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高校化学 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (1)原子番号は陽子の個数。原子量は陽子と中性子の総和にほぼ一致する。原子量は12Cを基準とした量だから、同位体を持つ水素の原子量は1より大きい。原子量は元素の存在比で補正されたもので、同位体の区別がない。
  • (2)三重水素(トリチウム)は放射性同位体。
  • (3)予備校の間でも正誤判断が分かれた。
  • (4)クーロン力は距離の2乗に反比例する。

〔2〕

  • (2)ボイル・シャルル則はP, V, Tの関係式だ。
  • (5)モル分率の考え方で瞬殺できる。

〔3〕

  • (1)生成熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和)
  • (2)生成熱は単体から生成する際に生じる熱の事だから、エタノールの反応式は2C(黒鉛) +3H2 +1 /2 O2 = C2H5OH +Q となる。左辺の物質の生成熱の方程式の熱量を、係数を掛けた上で足すだけ。

〔4〕

(i)

気液平衡がテーマなので、ヘンリーの法則を意識しよう。V0の数値もヘンリーの法則から出せる。

分圧の考え方から、アルゴンの注入は酸素の溶解に影響しないと気づこう。

操作毎に新しい気液平衡になる。V1 はヘンリーの法則から求められるはずだが、その為には「操作1回目での気体部分の酸素の分圧」を知る必要がある。そこで、操作前後で「ピストン内の酸素の1×105Pa での体積」が不変である事を利用して立式する。

(ii)

まるで数列の問題だ。実際、公比1/5の等比数列となっており、東工大らしさが出ている。

計算できなくても予想はできる。解答欄は2桁用意されているが、手計算なので計算を多く繰り返させるとは考えにくい。またこの手の問題は切りの良い数字が答えになっている場合が多い。

〔5〕

Kc = [X]2 /[X2] = (2nα /V)2/ {n(1 -α) /V}

である。X2が分解して同じものが二つできるので、Xのモル濃度は二つ合わせたものを2乗する。

第II問

〔6〕

(5)の様な選択肢を出すのはやめて欲しい。勉強が個人や社会にとって単なる浪費でしかないことを感じさせる。

  • (1)Cr, Mnなどの8族までの遷移元素は、その族番号が最大酸化数になる事がある。
  • (2)NH3 が配位子となって錯イオンを作るのはAg+, Cu+, Zn2+である。
  • (5)Fe3+ は基本的に赤系の沈殿を生じるが、ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウムK4[Fe(CN)6]では例外的にベルリン青と呼ばれる濃青色沈殿を生じる。憶えにくいが頻出だ。ちなみに Fe2+ では青白色であり、この色の違いを利用したのが青写真だ。
  • (6)Cu(OH)2は60~80℃で分解してCuOとなる。

〔7〕

フッ素は暴れん坊である。

(3)KClO3とH2O2 はMnO2を触媒として酸素を発生する。

〔8〕

(6)ファラデー定数は「電気素量とアボガドロ定数の積」と定義されている。

〔9〕

酸化還元滴定の典型問題だが、酸化還元反応の知識が必要で、半反応式を立てたり長い計算があり意外と大変。

硫酸が存在するのは過マンガン酸カリウムを酸性条件下の酸化剤とする為だが、解答に有効数字が指定されていないのが引っ掛けで、硫酸のモル濃度の有効数字である2桁に合わせてしまうと、この数値は計算で使用していないので誤りとなる。

総合的には難問だ。

第III問

〔11〕

  • (2)ケトン基はC-C(=O)-C、アルデヒド基は C-C(=O)-Hであり、いずれもカルボニル基の一種。
  • (4)カルボニル基は求電子性が高い為、NH2 は陽性を帯び塩になりにくい。
  • (5,6)ホルムアミドの様に、HC=O やNH2の部分だけでも加水分解できる。

〔12〕

  • (1)ナイロン6とナイロン66はいずれもカルボキシ基とアミド基を持つ。
  • (3)加水分解するとポリビニルアルコールとなり水溶性を持つ。

〔13〕

  • (2)一次構造はポリペプチド鎖を形成するアミノ酸配列、二次構造はタンパク質を形成するポリペプチド鎖同士の水素結合(α-helix, β-sheet)、三次構造はタンパク質を立体化する側鎖間の結合。ジスルフィド結合は三次構造の一つ。
  • (4)アミノ基は塩基性条件下そのままなので、中性である。
  • (5)ニンヒドリン反応はアミノ基の検出法。

高校数学 東京工業大学2011 (平成23)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第2問

2002年度第1問の類題。絶対値付き積分は頻出だ。

(1)

y = cos t とy = x sin 2t のグラフを描いてみれば把握できる。xの値によって共有点の有無が生じ、場合分けが必要だと分かる。0≦t≦π /2においてt≧0なので、cos t |1-x sin 2t|と変形してもよい。

(2)

インテグラル内の絶対値がf(x)の定積分にも影響してくる。

第3問

東進の解答の様に、分子のαを分母に押し込めて相加相乗平均を使うのが上手い。相加相乗平均を使える機会は限られているが、一般的に微分法より速い。

三平方の定理を用いる方法は処理が多くなりがちなので、Math Station の様に正接を使うのが筋が良い。

第4問

まともに論証しようとすると時間が掛かり却って得点が低くなるかもしれない。ここはバウムクーヘン分割やPappus–Guldinus定理を既知とするか、簡単に証明するのが賢い。厳密でなくとも答えを出すのが大事だ。

後期1995年度が類題。

高校物理 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[2]の荷電粒子のドリフト、[3]の気液共存線など、大学教育のウォーミングアップ的な色の強い出題だった。

[1]

二体問題は運動量保存則や相対運動や重心を意識しよう。

(d)

単振り子の周期は一般に2π√(l /g)と表せる。ちなみに単振動の周期は2π√(m /k)である。ど忘れした時は単位がs(時間)である事を利用して組み立てよう。

Qの軌道はx軸方向と平行と近似して計算する。a = -ω2x を憶えていれば組み立てられる。

  • (ア)C点は単振り子の振動中心と見做せる。
  • (イ)振動中心の速さは「振幅×角振動数」で速く導ける。力学的エネルギー保存則も使える。

(e)

運動量保存則の式は対称性があるが力学的エネルギー保存則の式はmghがあるので対称性が無いのに注意。

(g)

二体問題だから相対運動に着目するのが筋が良い。何をさせたいのか分かり難い問題文な上に計算が煩雑なので捨てても良いだろう。

(h)

重力gに慣性の加速度が加わり見かけの重力√(g2 +a2)となる。そして「十分に振幅の小さな周期運動」とあるから単振り子の公式に当てはめる。

(i)

難問。

Qが斜面上で周期運動をするという事は、斜面に垂直な方向の力が釣り合っているという事だ。これを立式する。

さらに、外力Tを加えているときにQが存在しないとするとT = Maだが、Qがあると垂直抗力のx成分が加わる。

[2]

〔C〕では荷電粒子のドリフトがテーマだった。荷電粒子は常に垂直方向に力を受けるので、電場の方向に”落ちる”ことなく、横に移動していく。直感的には予想しにくい動きなので、知っていないと難しい。

(b)

直観的に導き難いが、これはy軸を90°時計回りするとx軸に一致し、 x軸を90°時計回りするとy軸逆向きに一致する性質に由来する。

(f)

相対運動の設定なので、相対速度に着目する。そして前小問を利用して立式する。

ここで、(e)で求める文字に「F’」とダッシュが付いていることに注目。これは出題者による「(b)と比較せよ」というメッセージだ。

相対運動への深い理解が試された。

(g)

荷電粒子の動き始めの速度の向きに注目しよう。前小問において観測者から見ると荷電粒子は動き始めはx負の方向に速度を持つので、この円運動はx軸を接線に持つと分かる。

マトモに考えると難問だが消去法でも選べる。粒子はx軸方向に移動していくので9, 10は消去。5, 6, 7, 8の形は、次問(h)で直径などを調べさせるのを考慮すると、定数が定まらない(1, 2, 3, 4を包含する)ので正答である確率が低い。荷電粒子の電荷を考えると2, 4も消去。

[3]

気液共存がテーマ。2009年度東大物理で同様のテーマで出題されているので、これを参考にして問題作成したのかもしれない。数学だけでなく物理も10年以上前の東大入試を研究する意義はありそうだ。

定義される文字が多い上に文字設定も非合理的で混乱を来す。やる気を激しく削ぐ配慮に欠けた問題文だ。効率を上げる為に文中の文字の定義の部分に下線を引いたり図に書き込むと良いだろう。

(a)

化学寄りの問題。

蒸発熱は、沸点温度(T0)の液体が気体に状態変化する為の熱量。(ア)は水をその温度まで引き上げるのに必要な熱量である。

ちなみに化学では比熱(J /(g・k))、物理ではモル比熱(J /(mol・k)) が用いられる。

(e)

蒸発により水の体積が減少しているのが要所。

(f)

「仕事 = 力×距離」だが、圧力P0 が一定なのに対してバネは漸増するので注意。イメージすると間違えない。

(g)

水を T0 からT2まで引き上げる熱量も含まれる。

高校数学 東京工業大学2017 (平成29)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

条件(ii)の12の約数が6個だから残り一個あれば良いと分かれば速いだろう。

第2問

シンプルな問題文だが計算量は多い。

式の形から周期πを持つ事は明らかだが、関数の周期性はt = u +πなどと置換する事で厳密に証明できる。さらに分母のsinが2乗されているので、 0≦x≦π において上に凸(極値を1つ持つ)でt = π /2で線対称なのも読み取れる。

面積の最大・最小値を求めるのでf(x)の極値が知りたいが、実は積分計算はする必要がない。なぜなら極値を求めるという事はf‘(x)を求めるという事だからインテグラルを外すことになるからだ。(パスナビは分母由来の三角関数に勝手に絶対値を付けて計算しているが正しいのか?)

三角関数を含む置換積分は、分母と分子でsinとcosの組み合わせが生まれるような形に誘導するのがコツ。

関数が絶対値を含むので、定積分を絶対値の影響を受けない区間(0≦x≦π /2)と受ける区間 (π /2 < x≦π)で分けて算出する必要がある。

第3問

2001年度・第4問の類題。数学的好奇心をくすぐる面白い問題だ。試験場で実験用の紙が配られたのが珍しい。数学好きならこの手の問題は自発的に考えた事があるだろうから、東工大が知的好奇心の高い学生を求めている事が伺える。

方針は見えやすいが、とにかく計算が大変。面白さと計算量を両立させた東工大ならではの問題だ。

三角法と三平方の定理を使う方法の他、紙の辺や折り目をxy平面上の直線と見立てる方法も有力。

第4問

電数の解説が図もあって分かりやすい。

場合の数ではなく漸化式と見立てる発想が必要な難問。捨て問だ。

(1)

「cがm個含まれる場合」のΣ和を取るという方法では計算が纏まらない為、方針を運悪く誤ると台無しになるという点で悪問だ。

連立漸化式を解いて3項間漸化式を作る。二次方程式型の特性方程式で等比型を作るが、係数をα, βと置いたままの方が楽だろう。

第5問

(1)

解と係数の関係を用いて、共役複素数同士の積が1になる事を瞬時に確かめられる。二次方程式に於いては、c/a = 1であれば複素数平面の単位円上にあるのだ。

(2)

「実数係数のn次方程式は必ず共役解を持つ」という重要な性質がある。

(3)

ここまでの誘導を意識すると良い。もはや複素数平面ではなく方程式の問題だ。

高校化学 東京工業大学2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (1)硝酸や熱濃硫酸に溶けるのはAgまでで、AuやPtは王水(濃硝酸3:濃塩酸1)で溶けるツートップだ。
  • (2)Cr2O72-は酸化数6で、Crは第6族だから最高酸化数になっている。ゆえに還元剤にはなれない。
  • (3)水溶液やその沈殿の色は、Fe2+は緑系、Fe3+は赤系が多い。赤錆がFe2O3で表される事を憶えていれば間違えにくい。
  • (5)触媒として働いて酸素を発生させるのはKMnO4 ではなくMnO2だ。
  • (6)ハロゲン化銀は感光性を持ち、金属の微粒子は黒く見える。

〔2〕

引っ掛けが含まれる難問。電気分解と電池の問題が混ざっているので、構造の区別に注意。

  • (2)塩化ナトリウムは水溶液中で電気分解しようとすると代わりに水素を生じてしまう。そこで塩化ナトリウムを融解することで水を使わないので電気分解が可能になる。その代償として大きな融解熱が必要になる。
  • (3)電池では正極に電子が供給されるので金属イオンが析出する。ちなみにボルタ電池もダニエル電池も陰極にZn, 陽極にCuを使っている。
  • (4)イオン化傾向はZn < Mnだが、これが引っ掛け。負極はZn, 正極はMnO2 だ。
  • (5)水は安定性が高いので、Agが先に酸化される。

〔3〕

周期表を広範囲で把握していないと難しいが、元素A~D自体は全て馴染み深いものだ。両性金属が多く含まれているのも特徴的な出題。イオン化傾向に登場する元素の周期表配置くらいは知っておけという事か。

加えて選択肢もマニアック。東進の分析は余りに手抜きだ。

  • (ア)3~11族は遷移金属。
  • (イ)Hgは12族。
  • (カ)13から17族まで金属元素が一つずつ減っていく。14族が非金属C, Siを含む。
  • (3)遷移元素の中で酸化数+4となるのは14族以降。
  • (4)アルカリ金属・アルカリ土類金属以外の酸化物と水酸化物は沈殿する。ちなみにZnの沈殿は全て白い。
  • (5)PbOやPbCrO4やPbI2、HgOは黄色沈殿。

〔4〕

弱酸を中和させていくと、弱酸とその塩を含む緩衝液になる。プロピオン酸は聞きなれないが弱酸であるのは分かるので緩衝液を連想しよう。

滴下後のプロピオン酸は緩衝作用により電離度0となっており、プロピオン酸ナトリウムは完全電離している。よって電離定数の式に当てはめられるわけだ。

第II問

〔6〕

(5)ヘンリーの法則が成立する気体は、溶媒と反応せず、溶解度が低いもの。

〔7〕

A, B, Cの時間経過による濃度変化を表に纏めれば分かりやすい。

Aの濃度は指数関数的に10分毎に0.6倍となっていく。反応速度式が一次関数である事から、一次反応と言えるので(5)のような半減期の考え方が成り立つ。

〔9〕

時間が掛かる捨て問。

問1~3が実験1、問4~6が実験2に関する問題なので、片方の実験に関する問題に答えとなる選択肢が2つ含まれるとは考えにくい。よって、勘で答えるなら問1~3から1問、問4~6 から1問選択しよう。

  • (2)〔4〕とやることは似ているが、弱酸(塩基)の中和滴定ではなく強弱酸(塩基)なので緩衝液として計算しない。
  • (3)滴下しているのは水酸化ナトリウムではなく、水酸化ナトリウムの水溶液(pH = 14)。

〔10〕

文字式の問題にしては簡単だった。希薄水溶液の濃度が十分小さい事から、溶液と溶媒の質量を等しいとみなすのがポイント。

第III問

〔12〕

鎮痛剤のアセトアニリドとサリチル酸メチルとアセチルサリチル酸は、メチル基とO(二重結合)を持つという共通点がある。

  • (イ)NaNO3と来ればジアゾ化だ。アニリンにHClと NaNO3 水溶液を0~5℃で加えると塩化ベンゼンジアゾニウムが出来て、それ以上の温度でフェノールに分解する。
  • (エ)高温高圧下でCO2を反応させる事でカルボキシ基を付加する(コルベ・シュミット反応)。更にカルボキシ基をメチル化して消炎鎮痛剤のサリチル酸メチルが出来上がる。
  • (オ)アミド結合して、解熱鎮痛作用のあるアセトアニリドとなる。
  • (1)ナトリウムフェノキシドは、セッケンと同じく「弱酸と強塩基からなる塩」なので、加水分解して弱塩基性となる。
  • (5)鎮痛作用を持つ物の中でサリチル酸メチルは例外的に液体。

〔13〕

オゾンを反応させたあとZnで還元する事で酸化開裂させる操作をオゾン分解という。

東工大は捻って環状化合物を出題する事が多い。分解後のカルボニル化合物はOを二個持っているのでAが環状化合物と容易に分かる。

次に、二重結合を数をxとして反応前後で質量と分子量の関係式を立てれば良い。反応前の分子式は C33H66-2x (75g)、反応後はC33H66-2xO2x (107g)となるが、分子量の桁が大きく計算が大変になるので、反応後の物質ではなく付加した酸素O2x (32g)を利用した方が良い。

〔14〕

天然ゴムはポリイソプレンから出来ており、そのままだと強度が低く、酸化して弾性を失いやすい。そこで加硫によって分子同士を架橋してこれらの弱点を補う。

〔15〕

アミノ酸Bはアスパラギン酸だ。酸性アミノ酸の側鎖のカルボキシ基を繋ぐ炭素は1または2個。主なαアミノ酸の側鎖における「炭素の節」は3は無い。

酢酸カルシウムを乾留するとアセトンと炭酸カルシウムが生成する脱炭酸反応を知らないと正答するのは難しい。脱炭酸反応には、酢酸ナトリウムと水酸化ナトリウムからメタンと炭酸ナトリウムを作るものもある。

高校数学 東京工業大学2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

二次方程式の虚数解は、解の公式から見えるように、複素数平面上において実軸対称である。4点は等脚台形になるので、「対角の和がπ」という共円条件を満たす。

中心は、複素数平面を活かして|α -z| = |β -z| ⇔ (α -z)(αz) = (β -z)(βz) とし、解と係数の関係で解くのが王道だろう。xy平面上の図形と考えて三平方の定理を使っても良いが、元は複素数なのでy座標の根号内の符号が変わることに注意。

(2)

「同一円周上」という条件を表す為のa, b, cの値の比較で、それぞれの解答例が異なっている。東進とパスナビは、a, b, cのうち二つが同じでも構わないとしている。Math Stationはa≠b, b≠c, c≠aとしている。私は前者が正しいと思う。ちなみに、”a≠b≠c”は”a≠b, b≠c, c≠a”と同値ではないので使ってはいけない。

さらに、東進はbの範囲の指定も不要としている。おそらくこれが完璧な解答だろうが、そこまでの答えは要求されていないだろう。

ある2点が「同一直線上にあること」は「同一円周上にあること」の必要十分条件と言えると私は思うのだが、数学的には違うようだ。

第2問

(1)

a, bが互いに素であればax +by はどんな整数にもなり得るという性質を利用する。

(2)

二元一次不定方程式はセンターでも頻出で、1変数に置き換えるのが定番。これは三元なので2変数で置き換える。二元不定方程式でやる操作を二周すればよい。

(1)で得た特殊解のzを固定してはいけない。なぜなら35x +91y +65z = 3は図形的にはxyz空間上で傾いた平面だから、zを固定するとx, yの選択肢を狭めてしまうからだ。

第3問

(2)

与式に三角関数が含まれている為、anは解けない。そこで挟み撃ちの原理で評価する。nの値を大きくしていったときに、どの範囲で動いているかを見定めて挟む。nを偶奇で検証するのが面倒なところ。

挟み撃ちの原理を使わず、n→∞においてa2m +a2m+1 が2(2πm +π/2)に限りなく近づくことを利用する裏技もある。

第4問

今年度の最難問。後期1998年度第2問が類題。

(1)空間的、平面的に図を描いて考察すれば分かりやすい。

(2)回転体の体積を求めるから断面積の関数が欲しいが、そこで(1)が役立つ。半径の考察が難しく、回転体がx = ±2の制限を受けるという事は直観的に分かるが、そこを考慮するだけでは不十分。方針だけ詳述して逃げるというのも手だ。

第5問

指示に忠実になればよい問題だった。

(1)点Xはnが偶数の時のみA, B, C, Dに存在するという事を見抜くのが大事。

(2)nを用いて表せと指示されているので一般項を求めると分かる。4種の数列を組み合わせる必要があり面倒くさそうだが、纏めると単純な等比数列に帰着し、これが(3)を解く上での重要な性質となっている。

(3)(2)のヒントを汲み取れたかどうか。(2)と同じ要領で、項の符号を変えたものを使って一般項を作るとどれも単純な等比数列だ。勘が良ければサイコロの高い対称性から気づけるかも。 そして連立してanを導く。

高校物理 東京工業大学2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[1]

二体問題なので運動量保存則を使うはずだ。

(a)

重心の公式は数学の内分点の公式と同様だ。

(b)

(a)も含めてここまで解いた式を組み合わせて(エ)を導くという構成。

複数の物体間で運動量保存則が成立していれば、それらを合わせた重心は等速運動をするという有名事実を示している。これは憶えておくべきことだ。

(g)

力がテーマになっているので小球についての運動方程式を立てる。小球に作用する力は重力と垂直抗力なので、垂直抗力に平行な力を抽出する。

[2]

一様でない磁場がテーマ。〔A〕は電磁気学と力学が融合している。

(a)

ジュール熱はIVt = I2Rt = V2t /R で表せるが、tは解答に使えないし、落下中のコイルの磁束の変化率は一定でないので誘導起電力を算出するのが困難だ。そこで、ジュール熱を落下するコイルの力学的エネルギーの減少分と見なす。

保存則にはこういう出題の仕方があるわけだが、発想の転換が必要なのでいきなり難しい問題だった。

コイルが発熱した分だけ落下速度が下がるというのが面白い。

(b)

電磁誘導の法則またはV = vBl を使って起電力を算出できる。

(g)

(f)が解けなくても、「(f)の解をvfとおく」として答えを書けば部分点は得られるだろう。

(h)

電流の向きが実際のものとは逆に定義されているので、I’を含む項の符号を逆にする必要がある点に注意。

(i)

直感で解ける問題。

[3]

誘導を如何に活かせるかが重要だった。

(b)

回折格子の実験装置の間に凸レンズがあるが、これがどの様に働くかを検証させている。

回折格子により光は縦方向に回折する。光軸に平行でない平行光線が一点集中するという事実は無名だろう。

横並びの平行光線はレンズが無ければそのままスクリーンに届いて縞模様が映し出されるが、レンズによって一点集中する。

(c)

(a)と(b)の考察を元に導く。sはm = 1の場合の明点なので、d sin θ = λ となる様なθ に対応している。

(f)

(d), (e)の考え方を利用した問題。(d)から、スクリーン上の点はG1, G2,G3の配置場所に依存しないと分かる。また(e)から、格子の角度を変えるとスクリーン上に原点を中心に回転した点列が現れると分かる。

パズル的な性質がある。tanの値は中途半端な数値にはならないと予想して0や1を適当に書いておく手もある。

(h)

(g)の考え方を利用する。

高校数学 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

整数問題はいつもの様に実験によって答えが見えてくる。

(1)

「3を法として2に合同」とは、「3で割った剰余が2である」という意味。

合同式に絶対値記号が含まれているのは見慣れないが、場合分けすればよいだけだ。

3を法とするので、x ≡ 0, 1, 2の3種類に分けて調べていく。合同式は積と和と差が成り立つので、ふつうの方程式の様にx2 -x -23 ≡ 2にx = 0, 1, 2 を代入する事が出来る。

合同式を使えるかが試されたが、そもそも「法」や「合同」の意味が分からず捨ててしまった人も居るかもしれない。しかしこの問題が解けなくても(2)は解けるので大問毎捨ててはいけない。

(2)

(1)で3を法として調べたので、ここでもそれを引き継ぐ。与式が素数であるためには、3で割り切れないことが必要条件というわけだ。

与式にわざわざ絶対値記号が付けられているという事は、その記号の影響を受ける値付近が答えになっていると勘づく。

第2問

(2)

複素数平面を利用しなくても解く方法は色々ある。複素数平面を利用するなら、外接円の中心を原点、Pの座標をzとして、与式を変形していけば自然と解ける。

東進の別解2の様に、Pを劣弧AB上におくとCP = AP +BPが成り立つ事を示す方法もある。ちなみにこの CP = AP +BP は、2018年共通テスト試行調査でも題材になっている。

第3問

(1)

ACはxz平面上、ABはyz平面上にあるので、ベクトルを使うより、平面Hのそれぞれの平面での直線との交点を求めるのが速いだろう。

ACとBCは、座標軸との交点の座標が分かっているので、簡単に方程式を作れる。ACは(3, 0, 0), (0, 0, 4)を通るのでx /3 + z /4 = 1、BCは(0, 3, 0), (0, 0, 4)を通るのでy /3 + z /4 = 1 である。

(2)

同一円周上にある条件の立て方は、方べきの定理以外では困難なようだ。センター試験で頻出だし、P, Q, R, S, Tの配置で思い出しやすい が、東工大数学でこの手の定理を使うのは珍しいかも。

その後は方べきの定理で立てた等式を変形していき「= 0」の形にする事で必要十分条件を抽出する。b = aのグラフだけ書いていても部分点は得られるだろう。

第4問

(2)

斜め回転体は2009年以来の登場。当時は軸が空間上に存在するという難問だったが、今回は標準的なレベル。

「(1)の結果を用いて」と指示してあるが、そのままxで積分してはいけない。積分とは、微小な短冊を「縦×横」で足し合わせる手続きなので、線分または面に垂直な軸での積分が必要だからだ。ただし、軸との傾きによる面積の減少を考慮すれば可能である。それがcos θを使った裏技公式である。

回転軸に座標tを設定して、tとxの関係式を元にt→xへの置換積分を行う。x(2sin x -sin 2x)を積分することになるが、2項に分けて部分積分するよりもそのままの方が速いだろう。

第5問

珍しく一つの大問に4つも小問が与えられている。前年度の第4問の難しさを反省した結果かもしれない。

(1)

ak+2 を部分積分するなら三角関数を変形、akを部分積分するなら xkの方を変形しておく。 どちらも労力は変わらないようだ。

(2)

ak が0に収束しそうなのは与式から分かるが、k ak は不明なので直接に算出できそうにない。ところで、なぜか「限りなく大きくする」という表現をしているが、これは要はlim(k→∞)の事である。極限といえば挟み撃ちの原理であるからこれを使おう。

特性方程式を使えば1に収束すると予想できる。(1)で得た式を k・ak について解くと1とak+2を含む項が出てくるので、ak+2 が0に収束する事を示せばよいと分かる。

さて、ゴツい数式を目の前にして何で挟むかで悩むが、与式にsinが含まれていなければ値が出せるので、0≦sin(πx /2)≦1を利用するのが良さそうだ。ちなみに0≦xk-1≦1 を利用してしまうと、残された式にkが含まれていないので極限を使えなくなる。

要は、与式をlim(k→∞) とした時にak = 0 である事と、(1)の結果とを組み合わせれば良いのだ。

また、東進の別解の様にak の漸化式を解いている途中で出てくる1/kを利用して挟む方法もある。

(3)

一見すると0以外の収束値を持たない様に見えるが、不定形の計算ならば0以外になり得るので∞×0の形に持ち込む。

k・ak の収束値が0ではなく1であるという(2)で示した事実がカギだ。ak を収束させれるkの指数の上限値を示しているからだ。 kの指数が0になるようなm, nの値を探す。

極限に対する理解の深さを問われた良問。難問なので、m -n = 1という必要条件だけでも示せば5点は貰えるだろう。

(4)

これも ∞×0の形に持ち込む。

漸化式をマクローリン展開の様に項数を調整した上で極限を取るという作業が必要だが、この発想は出てこないだろう。

前問に輪をかけて難しい。真面目に記述していたら解答用紙の余白が足りないのでは?これもp -r = 3, q -r = 2という必要条件だけでも示せば5点は貰えるだろう。

高校化学 東京工業大学2016 (平成28)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (イ) 標準状態で気体となる元素は、希ガスを除くと5種類に限られる。
  • (オ)結合エネルギーは一般には原子間距離が小さいほど大きいが、H2 < N2 である。
  • (2)CaCl2, MgCl2, NaOH は潮解性があり、中でも CaCl2 は潮解し凝固点降下を起こす性質から融雪剤として利用されている。
  • (3)地殻中や人体では酸素が5割を占める。

〔2〕

  • (ア)CrO42- (黄)はH+を加えると、水と Cr2O72- (赤橙)に変わる。これは酸化還元反応ではないのでCrの酸化数は不変だ。
  • (ウ)( エ) MnO4(酸性)と MnO2は還元するとどちらもMn2+ になる。
  • (3)酸化剤、還元剤が反応後に何を生じるかを知っていればよい。
  • (4) O2は空気の平均分子量29に近いので水上置換が最適。

〔3〕

一風変わったテーマだが、状態の段階ごとに情報を整理して、平衡状態の段階で平衡定数の式を立てる原則は同じだ。

混合前のギ酸水溶液・酢酸水溶液は電離度0として扱う。混合後に生じたギ酸イオン・酢酸イオンの量が不明なのでx, y と置き、電離平衡の式を立てる。

切りの良い値が答えになっている確率が高い。

〔5〕

空間図形の計算を扱っており難しいと評価されているが、東工大受験生は数学が得意なので朝飯前だろう。有効数字を考慮すると有理化はしない方が良いようだ。

第II問

〔6〕

見慣れない問題だが、反応熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和)というお馴染みの式を使えば瞬殺だ。生成熱と結合エネルギーは等価である。

〔7〕

アミノ酸の電荷の総和が0となるpHが等電点である。等電点の問題では[陽イオン] = [陰イオン]が重要だ。

〔8〕

  • (1)電子を得るのが還元、失うのが酸化だ。これは酸化数の増減が電荷の増減に対応している事を知っていれば間違えない。
  • (2)リチウムイオン電池は二次電池、リチウム電池は一次電池。
  • (5)両極でPbの酸化数が異なるので、放電時に両極でPb2+が生じてこれが水溶液中のH2SO4と反応してPbSO4 となる。
  • (6)燃料電池にはリン酸型とアルカリ型があるが、負極にやってきたH2が導線にeを渡してH+ は水溶液中を通過して正極側の O2と反応してH2Oとなるのは一致している。

〔9〕

(4)反応速度vはモル濃度の曲線の傾きである。その時点でのH2O2の平均モル濃度cに比例するので、 直線にはならない。

〔10〕

難問と言われているが、凝固点降下や熱量について状況を整理すれば難しくはない。食塩(NaCl)が電離して質量モル濃度が2倍になるのは見落としやすい。

第III問

〔11〕

原子は表面が負に帯電している為、原子間で斥力を生じる。これにより、HだけでなくCもクネクネとした形になる。

二重・三重結合を持つ炭素とその炭素に結合している原子は必ず同一平面上にある。

(6)だけは同一直線状を問うている。この問題を最後に持ってきたという事は引っ掛けるつもりだったのか?

〔12〕

付加する水素の量を調べるには化合物Aの分子式が知りたい。

量的関係より、 13.2g(CO2)/ 44で化合物A(0.01mol)に含まれるCの物質量が分かる。同様に4.5g (H2O) /18 *2 でHの物質量が分かる。

〔13〕

  • (ア)クメンを態々イソプロピルベンゼンという別名で呼んでいるのはクメン法とバレたくないからだ。フェノール樹脂は、ノボラック(酸触媒)&加熱&硬化剤またはレゾール(塩基触媒)&加熱の二通りで作れる。
  • (1)熱硬化性樹脂は立体網目構造である。
  • (2)アセタールとはアルデヒドやケトンをアルコールと脱水縮合する事を指すが、専らビニロンの製法で使われる表現だ。
  • (4)二重結合がO3により酸化され劣化する。シリコーンゴムは二重結合を持たないので酸化に強い。

〔14〕

問i

  • (1)αグルコースとβグルコースは区別しない。
  • (2)グルコースのみから成る二糖類はマルトース、トレハロース、セロビオースがある。
  • (3)酵母が糖類をエタノールと二酸化炭素に分解する反応は、酒やパン(CO2の発生により膨らむ)の製造に利用されている。

高校数学 東京工業大学2012 (平成24)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

センターレベルの易しい問題。

(1)

OCとDEは垂直なので、DEOA, OB, OCで表すとOC の項は0になりそうだが、もしこれが0ならばEはOに一致する。つまり直交座標系とは見做せないのが原因だ。

(2)

要するに目の積が2と5の倍数であれば良いのだから、電数のように、それぞれの事象でベン図を描き、余事象に加法定理を用いるのがエレガント。

数え上げる方法でも数分で答えられてしまうのは流石に出題に工夫がない。

第2問

(1)

与えられた対数の値から3100の桁数は分かるので、これを元にして考察していく。問題自体は簡単なので、論証問題のように扱い、-1 /2についても丁寧に論述すべきだろう。

(2)

ガウス記号が登場しているので、定義通りの不等式を立てるのが常道。そして整数問題は実験が有効だ。

第3問

(2)

簡単な様に見えて意外に計算が厄介な東工大らしい問題。ここまで簡単な問題ばかりだっただけに面喰ってしまうが、それが出題者の狙いなのだろうか。

いかに工夫して計算量を減らせるかが試されている。共有点のx座標をα, βと置くのは定番。さらにS(a)をaで表すと根号が出てきて扱いにくいのでαで表すのが自然だ。

a = 0とならないのが意外なところで、解はa = 38 -27√2 ≒ -0.18である。これは、直線lの回転軸がCの変曲点ではなく原点にあり、そこから遠いほど変位が大きい為だ。答えが出せなくてもこれを説明して-1 /4 < a < 0と書いておくのもアリだ。

第4問

(2)

明らかにパターンに当てはまらない漸化式なので、一般項の予想が必要になる。そして数学的帰納法で証明する。

漸化式に「全ての前項」を参照する級数が含まれているので、ここでは応用的なn≦k型の数学的帰納法を用いる。

(3)

級数と極限の組み合わせと言えば区分求積法である。(2)を答えられなかったとしても予想した一般項で解答できる。

挟み撃ちの原理を使わずに解答しても間違いではないだろう。

第6問

東大理系98年前期[6]で出た四角錐の部分が三角錐になった問題だ。空間認識力が必要とされる。

断面積を求めるとき、正三角形から扇形と二等辺三角形を除くことになるが、その際にθを設定する必要がある。二等辺三角形については三角関数で、扇形はθで面積を求める。

xy平行平面(y = t)で積分するのが自然だろうが、実はMath Stationのようにxz平行平面(z = t)の方が簡単。

類題の経験が無いと難しいが、方針くらいなら書けるだろう。