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高校数学 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

整数問題はいつもの様に実験によって答えが見えてくる。

(1)

「3を法として2に合同」とは、「3で割った剰余が2である」という意味。

合同式に絶対値記号が含まれているのは見慣れないが、場合分けすればよいだけだ。

3を法とするので、x ≡ 0, 1, 2の3種類に分けて調べていく。合同式は積と和と差が成り立つので、ふつうの方程式の様にx2 -x -23 ≡ 2にx = 0, 1, 2 を代入する事が出来る。

合同式を使えるかが試されたが、そもそも「法」や「合同」の意味が分からず捨ててしまった人も居るかもしれない。しかしこの問題が解けなくても(2)は解けるので大問毎捨ててはいけない。

(2)

(1)で3を法として調べたので、ここでもそれを引き継ぐ。与式が素数であるためには、3で割り切れないことが必要条件というわけだ。

与式にわざわざ絶対値記号が付けられているという事は、その記号の影響を受ける値付近が答えになっていると勘づく。

第2問

(2)

複素数平面を利用しなくても解く方法は色々ある。複素数平面を利用するなら、外接円の中心を原点、Pの座標をzとして、与式を変形していけば自然と解ける。

東進の別解2の様に、Pを劣弧AB上におくとCP = AP +BPが成り立つ事を示す方法もある。ちなみにこの CP = AP +BP は、2018年共通テスト試行調査でも題材になっている。

第3問

(1)

ACはxz平面上、ABはyz平面上にあるので、ベクトルを使うより、平面Hのそれぞれの平面での直線との交点を求めるのが速いだろう。

ACとBCは、座標軸との交点の座標が分かっているので、簡単に方程式を作れる。ACは(3, 0, 0), (0, 0, 4)を通るのでx /3 + z /4 = 1、BCは(0, 3, 0), (0, 0, 4)を通るのでy /3 + z /4 = 1 である。

(2)

同一円周上にある条件の立て方は、方べきの定理以外では困難なようだ。センター試験で頻出だし、P, Q, R, S, Tの配置で思い出しやすい が、東工大数学でこの手の定理を使うのは珍しいかも。

その後は方べきの定理で立てた等式を変形していき「= 0」の形にする事で必要十分条件を抽出する。b = aのグラフだけ書いていても部分点は得られるだろう。

第4問

(2)

斜め回転体は2009年以来の登場。当時は軸が空間上に存在するという難問だったが、今回は標準的なレベル。

「(1)の結果を用いて」と指示してあるが、そのままxで積分してはいけない。積分とは、微小な短冊を「縦×横」で足し合わせる手続きなので、線分または面に垂直な軸での積分が必要だからだ。ただし、軸との傾きによる面積の減少を考慮すれば可能である。それがcos θを使った裏技公式である。

回転軸に座標tを設定して、tとxの関係式を元にt→xへの置換積分を行う。x(2sin x -sin 2x)を積分することになるが、2項に分けて部分積分するよりもそのままの方が速いだろう。

第5問

珍しく一つの大問に4つも小問が与えられている。前年度の第4問の難しさを反省した結果かもしれない。

(1)

ak+2 を部分積分するなら三角関数を変形、akを部分積分するなら xkの方を変形しておく。 どちらも労力は変わらないようだ。

(2)

ak が0に収束しそうなのは与式から分かるが、k ak は不明なので直接に算出できそうにない。ところで、なぜか「限りなく大きくする」という表現をしているが、これは要はlim(k→∞)の事である。極限といえば挟み撃ちの原理であるからこれを使おう。

特性方程式を使えば1に収束すると予想できる。(1)で得た式を k・ak について解くと1とak+2を含む項が出てくるので、ak+2 が0に収束する事を示せばよいと分かる。

さて、ゴツい数式を目の前にして何で挟むかで悩むが、与式にsinが含まれていなければ値が出せるので、0≦sin(πx /2)≦1を利用するのが良さそうだ。ちなみに0≦xk-1≦1 を利用してしまうと、残された式にkが含まれていないので極限を使えなくなる。

要は、与式をlim(k→∞) とした時にak = 0 である事と、(1)の結果とを組み合わせれば良いのだ。

また、東進の別解の様にak の漸化式を解いている途中で出てくる1/kを利用して挟む方法もある。

(3)

一見すると0以外の収束値を持たない様に見えるが、不定形の計算ならば0以外になり得るので∞×0の形に持ち込む。

k・ak の収束値が0ではなく1であるという(2)で示した事実がカギだ。ak を収束させれるkの指数の上限値を示しているからだ。 kの指数が0になるようなm, nの値を探す。

極限に対する理解の深さを問われた良問。難問なので、m -n = 1という必要条件だけでも示せば5点は貰えるだろう。

(4)

これも ∞×0の形に持ち込む。

漸化式をマクローリン展開の様に項数を調整した上で極限を取るという作業が必要だが、この発想は出てこないだろう。

前問に輪をかけて難しい。真面目に記述していたら解答用紙の余白が足りないのでは?これもp -r = 3, q -r = 2という必要条件だけでも示せば5点は貰えるだろう。

高校数学 東京工業大学2012 (平成24)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

センターレベルの易しい問題。

(1)

OCとDEは垂直なので、DEOA, OB, OCで表すとOC の項は0になりそうだが、もしこれが0ならばEはOに一致する。つまり直交座標系とは見做せないのが原因だ。

(2)

要するに目の積が2と5の倍数であれば良いのだから、電数のように、それぞれの事象でベン図を描き、余事象に加法定理を用いるのがエレガント。

数え上げる方法でも数分で答えられてしまうのは流石に出題に工夫がない。

第2問

(1)

与えられた対数の値から3100の桁数は分かるので、これを元にして考察していく。問題自体は簡単なので、論証問題のように扱い、-1 /2についても丁寧に論述すべきだろう。

(2)

ガウス記号が登場しているので、定義通りの不等式を立てるのが常道。そして整数問題は実験が有効だ。

第3問

(2)

簡単な様に見えて意外に計算が厄介な東工大らしい問題。ここまで簡単な問題ばかりだっただけに面喰ってしまうが、それが出題者の狙いなのだろうか。

いかに工夫して計算量を減らせるかが試されている。共有点のx座標をα, βと置くのは定番。さらにS(a)をaで表すと根号が出てきて扱いにくいのでαで表すのが自然だ。

a = 0とならないのが意外なところで、解はa = 38 -27√2 ≒ -0.18である。これは、直線lの回転軸がCの変曲点ではなく原点にあり、そこから遠いほど変位が大きい為だ。答えが出せなくてもこれを説明して-1 /4 < a < 0と書いておくのもアリだ。

第4問

(2)

明らかにパターンに当てはまらない漸化式なので、一般項の予想が必要になる。そして数学的帰納法で証明する。

漸化式に「全ての前項」を参照する級数が含まれているので、ここでは応用的なn≦k型の数学的帰納法を用いる。

(3)

級数と極限の組み合わせと言えば区分求積法である。(2)を答えられなかったとしても予想した一般項で解答できる。

挟み撃ちの原理を使わずに解答しても間違いではないだろう。

第6問

東大理系98年前期[6]で出た四角錐の部分が三角錐になった問題だ。空間認識力が必要とされる。

断面積を求めるとき、正三角形から扇形と二等辺三角形を除くことになるが、その際にθを設定する必要がある。二等辺三角形については三角関数で、扇形はθで面積を求める。

xy平行平面(y = t)で積分するのが自然だろうが、実はMath Stationのようにxz平行平面(z = t)の方が簡単。

類題の経験が無いと難しいが、方針くらいなら書けるだろう。

高校数学 東京工業大学2015 (平成27)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

どの解答例も一般項を推測で導いているのが心もとない。特性方程式を使えるようになっておくべきだ。

(2)

数列問題に特有の「数式を裁量で調整して不等式に合わせる」という技術を要する。これには慣れが必要だ。

Σ(k ak) を計算する上で、anの分母にあるnが足枷になっているので、これを定数に置き換えて不等式を作る。

an = n(6n -1) /(2n -1)を、分母にnを含む項の分子が定数になるように多項式を作ると良い。n→∞ とした時にこの項が0になるわけだ。

上記の解法とは別に、「すべてのnについて」とあるので数学的帰納法でも証明できる。「a1 +2a2 + … +n an」を何度も書くのは手間が掛かるし気が散るので、これをSnと置こう。bn の場合に成立すると仮定して、bn+1 の式を立て、これを bn を含む形に強引に変えて不等式を作るわけだ。

(3)

極限値を求める問題であり、(2)で不等式を証明している事から挟み撃ちの原理を使うと分かる。

(2)の問題文で与えられた不等式から3に収束するのは明らかなので、(1)と(2)が解けなくても堂々と3 < bn を示して挟み撃ちの原理を用いればよい。

第2問

(1)

p, q, r, s, tについて解くので、これらを含むベクトルOH, AH’について注目して、垂直をなすベクトルと内積をとる。さらに、内分点の位置ベクトルを表す為に用いている媒介変数は和が1になるので、p +q +r = 1, s +t = 1だ。

(2)

四面体の高さを求める為に|AH’|2を計算するが、s = t = (2 -x2)/3 はそのまま文字で置いたまま計算した方が、ab = ac =3t/2 と置けるし楽だろう。ちなみにこのxの式は、(1)の誘導を使わなくても余弦定理などで解ける。

x = √2 において四面体が成立する十分条件を満たしている事を示すために図を描くのが手っ取り早い。

OA ⊥ △OBCのときにVは最大になるのは自明なので、(1)が解けなくても部分点は得られる。

第3問

ガウス積分を題材とした難問。こういうのを出してくるのが東工大である。(2)まで解ければ大したものだ。

(1)

これは簡単。

逆関数に変換するのがポイント。「x =」の式では積分できないが、回転体なので「x2 =」で構わないから積分できるわけだ。

バウムクーヘン分割を使えば逆関数にする必要はない。ただし一般的手法ではないので減点されるかも。

(2)

回転体の断面積を求めるが、類例が見られないので自力で構想する必要があるだろう。

「s2 +t2」 の部分が三平方の定理を使って断面積の関数を作るヒントになっている。「三平方の定理を使って断面積の関数を作る」と書いておけば部分点は得られるかも。

右辺が断面積の最大値を表していると気づけば、予想でS(t)を書いておけば部分点は得られるかも。

(3)

体積の平方根と断面積を比較していることから、「Vは S(t)を-a < t < a で積分する事でも得られる」という事に気づくのがカギ。それだけでも部分点狙いで書いておこう。体積が曲線の二重積分である事が学べるが、大学レベルの話だ。

e-x2 を積分するのは高校数学範囲では恐らく無理。

第4問

(1)

θではなく内積を使ってcos θ から求める。cos θ → 0 を求めた後は、0 ≦ θ ≦ π を書こう。

(2)

(1)より簡単なように感じた。

第5問

(1)

a, bをそれぞれ最小公倍数で割ったα, βは互いに素であり、f(a, b) = αβ と書けるのでnの約数と言える。

(2)

aは約数として素数の整数乗は持たない、つまり「異なる素数の積」なのでa =1 だ。どう表現すれば良いか少し悩む。

(3)

整数問題全般で使える事だが、a = 6, b = 10 といった様に具体化してみると一気に見通しが良くなる。

高校数学 東京工業大学2006 (平成18)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

簡単すぎて何を書いていいか分からないタイプの問題だが、積分の途中計算くらいは書くべきだろう。

(2)

不等式の左辺と右辺をそれぞれ証明するよりも、不等式の中の三つの式を一つの座標系に表すのが手っ取り早い。

(3)

ここまでの誘導と積分法をいかに活用して中辺を変形していけるかが試されている。式変形の手順は、誘導の小問の順序と一致している。

中辺と(1)の式を見比べると、sin(at) と積分範囲に関して異なっているので、置換積分する事によって合わせる。積分範囲におけるπ /2の係数を自然数にしたいので、積分範囲を分割する。すると[a] /aともう一つの積分関数が得られる。

次はこの積分関数を(2)の式の形に持ち込みたいのだが、ここが難所である。絶対値記号が付いているし、そもそもcosではなくsinなのだ。[a]が奇数であるという事とsinとcosは位相がπ /2ズレているという事から気づけるかもしれないが、グラフで確認するとよい。

東進の解答の様に、(2)の不等式を(3)の不等式を目標に変形していくというのもアリだ。

解き方が分からなくても、「与式の中辺を(1), (2)の形に変形していく」と方針を書いておけば部分点が得られるだろう。

第2問

(2)

条件(b)は、変数x, yを固定してtの関数と見なし、その最小値がm以上であればよい。その最小値は(1)で求めたわけだが、この誘導が無くても解けるようになっておくべきだろう。

微分を用いて関数の形を調べるときは増減表を書く。電数とMath Stationの解答はどちらも増減表の関数表記に誤りがあるので注意。

領域を示す問題では、境界を含むか否かを示す事を忘れてはならない。

第3問

東工大らしい多変数関数の最大・最小値問題だ。まず和集合の面積の関数式を立て、変数を減らしたり固定してから増減を調べる。

東進の解答のように、正弦曲線の内側の三角形の重心に置き換えるという考え方もある。

以下の証明は数学的な計算を全くしていないが、論証としては成立している。

3つの円盤のPでない共有点をそれぞれX, Y, Zとおくと、∠XPY = ∠YPZ = ∠ZPY = 2π /3 である事は直感的に分かる。この状態から円盤をずらすとPX, PY, PZはいずれも重なりが小さくなる線分は小さくなっていき、重なりが大きくなる線分は大きくなっていくので最初の状態が最大値になると言える。

第4問

(1)

証明すべき内容が対称性を持つので、対称性を意識して式を組み立てるのが筋が良い。

東進の解答のように、K, L, M, Nが各辺の中点であるという性質を利用して中点連結定理を用いるのがエレガントだ。

(2)

三角形を正、二等辺、不等辺三角形に場合分けして証明する必要があるかは意見が分かれるところだが、私は不要だと思う。

(3)

BDの中点をQとしよう。

(1)より、MKLN である。さらに、対称性を利用して MKPQ , PQLN も言える。

この四面体が立方体に収まるという性質を利用している模範解答が多いが、これは証明が必要になるだろう。誘導を利用して解いているのはCFVだ。

高校数学 東京工業大学2007 (平成19)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

東工大らしく未知数だらけの問題で題意を把握しにくい。具体的な数値を入れてみると把握できるようになるし、検算にもなる。

(1)「pmで割り切れるならばpm +1でも割り切れる」という記述はすべきだろう。

第2問

(1)

複素数平面で回転させる方法を思い付きやすいが、tanが直線の傾きを表す事を利用して加法定理を用いる方が速い。実用的な加法定理の使い方だ。

tanのこういう使い方は珍しく感じる。複素数平面の回転の問題もtanを使った方が良いものもありそうだ。

(2)

T(a)を求める為にy = x2 と直線l の共有点を求める。一方のx座標がaと分かっているので因数分解できる。ただし、ここでは解と係数の関係「α +β = -b /a」を使えば速い。

直線と放物線で囲まれた面積を求めるので、お馴染みの1/6公式が使える…というか使わないと計算量が膨大になる。

第3問

点P, Q, Rが正八角形の頂点だけでなく辺上も動くので注意。こういう時は、初めに「ある辺上を動く点は、頂点にあるときに高さが最大になるので面積も最大になる」と書いておけば、後は動点が頂点にあるときだけを論証できるようになる。

この手の論証は詳しく書こうとすると幾らでも詳しく書けるし時間もそれだけ掛かるので、ポイントを押さえておけば減点はされないだろう。

(1)

△PQRの面積を求める方法には、余弦定理を使って外接円の半径を求める方法と、正八角形の頂点同士を結んで格子を作る方法がある。

第4問

(1)

計算が面倒そうで気が引けるが、淡々と解いていけば答えにたどり着く。

(2)

与式fn(x) = an(x -n)(n +1 -x) は単項式なので、x = n, n+1を解に持つ。更にこの二つの解が隣り合う整数である事から、数列に関わっていると予想できる。

隣り合う放物線の共有点は必ずx軸上にある事に気づくのは大事なところなので、求めるべき領域を図示するだけでも部分点が得られるかもしれない。

lim(n→∞)ではSnは0に近づくので、Tn < S0 + S1 +…+Sn < Tn +1 かつlim(n→∞)Tn = lim(n→∞)Tn +1 となる事を示して挟み撃ちの原理で極限を求めるのが一般的なようだが、無限級数で直接求めるのが手っ取り早い。

高校数学 東京工業大学2008 (平成20)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

ex log yの様にeの指数部に対数が含まれている場合は、yx と単純化できる。またlog bs は、bsが真数であるという性質を考えると、log b +log s とせずにそのままにしておいた方が指数関数的な計算がしやすい。

(2)

h log h のh→0の極限は証明しなくてもよい。証明した方が良いのか分からない事は、後回しにして時間が余ったらやれば良い。

第2問

床関数(ガウス)がテーマなので、「定義に基づく不等式」と「挟み撃ちの原理」を使う事を想定しよう。

関数f が存在するせいで、そのままでは極限を求めることはできない。挟み撃ちの原理で代替となる式の極限値を求めるか、関数f を極限を求められるような形に変形する必要がある。

実のところ、この問題では「定義に基づく不等式」と「挟み撃ちの原理」を使わなくても解ける。寧ろカギは場合分けが出来るかという点にある。

一般に、 lim(x→∞)xnはn = 0のときに収束する。{1 /f(ax -7)} -{1 /f(bx +3)} (A式とおく) の極限を求める為に、 xcからxを幾つか分配することになる。この分配の過程で場合分けが必要になるのだ。

a = b とa ≠ bの場合では、A式のxの次数が異なる。故にcの最大値に分岐が生じる。

第3問

確率の問題だという観念に縛られると、代数的な発想が出てこない。「いびつなサイコロ」という時点で確率の要素は薄いと見るべきだ。

相加相乗平均、平方完成、Schwarzの不等式といった不等式の証明に使う様々な武器をふんだんに利用する問題だった。

Schwarzの不等式は便利なのだが、それを使えるという事に気づくのが難しい。ポイントは「2乗の和」や「和の2乗」があるという点だ。

不等式の証明として平方完成を利用する場合は、完全平方式の中身が差の形「(a -b)2」(a,b≥0)となる必要があるので注意。等号成立条件を意識すれば間違えないだろう。

(1)

Schwarzの不等式を利用すると簡潔・エレガントに求められる。この不等式は(2乗→和→積)≧(積→和→2乗) となっているが大小関係を忘れやすい。そんな時は、a1 = b1 = 0, a2 = b2 = 1 を代入してみるとすぐに分かる。

p1 + p2 + … + p6 = 1 となるのは当たり前だが、代数的に処理していく上では重要な式になる。

(2)

相加相乗平均、Schwarzの不等式が使える。

第4問

点Rの座標x, yの関係式を作り、それが楕円の方程式になっている事を示す。R(x, y)は原点Oからの距離や角度により定義されているので、ベクトルや複素数平面の手法が有効だ。

P, Qの座標は自分で設定する必要があるが、直線上にあるのでそれぞれ変数は一つで良いと分かる。原点を通る半直線上にあるので、方向ベクトルで表す。

そして距離と角度の情報を元にR(x, y)を組み立てる。PQ = 1という情報も組み込む。

高校数学 東京工業大学2013 (平成25)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(1)

指数部をnとして数学的帰納法を用いるのが典型的解法。

実はもっと楽な方法がある。αnn -3n = αnn -(α +β)n として、(α +β)n二項定理で展開したものを代入すると各項がαβ = 5の倍数になるのだ。

(2)

パスナビの解答が分かりやすい。

「4個が全て異なる目の場合」×「残り2個がすでに出た目の場合」で計算すると重複が出て上手くいかない。

数え上げでは、「サイコロをグループ分けして順に場合の数を確定して積算する戦法」と「出目が同様に確からしいという性質を利用した特殊(具体)化→一般化戦法」がある。

4個のサイコロの出目が全て異なるような目の組み合わせは6C4 = 15通りなので、この4個のサイコロの出目が1, 2, 3, 4だったと決め打ちして後から15を掛ける。

3個が同じ目になる6個のサイコロの出目の場合(A)と同じ目の2個が2種類になる6個のサイコロの出目の場合(B)は独立事象であるのでそれぞれを足せば求めたい場合の数を得られる。

(A)「3個が同じ目になる場合」を求めて、残りのサイコロの出目の場合を順列で求めて積とする。もしくは、同じ目になる3個の出目が1と決め打ちして、6個の並べ替えを考える。

(B)同じ目となっている2個×2のサイコロにおいて目が1, 2であると決め打ちして、後から4C2 = 6を掛ける。 そして6個の並べ替えを考える…もしくは 1の目が出るサイコロのパターンを確定して、次に2の目が出るサイコロのパターンを確定し、最後に残りの目の並べ替えをする。

第3問

かなりの難問と言われているが、単純な関数が題材なのでグラフが予想しやすく、道筋も一直線なので実は簡単だ。増減の厳密な評価に拘らず答えを書けば大きな得点が得られるだろう。

f‘(x) の増減は指数関数だから分かり難いので、e(ex -1 -xe -1)としてカッコ内の各項の対数を取った関数を評価するという手法がある。もっと自然なのは ex(1 -e1 -x xe -1)としてカッコ内を微分する。

第4問

私はこれが今年度最大の難問だと思う。不等式を単位円で処理するという方法の着想が必要だ。sin(4nx)≧sin x は加法定理を駆使してもnが含まれているので纏まらないのだ。

求めたいのは三角関数の値ではなくxの値(つまり角度)なので、グラフ(直交座標系)より単位円(極座標系)の方が相性がいい。 加えて、nをどれだけ大きくしても-1≦sin(4nx)≦1であり、特にxが定義域の最大値なら常にsin(4nx) = 0という点に着目すると単位円で考えるのが筋が良いと分かる。

その後の立式も慎重にする必要があるので経験が無いと難しい。nが1増すと4nxは単位円を一周するので、xの区間が一つ増えると分かる(グラフからも読み取れる)。

方針が立たなくても、n = 3くらいの時の図を描くとS = π /8に収束しそうな雰囲気があるので、予想だけでも書いておけば5点くらいは得られるかも。

第5問

(1)

楕円の横半径は1で定まっているので、縦半径を想像でビヨーンと伸縮させてみると、縦半径がある値以上になると接点が(1, 0)になるのが分かる。イメージしないと気づかずa = b√(1 -b2)だけ書いてしまうだろう。

この場合分けの計算が繊細なので避けたい。グラフでa = 1 /2となる条件を概説して、共有点が一つになる条件式を立てれば楽になりそうだ…満点が得られるかは分からないが。

(3)

p = 1 /√2 なので、楕円を半径1の円に戻したときにOPの偏角はπ /4になるのを利用すると積分計算が不要になり劇的に速くなる。

最後の√13 /12 -2 /27 の計算が面倒だが、模範解答によると計算せずそのままでも良い。

高校数学 東京工業大学2014 (平成26)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

(2)

an -bnを表すnの多項式を愚直に展開していくと面倒なので、因数を保持したまま解き進めていきたい。ここでヒントになるのが(1)で示した6の倍数の十分条件で、これを使うと上手く証明できる。

ある式がn倍数である事の証明は、連続する整数の積で表す方法を使うのが一般的だ。

第2問

(1)

f(t) = et, g(t) = 1 +t et /2 と分けて大小比較する方法も思いつくが、グラフで表して考察するときは便利だが、この場合はg(t) をグラフ化しにくいので筋が悪い。

一階微分では傾き具合が分からないので、tの定義域端での値が0である事と二階微分での増減から単調関数である事を証明する。二階微分しても関数が相変わらず複雑であっても、tの定義域端での値が0 なら方向性は正しいと信じてよいだろう。

この問題を解けばa = 2が範囲の境界であると分かるので、(2)で場合分けする際の目安になる。

(2)

a > 2 の場合は与式と比べれば計算するまでもない。

誘導の(1)が無ければ、aの境界を自力で探る必要があるので手ごたえのある面白い問題になっただろう。カギはlog (1 -a)の符号が変わるaの範囲である。

第5問

微積の問題だが、「解と係数の関係」とβ関数を使って微積の計算を一切せずにすべての答えを出せる!

(1)

共有点を求める式は、曲線Cが接線とxk -1で接しているので、(x – xk -1)2 という因数を含んでいる。

そして電数の解答の様に、3次関数と接線の接点以外の共有点であれば、3次関数の解と係数の関係「α +β +γ = −b /a」を用いてxk の値を得られる。 接線の方程式を求めたり複雑な因数分解を回避できる凄いテクニックだ。

求積にはβ関数の公式を使える。

(2)

x0 = 1を出発点として、それに続くxk が次々と決まっていく様をイメージすると、数列を形成する事が分かる。

これも電数の解答の様に、(1)と同じく接線の方程式を求めたり複雑な因数分解をせずにxkの漸化式を得られる。

(1)で扱ったC上の点(1, 3)はk = 0に相当するので、等比数列の公式の次数は「k -1」ではなく「k」となるので注意。

(3)

何はともあれSk の一般項を求める必要がある。立式には(1)で行った手順を使うが、積分区間として現れるxk とxk -1を置き換えるのが(2)で求めたxkの一般項だ。

高校数学 東京工業大学2016 (平成28)年度 前期入試問題の解説

第1問

(1)三平方の定理でPQ2の式を立て、微分で極小値を求めるのが王道。それ以外の解法として、PQがC1の法線となる事を利用する事も出来るが、法線となる場合に最小値を取ることを証明する必要があるかもしれない。

(2)こちらの小問の方が易しい様に思える。

第2問

(1)簡単すぎて何を記述すればいいのか困るが、「△BPR ≡ △CQP ≡ △ ARQ」という必要十分条件くらいは書いておいた方が良さそうだ。

(2)対称性に着目して、T1とT2が正三角形になる場合の数を調べ、3C2倍する。

(3)多変数関数の最小値を求める問題として解くのが王道のようだ。三角形の底辺と高さがより小さいものの面積を求めるパスナビの解法もアリだろう。

第3問

(1)これは(2)への強力な誘導であり、これが無ければこの大問は「やや難」だろう。いずれにしても、軌跡を如何にして立式するかが大事だ。

(2)r1 = r2 のとき、軌跡は直線となる。 r1 ≠ r2 のとき、 P1, P2 との距離の比が一定なので「アポロニウスの円」となるが、自明なものとして扱っていいか分からないので立式した方が無難だ。

第4問

東進はこの大問を「やや難」と評価したように、今年度最大の難問である。また2011年AOでも同様の問題が出題された。

難しいのは(2)だが、具体的な数で試行錯誤すれば何を証明するべきかは見えてくる。

第5問

1989年度でも外サイクロイドが出題されたが、こちらの方が易しい。

(1)3倍角の公式を憶えていると速い。増減表の記述は必須だが、媒介変数tは定義域両端と導関数が0になる値を書けば十分。

(2)n次の三角関数の積分は、加法定理を用いて次数を下げるのが速い。

高校数学 東京工業大学2010 (平成22)年度 前期入試問題の解説

Math Station の解答

〔1〕

(1)

0 < x < π /2で単調減少、π /2 < x < π で単調増加する事も記述しておくと丁寧だ。

(2)

これは問題文の「sin αの式で表せ」の意味が紛らわしいが、sin α を含む項のみによって式を記述するということ事だ。

(3)

αの推定範囲を絞り込んでから、Jをαの関数として評価する。この範囲内で減少関数である事に注意。

f(α) = 0 という性質を利用するとJ = 2 sin α という単純な式になるという(2)の誘導を利用しているが、この誘導が無いと気づきにくいだろう。 もし誘導が無ければ、√2という値から連想して、sin やcos にある角度を代入するとJがこのような値になると予想しよう。

〔2〕

Math Station の解答が分かりやすい。

ガウス記号と来れば、[x] ≤ x < [x] +1 ⇔ x−1 < [x] ≤ x を連想できなければならない。

√(a +1) -1 < x ≦ √a に於いて解の無いaを求めるコツは、左辺とxが等号なしの不等号の関係になっているのを利用する事。左辺を整数にする事でxが整数になる余地を奪うという訳だ。また、漸化式の様に両辺の係数や指数を同じになるように整えるのもコツだ。

(3)は(1), (2)の誘導によって一般項が想像し易くなっている。誘導が無くてもこうやって具体的な項を求めてみる事が大事だ。

与式の「解を持たない」値を元に無限級数を求めるというユニークな問題。 短い数式とその奥深さのギャップが面白い。

〔4〕

今年度最大の難問。

与えられた条件を汲み取りにくいが、点Qは任意の点を意味するので取り得る範囲全てで成立する条件を図示する。そこでAQ = tAP (0 ≦ t ≦ 2)と立式する。

結論の式を代数的に整理していくと、”x2 +y2“という形式から円の式を含む事が分かる。複素数平面もそうだが、この手の問題はx, y の形式から見定めて円や直線の式を強引に作るのが良い。そしてそれらの式を崩さずに処理していく。東進とMath Station で円の式の形(中心位置)が異なるが、いずれも答えを出せている。

Math Station の解答で「f(t)≧0 ⇔ f(0)≧0∧f(2)≧0 」と置き換えられる理由は、 f(t)≧0 が「0≦t≦2を満たす全てのtで f(t)≧0」を表しているからだ。 f(t)の傾きである”x2 +y2 -2ax”は正負がxにより変化するので、tの定義域の両端のどちらで最小値を取るか決まっていないので論理積にする。

条件式の分母に0を取り得るOQがあるから、OQ = 0となる領域を除外する。

角の二等分線を使った解法

ちなみに、内外角の二等分線の性質を使って平面図形の問題として解くことも出来る。

  • Pが中心(a /2, 0)、半径a /2の円周上にある場合、OPが△OAQの内角の二等分線だとすると、t = 2 のままQをA側に動かすと結論に反する。
  • x < 0 の場合、OPが△OAQの外角の二等分線だとすると、QをA側に動かすと結論に反する。

この方法は、点を移動するとQP /OQ > AP /OA となる事を証明する必要があるだろう。