にSO42-と結合することはない。よって、酸化還元反応が完了すると、SO42- は K+, Mn2+ とのみ結合する。こう考えれば、反応式を書く必要がないので圧倒的に速く解ける

高校物理 東京工業大学2004 (平成16)年度 前期入試問題の解説

いずれの大問も応用力を要求される高度な問題。原子分野からも5年ぶりに出題された。2題が天体を扱っている。

解答

[1]

天体の三体問題。三体問題は一般的には現象が極めて複雑になるが、ここでは極力単純化された設定を扱っている。

(b)

(a)での考察を元に立式する。これらの式を利用してこの後の問題を解いていく。複雑な式が多数出てきたように見えるが、天体1のx方向は恒等式であり、天体3の式はいずれも天体2の式と同値なので実質的に3つの式を利用する。

(c)

ベクトルの考え方と同様の計算をすれば効率的。重心の式を作ると、Mb -2mc = 0を導けばよいと分かる。

(d)

L = 2aを導くことを目標にする。

3体が正三角形を形成するという興味深い事実が判明したが、実は3体が万有引力と遠心力が釣り合って安定する配置には正三角形と共線がある。

(e)

(d)が誘導になっているが、(d)が解けなくてもL = 2aを代入することで解答できる。

この問で得た角速度に加えて、回転中心が3体の重心であること(c)、3体が正三角形に位置すること(d)の3条件が3体が安定するための必要十分条件である。

[2]

珍しい設定のコンデンサーの問題。

(b, c)

P2はt = 0, t1 の時は別の極板と接着して静電誘導が起きているので、それらが離れた際のP2の電荷の和は0ではない。その事実は問題文で明示されている訳ではなく、自力で気付かないとこの先の小問も全て間違うので、中々難しい大問だと言える。

[3]

中性子星のX線(ガンマ線)バーストが題材。原子分野からは5年ぶりの出題となったが、基礎知識を覚えただけでは歯が立たない応用問題だ。この大問の平均点はかなり低かっただろう。

(b)

水素の原子核は陽子1個。与えられた式は、56個の陽子の中で30個がβ崩壊して陽電子を放出して中性子に変化し、残った陽子26個・中性子30個で鉄原子1個を作るという反応を表している。

核融合により結合エネルギーの差(質量欠損)が放出される。更に、β崩壊により飛び出した陽電子は電子と対消滅して光子になる。この両者のエネルギーの和を求める。

質量欠損については原子力安全システム研究所の資料が分かりやすい。

(c)

鉄原子を気体として扱っているのは、相転移に必要なエネルギーを計算させないための配慮だろう。

生成した鉄を一つの塊と見做し、これに爆発で生じたエネルギーが運動エネルギーとして与えられたと考えれば分かりやすい。

(d)

難問。

題意の把握からして大変だ。ある量の水素が中性子星に降り注ぎ、(a)に対応するエネルギーが定常X線として放射される(E2)。その後、(b)に対応するエネルギーがX線バーストとして放射される(E1)。つまり、両者のエネルギーは同じ量の水素からもたらされているのだ。

E1 におけるmFe の値が不明なので、これを与えられた静止エネルギーと結合エネルギーの物理定数を用いて組み立てる。化学におけるエネルギー図を用いた反応熱の計算と似た作業だ。

高校理科 東京大学2007 (平成19)年度 物理・化学 前期入試問題の解説

物理

前年度より大幅に易化。

解説

第1問

奇しくも、同年度の東工大物理もバネとベルトコンベアーを組み合わせた問題だった。東工大の方は難問だが、東大の方は満点を目標にすべきほど易しい。

[II]

(4)Aについては(3)の結果から一目瞭然。T’については、数式で考察するまでもなく、「単振動の周期は振幅に依らないこと」と「Nが大きくなると接着している時間が長くなる」という二点を考えれば良い。

第2問

[I]

(2)合成関数の微分V = dΦ /dt = dΦ /dz ・dz /dt を利用すると楽だ。

[II]

(1)ジュール熱はコイルに電流が流れないと生じない。電流が生じるコイルの範囲は、図2-3によると[-b, -a], [a, b]の計2(b -a)。よってリング数は 2(b -a)n。

第3問

[I]

(1)水面が静止するという事は、波が打ち消し合っているという事なので、位相がπズレている。

[III]

単スリット問題とは違い、隙間に入射してくる波は平面波。

化学

東進の解説

出題者は高校化学の教育内容を把握できてないようだ。東進についても、その入試分析から同じ傾向が感じられる。

第1問

問題文を読み込み把握するのに時間がかかるので国語の様だ。[I]は易しいので完答したい。[II]はどの小問も問題文が長いが、最後の1, 2文だけ読めば良い。

オ.α≪1 という仮定があるので、[CH3COO] = [H+] として良い。

第2問

高校化学の知識では解けない悪問で、予備校間の解答もバラバラという始末。完全に捨てて0点でも問題ない。

[I]

ア,イ,エ.硫酸銅、水酸化ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウムはフェーリング液の成分でもある。Cu2+ はフェーリング反応とホルムアルデヒドによって還元されてCuとして析出する。

ウ. 「水酸化ナトリウムを加えないとめっきは全く進行しなかった」という記述から、炭酸ナトリウムを NaOHが消費された際にOH を供給する緩衝液であると見抜く必要がある。これは意地悪だ。

オ. 「銅と等モルの水素が発生した」という記述が(ア)では不可解に思えるが、これは(オ)への布石だ。 煩雑な計算問題なので回避しよう。

[II]

カ.問題文が不適切。「骨格」と言えば高校化学では「炭素骨格」を想起させるので、側鎖の酸素原子は無視して良いと誤解してしまう。

キ.水晶、石英の他に珪砂でも良い。

第3問

[I]

ア.塩化カルシウムには潮解性、吸水性がある。ソーダ石灰も吸水性があるが、Ca(OH)2, NaOH, KOHから成り、二酸化炭素と中和できる。この知識がないと、この中問は全て解けない。

[II]

イ.アルコールは親水性というイメージがあるが、ヒドロキシ基の数に対し炭素原子が3倍以上ある化合物は親油性。よってEはフェノールを除くアルコール。

高校理科 東京大学2006 (平成18)年度 物理・化学 前期入試問題の解説

前年度より難化。物理は問題数が増え、化学は計算問題が易化するという傾向の変化があった。

物理

解説

第1問

天体を題材にした力学と波動の問題。

[I]

(1)この中問の本質が二体問題であることを気づかせる為の問い。二体に対して外力は働いてないので、重心は加速度0である。だとするとCが重心だと分かる。

(2)問題文の「惑星に働く向心力は恒星による万有引力である」という説明が強力なヒント。これが無いと難しく、恒星を中心とする惑星の円運動を立式するなら、換算質量を用いる必要がある。

[II]

(1)ドップラー効果の公式を適用する。

第2問

[II]

コイルは自己誘導により電流の時間変化を緩やかにする装置であり、スイッチを切るとコイルが電流を維持しようとする。

点灯が終わる直前には電流が0になっている。

[III]

文字にLが含まれているので、自己誘導起電力の式を建ててみよう。

自己誘導起電力が一定であると近似すると、電流は時間の1次関数となるのでV1 = I1L /Tとなる。もしくは、コイルが蓄えたエネルギーが全てランプの点灯に使われたと考えてLI12 /2 = V1I1T /2 としても良い。

第3問

[II]

(1)「単位時間あたり」の相当する次元を持つのがvだ。「単位時間あたり」という条件を外す代わりにvを距離lに置き換えると分かりやすい。

(2)やたらと長い問題文で意図が掴みにくいが、これは[III]への誘導だからで、本問ではT = T’なので答えは(2)と同じになる。

化学

東進の解説

第1問

ア.物理学的な内容。Aは炎色反応で、励起した電子が基底状態に戻る際に電磁波を発する。Bは黒体放射で、熱を吸収した物体の構成粒子が振動し、放射エネルギーとなる。

ウ.弱酸遊離反応でも熱分解でも正しい。

第2問

[I]

イ.炭素やケイ素の原子は正四面体型に共有結合し強固な結晶になるので、金属を上回る融点を持つ。

エ.(ウ)が誘導になっている。操作5の空試験から、試料の酸化で消費した過マンガン酸カリウムは2.60mLだと分かる。

[II]

キ,ク.問題文はシリカゲルの製造過程を辿っているが、メタケイ酸がシリカゲルになるのは一部を脱水した場合であり、完全に脱水すると吸水作用を担うヒドロキシ基を失い、二酸化ケイ素になる。引っ掛け問題だった。

ケ.Fe3+をFe2+ にするには硫化水素などの還元剤を作用させる必要があり、アルカリ性の液体を作用させても Fe2+にはならない。また、 Ca2+とMg2+ が沈殿するかどうかの判断が難しいが、(コ)の問題文を読むと2種類しか沈殿してないと判断できる、

第3問

[II]

オ.G,Hではオゾン分解して臭素付加された炭素が不斉炭素原子である。

カ.問題文が曖昧だが、”常に”同一平面上にあるという条件ならGのみが適合する。

高校理科 東京大学2005 (平成17)年度 物理・化学 前期入試問題の解説

前年度より易化した。

物理

解説

第1問

地球トンネルがテーマの力学問題。

[II]

(1)原点を中心とする円周上をP ,Qが(0, 1)から出発する事を想像すれば速く解ける。円周上を動くなら両者は衝突しないが、x方向を潰して一次元化したから衝突してしまうわけだ。

(2)単振動をしている場合、ある地点を通過するときの速度は向きに依らず常に一定。よってP ,Qが衝突すると速度0になる。また、P, Qが合体することで質量が2mに変わるが、周期の式には質量は含まれてないのでそのまま適用できる。

[III]

(2)ここでも円周上の運動を考えると、P, Qは衝突後に周回の向きが逆になるので、角度π/2進んだ先で再び衝突するとわかる。

第2問

[III]

電磁誘導の法則を用いて解けるが、コイルを想定する一般的な考え方は使えない。深い理解が必要な問題だ。

[IV]

よくある「レール上を動く導体棒」の問題のような帰結。[III]が解けなくても解けるし、勘で書いても正解しやすい問題だ。

第3問

原子分野からの出題。

[I]

(3)(2)で求めた式を考察すると、分母に速度が含まれているので、速度が大きいほど縞間隔が小さくなると分かる。

[II]

スリットを通過したのは粒子だが、干渉縞を作るのは波である。これは、原子に波と粒子の二重性があるからこその現象だ。

スリットを通過してからは波として考察していく。本来なら ⊿x = lλ /d から⊿xとlは比例する。ここで着目するのが、波動性と粒子性を結びつける式”λ = h /mv”だ。この式によると粒子が加速すると波長は短くなると分かる。

化学

東進の解説

第1問

[II]

ク.A, Bのモル数が等しいことも記述に含めよう。

第2問

[I]

よくあるCODの問題。

ウ.酸化剤が異なっていても、酸化還元反応において取引される電子の数は等しいので、半反応式を比較すれば良い。

エ.(ウ)が誘導になっている。操作5の空試験から、試料の酸化で消費した過マンガン酸カリウムは2.60mLだと分かる。

[II]

.(キ)が誘導になっている。物理でよく使うエネルギーE = qVを利用する。

第3問

[I]

ア.反応物の一方を大量に用意することで反応を促進できる。プロピオン酸とエタノールの沸点を比べると、プロピオン酸はその分子量が大きく、かつ二量体を形成するので高い。よってエタノールを蒸留で回収できる。

.酸無水物でエステルを作れば、水が生じないので加水分解による逆反応は起きない。

[II]

ク.実験2では、安息香酸は溶媒と水素結合をしている。一方で、ベンゼンのような無極性溶媒中では安息香酸は二量体を形成する。

高校化学 東京工業大学1999 (平成11)年度 前期入試問題の解説

解説

[1]

  • 3.イオン結晶では、陰陽イオンが均等に結合している。分子結晶以外の結晶は分子としては存在していない。
  • 4.この性質のお陰で、界面活性剤は油汚れを包み込んでくれるのだ。

[2]

  • 4.アンモニアはNとHの電気陰性度の差が大きいので水素結合をするので、沸点が最も高い。
  • 5.分子間力が小さいので気化しやすい。ドライアイスの昇華がヒント。
  • 6.分子の運動エネルギーの「固体→液体」と「液体→気体」における差の大きさを考察する。

[3]

6.アンモニアソーダ法。

[4]

  • 3.水素を水に変えるために、減極剤として酸化剤が用いられる。
  • 4.導線を通じて電子が移動するので、陽イオン交換膜法と同じように両者の溶液は次第に電気的に偏る。これを解消するのが素焼き板で、硫酸イオンを負極側に移す。

[5]

  • 1.反応が十分に進むと平衡状態に至る場合は可逆反応。過酸化水素は不安定な物質なので全て水と酸素に分解するので不可逆反応。
  • 2.この反応は一次反応なのでd[H2O2]/dt = -k[H2O2] が成り立つ。

[6]

  • 1.分子に依って、アルミナとの極性といった親和性が異なる。そこでアルミナはカラムクロマトグラフィーに充填剤として用いられる。マニアックな問題。
  • 2.不純物は濃度が低いので溶液に残る。

[9]

高校化学の範囲では、「スクロース以外の単糖類・二糖類は全て還元性を持つ」「全ての二糖類には、グルコースが構成要素として必ず含まれる」と覚えておいて良い。

腸液に含まれるインベルターゼ(Invertase)はスクロース(転化糖)を分解する。Invertには「反転、転化」という意味がある。

[11]

黄燐P4 を固体として析出させるとPとなるので、物質量が4倍になっている点に注意!ここに引っ掛けられた受験生は多かっただろう。

P4 とArの物質量が分かれば、モル比 = 分圧比 を利用して解が得られる。

[12]

X, Yの元素は特定する必要がない。

[13]

NaClの様に陰陽イオンのサイズが同程度ならば、イオンが格子点に並ぶ。CsClの様に差が大きいと、斜めにズレて並ぶ。

[16]

B. BaSO4だけでなくCu(OH)2も沈殿するので6が正解。駿台の参考書は間違えて5としている。

[18]

問II

水酸化バリウム水溶液を塩酸で滴定しているのではなく、塩酸を水酸化バリウム水溶液で滴定している点に注意。

問III

ヘンリーの法則の問題は気体を物質量ベースで計算するのが基本。bとdでの物質量差が0.0388molなので各状態での密閉容器中の二酸化炭素の物質量を算出する。

注目すべきは、ヘンリーの法則に関する問題なのに「単位圧力あたりの溶解量」の数値が示されていない点だ。これは、その数値を未知数として立式する必要があることを示している。

高校物理 東京工業大学2002 (平成14)年度 前期入試問題の解説

第2問は超難問だ。5割が合格ライン。

解答

[1]

コンデンサーに関する電磁気問題。

(b)

導体板が挿入された極板と挿入されてない極板が並列していると考えれば、電気容量はそれぞれの和で表せる。

(d)

[①→②]

静電エネルギーの増減は(c)を参考にする。

極板間引力があるので、上極板をゆっくり-y方向に動かすときに引っ張られる。よって負の仕事をする。

[②→③]

導体板は極板間に挿入されることで静電誘導を起こすが、これによって極板はより近い場所に引き合う電荷を得られることになる。その極板と導体板の引力は極板間引力よりも大きいので、導体板を引き込もうとする。


以上の解答は、エネルギー保存則「静電エネルギー変化 = 外部がした仕事 + 電池がした仕事」からも導ける。

(g)

(d)と同じ理由で外力がした仕事は負になる。

[2]

熱力学としては稀に見る難問。(b)まで解ければ十分だ。

(a)

最初から引っ掛かりやすい問題が出題されている。

液体の圧力は気体とは扱いが異なり一様ではなく、深さに比例する。気体と液体はシリンダーのピストンで接していて、ここで力の釣り合いが成り立っている。

(b)

気体にはρgShの浮力が生じるが、それを重量Mgのピストンで押さえつけて釣り合っていると考えれば ρgSh = Mg と立式できる。

(c)

ここから難問が続く。

実験によってd, hの値が変化したと考えられるので、d’, h’ とおく。液体の深さに応じて、気体と液体が接する各面における力の釣り合いの式を建てていく。さらに状態方程式P1Sh’ = nRT1 も建てる…この式を書くだけでも部分点は得られるだろう。

これらを解いていくと、意外にもh’ = h だと分かる。バネが自然長だという束縛条件から、d’ = dも導かれる。

自分で文字を設定するのも難しいが、複数の層における釣り合いの式を連立して解くというのも慣れない作業だ。

(d)

Wは長い式になる。

(e)

等温変化なのでボイルの法則を利用する。

シリンダー自体には、これを引き上げる力が掛かっているので力の釣り合いの式は建てられない。シリンダーのピストンの変位は微小だから力の釣り合いの式は建てられる。

二次の微小量を無視する処理も行う。

(f)

単振動をするから静止しないというよくある結論かと思ったら、逆だ。これは物理学では「不安定な釣り合い」と呼ばれる状態であり、単振動は「安定な釣り合い」と呼ばれる。この知識があれば、ここまで解けなくても作文では正解を得られる。

[3]

ゴム紐が弛むという性質に着目した、単振動に関する力学問題。

(d)

x1 < -3⊿l2 となるとすると計算が面倒になるので気になるところだが、(e)の⑦を見れば分かるように、その心配は要らない。中問の問題文は予め纏めて読んでおこう。

小球の運動方程式が途中で切り替わるので、⊿l2≦x≦3⊿l2 のときの運動方程式→振動中心→振幅を求め、切り替わる地点での位置エネルギーと運動エネルギーを調べる。

(e)

(d)が解けなくても⑥以外は正解できる。

高校理科 東京大学2004 (平成16)年度 物理・化学 前期入試問題の解説

物理

解説

第1問

摩擦や慣性力を扱う力学問題。

[II]

勘で答えても正解出来るような解答ばかりだ。東大物理には導出過程は不要なので、分からなくても勘で書いておくと良い。

Bの運動にAが影響を及ぼしているので、慣性系で考える。

(3)Bの運動についてx, yのそれぞれの方向に掛かっている加速度を調べれば良い。

第2問

典型問題。

[III]

陽子の電荷qと質量mには係数が無いので、α粒子に置き換えるならq→2q, m→4mとして再計算すれば良いのだが、[II](2)の結果に[I]の結果を代入すると、z1は実はm, qに関係しないものだと分かる。

この電場の性質は、重力場における「質量の異なる物体でも落下速度が等しい」という性質と本質的に同じだ。

[IV]

電場が粒子に与える力は常にz軸方向だがら偏向部を通過する時間は変わらないが、ローレンツ力は粒子の進行に垂直な方向だからy軸成分を持つ。

第3問

熱力学の良問。

[I]

(2)容器1, 2は一つのピストンを共有しているので、気体1, 2の体積変化に関する束縛条件を考える。

[III]

(1)ピストンBは、気体2の圧力を一定にする装置である。更に気体2の温度も変化していないので、体積も変化していないということになる。

(2)[I](1)より、気体1の圧力も一定となっている。

化学

難化。小問数が前年度より5つも多い。

第1問

[I]

ウ, エ.容器の底面の直径の数値が与えられているが、これを無視してSと置いて計算すると速い。また、単位を揃えるのも後回しにすると同じ単位の量同士で打ち消し合うので速い。

[II]

オ.「水分子の生成速度」という表現では、式(1), (2)の反応を合わせた速度とも読めるので曖昧だ。

第2問

[I]

東大化学に良くあることだが、問題文が曖昧。少なくとも、「混合に用いた物質に含まれる原子の全てが酸化物の構成要素となる」と書くべき。

第3問

[I]

ア.四面体型の結合角は110°という細かい知識が必要で、東大らしくない問題。

.字数制限が厳しいので何を書けばいいか悩む。「浸透圧」というキーワードは盛り込んだ方が良いので「浸透圧が生じて溶媒が移動する為」が模範解答。

.スチレンとp-ジビニルベンゼンの共重合体は立体網目状であり、スルホン化することで陽イオン交換樹脂になる。

エ.液面差と浸透圧は比例する。更に、温度一定なので浸透圧と溶質の物質量も比例する。したがってA, Bの物質量比を調べれば良い。

オ.酸性溶液中ではアラニンとリシンが陽イオンになるので樹脂に吸着されるが、グルタミン酸は双性イオンなので吸着されない。よって真っ先に流出していく。次にアラニンが陽イオン交換しながら流出していく。塩基性溶液を流すことでリシンが双性イオンとなり、流出していく。

[II]

コ.カルボン酸は二量体を形成するので沸点が高い。

高校化学 東京工業大学2000 (平成12)年度 前期入試問題の解説

解説

計算問題が難しい。

[1]

  • 3.Ag, Fは電気陰性度の差が大きいのでイオン結合性が強い。
  • 4.沸点の高さにはファンデルワールス力の要因が強い。

[2]

  • 1.ケイ素が30%であるのに対して炭素は意外にも0.1%しか無い。
  • 2.高純度のSiは半導体として利用されている。
  • 6.COやNOは水に不溶。

[3]

6.価電子数とは、最外殻電子の内で反応に関与しうる電子の数。

[4]

2.さらし粉の酸化力はClOに起因している。

[6]

2.Bは飽和溶液はでない。単なる引っ掛け問題で入試として無意味。

[7]

3.αグルコースとβグルコースは立体異性体の関係であるが鎖状型は構造異性体。そもそも、問題文からは加水分解が完全に進むとは読み取れない。

[10]

オ.ジアゾカップリングではフェノールが用いられる事を習うが、電子供与性の強い官能基を持つサリチル酸やクレゾールも使える。

[11]

この問題文を素直に読むと、末端のメチル基やベンゼン環のHがClに置換されると受け取るので、不適切問題。

[13]

燃焼や水素付加といった反応式を建てて、係数比較するのがコツ。

[16]

A.実験方法に関する問題は近年は出題されていない。

B.硫酸塩が(NH4)2SO4であると理解するのは無理だが、逆滴定操作をしているので、発生した気体がNH3なのは容易に推測できる。

[17]

操作の前後で酸素と窒素の物質量はいずれも保存されているので、物質量に置き換えて計算するのがコツ。2次方程式の解を求める必要があり大変だ。

[18]

3種類もの酸化還元反応が登場している。とはいえ、MnO2とHClとの反応以外は反応式を完成させる必要はなく 、電子のモル比さえ分かれば良い。反応式を完成させようとすると非常に苦労する。