「個別試験」カテゴリーアーカイブ

高校数学 東京工業大学1996 (平成8)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

(2)

解が一つしかないという事は「nx = xn」となるが、n = 1のときは解が無限にあるので注意。

(3)

解の個数が有限であることの論証は、1997年度第3問と似ている。有限性を示す為に、解が取り得る値に上限がある事を利用する。その準備として解を大きさにより並べ、不等式を作る。

与式右辺を利用すると指数関数となり扱いにくいので左辺を使ってnxnで抑える。一方右辺は xn xn-1 を使って下から抑えることでxn-1≦n を作れる。

第4問

東工大で出題された微分方程式に関する問題の中では最も新しい。

(1)

微分方程式を解く事によってf(x)を求める事が出来るが、題意を示すだけならその必要はないので簡単だ。

問題文が紛らわしいが、「f'(x)が単調増加」も示す必要がある。

(2)

最小値をとるf(t)が4/3かaかで場合分けが必要なのは見落としやすい。グラフの概形を描いておけばミスを防げる。

高校数学 東京工業大学2001 (平成13)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

(1)

頻出の絶対値付き積分。積分区間に文字が使われているが、(1)では「aを固定する」とされているので、定数とみなして、いつも通りに解いていく。この手の最大最小問題はほぼ確実に微分を使う。

(2)

指数関数の微分の定義を使って解く極限だが、少し気づきにくくしてある。「指数関数と多項式の商」という形から気づけるようになろう。

第2問

通過領域の問題。

z≦0については、半径aの半球になるのはすぐ分かる。考えることになるのはz < 0についてであるが、xz平面の第一象限だけ図形を考えてz軸で回転させればいい。

z < 0について、1秒間のうちt秒間はx軸上を進むとして立式していく。範囲に注意したり、方程式の解釈するのが難しい。 初めから通過領域がどんな形になるか予想しておいて、方程式と擦り合わせる手法が有効だろう。

領域の特定方法は幾つかある。直線部分は包絡線なので、z2 について解いた式をtについて平方完成したり、tについて偏微分する事でも求まる。

原点を中心とし半径1の円の接線は、接点が(a, 0)ならばx軸との交点は(1 /a, 0)である。これはマイナーな知識だが知っておくと便利。

第3問

(1), (2)は簡単。(3)は難問だ。(1)の実験結果により、求めたい式は見えている。

出たカードの番号は色々だが、合計は常にkであるという性質から、重複組み合わせ(仕切り法)を採用しよう。仕切りは隣り合う事もあるので、カード番号を1以上ではなく0以上に調整する。それにより合計値はkからk -jとなる。更に、答えの式はn乗の形になっている事から、二項定理を使うと予想できる。そこで二項定理が使えるように、Σ式を変形していこう。

Math Station の別解のように数学的帰納法を使う手もあるが、これも結構ややこしい。

第4問

2017年度・第3問の類題。方針の立て方と計算力が試される。

三平方の定理を使うと計算が煩雑になりがちなので、三角関数を活用する。

この問題はたけしのコマ大数学科でも出題されたそうで、相加相乗平均を使うエレガントな解法が紹介された。

面積について関数を作り、微分で極小値を出す。この方針を詳しく書くだけでも部分点が得られる。計算が長大なので、方針点だけ食い逃げするのも手だ。

答えの形は、「正八角形の半分」である。言い換えると、はみ出した直角三角形がすべて合同な二等辺三角形である。これは容易に予想できるので、解けなくても答えだけ書いておくと部分点が得られるかも。

高校物理 東京工業大学2010 (平成22)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[1]

(c)

衝突時のBの鉛直方向の変位は0なので、 運動量保存則を考えると最高点は”P→Q”の軌道における最高点と同じになりそう。ところが運動量保存則は、無条件に水平方向・鉛直方向に保存されるわけではない。それは、ボールを壁に斜め45°から当てる様子をイメージすると分かる。運動量保存則は”壁に対して”水平方向・鉛直方向に保存されるのだ。小球は斜面に垂直に衝突しているので、衝突後は速度ベクトルが逆向きとなる。

衝突後にBが変位するのだから、小球の衝突前後の速さは異なる。

変位の方程式やエネルギー保存則を使った解法がある。また、軌道が通過する2点が分かっているので、数学的に放物線の方程式を確定させる方法もある。

(d)

衝突時に小球は水平方向の運動量の一部をBに奪われる。同じ大きさの鉛直方向の運動量を床に撃力として吸収される。斜衝突では角度が大きいほど小球の運動量保存に於いてロスが生じるのだ。

水平方向は運動量保存則が成り立つ。また弾性衝突なので力学的エネルギー保存の法則も成り立つ。計算過程で次数下げのテクニックが使える。

「m, M, v0 を用いて表せ」と指示されているが、m, Mを用いなくても表せる。これは(f)の問題を示唆している。

りるらるで述べられているように、小球の衝突後の軌道を(c)で想定したものを前提としない場合は異なる解になる。

(f)

衝突時の保存則、小球の軌道が確定しているので、質量比を求められる。(d)を利用して解くのだが、この問題も小球の衝突後の軌道を(c)で想定したものを前提としない場合は異なる解になる。

[2]

(a)

イメージし難いかもしれないが、天体内部の重力と同じ仕組みだ。地球トンネル(万有引力による単振動)を知っていれば受け入れやすい。

(b)

ここでの静電気力は弾性力と同じなので、rで積分すればよい。

(e)

次の小問(f)の記述がヒントになる。

[3]

(d)

温度が幾つになったのか文字が置かれてないが、自分で文字dを置いて(c)と同じように熱力学第一法則を立式する。問題文中で使われている文字としてdが飛ばされている事からもこの方針に気付ける。

方程式を解くためにdについてもう一つ式が欲しい。気体のdは温度に関する文字なので、気体の状態方程式を作ろう。

多くの式が入り乱れて計算が煩雑だ。

高校数学 東京工業大学2002 (平成14)年度 前期入試問題の解説

解答例

大問4つの内、なんと3つが小問を持たない。こういう場合は試行錯誤して分かったことを躊躇いなく書き下していく姿勢が大事だ。

第1問

2011年度第2問の類題。絶対値付き積分は頻出だ。

微分する際、aの定義域両端のf(a)を調べる事で極値が極大か極小かを判別できるので、f'(a)の通分は不要。

第2問

楕円の準円がテーマ。この問題には決まった解法がある。

接線の方程式を楕円の方程式に代入した後の計算が面倒だが、接線の方程式の定数部を括って扱うと楽になる。

第3問

微分法で最大値を求めるという頻出テーマ。誘導が無いので解法の自由度が高いが、どれを取っても計算は煩雑だ。東工大らしさが凝縮した問題である。

三平方の定理や余弦定理を使うような解法は計算が煩雑になりがちなので、ベクトルを活用するのが筋が良い。

思い付いた方針を全て書き出すだけでも部分点を得られるかも。

面積最大の時、∠ALB = 45°となるのだが、これはLA = √2である事からも容易に予想できる。だからこの問題を易しい問題と評価する人も居るが、その方法で答えを出しても点数は半分以下になるだろう。あくまでも検算または部分点狙いとしておこう。

第4問

本年度の最難問。

(1)

Σと極限の組み合わせを見て区分求積法をやってみるのが自然だが、不定形になり上手くいかない。そこで挟み撃ちの原理を使ってみよう。さて、何で挟むかで悩むが、「y = 1 /xにグラフが似ている」「極限(n→∞)でyが一致する」という2点が大事。

オイラー定数に関わる調和数列の典型問題のアレンジだった。

(2)

ここからが難しい。与えられた二つの式について考察していく。

xnはf(x)の極値に関するものなので、f‘(x) を作ってみる。次に、示すべき式について考察しよう。右辺の各項の分母が「1 -x」の形になっているのは違和感があるので「x -1」に変えてみると、符号が逆になる。そこで移項してみると、f‘(x) /f(x)と一致する!

不等式証明は、1 /xn と1 /(xn -1)を比較するのがシンプルだが、CFVのように背理法の方が発想としては自然かな。式は分かっているので、証明できなくても(3)で利用できる。

(3)

ここまでの流れから、(1)と(2)を組み合わせて、(2)の不等式で挟み撃つのは分かる。

不等式の右辺では、(1)の形に沿うように数値置換していく。

解き方が分からなければ方針だけ書いておこう。(1)の結果から(3)の答えも1であるのは予想が付くので、答えをいきなり書いておく手もある。

高校数学 東京工業大学2000 (平成12)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

(2)

二回目の反射点の座標から求める方法が思い付きやすいが和積公式など駆使する必要があり時間が掛かる。一方で△OCPに正弦定理を用いると瞬殺できてしまう(符号に注意)。三角関数を含む計算は、加減ではなく乗除になるようにした方が良いという教訓かな。

解き方によって解答速度に大きく差が出るので、センスが要求されるという点で東工大らしくない問題だ。

(3)

Pのx座標の最大・最小値を求めるわけだから、(2)で得た関数を微分するのが自然な流れだが、微分し始めると沼に嵌る。

やっぱり東工大らしくない問題だった。受験者の正解率は思いの外に低かったはずだ。方針を誤ると時間を浪費してしまうので、これを第一問に持ってきたのはタチが悪い。

第2問

(1)

両辺を2乗する事で絶対値を外す常道。最初にz = r(cos θ +i sin θ)を代入するより|z +1 /2|2 = (z +1 /2) (z + 1/2) = |z|2 +(z +z) /2 < 0とそのまま展開していった方が楽。

(2)

前年度に続いてまた複素数列が登場した。z = 2として級数式が正しいか検算しよう。さらにz = 1のときの場合分けも必要だ。これもzのまま展開した方が楽だ。

(3)

与式を直接示すのではなく(2)の式で示すのは気づけるはず。しかし cos(n +θ) を式変形で消化しにくい。そこで、(1)で得た不等式を使って不等式証明の手法「数値置換法」を使う。|cos(n +θ)|≦1も使おう。

もし解けなくても、「(2)の式を(1)の条件式を使って数値を置き換えて、値がより大きな式を作り、それが1以下となる事を示す」と方針を書いておくと部分点を貰える。

第3問

第1問がダミーであったのに対し、これこそが微分法で最大・最小値を求める問題だ。

三角柱の各側辺の任意の高さをx, y, zと設定して直角三角形の関数を作る。空間ベクトルでも式を作れる。

第4問

(2)

an = 0に収束するのは容易に想像がつく。そこで挟み撃ちの原理を使うのだが、n→∞とするので両辺の分母にnがある形を作る。そこで(ア)と(イ)の形の違いを利用する。

(3)

n(ean -1)の不定形は、どちらかが0でない数に収束するように積を調整する。するともう片方がexの導関数の形になり成功。

高校数学 東京工業大学2005 (平成17)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

本年度の最難問。(2)までは簡単だが(3)は発想力を要する。

(1)

(log x)n = x’・(log x)nとして部分積分すると2項間漸化式が出てくるので番号下げしたものと組み合わせる。(log x)n = (x log x -x)’・(log x)n-1 として積分してもよい。

(3)

与式を見てウォリス積分「n In = (n -1) In-2」を連想すれば筋が良い。a2 = e -2が式中に現れている事からも気づける。ところが持ち合わせている関係式が3項間漸化式だから上手く変形できない。数学的帰納法も使えない。

そこで、不等式の柔軟性を利用して2項間漸化式に作り替えてみよう。

与式は項が偶数である。そこで(1)式an = (n -1) (an-2 -an-1)の an-1を(2)式を利用してan に置き換え、 an < (n -1) (an-2 -an) としてみる。するとウォリス積分と同じ形式になった!

数列の不等式を証明するために、処理し易いように数値や項を入れ替えるのはお馴染みのテクニックだ。

ウォリス積分自体が応用的内容だが、それを知った上で更に応用した問題だった。解けたとしても試行錯誤の末に辿り着くはずなので時間が掛かる。解けないなら(2)の条件を満たしている事だけでも示して部分点を狙おう。

第3問

Cは円ではなく円周なので注意。もしこれが円であれば、体積は積分せずに4πと計算できる。

難易度は標準的で、シンプルな問題設定でありながら置換積分など微積のテクニックを要する東工大らしい問題。

sin θ cos2θは-cos3θ /3と積分できる。

扇形の面積は一般にθが含まれ、これは置換できない。つまり扇形が含まれる求積問題はθで積分する事を予見できる。したがって最初からθで断面積の関数を作れば、置換する手間を省ける。一部の項のみ置換するという方法もある。

第4問

有名問題「閻魔の唇」のアレンジで、線形計画法を盛り込んでいる。

高校物理 東京工業大学2013 (平成25)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

今年度辺りから問題は基本的だが深い理解を問う形式に変化してきた。簡単なようで意外と思考力を要し、各予備校も評価を誤った。

[1]

(a)

エネルギー保存則の式を変形して「vA2 -vA2 = vB2 -vB2」、運動量保存則の式を変形して「vA -vA‘ = vB‘ -vB」 とすれば煩雑な計算を回避できる。二次式を差の形に誘導する数学的テクニックだ。

2物体の弾性衝突と同じように速度が交換するのが面白い。

(c)

〔B〕では速度に動摩擦力、重力の影響が加味された。

(d)

このような条件下でも、紐の撃力による速度交換が起きる。

文字T1は中問では与えられてないので使ってはいけない。

(e)

重力gに慣性の加速度が加わり見かけの重力√(g2 +a2)となる。そして「十分に振幅の小さな周期運動」とあるから単振り子の公式に当てはめる。

(f)

周期性があり、バネの挙動に似ている。

加速度運動の影響を除けば運動量保存則が成り立っている。

[2]

(b)

実験の様子をイメージすると、棒2がx正向きに力を受け加速する一方で、棒1はx負向きに力を受け減速する。これによりいずれ両棒は速度が一致する。

起電力を発生させる因子は、V = vBl より「棒の速度」「磁束密度」「棒の長さ」の三つだ。電流が0という事は起電力の総和が0という事であり、v1 -v2 = 0と分かる。

電流が流れてないからと言って、電位差が0とは限らない。それは棒内の電子におけるローレンツ力の発生を考えると分かる。二つの棒が磁場中を動くから逆向きの誘導起電力を生じるのだが、二つの電池を逆向きに配置している様なものなので、レール間で電位差が生じるのだ。当然ながら、磁場中でなければ電位差は生じない。

(d)

  • (オ)(b)が足掛かりになっている。運動量 = 力積の等式を使うだけだ。
  • (カ)IとΔtからΔqを連想し、そこからCを使う事を考えよう。
  • (キ)マイナスが付くのに注意。

(e)

(b)の応用。

[3]

(b)

(カ)は発想を要する。LAC -LBC≒da /L というヒントや、Sをlずらしてもスクリーン上のdズレた位置では光路差が不変である事実から、光路差について立式しよう。

(c)

(ケ)は煩雑な三角関数の計算が必要だが、そこまで手が回らないだろう。

高校数学 東京工業大学2004 (平成16)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

(1)は非常に簡単なのだが、これが(2)の誘導になっている事に気づくのが重要。(2)の与式を微分して(1)の形に変形していく。


g(x) の二つの極値を g(α), g(β)とすると、 g(α) < lim x→a g(x) < g(β) となっている場合はこの区間の全域で「3点で交わる」と言えないので、確認する必要がある。lim x→∞ g(x) についても同様である。

こういった細かい議論は見落としがちなので、グラフを描いておくのが手っ取り早い…今回の場合はg(x)である。これで減点も防げるし、見直しにもなって一石二鳥だ。

第2問

「前小問の数式に合わせて式変形して証明する」という問題で、2006年度第一問とよく似ている。

(1)

合成関数、そして偶関数のf(x) = f(-x)という性質がテーマの問題。

sin x, cos xが2π周期の周期関数なので、f(sin x), g(cos x) も 2π周期の周期関数になる。y = sin xと置いたとき、2π周期という性質はyが持っており、f(y) = f(sin x)にその性質が反映されるのだ。

与式を読み解くと、「[0, mπ]における面積は、[0, π]のm個分と同じ」という事だ。これはイメージでは把握しやすいが、どう示せばよいかは経験がないと難しい。

右辺は左辺の区間をm分割しているので、左辺をΣを使ってm分割してみよう。そして区間それぞれの面積が等しい事を示せばよいのだ。

積分区間が異なっているのでθ = x -(k -1)πと置換して辻褄を合わせよう。するとsin, cos関数が複雑な形になるが、ここで周期関数と偶関数の性質を利用して右辺の形に合わせる事が出来るのだ。

この立式が出来なければ、周期関数と偶関数の性質を説明しながらグラフで概形を描いて示せばよい。

(2)

(1)の与式を観察する事で、f(x) = |x|, g(x) = (1 +cos2 x)-2 という連続な偶関数に当てはまると分かる。さらにt = nxと置換する所までは一直線に進む。

ここからが大変。積分区間に注目して、mπ≦n≦(m +1)πを利用して不等式の原型を作る。両辺に1 /nを含まれているのが邪魔なので、今度はmπ≦n≦(m +1)π の逆数 1 /(m +1)π ≦1 /n≦1 /mπ を利用して範囲の拡大を犠牲にしてmを含む形に変えるのだが、この発想が難関だ。

両辺の絶対値は積分区間内では常に正だから外されていたわけだ。なので正負での場合分けを考える必要はない。

中々先を見通しにくい式変形が続くので、誘導を信じて突き進む事が大事だ。

(3)

(2)の形から明らかに挟み撃ちの原理を使うと分かる。ここまで解けなくても(2)の与式を使って解ける。t = cos x, t = tan θと2段階で置換積分をするのが一般的だが、cos x = tan θ と置いて-sin x dx = dθ /cos2 θ とする方が速い。

第3問

(1)

反復試行の公式が使える。n回の試行の内、k回で赤が出るが、それが何回目で出るかについて組み合わせを使う。

(3)

「確率の最大値」を問われているので、7/20 *2004 ≒701という「期待値」を求めるのは誤り。勘違いしていたとしても、こんなに簡単なのは奇妙だから気付くだろう。

確率の最大値は、事象毎の確率を比べることになるので、 Pkを反復試行の公式で求める。確率の式が累乗や階乗の形であるのを活かして、隣り合う Pkをの比を取って比べる。階乗を含む式を処理するときは別の項との比を使うと上手くいくという法則は数列でもお馴染みだ。

Pk は複雑な式だが、比を取る事によりスッキリした式になる。この比が1未満に転落する直前が最大値だ。

第4問

どちらの小問も計算が大変。その一言に尽きる。考え方は易しいが、ミスなく完答出来たら立派である。

V(0) = V(1) = 0は検算に使える。また、(2)の微分についてはV'(r) = 0を「根号の項 = 多項式」に式変形して2乗して r = 1 /√2を導き、V(0) = V(1) = 0 を根拠としてV(1 /√2)が極大値を取ると示すのが楽だ。それが論証的にリスクがあるなら、V'(r) に現れる根号を「分子の有理化」してから分子だけ因数分解すればいい。

ちなみに、(2)は対称性からr = 1 /√2 なのは予想が付くので、答えだけ書いて逃げるのもアリだ。

高校数学 東京工業大学2003 (平成15)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

基本的な問題。3次関数と1次関数が2つの共有点を持つならば、一点は接している。面積計算は1/12公式(ベータ関数の一種)を使うと速い。

第2問

nの数を増やして実験すれば答えが見えてくる。(2)もn = 3の時点で勘づけるので、(1)は無かった方が良かった。

一応は数列の問題である。縦と横の切り方で二種類の漸化式が生まれるので値を比較するのだが、数列で証明するのは非効率。Math Stationの方法が簡潔だ。

第3問

最大の難所は、ベクトルを使って解くと気づく事だ。

ベクトル方程式と一次独立で解くのが一般的だが、P, Qの内分比が分かっているからメネラウスの定理を使うと速い。

3xy -2x -2y +1 = 0というグラフを描くことになるが、これを変形すると9(x -2/3)(y -2/3) = 1となり、x = 2/3, y = 2/3 が漸近線の一次分数関数と分かる。

最後に面積を問うて簡単な積分を盛り込んでいる。

第4問

(1)

Math Stationのように係数を漸化式にして階乗で割って解くのは面白い。

(2)

素直にfn(x)を微分してx = 0を代入すれば良い。

高校数学 東京工業大学2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

東工大数学は2016~2020年は東大・京大を上回る難易度であり、それが頂点に達したのが本年度だった。

従来のように努力や探求心を覗う出題とは打って変わって、発想力を要求する出題が多かった。昔の東大数学の様だ。

第1問

Weitzenböckの不等式が題材になっている。こういった幾何学の不等式の下限値は一般的に正多角形(正多面体)になるので、解けなくても答えだけ書いておこう。

(1)

不等式の証明だから、平方完成を利用する。与式をh, s, tで表すと、hだけが対称性が無い仲間外れなのでこれを基準に平方完成するのが筋が良い。

出題者は座標計算に誘導しているが、ヘロンの公式でも解ける。

(2)

(1)を更に難しくした問題の様に見えるが、(1)において証明すべき式が明示されているので、これを利用すれば(1)が解けなくても解けてしまう。

等号成立条件についても、(1)の等号成立条件が正三角形である事を証明できなくても、大抵は等号成立条件は正多角形なのだから堂々と使えばいい。

第2問

大まかな方針は次の通り。

  • f(x)を求めたいので、両辺を微分していく。
  • f(xy)のままでは両辺をxで微分する操作が出来ないのでt = xy と置換する。
  • |log y|は積分区間で正負が変わるので積分区間を分割する。

g(x)×∫dt」が含まれているので、これをxで微分すると再び積分関数∫dt が現れる。したがってもう一回微分する必要がある。

最初に置換した時と微分した時に左辺に1/xが出てきているのだが、分数関数の微分は式が複雑になるので両辺をx倍するのが筋が良い。

途中で行う積分計算が煩雑だ。実は、計算過程で得た式にx = 1, 2を代入した式を再利用する事で、積分計算をすべて回避できる。その点でセンスを試す大問と言える。

第3問

(1)

集合Mは複素数同士の乗除なので、zを拡大縮小と回転をしたものである。ちなみに加減により平行移動する。

ここでは縮小と右回転がなされているので、縮小によりMの個数が増えている。領域が円なので、回転に伴うMの個数の変化はない。よって|z|≦r√13と表せる。

複素数平面の知識を利用して計算するのかと思いきや、大部分は点の数え上げという地道な作業である。

(2)

集合Mに対して領域を√13倍して左回転すると考えれば良い。要するに領域の各頂点の座標に3 +2iを掛けるのだ。

格子点が領域に入っているか際どい物もあるが、図を精密に描けば、領域境界を方程式にして検証する必要はないので時短になる。この点は技巧的だ。

zは「実部と虚部が共に整数」と定義されているがL(z, w)はその定義に反している。同じ記号を使い回すのは禁じ手だろう。

第4問

これが話題になった超難問だ。まず、空間上の平面を増やしていくというのがイメージし難いのでかなりセンスが必要とされる。

多くの受験生が一問も答えられなかっただろうが、裏を返せば部分点を得やすいという事だ。答えが分からなくても次の記述によって部分点は得られるだろう。

  • 「平面を直線で分割した結果の考察」といった実験
  • 分割数が最大になる必要十分条件を示す
  • 3次元空間なので、解はnの3次式になる。「N次空間をN-1次空間で分割した数はN次式になる」と書けば探求心を評価されるかも?

(1)が解けなくても、(2)では「どれか二つの交線を平行にすると空間が一つ減るので(1)の解より1小さい」と書けば10点は得られるだろう。(3)も同じ要領で書けば5点は貰える。

(3)は余りに難しい(というか細かい)ので、(2)までを誘導を増やして出題すれば許容範囲内の難易度だった。出題者は(3)の例外処理を解かせたかったのだろうが、入試問題として機能していないので自己満足でしかない。

第5問

(1)

問題文がx > 0 で「常に」減少するのか、「ある点で」減少するのか曖昧なのが良くない。

一階微分では正負が判断できないので二階微分と極限値で評価する。

(2)

整数、数列は実験が大事。bkの具体値を求めればすぐに答えの予想が付くので、この大問だけは東工大らしさが出ている。

(1)の式と見比べる事で対数を取るのは分かるが、bk 内の階乗が邪魔だ。“差×比”型数列をS -rSによって中間項をゴッソリとキャンセルするのと同じ感覚で、階比の形にする事でキャンセルできる。 「確率の最大値」と同じ手法だ。

Mの最大値を態々既約分数で示させるメリットが分からない。今年度は出題センスが悪い。