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高校数学 東京工業大学2009 (平成21)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

東工大にしては非常に簡単な問題。

点A, Bの座標を表すのに使う記号は、xA, xBなどの添え字付きの物だと書く時間が長いし見にくいので、α, βなどにしておこう。

式をα, βで表現したまま計算を進めていくのが王道だ。グラフを見ても分かるように左右対称性を持つ問題だから、 α, β のいずれかをもう片方で表して計算していくというのは筋が悪いのだ。

面積を定積分して求める際、積分範囲もα, βで表す事で、積分結果がα, βで表された簡潔な式になる。

最小値に関しても微分せずに相加相乗平均などで素早く求められる。

〔3〕

東進の解説

二次方程式について、与えられた条件を満たす解を持つような係数(m, n)の組み合わせの個数を数える。

問題の意味を捉えにくいが、まずは

  • 放物線の軸はn /2
  • 2N以下の正の整数(1 ≦ m ≦ 2N, 1 ≦ n ≦ 2N)
  • 解がN以上(N2 -Nn +m ≦ 0)
  • 実数解を持つ(n2 -4m ≧ 0)

といった条件を確認していき、立式・グラフ化する。ちなみに、「係数が未知数である二次方程式の実数解」と来れば「解と係数の関係」を使いたくなるが、この問題は特に使わない。

(m, n)の個数は、上記の4つの不等式を満たす組み合わせだ。不等式によって範囲が定まると言えば格子点なので、視点を変えて(m, n)を平面座標に置き換えて格子点として数え上げる。(m, n)という二つの未知数の組み合わせになっているのも、格子点として解くという事に気づくヒントだ。

一見すると実数解条件 “n2 -4m ≧ 0″という曲線で囲まれた領域の格子点を数えなければならない様だが、実際には「解がN以上」という条件により直線で囲まれた領域を扱うことになる。

複数の条件と照らし合わせて領域を確認して格子点を数え上げるのは骨が折れる作業で、馴れが必要だ。しかもこの問題ではN = 1 を例外として場合分けする必要がある…領域が狭いので” N2 -Nn +m ≦ 0 “という斜線部分に掛かってしまうからだ。

東進の解説では細かく場合分けしているが、却って分かり難くなっている。

〔4〕

東進の解説

(1)

直線l と垂直な平面πは内積で表せる。そしてxy平面と交わるという条件は”z = 0″を代入するだけで求まる。”x +y = t”だけでは平面を表す事になるので、”z = 0″も併記する。

(2)

今年度最大の難問。「斜軸回転体の体積」というだけでも発展的な内容だが、更に空間的に捉える必要がある。

(1)が誘導になっており、平面と領域Dが交わる線分をlを軸として円の面積を求め、tで積分することになる。放物線は平面π がt = 1 の時に丁度接するようになっているので0~1 の範囲で積分する。

tはx, y, z軸により定められておりl とはスケールが異なるので、tとsの関係式を作り置換積分する。

軸が空間的に傾いているので、RP, RQを算出してドーナツ状の面積を求める。

被積分関数の項の一つ”-2√(1 -t)・(t -2)”の積分方法については、東進は部分積分を使っているが、Math Stationのように”2√(1 -t) +2(1 -t)√(1 -t) “と分けた方が部分積分を使う必要が無いので速い。

高校数学 筑波大学2015 (平成27)年度一般入試問題の解説

〔2〕

(1)AQ = 1/tan (α /2), QC = 1/tan (β /2) という風に、半角を三角関数で表しても正解になる。

〔3〕

(1)

an+2, an+1 を数列を使ってα, βの式に置き換えて「解と係数の関係」を使う方法があるが、因数化や展開に手間がかかる。

二次方程式とそれが元となっている隣接三項間漸化式は親和性が高い。これを利用して、実数解を二次方程式に代入して漸化式を組み立てる方法が速い。

(2)

(1)の示された漸化式は係数が整数なので、an+2 も整数になるのは自明だ。

(3)

pとqの関係式は何の意味があるのか一見して分からないし、題意を掴みにくい。こういう時は取り敢えず示すべきものを現時点で分かっている材料を用いて作ってみる事だ。そうすると次のようになる。

bn = an +⌈-{p -√(p2 +q)}n -1 /2⌉

“⌈”, “⌉”は天井関数の記号。ここで、 pとqの関係式の不等号を等号に置き換えて代入してみると意味が漸く見えてくる。

βは負数なので、指数の偶奇に依って天井関数の符号が変わる。慣れてないと中々答えに辿り着けないだろう。

〔4〕

(3)

(2)と同じように両辺を微分すると大変な手間が掛かるし、微分しても大小比較は出来ない。

そこで両辺の項がよく似た形である事、両辺の2項目が(2)で証明した式と同じ形式である事に注目する。

(4)

問題の流れからして、素直に積分を試みるのではないのは分かる。

(3)の式は、lim (t → ∞)とすると両辺が0になる不等式なので、挟み撃ちの原理に用いると勘付くだろう。

b'(t)を導くという事には気づくが、計算方法を工夫しないと時間が掛かる。東進の模範解答の様に、b(t) = -t・f'(t) +f(t) からb'(t) = -t・f”(t)と具体的な計算を後回しにする方法に分がある。分母の形は最終形を維持し、分子は項数を減らそう。誘導の中で出ている式をそのまま使わない方が良いパターンだった。

極限の発散速度は「多項式 ≪ 指数関数」である事を知っていれば挟み撃ちの原理を使うくだりは不要だが、東進やパスナビの模範解答には書かれているので、挟み撃ちの原理を使って記述する必要があるのだろう。

〔6〕

(1)

zが描く図形を考える問題なので、zの項を一つに纏めていく。問題文中で円であると教えてくれているので、平方完成すればよい。

(2)

純虚数となるという条件を式に組み込む。

与式をωとおいて、ω +ω = 0, ω ≠ 0 と共役複素数を利用する方法がある。一つの項に含まれる記号すべてに「バーがある」または「バーが無い」状態に持ち込めば、項全体を「バーがある」または「バーが無い」状態として扱える。ここで注意すべきなのはβは正数なのでバーが有っても無くても同じという事。

若しくは与式をkiとおくという方法もある。式全体からバーを消すためにβ –αβ -α とした後に絶対値で処理する。

いずれにしても、β –α というバー無し、バー有りが混在する項は望ましくないのでβをβ に置き換えるのが肝。 バー無しと有りの混在が価値を持つのは、主に同記号同士の和(0になる)もしくは積(絶対値になる)の場合である。

長さは絶対値記号ではなく共役複素数を用いた形を使う。

(3)

正三角形といえば、各頂点が中心との距離が等しく偏角が等しいという性質があるが、そう考えると式が複雑になる。|β -α| = √3・|α| に着目すると、他の記号なしで立式出来る。βが実数なので2乗しても共役複素数が出てこないので代数的に処理できる。

高校数学 筑波大学2014 (平成26)年度一般入試問題の解説

難しくはないが、手間のかかる問題ばかりだ。

〔1〕

(1)

(2)で点Gの座標を表す必要があるが、三次方程式の解を求めるのは難しいので「解と係数の関係」を用いてエレガントに導き出す。

α+β+γ, αβ+βγ+γα, αβγ が出てきたら三次関数の「解と係数の関係」を使うのは確実。α, β, γ はP(a, b)からf(x)に引いた接線のx座標であり、f(x)と直線との交点ではないので気づきにくい。しかし接線の座標を(p, q)として方程式を立てて(a,b)を通る情報を与えると…

2t3 -3at2 +a +b = 0 ※g(p)とおく

となり、pの解が α, β, γ となる。

ここで「解は3つある」という条件を確認しよう。まずグラフの形からa ≠ 0であると分かる。加えてg(p) の極値はg(0) = a +b, g(a) = -a3 +a +b であるから、(a +b>0 ∧ -a3 +a +b < 0)∨ (a +b < 0 ∧ -a3 +a +b>0) となるが、よりシンプルに(a +b)(-a3 +a +b) < 0 とも表せる( a ≠ 0 も含まれている)。

三次関数の解と係数の関係は次の通り。

  • α+β+γ = −b/a
  • αβ+βγ+γα = c/a
  • αβγ = −d/a

解と係数の関係には、方程式の次数に依らず次の法則が成り立つ。これを知っていれば関係式を憶える必要はない。

  • 左辺の次数が偶数の場合は右辺は正数、奇数の場合は負数となる。
  • 「左辺の次数」と「右辺の分子が対応するxの次数」の和は、その関数の最大次数に等しい。(二次関数では2、三次関数では3)

(2)

α333 = (α+β+γ){(α+β+γ)2 -3(αβ+βγ+γα)}を憶えている必要がある。

重心の問題は2016年度〔1〕でも出題されている。

(3)

(1)で説明した「解は3つある」という条件がここで必要となってくる。問題(1)を解く上では必要のない条件なのでスルーしてしまいがちなので厄介。大問を解く前に各小問に目を通しておくと良いかも。

y = 9x3 /4 -2x, y = -x, f(x) = x3 -x の三つのグラフを交点に気を付けながら描く必要があるので大変だ。 y = 9x3 /4 -2xとf(x)の大小を比較する際は次のやり方が速い。

  • 両関数を辺々引いて交点のx座標を導く。
  • (1, 0) がf(x) とx軸との交点なのでx = 1を代入して比較。

「境界は除く」という事も書こう。

〔3〕

(3)

Z(a)の極限は、Y(a)とY(b)で分けると速い。Y(a)の極限は(1)で求めた通り1。 Y(b) はbをaに置き換えるのではなく、b = 1/a を利用して”a → +0″を “b → ∞” とすることで(1)の結果を再利用できる。

Z'(a) /a の極限について。Y'(b) = {Y(1 /a)}’は合成関数の微分で(-1 /a2)・Y'(1 /a) とできる。この後、東進やパスナビの模範解答ではaを再びbに置き換えて”b → ∞”とする事で証明なしで使える極限の形に持って行っているが、極限の速度は多項式より指数関数が大きい事を知っていればすぐに答えを出せる。

〔4〕

(4)

隣接三項間漸化式の一般項を求める。特性方程式または数学的帰納法を使う。

〔6〕

(1)

楕円の方程式は x2 /a2 +y2 /(a2 -c2) = 1 、双曲線の方程式は x2 /a2 -y2 /(c2 -a2) = 1 で表される。式変形すれば両者は同じものである事が分かる。違いは前者がc < a, 後者がa < c であるという事。要は焦点が曲線の内側か外側にあるかの違いだ。

「点Pの座標をaを用いて表せ」とは、tも消去する必要がある。

(2)

C1, C2 の接線公式から傾きを求め、それらの積が-1になる事を利用する。このほか、方程式の偏微分で法線ベクトルを導き、内積が0になる事を利用する方法もある。

(3)

aが媒介変数となっているのでaを消したx, yの方程式を作る。

計算過程で、点Pは第一象限にある事や正負の条件により範囲が絞られることに注意。

高校数学 筑波大学2016 (平成28)年度一般入試問題の解説

〔1〕

「解と係数の関係」を活用する小問が多い。根号を含む解となる二次方程式を扱う問題は、「解と係数の関係」を意識するとよいという事だ。

誘導が非常に丁寧。

(1)

係数kの範囲を求めるので解を求める必要はなく、判別式を使えばいい。

異なる二つの正の解を持つという条件で範囲を求める方法は色々あるが、「解と係数の関係」を用いると「α +β>0且つ α β>0」と置き換えれる。

(2)

三角形の重心の座標はXG = (xA +xB +xC) /3, YG = (yA +yB +yC) /3 で表される。そのまま計算するより、解と係数の関係を利用した方が楽だ。

三角形の五心の性質は憶えると便利だ。

(3)

座標系の三角形の面積を求めるにはサラスの公式が有用。これと「解と係数の関係」を組み合わせる事で難なく答えが出る。

SではなくS2 を求めさせているのは、(4)で最大値を求める際にSは根号を含むので扱いにくいからだ。

〔2〕

(1)

y = (tan 2θ)x は係数がtan 2θ なので、x軸と作る角度が2θという事だ。

(2)

PQ = 4 sin2 θ (1 -sin θ) と表される。最大値を求める為に微分する必要があるが、そのまま微分するとcos θも含まれる式になり増減が分かり難い。したがってt = sin θ と置き換えよう。

(3)

方針によっては計算量が多くなる。それを回避するには誘導を活かすのが無難だ。三角関数を扱う問題なのでそこに着目すると良いだろう。

〔3〕

(1)

(2)を答える為の誘導。MがPQの中点であるという情報を数式に落とし込むのは自然な流れだ。

(2)

|OM|2 = |BM|2 をそのままa, b, cを含む式に置き換えて計算すると量が多くて大変。工夫する事で時間やミスを大幅に減らせる。

|OM|2 や |BM|2 の計算に時間が掛かるのは、3項式の2乗を計算しているからだ。ベクトルを分解してOB を含む式に置き換えると上手くいく。これは(3)でも活かせる。

(3)

OA = OC を証明した後、AB = AC または∠AOB = ∠BOCを証明すればよい。

ab = bc である事からcos ∠AOB = cos ∠BOC が導ける。MがPQの中点という事はMが立体内に存在するという事だから、∠AOB = ∠BOC と断定できるわけだ。

〔6〕

(1)

図形的に解くと、虚軸に線対称な同半径の二つの円の交点として説明できる。

代数学的に解くと、両辺は絶対値を表しているので二乗して解く事で説明できる。

(2)

与式をzについて解いた後、(1)で与えられた式に代入して解いていく。

(1)の誘導が無いなら、虚軸上にあるという情報を「z = –z (z ≠ 0)」などと表現して等式を立てていく事になる。いずれにしても、 虚軸上にあるという条件をどう表現するかがカギだ。

この問題の場合は、(z +1) /z = 1 +1 /z として、z = bi を代入するだけでグラフが書ける。

(3)

これも与式をzについて解き、zが虚軸上にあるという情報を数式に組み込む。ここでは(1)で与えられた式を利用すればいい。

複素数平面の問題は、与えられた条件で表される図形は直線、円、放物線くらいしかない。この問題を解いていくとwの次数が2となるが、これは円である事を示唆している。この場合は平方完成により半径と中心が分かる。

高校数学 筑波大学2018 (平成30)年度一般入試問題の解説

妙にtan (正接)を使う問題が多い印象。

〔1〕

(1)

点Aの座標が(tan θ, tan2 θ)と少し奇妙だが、原点を結ぶ傾きはtan θ なので、角度はθである。

三角形の内心、外心の性質を利用して解くのが王道だろう。内心は角の二等分線の交点、外心は辺の垂直二等分線の交点である。この性質を忘れたなら直角二等辺三角形で試してみればすぐに分かる。

「tan2 θ +1 = 1 /cos2 θ」などの公式を憶えていれば速い。

(2)

pとqの式は複雑なので、初めにS(a)を求めてからS(p) /S(q) に代入した方が良い。S(a)は偶関数なので計算を省略できる。求める値は2つ有るが、 S(p) /S(q) のグラフをイメージすると理解しやすい。

〔2〕

(1)

放物線Cと直線が重解を持っているという情報を生かして判別式を利用すると速い。

(2)

例えばf(x) とg(x)が共有点をx = α, βに持つ場合、面積を求める関数はf(x)-g(x)という風になるので、これを(x-α)(x-β)と因数分解できる。

この問題では放物線Cが直線l1とx = (p -q) /4, 直線l2がx = (q -p) /4に重解を持つので、α = (p -q) /4と置くとそれぞれ(x -α)2 , (x +α)2 となり積分が簡単になる。

(3)

p +1/p の最小値を求める方法は相加相乗平均や微分がある。

〔3〕

(2)

点Rは特定の点ではなく線分QnPn+1上のどこでも位置し得るので、この点が動く様子を想像してみるとよい。直線OA側に寄るとxは増加しyは減少する。直線OB側に寄るとその逆になる。

これは分点公式により、mOPn+1 +nOQn = OR とした時にm +n = 1 が成り立つのだ。この性質を利用するために「xa +yb = OR」を「mOPn+1 +nOQn = OR」の形に変換しているのが(1)。これによりx = -2y +4n となる。

Sの点の個数とは、整数倍のa, b が作る格子が線分QnPn+1上に何個あるかという事だ。これは先ほど求めたx = -2y +4n のx, y が共に整数となる組み合わせに該当する。yが整数ならxも整数なので、yの個数を数え上げれば良い。グラフィカルには想像しにくいので、数式に落とし込むわけだ。

(3)

⊿OPn+1Qn が正三角形なら数えやすいが、辺Pn+1Qn が奇妙な角度になっているので厄介だ。これが頂点Oの角度が直角なら、OPn+1 から平行移動しながらスキャニング出来るので数えやすい。そこで直交座標系に変換した上で数列の和で数え上げていく。

〔4〕

C2の回転体からC1の回転体を刳り抜く。1 /sin2 x の積分は置換積分で求まるが、-1 /tan x となる事を知っていると速い。ちなみに1 /cos2 x の積分はtan xである。

〔5〕

(1)

分母の+π2 が邪魔なので、”□ +1″という形に持ち込み変形させたい。そこで「tan2 θ +1 = 1 /cos2 θ」が使う。

証明は、f(π)が解答できなくても答えれる。

(2)

数列に関して証明と言えば数学的帰納法である。(1)でf(π) = πという答えが出せていないと証明できない。

(3)

平均値の定理を使う問題だが、二段階の変形を経ないとこの定理の形にならない。左辺の”an +1 -π” を”f(an) -f(π)” と置き換えれる事に気づくのが大事で、こう置き換えた後は両辺を” an -π “で割れば平均値の定理の形になる。

平均値の定理を使う問題だと見破る方法は次の通り。

  • 不等式である
  • 両辺にそれぞれ、よく似た引き算の形が含まれている。しかも片方に係数がある。

解法の流れは、(f(an) -f(π)) /(an -π) = f'(α)とし、0 < f'(α) ≦ 2 /π となる事を利用して(f(an) -f(π)) /(an -π) ≦ 2 /π を導く。

極限値を求めるには、先に証明した不等式を「挟み撃ちの原理」として利用する。

ちなみに、 0 < f'(α) でないと、不等式の両辺の絶対値を付けられない。 この問題では絶対値がなくても「0 ≦ an -π」が成り立つが、この東大入試問題では絶対値がないと挟み撃ちの原理を使えないので、一般的には絶対値が必要と知っておくべきだ。

〔6〕

(2)

「集合Sを図示せよ」という問題であり、集合Sとはαの軌跡の事だから、αの式を求めればよい。

∠OAB = π /2 なので、arg (1 -α) = ±i となり、α -1 = ki と置ける。(※「ki」を「±ki」とする必要が無いのは、kが正と負の値をとれるから。 )

(3)

α2 = 1 -b2 +2bi となるが、図示する場所は複素数平面ではなくxy平面なので、この複素数のbを媒介変数に見立ててx, yで置き換えるのが分かる。

高校数学 筑波大学2017 (平成29)年度一般入試問題の解説

〔2〕

(2)

求めるのはh(x)だが、与えられた条件は「f(-1) ≦ g(x) ≦ f(1)」という h(x) を含まない形なので、まずは h(x) を含む形に変換する。

h(-1), h(-β),h(β),h(1)から未知数p, q, rを含む連立不等式が建てられる。等号付き不等号の連立不等式から値を特定するには、「0≦a≦0」のように同じ値で挟む形に持ちこむ。

初めの操作はやはり、出来るだけ多くの未知数をキャンセル出来るような四則演算をする事がベストだろう。そして得られた数値をそれぞれの不等式に代入する。

〔3〕

(1)

与えられたan+2の式が一見複雑に見えるが、右辺のan+1を移行すると、bn+1 = 3bn2 というシンプルな式になる。複雑な式には何か意図が隠されていると見るべきだろう。anやan+1をxやyに置き換えると発見しやすくなる。

(3)

状況把握の為に、anやbnの関係性を纏めておくと良い。

一の位を求めるということは、和や積を計算する際に、それ以上の位の数値がどうなっているかを気にする必要がないという事だ。この性質を利用して、 bn の各項の一の位のみを足し合わせていく。

〔4〕

(1)相反方程式は、「係数が同じでxの次数の差がn」という関係の項の組がある場合に置き換えが使える。

相反方程式なのでt = x +1/x とおくのが王道だが、両辺にx2を掛けて因数分解しても方程式の解は得られる。ただし(2)では「4x2 -9x +4 = 0」の解が根号を含むので極値を求めるとなると計算が大変。結局はα +1/α の形を利用するとエレガントに解ける。

(3)極値が求められなくても、x = 1/2, 2の傾き、更にはx = 1の二階微分でも形は判断できる。

〔5〕

ガウス記号、区分求積法、はさみうちの原理を使う難問。

(1)

sin関数は負の値も取り得るので、「sin(πn/2N) ≧ 0」を示す記述が必要。

ガウス記号の性質として、「[x +N] = [x] +N」があり、この問題の解として[N sin(πn/2N)] +1 も [N sin(πn/2N) +1]のいずれも正しい。

(3)

0 ≦ x ≦ N なので、πx /2N を「0~π /2を動く角度」と捉える事が出来、sin (πx /2N) の取り得る範囲は「0 ≦ sin (πx /2N) ≦ 1」である。「 n/N (0 ≦ n/N ≦ 1)という形を含む関数の無限級数」 なので区分求積法を想定しよう。

区分求積法ではΣにおけるnの範囲は「0 ≦ n ≦ N -1」もしくは 「1 ≦ n ≦ N」 でなければならない。ここでは後者を選び、Σ式から”+1″を追い出している(“n = 0″ならば”Σ式 = 1″であるため)。

このままではガウス記号があるので区分求積法を使えない。そこでガウス記号の定義「n ≦ x<n+1」を利用して挟み撃ちの原理に持ち込む。これによって不等式の両端のようにガウス記号の無い形にできる。

挟み撃ちの原理で極限を施した後は不等式の両端が同じ式になっている必要があるので、事前にΣの中から”+1″を追い出して”+N”にしておく。この”N”の項は、A(N)で割って極限を施すと0になる。

これによって漸くガウス記号の無い形に持ち込めた。次は区分求積法を適用するために”1/N・Σ”の形にして積分する。

解くためのポイント

答えに辿り着くまでに構想力を必要とされ、類題を解いたことが無ければここまでの誘導があっても難しい。類題を知らなくても解けるように、以下に一般的な知識をまとめた。

  • 「 n/N (0 ≦ n/N ≦ 1)という形を含む関数の無限級数」から区分求積法を連想する。
  • ガウス記号を扱う問題は「n ≦ x < n+1」 の性質を利用する事がしばしばある。挟み撃ちの原理とも、ガウス記号の無い形に変形できるので相性がいい。
  • 極限(特にsin やcosの極限)を扱う問題なら挟み撃ちの原理が解法として有力。

区分求積法の変換について

パスナビの解答例では、区分求積法の計算をするところで、π/2を掛けて、”sin x”をx ( 0 ≦ x ≦ 2π)で積分している。この意味を説明する。

「y = sin (π/2・x)」の場合、元々は0 ≦ x ≦ 1 の範囲を持つxを仮想的にπ/2倍する事でyを算出して、 N分割されたxとyを長方形の底辺×高さとして積を求めてN個を合計している。

これに対して「y = sin x」の場合、0 ≦ x ≦ π/2 の範囲で直接にyを算出するので、xの底辺が先ほどのものよりπ/2倍大きいのだ。 これに応じて面積も π/2倍になる。区分求積法の式で π/2を掛けているのは y = sin x を積分する為なのだ。その代わり、別のところで2/π倍して補正している。

これは置換積分と本質的に同じ操作である。その証拠にt = π/2・x とおいて置換積分すると同じ式が出てくる。ただし区分求積法の置換は一次関数しか対象にできないので原始的な手法といえる。

〔6〕

与えられたたった二つの式を最大限に解釈して解いていくまるでパズルのような問題。難しい点は無いが、解く過程の長い問題だ。

やはり図を描いてそれを確認しながら解くのが良い。初めから概略図を描いておき、解くに連れて修正していこう。

(1)

∠P5P1P2 は極座標表示で (w2 -w1) /(w5 -w1) と表せるので、(Ⅰ)の式を変形すればいい。すると±(tan a)i という実部のない複素数であると分かるので、答えはπ/2である。

同時に、P2P5 は長さ2の円の直径であると分かる。円と π/2 の組み合わせには敏感になるべきだろう。

(2)

(tan a)i をr(cos θ +i sin θ)と比較すると、θ = π/2 なので、r = tan a である。∠P5P1P2 = π/2 且つ P2P1 /P5P1 = tan a だから、 ∠P1P5P2 = a と分かる。

P1P2 = 2 sin a, P1P5 = 2 cos a なので、⊿P1P2P5 = 2(cos a)(sin a)と分かった。

残りの部分の面積も求めよう。

(Ⅱ)で与えられた式の解は、z = (√3 ±i) /2 = cos (π /6) ±i sin (π /6) だ。複素数が方程式の解として現れる。

cos (π /6) -i sin (π /6) = cos (11π /6) +i sin (11π /6) だが、11π /6 という角度はあり得ないので、これが -w4 /w2 である。w4 /w2 = -w4 /w2 * i2 なので ∠P2OP4 = 11π /6 -π = 5π /6 だ。

P1 ~P5 は反時計回りに並んでおり、OP2, OP3, OP4 の長さは1なので、∠P2OP3 = π /6 、∠P3OP4 = 2π /3 、∠P4OP5 = π /6 と分かった。

  • ⊿P1P2P5 = 2(cos a)(sin a) = sin 2a
  • ⊿P2OP3 = 1/4
  • ⊿P3OP4 = 1/2 * 1 * 1 * sin (2π /3) = √3 /4
  • ⊿P4OP5 = 1/2 * 1 * 1 * sin (π /6) = 1/4

(3)

これも、ここまで得られた情報を整理して図を描いておくと良い。

誘導が無くても、 (Ⅰ)の式から∠P5P1P2 を求めるという発想は出てき易い。 (Ⅱ)の式の解を極座標として解釈するのも大事な点。

高校数学 筑波大学2019 (平成31/令和1)年度一般入試問題の解説

〔1〕

正接が平面座標における直線の傾きを表すという性質が利用されている。

(2)

正接の加法定理を利用する。途中式では、t=tanθなどとtanθを置き換えた方が記述が速く、ミスも少ないだろう。6tan3θ+tan2θ-1=0の式は tanθ =1/2を代入してみる試行錯誤が必要。

(3)

ここでも加法定理を使う。2つの直線の傾きが分かっていれば、それらがなす角は加法定理で導けるのだ。

OP, OQ, PQ の長さを三平方の定理で求め、余弦定理でcosαを求め、最終的にtanαを求める事も可能ではあるが計算が煩雑なのでやってはいけない。この大問が三角関数をテーマとしている事を意識しよう。

正接の加法定理は覚えていなくても正弦と余弦の加法定理から求められる。

〔2〕

(1)

式の分母が「a+b+c」となっているので、x/a, y/b, z/c をそのまま演算しても証明に繋がらない。そこで両辺を「a+b+c」で掛けて分子化する。

(3)

不等式の真ん中の数式が複雑だが、(1)と(2)が誘導になっており、それを利用すれば簡単。

真ん中の式が1より大きいことと、2nより小さいことを分けて証明する。

もし誘導がないとしたら、分母と分子の各項が類似している事に着目するのがポイント。

〔3〕

(1)

sやtがあるのに更に未知数を増やすのは気が引けるが、ベクトルOPを異なる方法で表せれば、一次独立の考え方によって上手くキャンセルできる。

その準備として、ベクトルOF, FE, OG, GDをa, b, c で表現する。これによって一次独立の解法を適用できる。

(3)

√3 * OP = OA という条件を(1)で求めた式に適用するには、その式を二乗する事でベクトル式を代数式に変換する必要がある。

もし誘導が無いとすると、t=sに気づくのが一つの難関だろう。その為には図を描いて、想像上でも図を明瞭に認識する事が大事だ。

〔4〕

三角関数のべき乗を積分する際は、加法定理を応用して指数が1の形に変換するのが鉄板。

〔5〕

(1)

f(x) = etとおくと、如何にも平均値の定理を使わせたいという意図が見える問題だ。平均値の定理を使った証明方法はパスナビに掲載されている。

これは後にはさみうちの原理として利用される。出題された不等式が次の条件を満たして入れば、はさみうちの原理に利用するものだと確信して良いだろう。

  • 不等式の両端が同じ値を取り得る
  • 不等式の真ん中の式と、両端の式とが同じ変数を持っている

(2)

数列が指数部に入っており、更にそれが対数の真数に入っており、更にそれが新たな数列を構成している。一見すると難しそうだが、n=1, n=2と具体的に数値を代入してみると案外簡単であると気づく。一見しただけで怖気づいて解答を飛ばすのではなく、試行錯誤してみるべきだ。

どちらかというと、この証明を記述する方が大変だ。東進の解答例のように、n+1の場合を考え、xn+1 + yn+1 = yn を示し、それをzn+1の式に代入するのはエレガントなやり方だ。

zn が定数になるのは一見すると不思議だが、

(x8 – 1) = (x4 – 1) (x4 + 1) = (x2 – 1) (x4 + 1) (x2 + 1) = (x – 1) (x4 + 1) (x2 + 1) (x + 1)

が成り立つのと仕組みは同じだ。

(3)

本試験で最大の難問。

(1)や(2)の考え方をそっくりそのまま利用するので、誘導に素直に従って良い。元の数式は真数が「et + 1」という形なのでそのまま(1)を利用する事は出来ない。そこで(2)を利用して「et – 1」を作っている。

これはもし誘導が無ければ難問だ。znの様な形が定数となる事を知識として持っている必要がある。

〔6〕

(1)

z = a + bi と置いても良いが、|z|2 – 2zz + 4 = (z – 2) (z – 2) = |z – 2|2 となる事を知っていると速い。

もし誘導が無ければ、まずは与式をグラフィカルに表す事を方針とするべきだろう。