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中小企業診断士 一次再試験 令和五(2023)年度 E 経営法務の解説

E 経営法務

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

  • (ウ)会社形態に依らず、商号にはその会社形態を含む必要がある。ちなみに、商号として前株(株式会社○○)、後株(○○株式会社)、中株(○○株式会社○○)という表記が認められている。
  • (エ)会社形態に依らず、定款には目的、商号、所在地、出資金、発起人、発行可能株式総数を記載する必要がある。

第2問

(ア)非公開会社かつ取締役会非設置会社における株主総会の招集通知は、定款で一週間より短くすることができる。

第4問

定足数は原則として、株主総会と取締役会ともに過半数。

第5問

  • (ア)合資会社は有限責任と無限責任の社員それぞれ1人以上で設立する必要があるので2人以上となるが、それ以外の会社は1人で十分。
  • (イ、ウ、エ)持分会社は、株式会社と比べると資金調達手段が限られているなど閉鎖的ではあるが、運営の自由度は高い。

第6問

(ア)相続人が相続放棄すると相続分が再計算されるが、遺留分が放棄されても遺留分は再計算されない。

第8問

(ア, イ)会社が解散し清算会社になると事業活動はできなくなる、そのため、取締役や取締役会を置いたり、吸収合併の存続会社にはなれない。

第9問

「不当な取引制限」にはカルテルや談合が含まれ、経済活動における最も重い罪である。

第11問

(ア)知的財産権のうち、更新が認められているのは新規性の要件がない商標権のみ。

第12問

(イ)著作権は無⽅式主義なので、著作物が登録されずともに発生する。

第13問

(ア)法律に「該当しないこと」が記載されることは珍しいので不適切な選択肢だと判断できる。

第16問

[C]パリ優先権における優先期間は産業財産権によって異なっており、特許権と実⽤新案権は12カ⽉以内、意匠権と商標権は6カ⽉以内となっている。この理由は、これらの財産の複雑性や社会的重要性の差にある思われる。産業財産権のうち特許権と実⽤新案権が優遇されている点は、国内優先権と共通しているので、併せて憶えておこう。

第17問

[B]地域団体商標は商品だけでなく役務についても登録できる。たとえば横浜中華街や熱海温泉は地域団体商標だ。これらの例からも分かるように、地域団体商標を申請できるのは地域の事業協同組合や農業協同組合等の団体、商工会、商工会議所、NPO 法人に限定されており、権利の移転も禁止されている。

第19問

海上輸送における主な交易条件は次の通り。

  • CIF (Cost Insurance and Freight=運賃保険料込み条件)
  • CFR (Cost and Freight=運賃込み条件)
  • FOB (Free on Board=本船渡し)

これらの用語は売主側から見た表現となっている。

インコタームズの定義における費用負担は次の通り。

  • 輸出入時の通関費用
  • 船積み・荷下ろし費用
  • 運送費
  • 保険費用

第20問

即時取得は、動産であり、取引行為であり、善意無過失であることが要件。

第22問

(イ)債権譲渡では、第三者に対抗するときに「確定日付のある証書」が必要になる。

第24問

(イ)CBREの記事「転貸借のリスクを防ぐ法律関係を解説」に、マスターリースとサブリースを例にした分かりやすい解説がある。

(ウ)三井住友トラスト不動産の記事「オーナーチェンジと賃貸借契約~賃借人の承諾がなくても、賃貸人の交代は可能!」の例が分かりやすい。

中小企業診断士 一次試験 令和三(2021)年度 「E 経営法務」の解説

E 経営法務

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

  • (ア、イ)「社債の募集事項の決定」は経営に関わる判断なので取締役会で決議する。ただし決定事項の詳細については代表取締役等に委任できる。
  • (ウ)社債には普通社債、転換社債、ワラント債(新株引受権付社債)、劣後債などがある。社債の種類ごとに対応や権限が異なるため、個別に社債権者集会が組織される。
  • (エ)社債を発行する際には原則として社債管理者を設置しなければならないが、各社債の金額が1億円以上である場合、個々の社債権者自らが権利行使することに費用リスクはそれ程大きくなく、社債権者自らが社債管理することも十分可能と考えられるので、社債管理者の設置義務は免除される。

第3問

  • (ア)簡易合併では株主総会特別決議や株式買取請求といった手続きが省略される一方、債務は移転されるので債権者保護手続は必要。
  • (イ)株主保護手続について、吸収合併の場合は効力発生日の20日前までに株主に通知又は公告する必要がある。
  • (エ)簡易手続は株主総会の決議を省略するもの。合併に際して、合併差損が生じたり合併対価が譲渡制限株式であったりと株主に不利益がある場合は、株主総会の決議が必要なので簡易手続は利用できない。

第4問

(イ)別除権は担保権の一種なので、民事再生手続、破産手続、特別清算手続では行使できるが会社更生手続では行使できない。

第6問

  • (イ)「代表取締役等による職務執行状況の報告」や「取締役会の開催」は3か月に1回以上と法定されている。
  • (エ)監査役は独立性が重要であるため、半数以上が社外監査役であることが必要。一方、社外取締役には独立性の要件があり、公開会社の場合は2人以上が必要。

第8問

周知表示混同惹起行為が営業上の利益に焦点を当てているのに対して、著名表示冒用行為はブランドの保護に焦点を当てている。

第14問

特許協力条約は、外国への特許出願を自国の特許庁への申請をもって行うことで手続きを簡素化したものであり、大それたものではない。

第15問

(ウ)優先権には、パリ条約に基づく「パリ優先権」と実用新案法に基づく「国内優先権」とがある。パリ条約は外国出願に伴う時間的・予算的猶予を付与するためのものなので全四つの産業財産権を対象にしてパリ優先権を主張できる。一方、国内優先権は改良発明等の一括審査が目的なので特許及び実用新案のみが対象。※参考文献

(エ)商標以外の産業財産権には新規性の例外規定がある。商標にはそもそも新規性が登録要件ではないので例外規定がない。

第18問

「過失」と「重大な過失(重過失)」の違いを知らないと解けない難問。過失は「不注意にの状態」、重過失は「ほぼ故意に近い程度の不注意の状態」をいう。

民法上の債権者保護にも限界があり、先取特権の物上代位を行使したいなら差押を急ぐ必要がある。

第19問

(ア)例えば、着物レンタル業者に成人式で着る着物を注文したのに提供が間に合わなかった場合、式後に債務の履行を催告しても無意味。

中小企業診断士 一次試験 令和二(2020)年度 「G 中小企業経営・政策」の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

第2問

設問1

大規模企業や中規模企業の数が横ばいである一方、小規模企業数は減少傾向。

空欄Bでは個人事業者の中小企業に占める割合を問われている。設問3の選択肢を見ると、1999年から2016年の期間における個人事業者数の減少割合は約4割または約6割であることが分かる。このことから個人事業者数の減少率を約4割と控えめに見積もっても、2016年には1999年比で少なくとも約6割まで減っていることになる。したがって設問1の空欄Bに”7″が入ることはないため、選択肢(イ)と(エ)は消去できる。

設問2

業種別小規模事業者数の増減率の推移

業種別の小規模事業者数は、電気ガス水熱業以外は全て減少傾向。電気ガス水熱業は急増しているが理由は分からない。

設問3

ここでいう「減少」は比ではなく差である。個人事業者の総数が約200万であるのに対して「中規模企業である個人事業者」は約10万と絶対数が少ないことから選択肢(イ)と(エ)は消去できる。

ちなみに、インボイス制度の導入後、個人事業主数の推計値は380万と急増した。統計値の整合性が取れなくなってしまったので、今後数年間は個人事業主に関する統計の問題は出題されないだろう。

第4問

赤字企業の割合の統計値は集計元によっては約7割あるが、中小企業白書によると約4割となっている。

大企業は資本調達や信用のために赤字を出したくないというインセンティブが働くが、中小企業が節税のために財務的テクニックを用いて利益を小さくすることはよくある。よって中小企業の場合は景気変動によって赤字企業の比率が大きく変わることがないので、(ウ)は消去できる。

第5問

中小企業の労働生産性が横ばいであることは基礎知識なので(ア)と(イ)は消去できる。資本主義経済において労働生産性が急落することは稀なので(ウ)も消去できる。

一般的に、資本集約型産業は労働生産性が上がりやすい。これに加えて建設業は近年の人材不足や材料費高騰により労働生産性が上昇している。

第6問

設問1

開業率が廃業率より高いのに、日本企業の数が減少しているのは一見矛盾している。これについては中小企業白書において次のように説明されている。

雇用保険事業年報をもとにした開廃業率は、事業所における雇用関係の成立、消滅をそれぞれ開廃業とみなしている。そのため、企業単位での開廃業を確認出来ない、雇用者が存在しない、例えば事業主1人での開業の実態は把握できないという特徴があるものの、毎年実施されており、「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)でも、開廃業率のKPIとして用いられているため、本分析では当該指標を用いる。上記のような特徴があることから、第1-3-1図で確認した企業数の推移とは一致しない点に留意する必要がある。

企業数の増加率は人口動態の影響を大きく受けている。一方、「開業率-廃業率」は景気を反映した指標として役立つ。

設問2

不思議なことに、建設業の廃業率には5年周期の波がある。2017年度は開業率が廃業率を上回る年だったが、長期的にみると開業率は廃業率を下回り事業者数は減少傾向である。

第7問

事業承継ガイドラインは小規模企業や非公開会社を想定している。本ガイドラインでは親族内承継は「内外の関係者から心情的に受け入れられやすい」、「所有と経営の一体的な承継が期待できる」とされているが、大企業や公開会社ならばむしろ逆である。

第8問

この調査は複数回答形式。したがって「企業からの調達」、「企業へ販売」、「一般消費者へ販売」のうち、「企業へ販売」はBtoB企業のみが、「一般消費者へ販売」はBtoC企業のみが、「企業からの調達」はBtoB企業とBtoC企業の両方が回答することになる。したがって回答企業割合のうち「企業からの調達」が最も高くなると推測できるので、(ア)と(ウ)を消去できる。

ECの利用状況は、中小企業は45%、大企業は56%とされている。ここで言う「EC」には電子メールのようなコミュニケーション・ツールは含まれておらず、自社サイトや電子モールが想定されているようだ。このことは問題文からは読み取れないので不適切問題である。

第9問

設問1

日本では連帯保証制度が伝統的であるが、中小企業の融資においても2015年頃までは経営者保証が一般的で9割を占めていた。

設問2

民間金融機関と政府系金融機関の貸出残高はおよそ9:1と民間が圧倒的に多い。

空欄のある段落を読むと、「二重徴求の割合」と「二重徴求を含めた経営者保証の徴求の割合」に大差があることが推察できるので、(ア)と(ウ)は消去できる。

第10問

設問1

比較対象の期間がリーマンショックを跨いでいるので、2007年から2012年にかけての減少が大きいと推測される。よって(ア)と(イ)は消去できる。

運輸業の人材不足と小売業の淘汰が起きていることを知っていれば正答を得られる。

第12問

中小企業白書によると、中小企業の直接輸出は製造業・非製造業ともに増加している。対外直接投資も増加している。

第13問

国内特許出願件数は減少しているが、国際特許出願件数は増加している。中小企業向けの特許料金の減免制度や手続きの簡素化が奏功して中小企業の特許出願件数は国内・国際ともに増加している。

第14問

小規模企業には「生活基盤の形成」や「格差の是正」といった大それた役割は求められていない。

設問1

中小企業と小規模企業の定義の共通点は「従業員数や資本金は、商業・サービス業とそれ以外で約4倍の比がある」ということ。中小企業の定義でサービス業だけ「資本金 ÷ 従業員数=100万」となっていないのは、サービス業が労働集約型産業だからだ。

設問2

(ア)「活力ある経済と豊かな国民生活」は中小企業憲章に書かれた中小企業の役割。

(ウ)中小企業基本法第三条に「地域における経済の安定並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に寄与するとともに、創造的な事業活動を行い、新たな産業を創出するなどして将来における我が国の経済及び社会の発展に寄与する」と書かれており、成長性より地域への貢献が強調されている。

(エ)中小企業憲章の基本記念として中小企業は「創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える」と書かれている。

第15問

中小ものづくり高度化法は廃止され、令和2年に中小企業成長促進法が施行された。

第17問

(イ)事業承継・引継ぎ補助金の説明。

第18問

設問1

商店街振興組合の設立要件

  • (イ)企業組合は、組合の事業に従事する者の3分の1以上は組合員であることが必要。商店街振興組合は組合員としての資格を有する者の3分の2以上が必要。
  • (ウ)事業協同組合は、発起人は4人以上必要。商店街振興組合は7人以上必要。

第19問

設問1

事業協同組合の組合員は、自らの事業を持っているため、事業協同組合自体は共済の対象にならない。

設問1
  • (ア)経営セーフティ共済は掛金総額の10倍以内の範囲で事業資金の貸付制度を利用できる。

第20問

設問2

税制上は資本金1億円以下が中小企業とみなされる。

第22問

中小企業地域資源活用促進法は令和二年で廃止となり、中小企業成長促進法が施行した。

第23問

(ア)中小企業等経営強化法では、一定期間内に労働生産性を一定程度向上させるために先端設備等を導入する計画(先端設備等導入計画)を策定した場合に支援措置が受けられる。

(エ)失政をごまかすために、制度の趣旨とは無関係に強引に賃上げさせる条件を付すことはよくある。

中小企業診断士 一次試験 令和五(2023)年度 「E 経営法務」の解説

E 経営法務

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

  • (ア)株主総会議事録は、株主総会の決議事項などについて記載する書類。会社法において作成と保管義務が定められている。
  • (イ、ウ)公開会社、非公開会社のいずれも、株主全員の同意があれば「書面決議」や「招集手続の省略」が可能で、迅速な意思決定が可能。

第2問

定足数と評決数は単純な割合が設定されている。定足数については普通決議と特別決議ともに過半数。評決数については普通決議は過半数、特別決議は2/3以上である。

監査役は独立性が重要であるため、解任のために特別決議が必要となっている。

第3問

  • (ア)監査役には取締役会の招集など”司法機関”としての強い権限が与えられている。選択肢の文は「必要があると認めるときは」という文言に続く文言がぎこちないので誤りと判断できる。
  • (イ)「取締役会」と「株主総会」を入れ替えた文になっている。
  • (ウ)監査役会設置会社においては監査役は取締役会に強く関与する。取締役会の招集通知は監査役にも発する必要がある。また監査役は取締役会への出席義務がある。

第4問

  • (ア)取締役会と株主総会の決議事項の違いは、「所有と経営の分離」の観点から判断できる。「役員報酬に関する事項」は経営というより株主の利益に関わる事項なので株主総会で決議する。
  • (ウ)監査役には”司法機関”としての強い権限があり、取締役に不法行為の恐れがある場合は監査役会の決議なく差止請求ができる。
  • (エ)監査役は独立性が重要であり、監査する側とされる側を兼任するのは不適切である。

第5問

発起人は、企業の経営者というより所有者という立ち位置にある。よって株式を保有している必要があり、法人でも発起人となることができ、必ずしも取締役に就任する必要はない。

第7問

課徴金減免制度は囚人のジレンマゲームを利用して「仲間の裏切り」を誘発する仕組み。よってカルテルや入札談合は対象になるが、組織的な不法行為ではない優越的地位の濫用行為は非対象だ。

申請の順位によって減免率が大きく変わるため、申請の日時を確定できるように電子メールで申請する必要がある。

第8問

(ア)「継続的給付の義務を負う双務契約」の具体例として電気やガスの契約がある。債務者の弁済が困難になり再生手続を行う場合、その債務者を「再生債務者」、対象となる債権を再生債権という。再生手続開始後は、再生債務者が破産して弁済が完全に不可能になるという最悪の事態を回避するために、いったん弁済禁止の効力を与える。

(イ, ウ, エ)契約解除に関しては、債権者に有利である。

第9問

「物の発明」については、生産、使用、譲渡、輸出入によって発明の実施が認められる。他国の製品を輸入しただけで驚くことに自分が発明したことになるのだが、一方で特許侵害品は税関における輸入差止めの対象となる。

第10問

(ア)パリ条約による優先権制度は外国出願に伴う時間的・予算的猶予を付与するためのものである一方、国内優先権制度は改良発明等の一括審査のための制度である。ゆえにパリ条約による優先権主張の対象は特許・実用新案・意匠・商標だが、国内優先権制度の対象は特許・実用新案のみとなっている。

(イ)出願公開制度には、類似したアイデアの出現を牽制したり、公開された発明をベースとした新たな発明を促す目的があるため、特許と商標の出願は公開される。一方、意匠は権利化までデザインを秘密にする利点が大きく、実用新案は新たな発明を促すことに繋がりにくいことから公開制度がない。

第12問

不正競争の構成要件には混同惹起行為、著名表示冒用行為、信用毀損行為、商品形態模倣行為、営業秘密不正行為、限定提供データ不正行為等があるが、説明文を入れ替えた選択肢がよく出題される。

第13問

(ア)特許、実用新案、意匠は相互に出願変更できる。

(エ)防護標章制度は周知・著名商標の保護を目 的としているので、査定又は審決が確定した後の出願変更は不可能。

第15問

(A)一出願多区分制は欧州と足並みを揃えるために導入された。

(B)商標法では「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音」が登録の対象となっている。

第16問

設問1

“without reference to conflict of laws principle”は「抵触法の原則は適用しない」という意味の慣用句。

設問2

異例の出題内容!仲裁には裁判と同じく拘束力があり、尚且つ迅速な処理が可能。合意に至らなかった場合に不成立となるのは「調停」である。

第17問

経営承継円滑化法の特例は、「遺留分権利者の全員の合意」、「経産大臣の確認」、「家庭裁判所の許可」の三段階を踏む必要がある。この特例は基本的に中小企業が対象だが、遺留分に関する除外合意の特例は個人事業主も対象。

第18問

製造物責任法は民法で定められた不法行為責任の特例であり、製造業者等に重い責任を負わせるもの。製造業者等のリスクを下げるための保険もある。

第20問

著作権と産業財産権は、共有に関する法的扱いが異なる。これは著作権に著作者人格権が含まれることが一因。

第21問

中小企業診断士 一次試験 令和五(2023)年度 「G 中小企業経営・政策」の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

中小企業基本法における小規模企業の定義では、製造業その他は「従業員20人以下」、商業・サービス業は「従業員 5人以下」となっている。したがって本問では、建設業と製造業は「従業員20人以下」、小売業は「従業員 5人以下」を対象としている。売上高は従業員規模に概ね比例するので、小売業の売上高が最も低いと推測できる。

第2問

小規模企業数割合について

産業別規模別企業数を参照。小規模企業数割合は、建設業(95%)、製造業(84%)、小売業(81%)。

小売業は定義上「従業員 5人以下」なので小規模企業数割合が小さい。また、下請け構造があったり、ニッチな市場があったり、地域に根差した業種ほど割合が高いことが読み取れる。小売業は電子商取引の増加により小規模企業は淘汰されている。

中小企業庁によると、小規模事業者は、事業者数では小売業、建設業、製造業の順に多いが、従業員数は建設業、製造業、小売業の順に多い。卸売業と小売業を合わせた売上高では建設業より高い。

中小企業数について

中小企業基本法における中小企業の定義は、

  • 製造業その他(建設業を含む)は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」
  • 小売業は「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人」

業界への参入のしやすさが大きく影響している。

第3問

仕入れや設備投資が必要だと自己資本比率は低くなりがちだ。また、自己資本比率が高いと財務的に安定するが、小売業は日々の安定したキャッシュインがあるため自己資本比率が低くても耐えられる。

第4問

利益率の低い業種ほど開業率、廃業率が高い。

第5問

2021年初頭から円安ドル高が進み、さらに2022年初頭から物価高も進んだ。

第7問

産業別就業者数の推移をみると、第一次・第二次産業が減少傾向であるのに対して医療福祉分野を筆頭とする第三次産業は上昇傾向にあることが分かる。製造業の就業者数の減少の背景には、自動化や事業の海外移転もある。

第9問

我が国の製造業のノウハウを学びたい外国人が多いこと、留学生は自身の語学力を接客で活かせることから正答を選べる。

第10問

研究開発費割合のオーダーは、企業規模や業種に関わらず、0.1~10%。能力開発費割合のオーダーは、企業規模や業種に関わらず、0.01~0.1%。

つまり「研究開発費の差」と「能力開発費の差」は、そもそもスケールが異なるので比較する意味がないのだ。こういう悪問を出す傾向があることを知っておくと、逆手にとって正解できる。

第11問

中小企業の大部分を小規模企業が占めるわけだが、事業継続計画(BCP)の策定のコンサル費用の相場が数十万円であることを考慮すると、検討すらしていない事業者が大半だと分かる。

第12問

労働生産性は企業規模だけでなく業種にも大きく依存している。

第14問

設備投資額は景気動向に大きく影響される。リーマンショック後から15年経ってもリーマン前の投資水準に回復していない。

これについてNRIの木内登英氏は「リーマンショックをきっかけに、株価が低迷したことが企業の設備投資を慎重にさせたこと、金融仲介機能が低下し、企業が銀行あるいは市場から資金を借り入れることが難しくなったことが、投資率低下をもたらした」と結論付けている。

バブル崩壊後に無借金経営が称賛される雰囲気があったように、リーマンショック後も経営者や投資家の心理によって設備投資が抑制されている一面がある。

第16問

我が国は少子高齢化により、平均年齢が年平均0.2歳ずつ上昇している。実は、開業時の平均年齢も年平均0.2歳ずつ上昇しており、人口動態要因によるものだと分かる。

第17問

倒産件数の推移について、始点が2009年と指定されていることに注目。この年はリーマンショックによる倒産が急増した直後で、その後に金融緩和などで経営環境が改善していった。

Covid-19影響下で倒産件数が減少しているのは、本来倒産するはずの企業が政府の支援によりゾンビ化したためだ。この現象は世界各地で起きた。

第18問

債務保証とは、企業が返済できない債務を弁済してもらうこと。リーマンショック後の2010年からCovid-19騒動前の2019年までは景気拡大期だったので保証債務残高は減少していた

第18問

中小企業基本法における中小企業の定義は、

  • サービス業は「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人」
  • 製造業その他は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」

第19問

設問2

法令の穴埋め問題は、その法令の内容を知らなくても文の論理性を検証することで正答を選べることがある。

  • (A)解答群の「新たな価値を創造する」は、「新商品の開発又は生産」や「新役務の発又は提供」を言い換えたものに相当する。よって「新たな価値を創造する」で穴埋めすると文の因果関係が成り立たないので誤りだと分かる。
  • (B)経営資源は新商品等を生み出す際に利用されるものであるので、「創意工夫を凝らして生み出す経営資源」という表現は誤り。
設問3

中小企業憲章に「中小企業は、経済やくらしを支え、牽引する。創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える。」という文言がある。

第20問

新創業融資制度は令和6年3月31日をもって廃止し、以降はこの制度の適用なく、無担保・無保証人で各種融資制度を利用できる。

第21問

小規模企業共済制度

  • 経営者が対象
  • 共済金の受け取り方は、「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能
  • 掛金の全額を、その年分の総所得金額から所得控除できる
  • 掛金に相当する額の貸付を受けられる

中小企業退職金共済

  • 従業員が対象
  • 18,000円以下の掛金を増額する事業主に対して、増額分の3分の1を増額した月から1年間、国が助成する
  • 初めて加入した事業主に対して、掛金月額の2分の1を4カ月目から1年間、国が助成する

第24問

設問1

先端設備等導入計画に係る特例は、地方税法に基づく固定資産税を対象としたものであることが問題文に示されている。固定資産税は市町村税であることを知っていれば正答できる。それを知っていなくとも、「市町村(特別区を含む)」とわざわざ括弧書きが付されている点に着目することで正答できる。

設問2

営業利益=売上総利益-「販売費及び一般管理費」

「販売費及び一般管理費」には人件費、減価償却費、広告宣伝費、販売手数料、家賃などを含む。

第25問

IT 導入補助金は2024年版で次のように改編された。

  • 通常枠: ソフトウェア、クラウド
  • インボイス対応類型: インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェア
  • 電子取引類型: インボイス制度に対応した受発注システム
  • セキュリティ対策推進枠: 「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービス
  • 複数社連携IT導入枠: サプライチェーンや商業集積地で連携してITツールを導入

補助率は多くの枠が1/2以内だが例外もある。

第26問

期末資本金の額が1億円以下の一定の中小法人の場合、所得金額のうち800万円以下の部分について15%(本則19%)の軽減税率が適用される。

第27問

設問1

経営発達支援計画: 小規模企業の支援に取り組む商工会の支援計画

設問2

最新の「法人版事業承継税制(特例措置)」

  • 承継する株式にかかる贈与税・相続税のすべてが納税猶予の対象
  • 親族外を含むすべての株主から、代表者である後継者(最大3人)への贈与・相続が対象
  • 雇用維持 要件を満たせなかった場合でも納税猶予が継続可能
  • 将来、事業を売却・廃業する際に株価が下落していた場合には、その株価を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免

中小企業診断士 一次試験 令和四(2022)年度 「D 運営管理」の解説

D 運営管理(オペレーション・マネジメント)

問題(PDF), 解答(PDF)

第2問

設問1

サイクルタイムとは、生産ラインを稼働させたときに、製品一個を生産するのにかかる時間のこと。ステーション(工程)のうち作業時間が最大のものがボトルネックとなるので、この時間が実際のサイクルタイムになる。

本問では稼働予定時間と目標生産計画量が与えられているので、許容される最大のサイクルタイムを「稼働時間÷生産計画量」によって求められる。「設定サイクルタイムは分単位の整数値」という条件が与えられているので、「int(700 * 60 / 5900)」という計算によりサイクルタイムの許容値は7分である。

要素作業を組み合わせてステーションを構成する。サイクルタイムの許容値7分を逸脱した作業時間を持つステーションは不適である。

設問2

ライン・バランシングによって生産ラインの工程数やサイクルタイムは様々になる。サイクルタイムは短いほど生産速度が上がるが、一方で工程数が増えることによって作業スペースの増加、作業員や機械のコスト増を引き起こす。そこで適切なライン・バランシングを測る指標として編成効率がある。

編成効率=(各工程の作業時間の合計) ÷ (工程数 × サイクルタイム)

第5問

母分散が未知であるような母集団に対する母平均の区間推定については、統計WEBの解説が分かりやすい。

自由度はサンプルサイズから1を引いたものを選ぶ必要があるのがややこしい。分散は「偏差の二乗和をデータ数nで割ったもの」であるが、ここでは母集団から標本抽出しているので、分散は「偏差の二乗和をデータ数”n-1″で割ったもの」である。これが自由度がn-1である所以である。標本抽出を行う各種検定では、一般的に自由度はn-1が用いられる。

t値の公式は標本平均を検定統計量としているので、中心極限定理と類似している。

第16問

正味時間=観測時間の代表値 × レイティング係数

標準時間=正味時間+余裕

第17問

予防保全と保全予防が紛らわしいが、他の保全活動は単語の後半に「保全」とついているのに対して保全予防だけ前半である。保全予防のみ機械導入前に行う活動で、その他の保全活動は導入後の活動であることと紐づけて覚えると良い。

第19問

(c)7大ロス: 故障、段取り・調整、刃具交換、立上がり、速度低下、チョコ停、不良・手直し

第20問

工程分析には、製品の加工や運搬を効率化する製品工程分析、作業内容を効率化する作業者工程分析がある。

第23問

都市計画関連法については、以下の法律が問われやすい。

  • まちづくり三法(都市計画法、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法)
  • 都市再生特別措置法
  • 建築基準法

第24問

用途地域として近隣商業地域、工業地域、第一種住居地域、田園住居地域が問われている。

それぞれの用途地域についてイメージを持っておくと、どのような建築物が適しているかを判断しやすくなる。例えば、第一種住居地域にカラオケボックスは似合わないので(ウ)は偽だと判断できる。ちなみに、第二種住居地域ならばカラオケボックスを建てられる。

以下のページに用途地域毎の画像が掲載されており便利。

料理店は飲食店とは法律上異なり、キャバレーやナイトクラブといった店舗のこと。

第26問

五択の中で、aは正とするものが最も多く、bは誤とするものが最も多く、cは正とするものが最も多い。これらの正誤を組み合わせた(イ)が正解となっている。

第27問

変動費と売上原価の包含関係は、「売上原価は変動費と固定費に分けられる」というものなので、「変動費には売上原価は含まれない」という表現は不適切。「売上原価は変動費に分類されない」という記述が適切である。

第29問

(オ)「客動線を一筆書きのようにコントロールすること」という説明はあながち間違ってはいないが、ワンウェイコントロールの本質は客を店側の期待通りの経路を通ってもらうことにある。

第34問

(ウ)カテゴリー区分を細かく設定すると、コンテナ内に隙が生まれやすくなるので、積載効率が下がる場合がある。

第35問

パズル的問題。

取組案a, bではいずれも、区間によって積載率が変わるので、平均値を算出する必要がある。ただし直感的にも積載率が向上することは容易に分かる。

大原書籍によるとこの問題の正答率はなんと40%以下だったようだ。中小企業診断士の論理的思考力が疑わしい。

第37問

物流分野の設問では、以下のように省略された用語を憶えていることを問われる。

  • ASN: Advanced Shipping Notice
  • BMS: Business Message Standards
  • EAN: European Article Number
  • EDI: Electronic Data Interchange
  • EPC: Electronic Product Code
  • GCN: Global Coupon Number
  • GDS: Global Data Synchronization
  • GLN: Global Location Number
  • GTIN: Global Trade Item Number
  • GRAI: Global Returnable Asset Identifier
  • ITF: Interleaved Two of Five
  • JAN: Japanese Article Number
  • SCM: Shippng Container Marking
  • SSCC: Serial Shipping Container Code
  • UPC: Universal Product Code

これらを憶えるのは非効率だし中小企業診断士としてのスキルにも関係しない。次のように、略語のアルファベットは対応する単語がほぼ決まっているので、これらを憶えておけば用語の意味を推定できる。

  • C: Code
  • D: Data
  • E: Electronic
  • G: Global
  • N: Number
  • P: Product
  • S: Shipping

第39問

リフト値には次のような性質がある。

  • リフト値=併売率 ÷ 買上率
  • リフト値 ≧ 0
  • 「商品Aから見た商品Bのリフト値」=「商品Bから見た商品Aのリフト値」

中小企業診断士 一次試験 令和五(2023)年度 「B 財務会計」の解説

B 財務・会計

問題(PDF), 解答(PDF)

なんと正答の半分以上が(イ)だった。

第1問

  • (ア)先入先出法を用いた場合の払出単価。
  • (ウ)後入先出法を用いた場合の払出単価。この原価計算方法は廃止されている。
  • (エ)総平均法を用いた場合の払出単価。

移動平均法を知らなくても、他の原価計算方法を知っていれば絞り込める。

第2問

新収益認識基準が2021年4月から適用された。これにより、未収金は契約資産、前受金は契約負債にそれぞれ勘定科目が変更になっている。

  • (ア)受注制作のソフトウェアの制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理され、引渡時に売上原価として計上される。
  • (エ)無形固定資産の償却は定額法のみが認められている。

第3問

200%定率法における「200%」とは、「定額法を適用した際の各期の減価償却費」の2倍の額を、200%定率法の第一期の減価償却費とするという意味である。150%や250%の定率法も存在する。

ある期で減価償却費が「取得原価✕保証率」を下回ったときは、その期の減価償却費を「未償却残高✕改訂償却率」に切り替える。

第4問

(ア)親会社が連結貸借対照表を作成する際、連結する対象が子会社であれ関連会社であれ、その持分は純資産の部に表示される。

※子会社は親会社と一体のものであるという性質が強いため、子会社の財務諸表を全て合算した上で非支配株主持分を控除項目として表示する。一方で関連会社の場合は、親会社に帰属する分のみを表示する。このルールは損益計算書と貸借対照表のどちらにも当てはまる。

(ウ)企業を買収した際の、買収額の簿価を超過した分を「のれん」という。のれんは被買収企業の超過収益力を表し、無形固定資産として扱われる。一方で負ののれんは、「企業を簿価より安く買収できた」と解釈して特別利益として計上する。

第5問

計算書類財務諸表
貸借対照表
損益計算書
•株主資本等変動計算書
•個別注記表
貸借対照表
損益計算書
キャッシュフロー計算書
•株主資本等変動計算書
•附属明細書
全て会社が作る必要がある有価証券報告書を提出する会社(上場企業など)のみが作成する

第6問

課税所得は、税引前当期純利益に算入額と不算入額を加味して得られる。

第8問

  • (ア、ウ)売上債権や棚卸資産といった営業循環に含まれる勘定科目は一年基準の適用外である。
  • (イ)市場に流通しない有価証券や、他の企業を支配する等の目的で長期的に所有する有価証券は固定資産。

第10問

本問では月末仕掛品原価の算定方法として平均法が採用されている。資料には当月の原価の内訳が記載されているが、平均法では合計額のみを用いる。

度外視法とは、減損の費用をどう案分するかの方法の一つで、費用を文字通り無視してしまう方法だ。本問では、月末仕掛品原価に度外視法が適用されているので、減損の費用は完成品が負うことになる。減損費用は月末仕掛品原価に含まれないので、選択肢の中では金額の小さいものが正解だと推定できる。

第13問

営業循環における現金の支出から収入までの期間をキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)という。CCCが短いほど資金がショートするリスクが減る。仕入れを掛けで行うなどしてCCCを負の値にすることができる。

第15問

支払利息は営業外費用なので、問題文の「ここでの営業利益は税引前当期純利益に等しく」という記述を「支払利息を無視する」と解釈すると、ROEは20%という選択肢にない数値になってしまう。実際は負債5億円に利息1500万円が掛かるので当期純利益が減る。不適切に近い問題だが、負債利子率が3%なので20-3=17より正解を推測できる。

第17問

費用と収益を比較して投資判断するのと似たように、IRRと資本コストを比較する。

第22問

減価償却費は、実際には当期の現金支出はないので税引後純利益に加算する。その代わりに設備投資額を減算する。

正味運転資本増加額は、営業利益のうち現金ではない部分なので減算する。

中小企業診断士 一次試験 令和三(2021)年度 「G 中小企業経営・政策」の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

第2問

第1問と同じく、「企業規模の大きさと構成比は反比例する」という知識を用いれば(ウ)または(エ)に絞れる。(ウ)の「非製造業は中小企業数全体の約8割」は「製造業は中小企業数全体の約2割」と言い換えられるが、製造業がそんなに多いはずがない。

中小企業白書の産業別規模別企業数(2016)によると以下の通り。

  • 業種別の企業数ランキング: 小売業(62万)、宿泊・飲食サービス業(51万)、建設業(43万)、製造業(38万)
  • 従業員数ランキング: 製造業(620万)、小売業(450万)、宿泊・飲食サービス業(360万)、建設業(320万)。

製造業は労働集約型産業であることが分かる。

第3問

小規模企業白書(2020)を参照。

資本装備率=有形固定資産/従業員数

固定資産には機械設備も含まれるため、自動化がどの程度進んでいるかの指標にもなる。中小企業は大企業に比べて自動化が進んでいない(分子が小さい)ため資本装備率が低い。

製造業は第2問でも解説したように労働集約型産業なので従業員が比較的多い(分母が大きい)ため、非製造業より資本装備率が小さくなる。

第4問

第1問で解説したように「企業規模の大きさと構成比は反比例する」ので、「企業規模が中企業と大企業との境界付近にある企業」より「企業規模が小企業と中企業との境界付近にある企業」の方が遥かに多いと推測できる。

第5問

本問で問われている「労働生産性の格差」とは倍率ではなく差分を指しているので、労働生産性が高い業種ほど格差も大きいと推測できる。実際、労働生産性が高い業種順に並べると正解となる。

建設業は労働生産性が低いのが常識なのだが、小規模企業白書の2020年度版2022年度版によると建設業が全ての企業規模において、製造業はおろか情報通信業すらも上回っているという驚きの統計がある。統計手法の違いによるものと考えられるが詳しくは分からないので、「建設業は労働生産性が高い」と暗記するしかない。

第6問

中小企業白書(2020)

営業純益=営業利益-⽀払利息等

付加価値額=営業利益+⼈件費(役員給与・賞与+従業員給与・賞与+福利厚⽣費)+動産・不動産賃借料+租税公課

労働分配率が高ければ給与が高いというわけではない。「労働分配率=人件費/付加価値額」なので付加価値額が比較的低い中小企業は労働分配率が高くなりやすい。

第7問

グラフを見ると分かるように、どの回答項目も2007年度と2017年度とで差がほとんどない。特に「既存事業部門の売上増大」の減少幅は1割にも満たない。こんな統計を問題にするとは出題者は無能である。

本問を解くカギは「設備投資を抑制している理由」にある。近年は日本経済の期待成長率が低く、中小企業は後継者問題を抱えているため、設備投資に対して保守的になるのだ。

本問は二つの回答項目の組み合わせを選ばせる形式だが、単一回答形式なので片方が「増加」ならもう片方は「減少」である確率が高い。

ちなみに、企業の設備投資額の推移(内閣府)を見ると分かるように、バブル崩壊とリーマンショック発生時に設備投資額が落ち込んでいる(特に大企業)。設備投資額は景気に連動しているのである。2013年から増加傾向なのは、アベノミクスによる金利低下が要因だろう。

第9問

アベノミクスによる金利低下は貸出残高の増加をももたらしている。

第11問

ここでは大企業全体と中小企業全体を比較している。後者の方が規模は圧倒的に大きいので、出願件数もすべて中小企業が上回っていそうだが、特許出願件数は大企業が8割を占める。

中小企業が特許出願を最小限にとどめ、営業秘密として保護する理由として「技術流出する恐れ」、「費用が高い」が挙げられている。

第12問

中小企業における知的財産権別使用率は、特許権75.3%、実用新案権80.7%、商標権85.9%であり、大差はない。使用するために必要とされる技術開発や投資が大きい知的財産権ほど使用率が低くなっており、中小企業特有の事情が反映されている。

第13問

企画分野が外部連携するというのはイメージしにくい。

第14問

2020年版中小企業白書

情報通信業は受託事業者の割合が圧倒的に高い。これはシステム開発、ウェブサイト制作、アプリ開発などが他業種に広く必要とされるからだ。

第15問

設問1

小規模企業白書

中小企業の平均従業員数は10人程度なので、事業規模拡大に伴って時間的・人的資源がボトルネックになるのは想像しやすい。

新事業を金銭面で補助するのが補助金なので、補助金を受給してもなお資金不足の状態にあるというのは考えにくい。

設問2

事業パートナーとはコンサルタントのことだろうか?そうであれば、「事業パートナーとのマッチング支援」と「補助事業に係る取組の継続に向けた総合的なアドバイス・指導」は似た項目であるので、そもそもこのアンケートが不適切である。

この問題を攻略する鍵は「アンケートが複数回答形式であること」である。複数回答なので、多くの企業が消極的にでも同意できる項目が選ばれやすい。その観点から、「補助事業で開発した製品・技術を普及させるための展示会等への出展・開催支援」は三つの支援内容のうち最下位だと判断できる。なぜなら補助事業の生産物が無形物であれば出展できないからだ。

第16問

規模が小さい企業ほど従業員の年齢が高いのは、人材確保が難しいことや年功序列が根強いことが挙げられる。

第17問

M&A専門業者の中にはテール条項を悪用する業者もあるため、中小企業庁はテール条項に関するガイドラインを示している。

第18問

宿泊業・飲食サービス業は流動資産が多いため、借入金依存度が高い。

第19問

「製造業その他」は平均的な企業規模が大きいことに着目したひっかけ問題。小規模企業の定義に資本金は無関係なことにも注意。

第22問

設問1

問題文は「我が国製造業の(   )及び新たな事業の創出を図るため、中小企業が担うものづくり基盤技術の高度化に向けた研究開発及びその成果の利用を支援するための法律である」となっているため、その研究開発及びその成果の利用をした結果どうなると望ましいかを選択肢から選べばよい。

設問2

「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」は廃止されている。

第26問

小規模事業者経営発達支援融資(マル経融資)の融資上限額は2000万円と低額なので無担保無保証。

第27問

ある制度において規定されている金額が複数ある場合、それらは倍数の関係であることが多い。

中小企業診断士 一次試験 令和四(2022)年度 「B 財務会計」の解説

B 財務・会計

問題(PDF), 解答(PDF)

第3問

平成18年度 第3問が類題。

原則として費用は発生主義、収益は実現主義で計上する。この原則は特殊商品の売買においても適用される。

第5問

  • (ア)受注制作のソフトウェアの制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理され、引渡時に売上原価として計上される。
  • (エ)無形固定資産の償却は定額法のみが認められている。

第6問

非原価項目とは、原価計算制度において、原価に算入しない項目のこと。原価項目は損益計算書に費用計上される。

貸倒引当金繰入は「販売費および一般管理費」に計上される。仕損、減損、棚卸減耗損のうち正常なものは、売上原価または「販売費および一般管理費」に計上される。

支払利息は「経営目的に合致しない価値の減少」に該当するので非原価項目である。

第7問

繰越欠損金の仕訳は税効果会計の一つ。企業が黒字になると法人税等を納税する必要があるが、当期が赤字になった場合、その赤字分を次期以降に繰り越して節税できる。その節税総額を当期の繰延税金資産として計上し、次期以降に節税した分と同じ額の繰延税金資産を切り崩していく。

第10問

企業の自己資本は、株主がいて初めて生じるものである。自己株式を取得すると株主が減るので純資産も減少する。

第11問

「機械勘定」という語は聞き慣れないし、減価償却法の変更という経緯は解法に関係しないし、目眩ましの記述の多い問題文だ。

第12問

直接原価計算のコンセプトは、当期の生産量に対して販売量に相当する分を費用とするというもの。全部原価計算では当期の固定費の全部を原価に含めるのに対して、直接原価計算では当期の固定費から販売に直接関わった分を算出する。

第13問

元本200万円は5年後に返済されるので、複利現価係数(4%)で計算する。一方、利息は毎年支払われるので、年金現価係数(4%)で計算する。

第17問

サステナブル成長率と聞くとSDGsと関係がありそうだが、そうではない。

サステナブル成長率=ROE✕内部留保率

内部留保とは、当期純利益のうち配当しなかった分のこと。

第18問

割引超過利益モデルは残余利益モデルと同義。

  • (ア)配当性向が高いということは、純利益のうち利益剰余金に回す分が少ないということなので、株式価値は低い。
  • (イ)クリーンサープラス関係が成り立つことは、残余利益モデルと配当割引モデルが一致することの必要十分条件である。
  • (エ)「自己資本に自己資本コストを乗じた額」は株主の期待収益に等しい。このモデルは他人資本を無視しているので、株主期待収益と予想利益を比較できる。

第21問

数理的知識が必要な問題。

(ア)内部収益率(IRR)は「投資によって得られる将来のキャッシュフローと、投資額の現在価値が等しくなる割引率」である。高いCFが得られる投資は、たくさん割り引かないと投資額と等しくならないので、IRRは大きい。

(ウ)この選択肢の文はIRRを説明したもの。IRRは高次方程式の解なので、複数の解が存在しうる。

第22問

(ア)確実性等価法で用いる割引率は安全利子率(RFR)。

中小企業診断士 一次試験 令和三(2021)年度 「D 運営管理」の解説

D 運営管理(オペレーション・マネジメント)

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

整頓の「頓」という漢字は「頓死」などに用いられるように、「にわかに」という意味がある。このことから「すぐ使用できるように準備しておく」という意味を連想できる。

「躾」とは、決めたことを必ず守ること。

第2問

  • (イ)3S: 単純化(Simplification)、標準化(Standardization)、専門化(Specialization)

第3問

  • (ア)DI分析はDistanceとIntensity (運搬量)からレイアウト分析する手法。選択肢はPQ分析を説明している。
  • (ウ)流れ線図は、動線の最適化と捉えればよい。
  • (エ)From-To Chartは製品がどの工程に運ばれるかを行列を用いて分析するもの

第6問

JITは、必要な時に必要な量を生産することで在庫を極力抑える生産方式で、プル方式の一つ。流通に例えると受注生産に近い。

第9問

部品構成表のノードに記載された数字は、親ノードの部品一個当たりいくつ必要かを表す。

第13問

  • (b)RFID (Radio Frequency Identification)は非接触型IDタグ。
  • (d)発注方式は現品管理の分野ではないという意地悪な問題。

第15問

標準時間は次のように分類される。

  • 主体作業時間
    • 正味時間
    • 余裕時間
  • 準備段取時間
    • 正味時間
    • 余裕時間

第16問

  • (ア)モラールとは勤労意欲のこと。
  • (エ)フォードシステムとは、フォード・モーター社が導入した流れ作業による大量生産方式。

第17問

(エ)連合作業分析では観測者ではなくマン・マシンチャートを使用する。

第18問

サーブリッグ分析に基づいて分解された動作は次の通り。

  • 第1類:作業に必要な動作
  • 第2類:作業を遅れさせる動作
  • 第3類:不要な動作

(イ)保持や手待ちは第3類。

第19問

MTBF (Mean Time Between Failures)は平均故障間隔、MTTR (Mean Time To Repair)は平均故障時間。

第21問

  • (イ)拡大生産者責任とは、生産者が生産物が廃棄されるまで一定の責任を負うこと
  • (エ)株式や社債の発行は直接金融である。

第23問

  • (イ)「医療・福祉・商業等の都市機能を都市の中心拠点や生活拠点に誘導し集約することにより、これらの各種サービスの効率的な提供を図る区域」は都市機能誘導区域を説明したもの。市街化調整区域はむしろ都市機能を抑制する。
  • (オ)立地適正化計画は都市計画区域を対象とした計画。

第24問

距離抵抗係数は、店舗と消費者との距離のべき乗。

第28問

これは不適切問題。

作業別に時給が異なる場合は、作業毎の総労働時間の総和を取ることは無意味となるため、問題が成立しない。本問の正解は(ウ)とされているが、「改善効果」を「人時生産性が何倍に改善されたか」と解釈すると、改善効果が最も高いのはAおよびDなので(オ)が正解となる。

第30問

Line Robbingとは、自社のラインナップを競合他社のラインナップに別の商品を加えたものとすることで顧客を奪う(robbing)戦略。

第33問

  • (ア)RORO (roll−on roll−off ) 船はその名の通り、積み荷を乗せたトラックがそのまま船に乗り込む輸送方法。
  • (イ)特別積合せ運送とは、不特定多数の荷主の貨物をまとめて積載すること。

第35問

(オ)カテゴリー納品によって陳列業務が効率化するが、納品回数には直接関係ない。

第37問

  • (イ)ロケーション管理は、商品を倉庫のどこに保管するかを管理する。倉庫の人員をどこに配置するか、ではない。

第38問

JANコードは商品そのものに与えるバーコードで、集合包装用商品コードは商品のまとめたパッケージに与えるバーコード。よって商品そのものが変化していなければJANコードを変える必要はない。

第40問

HACCP: Hazard Analysis and Critical Control Point

第41問

かつてのEDIは取引先毎に端末を用意する必要があり高コストだった(多端末問題)が、WEB-EDIにより解消された。ところが次はインターフェースが取引先毎に異なるという問題が生じた(多画面問題)。いずれにせよ、どうでもよい昔の話だ。

第42問

単なる記憶力テストで、中小企業診断士としての資質を問う内容ではない。問題作成者のやる気が感じられない。