高校数学 東京大学1994 (平成6)年度 理系前期入試問題の解説

第1, 2, 4問は最初から躓きやすく、部分点も取りにくい。本年度の問題は全体的に数学力を測るには不適切だった。

「大学への数学」における各大問の難易度: C, C, C, D, C, D

解答例

第1問

微分を駆使する問題だと思いがちだが、実は平方完成を用いると簡単に解ける。(1)ではf(x)について、(2)ではg'(x)について二つの平方完成項を作る事でそれらが正であることの十分条件を示す。受験生の虚を突く問題だった。

その解法以外に、f(x)やg'(x)が高次方程式であり極小値を持つことに着目して、f'(α) = 0, g”(β) = 0を用いて次数下げをするという解法もある。

いずれにしても受験技巧的な問題だ。

(2)

g(x)が単調増加であることを示せれば、後はg(-1)とg(0)を調べて完了。単調増加を示せなくても g(-1)とg(0)を調べることで部分点を狙おう。

g(-1)は分数の面倒な計算をせずとも、(-1 +1)+(-1/2 +1/6)+(-1/24 +1/120)とすることでg(-1) < 0を示せる。

f(x)とg(x)について x = 1/t と置換すると、マクローリン展開の形になっており、この性質を用いて解くことも出来る。

第2問

(1)が解けなくても(2)が解けるように、(1)の問題文は「a +b = 5/4, ab = 5/16 を示せ」とするべきだった。(1)が解けなければ、(2)では部分点狙いで数学的帰納法を用いることを書いておこう。

(1)解法を暗記するしかない問題。受験技巧的でつまらない。

(2)xとyの対称式は、基本対称式x+y, xyの組み合わせで表せる。

第3問

計算量の多い求積問題だが、誘導が丁寧なので本年度の最易問。

時間の節約の為、図形的考察はしない方が良い。

(1)断面となる円の半径がθで表されており、断面積をθで表す様指示されているので積分する必要がない。この特性に気付くと計算が楽になる。

第4問

問題そのものが難しいというより、文字が多く条件が複雑なので内容の把握が困難。

関数f, gが漸化式になっているので、極限値を得られるように式変形していく。条件「0 < x < 1」は関数が収束する事を示唆するものだ。解けなければ方針だけでも書いておこう。

実はfn(x)の一般項を数学的帰納法で証明できる。それを積分することでも解答できる。数列に関して困ったときは取り敢えず数学的帰納法を試みよう。

この問題は、PRIVATE EYESが指摘しているように答えに対する見解が分かれており、鉄緑会の問題集でもなぜか断りなく問題内容が改変されている。

第5問

(2)「どのカードを引く確率も正である」という条件を見落とすと間違える。虱潰しにEを算出していく場面での計算の負担が大きい。

第6問

x,yの範囲で3×3通りに場合分けするが、同じ操作を繰り返すことになるので、その繰り返しを省くために事前に式変形や代入をしよう。

難問とされるが、場合分けの処理は時間はかかるが易しいので部分点は取り易い。時間が足りなければ方針だけ書いておこう。

高校数学 東京大学2012 (平成24)年度 理系前期入試問題の解説

行列が2問出題されたり煩雑な計算問題があるなど出題傾向に不思議な点があった。

「大学への数学」における各大問の難易度: B, C, B, D, B, C

分析: 東進, Z会, 河合塾, KATSUYA

解答例

第1問

線分の端点の一方は円周上にあるが、与えられた円の方程式を使うと根号が現れるので、微分が大変になる。問題文中で変数θが指定されているのが大きなヒント。東大数学では手始めに図形的考察をして情報を引き出す。本問では円周角の定理が利用できるのでやはりθが適切だと判断できる。

途中計算で3次方程式が現れるが、領域Dが(√2)/3という意味ありげな値で区切られている事から、少し試行錯誤すれば因数分解できると推測できる。

第2問

図形の対称性に着目すると、部屋を3つずつ、3種類に分類できる。そのうち二つはnが奇数の場合のみ到達する。よって偶奇で分けて3部屋のみ考察すればよい。部屋Qに到達する推移を、「部屋P」と「P以外の2部屋」からの到達に分けることで直接漸化式を作れるが、記述が面倒なので寧ろ漸化式を3種類作った方が速い。

第3問

計算が面倒なだけの何とも東大らしくない問題だ。なんの捻りもないので、何か誤解や引っ掛けがあるのではと不安になってしまう。

(1)楕円体の体積は(4π/3) × √2 × (1/4√2)2 である。ここから空洞部分を切り抜くという解法があるが、積分区間に根号が出てくるので悪手。

(2)V2 /V1 < 1 と仮定して式変形するのが楽。結局√2 < 57/40 を示せばよいことになる。

第4問

(2)が難問。必要条件で絞り込んでいくという流れ。数学的帰納法を用いることを宣言し、n = 2の場合に成立していることだけでも記述すれば部分点が得られるだろう。

高校数学 東京大学1992 (平成4)年度 理系前期入試問題の解説

全体的に難度が高いが全く歯が立たないという問題もない。多様性に富み良問が多い。大学入試として稀に見る傑作である。

「大学への数学」における各大問の難易度: C, C, C, D, C, D

解答例

第1問

シンプルな問題設定でありながら極限に関するセンスを試される良問。

(1)

題意から S1 -S2 が最小値となるbを求めると分かるが、そもそもS1は定数なので、S2 の最大値を求めるだけで良い。

(2)

極限計算の手法として、定数項を絞り出して残りの項が0になるように式変形するというものがある。それに従い本問では、発散速度が最大の項”a log a”で分母分子を割る。

{log (a -1)}/log a について。対数関数は、真数の積を和で表せるという特徴がある。そこでこの分数について定数を”絞り出す”ことで極限値を得られる。2003年度第5問でもこの手法を用いる。

対数関数が多く出てきているので対数の極限公式を用いるという発想も自然だろう。

答えが1になりそうなのは直感的に分かる。解けなくても部分点を得る為に予想した極限値を書いておこう。

第2問

「直線上の格子点は等間隔に並ぶ」「x,y が互いに素な整数であるとき、原点と(x, y)を結ぶ線分上には格子点はO, Pしかない」という事実は証明が必要。鉄緑会の問題集を参照。

どこまで詳しく論証すればよいか悩むところだが、手を付けないよりは大雑把に証明を完了した方が良い。

第3問

a, bの関係式を求めると、対称式になっている。更に不等式証明問題であることから、相加相乗平均を意識して対称性を崩さない様に処理していこう。

円に外接する三角形の面積は、3辺の長さと内接円半径から求められるのは有名だが、この定理は円に全ての辺が外接する多角形に一般化できる。更に、球に外接する多面体にまで一般化できる。体積 = (多面体の表面積)×(内接球半径) /3 となる。

この四面体に直角が多く含まれるのがrを求めるヒントだ。

相加相乗平均を用いることを書く事で部分点が得られるかも。

第4問

これは当時としては言うまでもなく、現代に於いても風変わりな問題。体積を求める問題で座標軸平行な断面を”スキャン”するのはよくあるが、本問は角度θでスキャンしていく。

展開図を作るためにx = f(θ)の式を作る。

解法が分かったとしても、斬新な問題であるだけに先の見えない処理を続けねばならない。しかし解き進めていくと案外楽だ。

Bの概形を調べるとz = ±1で重解を持つのでAを2分すると分かる。これを書けば部分点が得られるかも。

第5問

微分方程式の問題。時間と速度の情報が与えられているので、曲線の長さを求める。初期値に注意。

第6問

じゃんけんグリコを題材にしたゲーム理論を背景とする問題。

(1)

A, Bの出し手を表を作って纏めるのが、記述の負担が少なくて分かりやすい。

(2)

変数が多くて途方に暮れるが、必要条件で絞ると上手くいく。

そもそも、Aの如何なる戦略(手の出し方の比)に対してもE > 0になるBの出し方があるというのは有り得ない、と直感的に分かるだろう。つまり高々E = 0にしかなり得ないのだ。とすると、Eの式をa, b, cの各項で纏めて、それらの係数が0になるようにすればよい。

高校数学 東京大学1991 (平成3)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: A, B,D, B, D, C

解答例

第2問

点光源を固定すると影はRに相似な長方形になるというのが重要なのだが、意外と気付きにくい。空間図形問題では、3つの視点の向き(x, y, z軸平行)で考察するのを心掛けると良い。また、点光源が作る影は点光源と直線で結ばれるという特徴がある。

思考の負担を減らすために図を伸縮して楕円を真円に変換して計算するのも良い。

影の概形が分からなくても勘で描いておこう。

第3問

(1)|p| < 2のときは、f(p)をβで表すと説明が楽だが、αγを含む方程式を作り、y = p2に交わるαγを示す方法もある。

(2)「概形を描け」という指示からは、グラフの凹凸も正しく示す必要があるのか分からない。凹凸まで調べると難しい微分が必要になるので難度が上がる。採点対象かどうか分からない処理に時間を費やすのは勿体ないので、時間が余った場合に示せばよい。大数のD難度という評価は凹凸も示すことを加味したものだろう。

第4問

チェビシェフ多項式に関するでは必ず加法定理を利用する。両方の小問で数学的帰納法を使うが、「数学的帰納法で示す」と書くだけでも部分点が得られるかも。

(1)題意の把握が難しい。関数の添え字が違うと別の関数を表す。例えば関数psとpt は全く無関係な関数だ。よって関数pを多項式で表そうとするのは間違い。

(2)(1)が解けていなくても、(1)に示すべき式が問題文に記載されているので、これを利用して(2)は解ける。

第5問

格子点が登場しているので、本質は整数問題である。

整数m, nと互いに素な整数p, qを用いたmp+nqで全ての整数を表せる。解法に発想力を要するが、実際のところ5×2の格子内を考察すればよいので、力技で解ける。

第6問

(1)対数微分法の逆操作をする。

(2)(1)で求めたf(x)-2f(x)がa(x)の階差数列となっていることを見抜く。

高校数学 東京大学2018 (平成30)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B, C, B, B, D, C

分析: 東進, Z会, 河合塾, KATSUYA

解答例

第2問

(1)文字式としてはpn = n(n +1), qn = 2(2n +1)だが、nに数値代入してみると2で割り切れると分かるだろう。あくまで数値として既約分数でなければならない。そして既約分数とは、分母と分子が「互いに素」ということだ。

第3問

kの値で場合分けが必要になる。この点が本問の罠で、予備校すら誤った模範解答を公開してしまったらしい。多くの受験生は場合分けできなかったと思われるので、その減点は小さいだろう。細かいことに神経質になって調子を狂わすよりは大雑把に答えを出した方が良い。

kの値によって図形の概形が変わることは図形のセンスが無いと気付きにくい。東大は空間図形のように数学的センスを要する問題を出しがちだが、本問もその種の問題と言ってよいだろう。

第4問

非常に易しいと言われているが、必要条件を漏れなく拾い上げるのは案外気を使う。

第5問

簡素な問題設定でありながら、複素数平面や平面幾何、二次曲線の基本知識の的確な運用を必要とし、正解に辿り着くのは難しいという良問。こういった問題は、歴史的に見て複素数平面の出題頻度が少ないからこそ出せるのだろう。

(1)

複素数平面に慣れていなくても、幾何的に考察するだけで∠AOP = ∠APQと分かる。そして基本公式αα* = |α|2 を用いる。

(2)

意味ありげな「絶対値の商」を考察しよう。ここでは基本公式(α +α*)/2 = Re(α)や偏角を使う。

(z -1)2/(z* -1)2 の変形が一つの関門だが、図形的に考察すると z -1とz* -1 は実軸対称なので偏角はz-1の4倍で、zだけで表せそうだと目星が付く。

題材が円で、しかも複素数平面の問題だから、角度の情報を重視して解いていこう。

直交座標を用いて求める事も計算量は多いが可能。

第6問

空間認識力を要する求積問題。

誘導が丁寧なので方針で迷うことはないが、記述に骨が折れる問題だ。集合論で用いる論理記号を使えば、共通部分に関する記述を楽にできる。(1)の共通部分の図示は、「同一平面上に図示せよ」と指示されているだけなので図を1つ描くだけでも十分だろう。

高校数学 東京大学2020 (令和2)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B, B, B, C, C, C

U-taisakuのまとめ

分析: 東進, Z会

解答例: 電数

第2問

解法に迷う問題だ。面積を考察するにも関わらず、△ABCについて長さも角度も情報が一切与えられていないという特徴に着目しよう。この特徴から、比や相似について考察するという発想に至る。

第3問

どの小問も、小技で計算を楽にすることができる。(1)は根号の中身だけを考察すればよい。(2)は長さの平方の関数を微分すると楽だ。(3)では、積分区間が座標軸対称なので奇関数の面積が0となる。

(2)の誘導があるので難易度がかなり下がっている。

OPの長さを求めていることから、極形式で面積を求める方針もなくはない。

第4問

(1)数列や整数の問題ではお決まりだが、問題設定と規則性の把握を兼ねて実験しよう。

第5問

求積問題。

(1)感覚的に答えを出せるが、さすがに答えだけを書くのは良くない。

(2)(1)の誘導により、平面z = tでの断面積を積分するという方針が建つ。更に、断面積の形も予想できるので、予想を証明できるような解法を選ぼう。

第6問

(2)

題意を把握するのがまず難しいので、解き進められなくても、状況を把握していることをアピールしたり、正しい文字設定をするだけでも部分点が得られるだろう。

条件から「直線PQがC上の点Qに於ける法線になる」と解釈できる。

(1)は誘導問題なのは間違いないが如何に利用していくかは予想しにくい。それでも、(2)に於ける点P, Qの文字設定を三角関数で表した方が良さそうだという判断はできる。

高校理科 東京大学 物理・化学 2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

どの大問も穴埋め問題は易しいので全問正解すべき。

第1問

大学で学ぶ「極座標での運動」を考察する。最も易しい大問なので7割を目指そう。

[II]

(1)r2 = x2 +y2に気づかないと解けない数学的問題。K = m(vx2 +vy2 )/2だけでも書いておこう。

(2)計算するまでもなく、[I](3)や[III]で円運動を扱っているのだから、流れを読めば明らかに円運動が正解で、面積速度は一定なので等速円運動だと分かる。力学的エネルギーの値を求めるには前問を利用してKrを導入する。

[III]

ここまでの問題が解けなくても解ける。

第2問

微積を使わせたいけど叶わないということで、微小の概念を導入している。普通に微積を用いて計算できる様になっておこう。

[I]

(3)(2)で微小量の関係式を求めたことに着目する。(2)で用いた微小量⊿s,⊿t,⊿Vのうち、総和が判明している量はs = V0 /Bd, V = V0であるから、これらのうち一つと⊿q との関係式を作れば積分できる。

(4)問題文が示唆しているので、躊躇いなくコンデンサーの静電エネルギーの公式を適用しよう。⊿q = I⊿t, ⊿V = (IB2d2)⊿t/mより、XY間に於ける電荷と電位の増加は時間に比例すると分かるが、これはまさにコンデンサーの充電と同じなのだ。

(5)(4)が解けなくても、XY間がコンデンサーと同じ振る舞いをするという話題なので一瞬で解ける。

[II]

スイッチを切ると、起電力が生じるが電流は流れないという状態になる。

第3問

[III]

(1)この大問に於いて、装置がヒートポンプであることが明かされる。熱効率は常に1未満であることを考えると、ウはあり得ない。

(3)Wは気体がされた仕事の”総和”だから、全操作を俯瞰して収支を確認しよう。

化学

第1問

[I]

糖類と別の有機化合物がそれぞれ持つOH基が脱水縮合した結合をグリコシド結合というが、高校では糖類同士の結合として学ぶ。更に、酵素が二糖類を加水分解する条件も高校課程範囲内と言えるか際どい。何れにせよ難問となっている。

(イ, エ)高校化学の範囲では、「スクロース以外の糖類は全て還元性を持つ」「全ての二糖類には、グルコースが構成要素として必ず含まれる」と覚えておいて良い。

[II]

(ク)繰り返し単位を単量体とするので、Jとエチレングリコールが一つずつ縮合したものを単量体とする。

(サ)Gのヨードホルム反応によりKが生じることを裏付ける事はできない。東大が出題するから「難問」と呼ばれるのだろうが実際は単なる悪問だ。

第2問

(ア)(1)価電子数とは、最外殻電子の内で反応に関与しうる電子の数。 (5)電気的引力が分子間力に大きく寄与している。

(ウ)混合気体の問題なので「モル比 = 分圧比 = 体積比」を利用する。d /M = P /RT (分子量: M, 密度: d)だからdとMは比例する。

(エ)Feはイオン化傾向がCuと比べて大きく、水蒸気とも反応する。

[II]

(キ,ク)共有結合は、価標の本数が最大になるように結合する。要するに電子を共有したがる。

第3問

[I]

(イ)共通テストのように誘導が下手で何を書けば良いか分からない穴埋め形式だが、a, b, e, fは誘導を無視しても解答できる。[H+] = √K1K2を導出させるという出題意図なのだが、丸暗記している人が有利だ。

(ウ)トロナ鉱石の質量が4.52gと中途半端なのは計算が楽になるように配慮してある兆候だから、計算問題だからといって捨てるのは勿体ない。

(オ)炭酸は弱酸で二段階電離するという2つの性質により、単独で緩衝作用を持つ。

[II]

(キ)与えられた計算式を使うと面倒になるという謎の引っ掛け問題。

(ク)反応熱の問題は、熱化学方程式をそれぞれ作って組み合わせるだけなので解いておこう。

高校理科 東京大学 物理・化学 2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

第1問

[I]

(3)x軸方向に移動しないことから、Qは二体の重心と見做せる。

(4)単振り子となっているので、公式を適用すれば良い。

[II]

慣性力への理解を問う中問。慣性力を考察する問題では、観測の基準を適宜切り替えることを心掛けよう。

(1)台を基準にすると、小球は最下点で静止しているが、台に力を掛け始めた後は振り子には慣性力が働くので、小球は速度を持つ。よって振り子は単振動する。単振動することに気づかなかった人は多いだろう。単振動を考慮せず立式しても部分点は得られるだろう。

(2)「仕事 = 力×距離」ではあるが、力は時間の関数となっていて算出できないので、力学的エネルギーから求める。加速度は定数aなので速度をat0と求められる。(1)で間違っていても部分点は得られるだろう。

(3)butsurikyousiの動画解説が分かりやすい。 台から見ると、小球が単振動中心にある際は加速度を持たないので二体は一体化していると見做せるので、F = (M +m)aとなる。最大値が(M +2m)aになるとは限らないので紛らわしいグラフではある。

(4)[I](3),(4)と比べると、問題内容は「二体が等速直線運動をしている」という違いしかない。東大物理の問題なので、「前の中問と問題文が似ている」というだけでT2 = T1と判断してよい。

第2問

計算量が非常に多い。

[I]

問題文で「重力の影響は無視できる」と述べつつ、わざわざ金属板を「上下」と表現しているのは不適切だ。ただでさえ制限時間が厳しい東大理科でこのような混乱を齎す表現をしている過失は大きい。

(1)極板間引力はF = QE/2

(3)運動方程式を建てるが、極板にかかる重力は無視するので注意。

[II]

(2)全電気容量q/Vは、直列コンデンサーの合成容量とは異なる。「全コンデンサーの電位差の和 = V」を立式する。

(3)(2)で用いたVの式においてV = 0とする。式が再利用できないか常に注意しよう。

(4)(1)で建てた運動方程式を再利用する。中問を解く前に問題文全体を先に読んでおくと見通しが良くなる。

第3問

[II]

この装置は、各容器の底面にかかる圧力が常に等しくなるのが特徴。よって、問題を解く際は各容器の圧力を等式で表していくのが基本方針になる。どんな物理の問題であれ、装置の性質を理解して数式で表す感覚が大事なのだ。

(1)容器A, Cの底にかかる圧力は常に等しいので、液面の上昇量も等しい。勘で書いても当たる。

(2)(1)を利用する為に、別の容器との液面に於ける圧力の比較から立式する。

(4)容器が全て外気と接していれば、液面は全て等位になろうとするのは直感的に分かる。水位の差が大きいほど、等位になった時の位置エネルギーの変位も大きくなる。

[III]

(1)勘で書いても当たる可能性がある。

化学

第1問

A, B, C, Dを構成するαアミノ酸を特定していく。解く際は、可能性のある側鎖をメモするだけでなく、可能性が排除された側鎖もメモしておこう。

(エ)ジスルフィド結合は、SH(チオール)基同士が酸化によって結合したもの。

(カ)空間認識力を要する数学的問題。

(ク)フェノール類にはオルト・パラ配向性がある。

第2問

(イ)イオン結晶では、陰陽イオン同士は接している。

(ウ)イオン結合の力はイオン中心間距離の2乗に反比例する。

(キ)配位子を6つ持つ錯イオンは正八面体となる。

(ケ)質量の単位がすべてkgで記されているので、計算を楽にするためにkgで処理しよう。

第3問

[I]

(エ)NaOH滴下により、弱塩基NH3が遊離する。

[II]

(ク)圧力を高めると、ルシャトリエの原理により平衡が右に移動する。更に、分子同士が衝突しやすくなるので反応速度が高まる。

高校理科 東京大学 物理・化学 2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

京都大学のような穴埋め形式が出題された。

到底75分で解ける難度と分量ではなく、東工大のように2時間は必要だろう。第3問が易しいのでここで8割程得点しよう。

第1問

[II]

変位xは lθ と表せるが、これをlで割っている。単位が”位置”から”角度”に変わっても単振動という本質を把握できるかを試されている。

(1)図1-3のベクトル「-ma」は誤りで正しくは「ma」だ。出題ミスなので符号が誤っていても正解。

(2アイ)t = 0, T/2を代入してグラフと照合すれば良い。

(2iii)「速度の変化」という表現がヒントだが誘導が分かりにくい。グラフを元に勘で書いても当たりそう。

第2問

[I]

Rについては、どんな場合に抵抗値が大きくなるかを考えれば良い。

[II]

(2)早くも難問の登場。電荷の流れの追跡は困難なので「全体の比」に着目しよう。コンデンサーが回路にどう繋がっていようが抵抗の消費電力の比は一定なので、各抵抗のエネルギーの取り分を考えよう。コンデンサーに蓄えられたエネルギーが解放される際に、各素子の電圧が全て等しいということは自明ではないが、そういうことになっている。

(3)素子の構成単位同士は直列しているので、1構成単位に流れる電流を調べれば良い。交流の場合、コンデンサーの電流は位相がπ/2先行し、I = ωCV1 cos ωtとなる。

[III]

(イウ)(ア)が誘導問題なので区間LMを分析することになるが、R2やC0にかかる電圧が不明なので、未知数を設定する。

(キク)2つの電流の式は等しい。ここにt = 0, π /2を代入すればR, Cが得られる。

第3問

[I]

(1)「sin θ1 /sin θ2 = n1 /n2」となるように屈折率の定義を変えて欲しいね。

[II]

(2)「nfとn1,n2の大小関係」とあるので、n1とn2の大小関係を示す必要はない。

(3)[I]での考察結果をここで適用するという筋書きだ。球面については計算せずとも定性的考察によって分かる。半径は勘で書いても当たる。

化学

第1問

些末な知識が必要な大問。

(実験1,2)フェノールにはオルト、パラ配向性がある。この知識の有無で大問全体の点数が大きく左右される。2018年度第一問(カ)でも問われた知識。

(実験3)アニリンの製法として、ニトロベンゼンをSnとHClで還元し、強塩基によりアニリンを弱塩基として遊離する方法がよく知られている。一方で鉄と酸性溶液でニトロ基を還元する方法をBechamp還元といい、ここでは強塩基としてNaHCO3を用いている。鉄は塩化鉄に酸化される。

(実験4,5)酸触媒を用いることでエステル結合を促進できる(フィッシャーのエステル化反応)。酢酸より無水酢酸の方が結合の収率が高い。

(エ)幾何異性体が生じるのは回転の障害となる配置があるからで、二重結合があるとは限らない。

(キ,ケ)フェノールはホルムアルデヒドの付加においてもオルト、パラ配向性がある。 Iはレゾールではなくノボラックなので出題ミス。

第2問

(ア)東大入試でよくある不明瞭な問題文。その意図は、反応式を足し合わせると与式になるということだ。

(キ)カリウムが使えない因子として温度が絡んでくる。

第3問

[I]

(オ)滴下量が大きいほど目盛りの誤差範囲は相対的に小さくなる。ヨウ素はそもそも滴下していない。

高校数学 東京大学1997 (平成9)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: B, D, C, C, C, B

2, 3, 4は発想力を要する難問。全体的に計算量も多く、かなりハードだ。出来が運に依存する要素が大きく、東大の入試問題としては質が低い。

解答例

第1問

点CがDに含まれていればいいので、Cの座標を求める。正三角形の角度と長さの性質に着目して複素数平面を用いると楽だ。

第2問

本年度の最難問。整数問題というよりは「二次関数の解の配置問題」。

方針に依って難易度が大きく変わる。変数aが含まれているので分離するのが筋が良い。

mが整数であるのでややこしく感じられるのだが、mを実数扱いして十分条件のみ示せば部分点を得られる。

第3問

(1)r2をxの関数として微分する方法があるが、この方法だと(2)を解くのが困難になる(ちょぴん先生の解法を参照)。(2)を見据えると、(1 -r)の現れる形に変形するのが筋が良い。解く前に大問全体の方向性を確認しよう。

第4問

光の反射という状況設定で、物理学的な解法を用いると格子点に関する整数問題に帰着する。この手法を知らなければかなりの発想力を要する超難問だ。数学の問題として出題するのは不適切だろう。 せめてヒントを示すべきだった。

正三角形がタイルとして敷き詰めれる図形であり且つ、タイル同士が線対称性を持つからこそ成り立つ問題だ。同じ性質を持つ正方形や正六角形で考察してみるのも面白いだろう。

第5問

求積問題。

変数はいずれも2乗の形になっているので、領域はx, y軸のそれぞれに対称だと分かる。そこでY≦X(1 -X) -aと置き換えて第一象限のみで考察すると楽だ。

本年度の中では易しい方なので完答すべき大問。

第6問

(1)a = 0のときに共通接線は3本にならないのでa≠0の条件も必要。

(2)「1/12公式」を憶えていれば圧倒的に速く答えを出せる。