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高校物理 東京工業大学2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

(a)

O’を原点とする単位円を考えると、O’P上の万有引力は負であるから、そのx成分も負号を付ける。

(b)

問題の題材が単振動である事を見抜くコツは、「物体にかかる力が、ある地点からの距離に比例する」という点に気づく事だ。一般的には誘導によって気付かせるようになっている筈だ。

(c)

「振動中心での速さ = 振幅×角振動数」を用いると速い。

(e)

ここでも「振動中心での速さ = 振幅×角振動数」を用いてXP = vP‘ /ω, XQ = vQ‘ /ωとすると速い。

(h)

弾性エネルギーと動摩擦力がした仕事との間でエネルギーの原理の式を立てる方法と、小物体Pの運動方程式からPが単振動をする事を示して振動中心の等式を立てる方法がある。

〔2〕

(a)

「重力 = 質量 ×重力場」と同じように「静電気力 = 電気量 ×電場」が成り立つ。同様に「磁気力 = 磁気量 ×磁場」も成り立つ。

(b)

xの値によって弾性力の符号が変わるのが難しいところ。こういう場合は具体的に位置を設定して立式してみよう。

(e, f)

ここまでの誘導問題が解けなくても感覚的に解ける。

〔3〕

(c)

ポアソンの式は、ある気体の断熱変化について述べたものだ。したがって、状態Aの気体全体にこの式を適用する事は出来ない…状態Bへの過程で気体の一部が失われているからだ。そこで、状態Aの気体の中で、状態Bと等しい物質量の部分の断熱変化に適用する。

証明すべき式から逆算してPVγの形を復元する方法も有効だ。

(d)

問題文から、x = h1 /P0 やx = h2 /P0 と置くと良いと分かる。後は試行錯誤して近似式の形を作る。

どの近似式を採用するかで近似方法は幾つかに分かれるが、近似計算に慣れてないと難しい。東工大は近似計算の問題が多いので鍛えておこう。

(e, f, g)

ここまでの問題とあまり脈絡がないし、急に簡単になっているので、この答えで本当に良いのかと疑ってしまう。

こういう事もあるから、終盤の設問でも考えてみよう。

高校化学 東京工業大学2015 (平成27)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • 3.SiO2は水とは反応しないが、塩基と反応してケイ酸塩を生じるので酸性酸化物である
  • 5.SiO2 +6HF(aq) → H2SiF6 +2H2O

〔2〕

  • ア.アルカリ金属とアルカリ土類金属以外はOHと結合して沈殿する。
  • ウ.AgOHは不安定なのでAg2Oの褐色沈澱に変化する。
  • エオ.錯イオンになる金属は、OH配位子が両性金属、 NH3がAg, Cu, Zn である。
  • カ. Fe(OH)2は淡緑色、Fe(OH)3は赤褐色。

〔3〕

体積の値は与えられているので「原子1個の質量 × 格子内の粒子数」が分かればいい。原子1個の質量は「原子量 /NA」で求められるので、原子1個の体積を計算する必要はない。

意外にもCuの原子半径が最も小さい。

〔5〕

5番はデータを見ると明らかに最も沈殿しにくいと判断できるので、計算するまでもなく正解の一つと分かる。

そうなれば、あと一つ沈殿しないものを見つければ残りの水溶液について計算する必要はないので、5番の次に沈殿しにくそうなものをデータから探し出す。すると3番と4番だけを調べればよいと分かる。

第II問

〔6〕

  • 1.イオン化エネルギーはアルカリ金属において最も小さくなるが、負にはならない。
  • 3.いずれも電子配置は同じだが、陽子との引力が最も弱いのはO2- である。
  • 4.半径が大きいほど電子と陽子の引力は弱くなる。

〔7〕

  • 3. Fe(OH)3 は親水基を持たないので疎水コロイドである。構造上は分散コロイド。
  • 6.ブラウン運動は分散質が熱運動する分散媒から押されて動く現象。

〔9〕

温度が一定ならば平衡定数は不変であるという性質を利用して、状態I, IIを等式で結ぶ。 等式を作ったら、[X2] = [Y2] なので両辺の平方根を得る事が有効になる。

実験2でXYを追加したことでX2, Y2とXYの濃度は変化したが、この濃度は パスナビの様に [X2] = [Y2] = n -A /2 +α /2, [XY] = A +B -αと差の形で表せる一方、 [X2] = [Y2] = n -A /2 +(1 -t)B /2, [XY] = A +tB と割合で表しても解ける。

〔10〕

(ii)

水を追加したことで塩の溶解度が増え、溶液は更に吸熱された。難しいのは、この吸熱によって溶解度が下がっている事だ。溶解度を25℃の場合として設定できないので、ここではtと置く。

水の量が100gから200gへと条件が変わっているので、40℃だったときからの吸熱量を求める事は難しい。よって25℃のときからの変化を立式していく。

難問だが、問iは30,問2は20と切りの良い数値が答えなので、解けなくても切りの良い値を適当に書いておくのは有効かも。

第III問

〔11〕

  • 1.CaOは塩基性酸化物なので、Ca(OH)2に変化する点に注意。
  • 4.130~140℃で分子間脱水によりジエチルエーテル、160~170℃で分子内脱水によりエチレンが生成する。
  • 6.酢酸ビニル(E)を加水分解するとビニルアルコールと酢酸(G)が出来るが、ビニルアルコールはケトエノール互変異性によりアセトアルデヒドに変わる。アセトアルデヒドはヨードホルム反応陽性なので、ヨードホルムCHI3とギ酸ナトリウムが生じる。

〔12〕

  • 1.スルホン酸とカルボン酸は炭酸より強い酸である。
  • 4.アルデヒド基を持つものはない。

〔13〕

1.断りが無ければ幾何異性体と光学異性体も全て数え上げる必要がある。

〔14〕

化合物Aは3-ヒドロキシプロピオン酸または乳酸である。

環状化合物の混合物と鎖状化合物の混合物はそれぞれ、各分子の重合度が不明だが、こういう問題は平均分子量で処理していく。環状・鎖状化合物の平均重合度と物質量について、x, y, m, nのように未知数を四つも設定する必要があるので気が引けるのが難しいところだろう。

この問題も難問だが切りの良い値が答えになっている。

高校物理 東京工業大学2015 (平成27)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

u とvは書き分け難いので同じ問題中で文字として指定するのはセンスがない。

(a)

錘Aが円運動をしているという事は、Aにかかる力(遠心力, 張力, 重力)の半径方向の合力は向心力となる。

(c)

運動方程式はある物体にかかる力を記述するものである。その事に注意すると、F1, F2 はそれぞれ「錘A ,Bが棒Sに対して掛ける力」であるので、作用反作用の法則を考えて「棒S が錘A ,B に対して掛ける力」は -F1, -F2 となる。

力の作用を書き込んだ図では、力が掛かっている物体がどれなのか明示しておく習慣を付けておくと、この様な問題で勘違いする事が無くなるだろう。

(d)

m < M なので、0 < θ < π では a < 0であると確認できる。

(f)

u -v = u’ -v’ ⇔ (u’ -v’) /(u -v) = 1 なので反発係数は1であり、力学的エネルギーが保存されていると分かる。

(g)

回転子Rが台に固定している様子を想像すると、物体Cが衝突したときに台にまで衝撃が及ぶと分かる。つまり力積が台に吸収されているのだ。

釘も含んだ運動量保存則の式を立式するのが手っ取り早い。

(h)

錘A, B両者の運動・位置エネルギーの合計が力学的エネルギーとなる。各錘の位置エネルギーの最大・最小値が入れ替わるという面白い問題。

〔2〕

(a)

E = Q /εS の公式を憶えていれば速い。

(c)

電場と重力場という二つの場の非接触力が働いている。

(f)

極板を上昇させる事で装置が右に動き、それに伴い極板も右に動くので新たにローレンツ力が働く。ローレンツ力の連鎖がテーマであるが、実験の様子をイメージしないと気づきにくい。

F = qvB を使う方法が思い付きやすいが、 「装置が得た運動エネルギー = 張力の増分 ×z」 という力学的エネルギー保存の法則を利用する方法もある。

(g)

放電回路については、大問の説明文に「鉛直に置かれた」と定義されているので(d)で調べたジュール熱以外の物理現象が生じると予想できる。

放電回路を流れる電流が電磁力を生み出すので、今度は公式F = IBl を使う。

(h)

物理学ではMKS単位系を使う。

〔3〕

センター試験レベルなので全問正解したいところ。

(j)球面波は波源の断面が連続的でなく縦軸対称となっているので、yが負の領域では定常波になる。

高校化学 東京工業大学2017 (平成29)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • 1.クーロン力はイオン価数と結合距離に依存する。
  • 6.説明文はモル質量を指している。用語の厳密な定義を問われている。
  • 7.理想気体では体積は等しいが、実在気体では分子間力があるのでH2の方が大きい。東工大は断りが無ければ気体を実在気体として扱うという方針の様だ。

〔2〕

  • 1.温度を下げる事で、活性化エネルギー以上のエネルギーを持つ分子が減るので反応速度が下がる。
  • 2.反応速度はv = k[A]m[B]n のように表されて、速度定数は濃度ではなく温度に依存する。
  • 4.触媒により活性化エネルギーが小さくなるので、正反応と逆反応はいずれも活発化する。その結果、平衡へ早く達する。
  • 5.圧力が上がると分子同士が衝突しやすくなるので反応速度は上がり得る。
  • 6.活性化エネルギーを超えるエネルギーを持つ分子が2倍になった時に反応速度が2倍になる。

〔3〕

「反応熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和) 」を使いたいところだが、与えられているのは燃焼熱。

問題自体は簡単だが、熱化学方程式の計算に時間が掛かる。計算する前に選択肢を読んで絞り込んでおけば、一部を計算せずに解答を確定できて時短になる。

〔4〕

東工大にしては気前よく体積や温度の数値が計算しやすいものに設定されている…と思ったら、「分圧比 = 物質量比」を使い体積や温度を使わずに計算した方が速い。まるで引っ掛けだ。

等積・等温の混合気体の問題では 「分圧比 = 物質量比」を使おう。この問題では一度、温度が変化しているので紛らわしい。

〔5〕

ヘンリーの法則に関する問題だが、「体積と圧力の関係」という発展的な内容を扱っている。

状態方程式によると「V ∝ n /P」なので、圧力がいくつであっても、溶媒に溶解する気体の体積は一定である(物質量は圧力に比例する)。これは

これを問題文で与えられた文字で当てはめると、圧力はP0またはPであっても溶解する気体の体積はV0V1 /2 だという事だ。

気体が水に全く溶けない(V0 = 0)と仮定すると検算になる。

第II問

〔6〕

  • 1.Rb, Csの炎色反応なんて誰も知らないだろう。ちなみに第二族元素は放射性元素のRa(第7周期)も洋紅色の炎色反応を示す。
  • 3.原子半径が大きいほどイオンのクーロン力が小さくなるので電気陰性度とイオン化エネルギーが小さくなる。それにしても「イオン化エネルギー」という表現では陰・陽イオンのどちらを指すのか分からないので直すべきだ。
  • 4.硫黄の3種類の同素体が有名だが、WikipediaにあるようにS, P, Oの同素体は意外といっぱいある。
  • 5.共有結合結晶としてdaiamond、黒鉛、Si, SiO2が挙げられる。黒鉛の原子は自由電子を持つため電気伝導性がある。それ以外は価電子が全て共有結合に使われている。その中でSiはクーロン力が小さい為に結合が脆く、僅かに電気伝導性がある。

〔7〕

  • ア.「石灰」の字が入っている物質にはCaが含まれる。
  • イ.Siの単体は天然には存在しないため、ケイ砂(SiO2)をコークスとともに加熱して粗製のSiが生産されている。
  • ウ.「2NaCl +H2SO4 → Na2SO4 +2HCl」とならない仕組みは、弱酸遊離反応と同じだ。 NaClとH2SO4 だとHClが遊離するが、NaHSO4とHCl では後者の方が酸性が強いので反応しない。
  • オ.硫酸の工業的製法「接触法」の過程の一つ。二硫化物イオンはS22- である。
  • 1.塩基性酸化物には金属が含まれるのでA, D, Eに絞られる。
  • 2.有色気体はF2, Cl2, NO2, O3 に限られる。ハロゲンの単体は有色だが、水素と結合すると無色になる。ドライフルーツの風味はSO2にも由来している。

〔8〕

  • ア.AgCl, PbClの(ともに白色)沈殿を生じる。
  • イ.Cu2+, Ag+, Pb2+, Zn2+ がS2- と反応して黒色沈殿(ZnSは白)するが、Zn2+は中性・塩基性条件下のみ。
  • ウ.H2Sは還元剤なのでFe3+をFe2+ にしてしまうので、H2Sを除いて酸化剤の希硝酸を入れて再びFe3+にしている。塩基によって両性金属、Cu2+, Ag+, Fe3+は沈殿し、さらにNH3と錯イオンを作るのがZn2+, Cu2+, Ag+ だ。
  • 1.希硫酸と反応して沈殿を生じるのはCa2+(石膏に含まれる), Pb2+(鉛蓄電池で析出)。
  • 2.クロム酸カリウムやヨウ化カリウムと反応して黄色沈殿を生じる。
  • 6.アルカリ土類金属は CO32- やSO42-と反応して沈殿する。

〔9〕

高純度のNaOHを生産する陽イオン交換膜法が題材。

陰極側では、イオン化傾向がNaよりH2 の方が小さいのでH2Oが分解されH2が発生する。ゆえにOHが多くなる。

陽極側では電解により陽イオンが多くなり、 陰極側では陰イオンが多くなる。陽極側のNa+がクーロン力により交換膜を通り陰極側に行くので陰極側のNaOH濃度が高まるのだ。

〔10〕

球の体積は4πr3 /3 である。初めに単位格子の辺の長さ、M+ , X の半径を 6*108で割っておくと計算が楽だ。

第III問

〔11〕

  • 1.アルカンは標準状態ではC5以上は液体、C18以上で固体だ。
  • 2.アルケンまたは環式アルカンがCnH2n となる。
  • 4.題意が不明瞭。例えばシクロプロパンの置換体も二重結合した化学式を考慮すれば構造異性体が存在する。

〔12〕

  • 3.アルコールのOH基は分極しているので水素結合をし易く、これが分子間力を齎す。アルコール級数が大きくなると近くの官能基が邪魔になり水素結合し難くなるので沸点が低い傾向がある。
  • 4.KMnO4は第一級アルコールをアルデヒドやカルボキシ基に、第二級アルコールをケトンに酸化する。この酸化還元反応によりMnO2の黒色沈殿を生じる。

〔13〕

  • エ.石油を分留すると、沸点の低い物から石油ガス、ナフサ(粗製ガソリン)、灯油、軽油、重油が得られる。
  • 1.ポリアクリロニトリルは毛糸の製造などに使われるが、燃焼すると猛毒のHCNが発生する。
  • 2.ポリ塩化ビニルは文字通りビニールと呼ばれるものの材料になっている。他にも消しゴムや水道管にも利用されており、吸水性はない。
  • 3.ダイオキシン類は塩素を含む物質の不完全燃焼や、薬品類の合成の際、意図しない副合成物として生成する。
  • 4.ナイロン6は、ε-カプロラクタムのアミド結合を開環したもの。
  • 5.高圧下では分岐の多い低密度のポリエチレンが出来る。
  • 6.主な熱硬化性樹脂はホルムアルデヒドの付加縮合を必要とする。

〔15〕

易しい構造決定問題。

FeCl3 水溶液はフェノール類を加えると、フェノールは紫色、o-クレゾールは青色、サリチル酸は赤紫色になる。従って(ウ)よりBはフェノールだと分かるが、実は色を憶えていなくても、炭素数6という事はベンゼン環以外に炭素原子を持たないので特定できる。

ゆえにBはエステル結合をしていたと分かる。

αアミノ酸はproline以外は中心の炭素原子にH, NH2, COOHの官能基を必ず持っている。Cは不斉炭素原子を持たないので側鎖はHである。よってCは炭素数2。

加水分解されたDは等電点3.2なので側鎖にカルボキシ基を含む。五員環なので、このカルボキシ基とアミド基がアミド結合したのがDであり、Dはカルボキシ基を一つ持つと分かる。ゆえにAの端の部分を構成する。

高校物理 東京工業大学2017 (平成29)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

(b)

円柱の単振動の弾性力は「浮力 -重力」なのでρS(L -x)g -(2 /3・ρSL)g と立式出来る。

(d)

時間に関する情報が与えられていないので、等加速度運動の公式「v -v0 = 2ax」を用いると速い。

(e)

図2(i)の円柱の位置では速度が0なので、ここを振動の端にしたいところだが、これが引っ掛けなのだ。(b)の弾性力の式の浮力の項は、xが小さいほど浮力が大きくなるという一次関数になっているのだが、円柱上面が液面より下になる場合には成立しない。単振動には色々な種類があるが、二つの向かい合う力の強さが連続的に変化して交互に入れ替わるという点で共通している。

結局、(ii)と(iii)の状態を比べてエネルギー保存則の式を立てることになる。

(ii)の状態は速度が0ではないので、単振動の端ではない。この単振動の振幅は更に大きいのだが、この実験では現れないのだ。(ii)と(iii)はどちらも単振動の端や中心ではないが、速さと位置の情報があればエネルギー保存則を立式できる。

(g)

(f)で求めた張力Tは距離xの一次関数であり、求めたい仕事は「力×距離」で表されるので、Tをx(0 ~ L /3)で積分すればよい。

「外部からした仕事」という不自然な表現から、以降の小問がエネルギー保存則を利用すると推測できる。

〔2〕

(a)

磁場中にある棒には電源によって電流が流れているので、電磁力が発生する。

棒が乗っているレールはθ rad傾いているので、重力と電磁力も影響を受ける。以降の小問では、レールの傾きに常に注意する必要がある。

(c)

(a)と同じように力が釣り合っているが、今度は棒が動いているので電磁誘導も発生している。(b)でI1 が減少したので電磁力が弱まり棒が転がり始めたが、加速する事により電磁誘導でI1 が増加したのだ。

磁場が生み出す力は電磁力(またの名をローレンツ力)しかない。棒をvの正方向に引っ張る力はmg sin θで不変なので、電磁力とI1 が再び(a)と同じ量になったということだ。棒の速度が一定なら、重力と電磁力が釣り合っているという事だから、電流も常に一定と言えるのだ。

ここで二つの回路方程式を立てれば、I2と v1 が分かる。

(e)

考え方は簡単だが、I2 の定義された向きとは逆に電流が流れるので注意。図を書いておけばミスはなくなるだろう。

(f, g, h)

ここまで求めた値を比較してグラフを選ぶ問題だが、値が求められなかったとしても雰囲気で絞り込める。

(h)は雰囲気で選ぶのは難しいが、I1 とI2が通る導線は並列なので、棒が減速するにつれて誘導起電力が減るとI2 も減る。

〔3〕

(a)

(ア)速度(velocity)はvector、速さ(speed)はscalarである点に注意。日頃から区別していないと分からない。偶然にも英語の頭文字が対応しているので、これを知っていれば間違えることはない。速度はvectorなので計算する上で都合がいいのでよく用いられる。

(b)

問題文で「u2を無視する近似を使う」と書かれている事から、計算過程で速度の2乗を使うと分かる。そこから運動エネルギーを立式すると推測できる。

気体分子の衝突後の速度の計算では、反発係数の式を利用して「1 = -(v’ -u) /(v -u)」と立式する。反発係数が1という事は、衝突前後で運動エネルギーの総和が等しい筈だ。ピストンの速度は衝突後に増加する筈だが変わっていないという事は、外部から抑え込む力が加わったことを示している。ここから運動エネルギーの総和の総和が減少していると言える。

(c)

(b)を誘導として、(1分子の仕事) ×(1分子がΔtの間にピストンに衝突する回数) ×(N個)として求める。

(d)

(c)を誘導として「圧力 = 仕事 /距離 /面積」で計算すれば瞬殺。

前問を誘導とする問が多いので前問に注目するのが良い。前問を誘導としているがそれが解けなかった場合、「前問の解をxとする」のようにして立式しておけば部分点が得られるだろう。

(e)

熱力学第1法則にはWを外力とする場合(ΔU = Q +W)と気体の仕事とする場合(Q = ΔU +W)がある。ここでは後者である。

与えられた記号から、W = p ΔV, ΔU = 3nR ΔT /2 を連想し、熱力学第1法則で立式する。

(f)

計算不要の簡単な問題なので、他の小問が難しくても解いておこう。

(g)

問題設定は少し複雑に見えるが、断熱変化なので内部エネルギーの変位を求めればよいだけだ。両領域とも物質量と温度は同じになっているので、内部エネルギーの変位はどちらも3nR(T’ -T0) /2 である。

(h)

T’ = TAなので、TA を使わずに解答できてしまうので良い問題ではない。

高校化学 東京工業大学2014 (平成26)年度 前期入試問題の解説

第I問

〔1〕

  • (1)ハロゲンは原子価が1なので、1価の陰イオンに最もなり易い族である。つまり単原子分子の状態よりイオンの状態を好むのだが、ハロゲンの間でも小さい周期の方が電気陰性度が高いので、KBrからKClに入れ替わる。
  • (2)O3 は強い酸化力を持つので、KIを酸化してI2の単体を生じさせる。このI2 がデンプンと反応して青紫色を呈する。但しAは臭素なので誤り。
  • (5)KIは標準状態では反応が起きないのでエネルギーを与える必要がある。ただし原子間結合を完全に断ち切らずとも活性化状態になれば反応が進むので、結合エネルギーより少ないエネルギーを与えればよい。

〔2〕

  • (イ)刺激臭を持つ気体(分子量)はCl2(71), HCl(36), NH3(17), NO2(46), SO2(64), HF(20) の6つだが、 Cl2 は黄緑、NO2 は赤褐色なので除外。空気の平均分子量は29なので NH3(17), HF(20) が残る。
  • (ウ)石灰水とCO2 の反応だ。錯イオンの生成過程にも似ているが、AがNaOHでもNH3でも無い事、炎色反応、「通じる」という奇妙な表現から違いに気づける。炎色反応は、アルカリ金属ではCaは橙赤、Srは紅、Baは黄緑。
  • (2)N2, H2 を Fe3O4を触媒として高圧下(低温でも可能)で反応させてNH3 を作るのがハーバーボッシュ法。
  • (3)Ca(OH)2 は溶解時に発熱することが原因で温度を上げると溶解度が下がる。温度を上げると溶解度が上がるのは一般的なので疑うべき問題文だ。
  • (4)H2CO3はH2OとCO2 に分解する。

〔3〕

問i

酢酸の物質量は0.01mol、NaOHはV *10-4mol となり大小関係が不明だが、pHの範囲が3.5~5.0なので酢酸の方が多いと分かる。

ちなみに、緩衝液は弱酸(塩基)とその塩の混合溶液から成り立つので、NaOHが多いと緩衝液にはならない。緩衝作用の本質はルシャトリエの原理によるH+(OH)の電離の抑制にあるが、強酸(塩基)は電離度が1なのでこれが持つH+(OH)の電離を抑えられない為だ。

電離定数は、水溶液中のあるイオンのモル濃度が変わっても一定なので、 [CH3COOH]と[ CH3COO] を Kaの式に代入する事で[H+]が分かる。

問ii

和が最小になるのは緩衝作用が最強の場合な(札幌医科大の資料)ので、[HA] = [A]を満たす。pHの選択肢は3桁だが、どれも2桁目が異なるので3桁で計算していけば十分。

体積は [HA] = [A] を利用する。

〔4〕

電池の仕組みと電気分解を組み合わせた問題。

問i

電子が流れ込んでくる極板は、電解槽では陰極、電池では正極だ。

問ii

密度とは硫酸ではなく水溶液全体を指している。

第II問

〔5〕

(5)強酸・強塩基の溶解熱は発熱である

〔6〕

問i

熱化学方程式は、どの項を1 mol として立式するかがカギだ。燃焼熱は燃焼させたい分子、生成熱は生成させたい分子を1 molとする。

問ii

  • (1)反応熱(kJ /mol)は、一般に25℃、105Pa という条件下でのものを指す。つまり温度や圧力が異なれば、反応熱は別の値になるのだ。これは反応に用いられる物質の運動エネルギーが異なる事を考えれば自然なことだ。
  • (2)イオン化傾向はAl > Fe であり、酸化物の安定性はAlの方が高い。またテルミット反応では2Al +Fe2O3 → Al2O3 +2Fe の過程で激しい熱と光を生じるので、アルミナの生成熱の方が大きいと分かる。

〔7〕

水の分圧を状態方程式を使って求め、飽和蒸気圧と比較するようにしよう。

〔8〕

この手の問題は、物質の状態が温度変化と共に変わる様をイメージするのが良い。

問i

溶解度曲線をイメージすると解きやすい。

問ii

水溶液の温度を下げていって氷が析出した事で、溶解平衡の状態になった。これによりモル凝固点降下の式に当てはめる事が出来るのだ。

モル凝固点降下は Kf = Δtf・kg /mol で表される。しかしこれは唯の係数なので変形して、モル凝固点降下度Δtf = Kf・mol /kg とした方が”mol /kg”が質量モル濃度を表しているので分かりやすい。

とにかく計算が面倒。

問iii

状態Cは気液平衡なのでモル沸点上昇の式に当てはめる事が出来る。

モル沸点上昇もモル沸点上昇度Δtb = Kb・mol /kg とした方が分かりやすい。どちらも質量モル濃度に比例するのだ。質量モル濃度という単位はこの二種類を表す場合でしか使わない。

カギは状態Cの気体の温度を求められるかにある。沸騰している水溶液の沸点は100 +Δt(℃)であり、気体の温度も同じだ。沸点上昇の理解度を問う良問だ。

第III問

〔9〕

  • (ア)CaC2 +2H2O → Ca(OH)2 +C2H2 という反応になる。有機化学の問題なのでC2H2 である。
  • (イ)付加反応は付加する物質の全ての原子が加えられる反応だ。
  • (エ)塩化パラジウムと塩化銅を触媒としてアルケンを酸素でカルボニル化合物へ酸化する方法をワッカー法という。
  • (オ)フェノールの製法の一つ。Clは電気陰性度が高い為にOHに置換される。
  • (1)イソプロピルベンゼンの別名がクメンだ。これを酸化、分解するとフェノール(化合物F)とアセトンが出来る。
  • (2)酸の強さは「フェノール < 炭酸 <カルボン酸」なので、NaHCO3 と弱酸遊離反応を起こすのは化合物C・Eだ。
  • (3)化合物C(酢酸)は酸性なので、ヨードホルムと中和してしまいヨードホルム反応が起きない。
  • (5)アセチレンに硫酸水銀を触媒として水を付加するとアセトアルデヒドが出来る。この生成過程で使った水銀が水俣病の原因となった。

〔10〕

不飽和度は9だから、ベンゼン環(不飽和度4)を二個、二重結合を一つ持つと分かる。この二重結合はエステルのCO結合だ。

ヨードホルム反応を起こした試料はC(O)ONaとなる。この塩を塩酸で処理するのカルボキシ基が出来る。

  • (2)アルケンと言っても、ベンゼン環は残っている。脱水すると、O原子と結合していたC原子が二重結合を持つことになる。
  • (3)ナトリウムフェノキシドを高温高圧下でCO2と反応させサリチル酸を作る事をコルベシュミット反応という。
  • (5)どちらも塩基性化合物ではないのでHClと反応しない。

〔11〕

問i

  • (2)マルトースはαグルコース同士の1, 4結合なのでヘミアセタール構造を一つ持つ。反応式を憶えていないと答えられないが、「アルデヒドと水酸化銅の反応」と考えると解ける。ちなみに銀鏡反応は「アルデヒドと酸化銀の反応」と考えて1 mol, 2molずつ生じると分かる。
  • (3)単糖類は全て還元性を持つ。
  • (5)デンプンはデキストリン、マルトース、αグルコースという過程で分解される。

問ii

単糖類はどの種類もヒドロキシ基を5個持っているので、化合物Aの繰り返し単位のヒドロキシ基は3個(これが分からなくても答えの見当は付く)。

そして鎖の両端のヒドロキシ基も計上するのが肝。「デンプンを部分的に加水分解した」と説明されているので、高分子と想定してはいけないのだ。

化合物Aはアミロースではなくアミロペクチンである可能性がある事に気づいただろうか?アミロペクチンの場合は分岐を考慮する必要があるが、繰り返し単位のヒドロキシ基は3個になるので結果的に「化合物Aはアミロースである」と想定しても正解に辿り着く。

高校物理 東京工業大学2014 (平成26)年度 前期入試問題の解説

〔1〕

(b)

「重力」と「静電気力」はともに保存力なので、これらの位置エネルギーの合計は保存される。つまり、「重力の位置エネルギー + 静電気力の位置エネルギー +運動エネルギー = const.」である。ここからエネルギーの原理を立式する。

小球がPにある瞬間と、逆向きに運動し始める瞬間のエネルギーを等式とする。いずれの瞬間も運動エネルギーは0なので、重力の位置エネルギーと静電気力の位置エネルギーを足せばよい。

「振動の中心となる角度が釣り合いの位置である」というのは自明ではないので証明が必要だと思うが、この事からも答えを出せる。

(d)

まずは小球にかかる力を全て書き出す。そしてこの問題は、向心力や張力の意味を理解していないと解けない。

  • 向心力とは円運動する物体にかかる力の内で中心方向のものを指す。逆に言うと、向心力のお陰で物体は円運動しているのである。
  • 張力は、静止した物体を糸が引っ張るわけではない事を想像すれば分かるように、受動的な力である。この問題に於いては、向心力と重力とローレンツ力の関係を記述する上で帳尻合わせとして使われている。

(e)

糸が弛むのはT≦0 の時だが、vを消去する必要があるので、単にT = 0の式を解くだけでは駄目だ。

「B1 より小さいとき糸が弛まない」という事は、B1 は取り得る値の最小値でT≧0が成立なければならない。「B1 より大きいときある位置で糸が弛む」という事は、弛まない状態も含まれている。そこでvを纏めて平方完成(あるいは相加相乗平均)させ、vの範囲を評価するという難問。

〔2〕

(a)

コンデンサーの電気容量は、εS /d で表される。εは定数部1 /4πk を纏めたものだ。残りのS /d は、 極板の面積Sが大きい程、極板間距離dが小さいほど電気容量が大きくなることを表している。

(c)

スイッチを切った事で電気量は不変となるので電場も不変となる。コンデンサーの電場はE = Q/εS なので極板間距離に依存しないからだ。これは、極板間では全ての電気力線が平行である事からも分かる。

コンデンサーの電場Eは二つの極板がそれぞれ出す電気力線の和に基づく。つまり一つの極板が作る電場はE /2 である。よって極板Bの静電気力はqE /2である。

(d)

[注意]空間1と空間2が密閉された状態で静電気力により極板Bが動いたとすると、空間1, 2の気圧はどちらも変化しているので両者を計算する必要がある。ところが(b)で栓2を開けたままの状態が続いているので空間2に関しては気圧はP0 である。問題が不親切なのが悪いが、錯覚しないように条件変更の文毎に状態を纏めておくと良いだろう。

「空間1の気体が極板Bを押す力(P2S)」と「静電気力 + 空間2の気体が極板Bを押す力(P0S)」が釣り合っている。

(e)

検流計の値が0という事は検流計の両端の電位差が0である。そしてC1 左端の電位が V1sin ωt なのでC2 左端の電位も V1sin ωt だ(電流は同じとは限らない)。 また「R1の抵抗とC1 のコンデンサ」「R2の抵抗とC2 のコンデンサ」 がいずれも直列である事が分かる。

電流をR1 , R2 を用いずに表すというのは、コンデンサに流れる電流で表すという事だ。高校物理の備忘録に書かれている手順で、V1sin ωt をQ = CVに代入して、電流を求めたいのでQを時間微分する。

問題文には優しく sin ωt の微分の関係式が書かれているが、東工大受験生なら参考にしなくても解けるだろう。

(f)

(e)の答えを利用する問題だが、(e)が分からなくても、電流と電気容量は比例するので答えられる。

(g)

図に圧倒されるが、 (d)の解を利用しつつ、未知数を変形して気圧の関係と結びつける。

〔3〕

手際よく処理すれば高得点を得られる。

(c)

この問題では、弦が生じる二つの音は、張力Sやうなりに関して数学的な対称性を持つので、対称的な形を保って処理していくと効率的だ。

(e)

ここから、難しくは無いが計算が面倒になってくる。

[9] yn は2A・sin (2πfnb /v)が全て係数部だから、cos (2πft)を二階微分すればよい。

[11]m /b は線密度を表している。

高校理科(化学) 筑波大学2016 (平成28)年度一般入試問題の解説

余りにも問題量が多く、制限時間内に全てを解答するのはセンター試験よりも遥かに困難だ。解答に時間が掛かる問題を見極めて捨てる技術が合否を分ける。

問3

問題の意味をよく理解しようとすると時間が掛かるが、与えられた式と数値で計算していくと簡単に正答を得られる。問2も同じようなものだ。

熱化学方程式の問題は一般に、単純に数値を代入して計算するだけだ。

問4

アンモニアソーダ法。生成したNH4Clは消石灰Ca(OH)2と反応してNH3とCaCl2になり、前者は再利用される。

問2

平均分子量 = (混合気体の質量) /(混合気体を構成する各分子の物質量の総和)

ここでは平均分子量は次の様に分圧を使うと速く計算できる。

(酸素の分子量) *(酸素の物質量比) +(水素の分子量) *(水素の物質量比) = (酸素の分子量) *(酸素の分圧) +(水素の分子量) *(水素の分圧)

問3

電池では、還元剤が電子を失うのが負極。酸化剤が電子を得るのが正極。

問4

(i)

H2O2 が酸化剤または還元剤のどちらとして働くかの見極めが重要。KIが明らかに還元剤なので酸化剤と判断できる。もしくは酸性水用液という条件から、水素イオンが多いので酸化剤として働くとも判断できる。

(ii)

H2O2 の物質量はx /10 molだ。H2O2 とKIのイオン反応式では、 H2O2 と生成物 I2 の物質量比は1:1 なので I2はx /10 molだ。

S2O32- の物質量は0.02molだ。

I2 と S2O32- のイオン反応式より、1 : 2 = x /10 : 0.02 となる。物質量で比を取ると分かりやすい。

問1

(a)

エステルを強塩基の水溶液で加水分解するとカルボン酸塩とアルコールになる。これを「けん化」という。

実験2では、二つのエステル結合がけん化されてONa基になった後、中和してヒドロキシ基になった。これらが不飽和脂肪酸Bとカルボン酸Cだ。

(b)

グリコシド結合と言えば糖類同士の結合を言うが、厳密には「糖類と有機化合物が脱水縮合して形成する結合」である。

ちなみにエーテル結合は結合力が強いため加水分解はされないので、(b)の結合には該当しない。

結構マニアックな問題だった。

問2

Bは脂肪酸なのでカルボキシ基を持つ。

問3

光学活性とは、光学異性体を持つという事。

問4

マルトースは最も簡単な二糖類の一つで、二つのαグルコースの1, 4結合から成る。1, 1結合した物はトレハロース。ちなみに、 αグルコースのみから成る多糖類はデンプンだ。

セルロースはβグルコースから成る多糖類。ちなみに、二つのβグルコースから成るのがセロビオース。

化合物Gは βグルコースと比べると、炭素4位が上下回転しているが、これをβガラクトースという。 βグルコースとの1, 4結合でラクトースになる単糖だ。

問7

環式構造同士が水素結合を作るという点が重要なので、「水素結合」という語を盛り込もう。

高校理科(物理) 筑波大学2016 (平成28)年度一般入試問題の解説

2016年度の物理は直近10年間で最も難しく、最難関大学レベルだった。

単振動を含む二体問題が題材。受験物理のサイトに類題が詳しく解説されている。

問2

問7で台の重心位置を求める為の前準備。

物体は外力を受けなければ重心の速度は一定である(重心運動方程式)。そして面白いことに、これは単振動を含む系の場合も成立するのだ。

運動量保存則を考えると容易に分かる。この法則が二物体間の衝突や分裂以外に利用できる例だ。

初めに小球に速さv0 (運動量: mv0) が与えられているので、全体の速さは (mv0) /(M +m) となる。

問3

問4で、バネが最も縮んだ時の「2体系の速さに基づく運動エネルギー」 を求めるが、この時に小球の速度が台に対して0である事に着目する。

問4

d1 を含む式といえば弾性エネルギーだ。2体系の力学的エネルギーは保存されるので、これを立式する。

t = 0 の時、台の速さは0でなので、速さv0 が与えられた小球の運動エネルギーが2体系の力学的エネルギーだ。そしてバネが最も縮んだ時、「バネのポテンシャルエネルギー」と「2体系の速さに基づく運動エネルギー」の総和が力学的エネルギーだ。

問5

問6(a)で立てた式には台の加速度Aが含まれているので、これを消すために台とバネの間に成り立つ運動方程式を立てる。

運動方程式とは「力の釣り合いの式」である。この問題で力を生み出しているのは弾性力であり、バネの右端が台を押し、作用反作用により釣り合っている。

問6

問7で台の重心位置を求めるが、2体系の重心位置は容易に分かるのに対して小球の重心位置は常に動いているので、これを分析していく。

(a)

(b)では「台に対する単振動のバネ定数」が未知なので、「台を基準とする小球の運動方程式」を立てる。

台とともに動く観測者の立場から考えるので、「台が固定されている」として考えたいところだが、問5のように台には力が掛かっているので慣性力を考慮する必要がある。

(b)

問7で台に対する単振動の変位を表すには角速度を知る必要がある。

単振動をしている事を示すわけだからF = -kx の形で示す。台に対する単振動なので左辺は小球の質量mと台に対する加速度aを用いてmaとする。

角振動数ωを求めるには、 F = -kx = -mω2x と弾性力を角振動数を含む式に変形して解く。

問7

2体系の重心位置の式に小球の重心位置を当てはめる事で台の重心位置が分かる。

小球の重心位置は台の重心位置と単振動の変位に依存しているので、相対位置の式”x -X = d1 sin(ωt) -X0“を立てる。

問1

問2でローレンツ力を求める上で、F = IBl は使えないのでF = qvB を使う。vが未知なので運動エネルギーを利用して求める。(よく似た式にV = vBlがあるが、これは誘導起電力の式だ。)

問2

選別装置内の電場によって生じるクーロン力(F = qE)と釣り合う逆向きのローレンツ力(F = qvB)が必要。

ちなみにローレンツ力と電磁力は実質的に同じもの。

問4

問5で描くグラフに磁束密度の値を書き込む為には、電極a, bで電流を検出できる磁束密度の範囲を調べる必要がある。

荷電粒子は検出器内の磁場によってローレンツ力が働き、時計回りに曲がる事で電極で検出される。したがって磁束密度の範囲は、「円運動する荷電粒子の半径」と「検出器入口と電極の距離」の関係から導ける。

問5

磁束密度の値の算出に恐ろしく時間が掛かる。本番では誰も完答できなかったと思われる。 磁束密度を記入しないでグラフを書けば部分点を効率的に稼げる。

Z = 1 よりZ = 2の粒子の方がローレンツ力を受けやすく、電極で流れる電流も大きい。煩雑な計算を楽にするため、B = √(2mEad /e) /l とおくと良い。

問6

難問の問5が分からなくても解ける簡単な問題なので飛ばさない様にしよう。

解答の表現方法は複数あるが、できる限りシンプルな式になるのが良いだろう。

問題の流れがややこしいので、過程毎に圧力、温度、体積の値を整理しておくと非常に便利だ。

問1

(a)ピストンは自由に動くので圧力は一定。温度が2倍なので体積も2倍だ。

(b)この仕事は、ピストンが外部にした仕事も含まれる。定圧変化なのでnCpΔT = nCpT0 、またはΔU +ΔpV = 5/2・nRT と表せる。

問2

(d)密度は「質量 /体積」なので体積に反比例する。この事と状態方程式から、密度は「圧力 /温度」に比例すると分かる。

問3

(f)等積変化なので圧力は温度に比例する。地表面の気温はT0 、シリンダー内の温度は2T0 だ。過程2の温度は、温度の方程式に(d)の式を代入して4T0 /5 である。

高校理科(化学) 筑波大学2014 (平成26)年度一般入試問題の解説

問3

アンモニアを過剰に加えるのでアンミンが配位子となり、テトラアンミン亜鉛(II)イオンとなる。

配位数が4の錯イオンは基本的に正四面体となるが、Cuは正方形として扱われる。

問5

Al, Zn,Fe は高温水蒸気と反応する。

問7

減極剤は、しばしば正極で発生したガスを取り除く為のものとして説明されるが、実際はH+より酸化しやすいものとして投入する事で分極を防ぐのが目的である。

問5

状態方程式においてPとVは反比例の関係である事からV2 /V1 = P1 /P2 と置き換えるのは誤り。なぜなら、容器1と2の中の平衡状態の気体の物質量は異なっているからだ。物質量を問3の結果を利用して補正する必要がある。

問5

  1. アルカリ金属やアルカリ土類金属の炎色反応。
  2. OH基と反応しONaとなる。
  3. フェノール類の系統分離に利用される。
  4. 銀鏡反応。試験管内壁に銀が付着し鏡のようになる現象が観察される。
  5. ハロゲンを銅線に付着させて炎にかざすと、ハロゲン化銅として気化し青緑色の炎色反応を示す(バイルシュタイン試験)。
  6. 臭素が炭素間の二重・三重結合と付加反応する事で赤褐色が消える。
  7. ヨードホルム反応。特有の臭気を持つヨードホルムの黄色沈殿が観察される。
  8. ニンヒドリン水溶液にアミノ酸を加えて加熱すると紫色になる。指紋検出などに利用されている。

問7

トルエンでも同じ物質が作られるというのが大きなヒントで、ここから置換基の炭素原子は一つだけと分かる。