高校物理 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[2]の荷電粒子のドリフト、[3]の気液共存線など、大学教育のウォーミングアップ的な色の強い出題だった。

[1]

二体問題は運動量保存則や相対運動や重心を意識しよう。

(d)

単振り子の周期は一般に2π√(l /g)と表せる。ちなみに単振動の周期は2π√(m /k)である。ど忘れした時は単位がs(時間)である事を利用して組み立てよう。

Qの軌道はx軸方向と平行と近似して計算する。a = -ω2x を憶えていれば組み立てられる。

  • (ア)C点は単振り子の振動中心と見做せる。
  • (イ)振動中心の速さは「振幅×角振動数」で速く導ける。力学的エネルギー保存則も使える。

(e)

運動量保存則の式は対称性があるが力学的エネルギー保存則の式はmghがあるので対称性が無いのに注意。

(g)

二体問題だから相対運動に着目するのが筋が良い。何をさせたいのか分かり難い問題文な上に計算が煩雑なので捨てても良いだろう。

(h)

重力gに慣性の加速度が加わり見かけの重力√(g2 +a2)となる。そして「十分に振幅の小さな周期運動」とあるから単振り子の公式に当てはめる。

(i)

難問。

Qが斜面上で周期運動をするという事は、斜面に垂直な方向の力が釣り合っているという事だ。これを立式する。

さらに、外力Tを加えているときにQが存在しないとするとT = Maだが、Qがあると垂直抗力のx成分が加わる。

[2]

〔C〕では荷電粒子のドリフトがテーマだった。荷電粒子は常に垂直方向に力を受けるので、電場の方向に”落ちる”ことなく、横に移動していく。直感的には予想しにくい動きなので、知っていないと難しい。

(b)

直観的に導き難いが、これはy軸を90°時計回りするとx軸に一致し、 x軸を90°時計回りするとy軸逆向きに一致する性質に由来する。

(f)

相対運動の設定なので、相対速度に着目する。そして前小問を利用して立式する。

ここで、(e)で求める文字に「F’」とダッシュが付いていることに注目。これは出題者による「(b)と比較せよ」というメッセージだ。

相対運動への深い理解が試された。

(g)

荷電粒子の動き始めの速度の向きに注目しよう。前小問において観測者から見ると荷電粒子は動き始めはx負の方向に速度を持つので、この円運動はx軸を接線に持つと分かる。

マトモに考えると難問だが消去法でも選べる。粒子はx軸方向に移動していくので9, 10は消去。5, 6, 7, 8の形は、次問(h)で直径などを調べさせるのを考慮すると、定数が定まらない(1, 2, 3, 4を包含する)ので正答である確率が低い。荷電粒子の電荷を考えると2, 4も消去。

[3]

気液共存がテーマ。2009年度東大物理で同様のテーマで出題されているので、これを参考にして問題作成したのかもしれない。数学だけでなく物理も10年以上前の東大入試を研究する意義はありそうだ。

定義される文字が多い上に文字設定も非合理的で混乱を来す。やる気を激しく削ぐ配慮に欠けた問題文だ。効率を上げる為に文中の文字の定義の部分に下線を引いたり図に書き込むと良いだろう。

(a)

化学寄りの問題。

蒸発熱は、沸点温度(T0)の液体が気体に状態変化する為の熱量。(ア)は水をその温度まで引き上げるのに必要な熱量である。

ちなみに化学では比熱(J /(g・k))、物理ではモル比熱(J /(mol・k)) が用いられる。

(e)

蒸発により水の体積が減少しているのが要所。

(f)

「仕事 = 力×距離」だが、圧力P0 が一定なのに対してバネは漸増するので注意。イメージすると間違えない。

(g)

水を T0 からT2まで引き上げる熱量も含まれる。

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