高校理科(物理) 筑波大学2015 (平成27)年度一般入試問題の解説

問1

衝突時にBとCの間に静止摩擦力が働くならば、BとCを一つの物体として扱うので質量を2mとする必要がある。しかし「静止摩擦力は考えなくてよい」と指示されているので、AとBの関係で運動量・力学的エネルギーの保存則を立式出来る。

問2

摩擦力は左向きに働くが、正の向きは右向きなので、負の符号が付く。

問3

BとC には、摩擦力の作用反作用を通して速さの移譲が次第に進む。両者の速さが等しくなった時にその移譲は完了する。

BとCの運動量の合計は、t = 0 ではmvB0 、tBC では2mvBC なので運動量保存則を用いて等式化する事でvBC を速く算出できる。

問4

仕事 = 力 ×距離で表されるが、この距離は「力を与えている間に進んだ距離」であり、「力によって進んだ距離」ではない。

「力によって進んだ距離」と誤解すると WB = (-μmg) *(1 /2 *μgtBC2) となってしまうので注意。

問5

反発係数は衝突前後の相対速度の比である。負の符号は反発している事を表している。

結論として得られる式は問題文中で明記されているので、変化量について立式した後は途中計算をせずに結論の式を書いてしまうとよい。

もし誘導が無ければ

問1と同じ導出をするのが難しい。なぜなら、静止摩擦力が働かない事に着目して2つの保存則を立式する必要があるからだ。

動摩擦力が働くと作用反作用でBとCの両者に逆向き・同じ大きさの力が働く。そして「CがBに対し静止するようになった」という状態も重要で、動摩擦力・加速度が0になりBとCの速度が等しいという情報が含まれている。

問4で仕事量を求めるが、これには力と距離の情報が必要であり、距離を求めるにはBとCが等加速度運動をしている事から「A, Bの衝突からB, Cの速度一致」までの時間を調べる。

頭の中で、力・加速度・速度のを確かめながらシミュレーションするのが大事だ。

問1

電磁誘導に伴って発生する誘導起電力は、電池の様にどこか局所的に生じているわけではない。

もし誘導が無ければ、消費電力はIV = I2R = V2 /R と表されるので、どれか2つの情報を得る。導体棒を動かして誘導起電力を起こしているので、電磁誘導の式を利用する。

問3

2つの導体棒を考えるので複雑になる。

(a)

A1 とA2 が作る閉回路は磁束が減少するので、電磁誘導によりA2 にはy軸の負の方向に流れる筈だが、ここでは逆に流れると仮定している。

逆向きに流れると仮定する理由は何だろうか?キルヒホッフの法則に基づく立式は電流の流れが異なっていても正しい電流が分かるはずなのだが、 y軸の負の方向に流れるとすると計算結果が合わなかった。この理由は、2つの閉回路でA1 を共有しているが a~a’~ A1 回路では電位差があり A1~A2 では電位差がないものとして扱っているところに矛盾が生じている為ではないか?

(b)

(a)の「A2 にy軸の正の方向に電流が流れる」という設定が引き継がれている。問題文中で明示すべきだろう。

閉回路はa~a’~ A1とa~a’~ A2 に作られるので、それぞれオームの法則の式を作る。

(c)

答えの式を書いただけでは加速度の向きが分からないので、向きも明記しよう。

A2 はローレンツ力により右向きに動き出しそうだが、 答えの式から、A1の存在により左向きになると分かる。

この問題は次の(d)を考える手掛かりとなっており、「無限時間後の状態を調べる上で、最初の状態を調べるのが大事だ」という教訓と言える。

(d)

v2 = 1 /2・v0 なので、「十分時間が経過した」後は衝突してしまいそうだが、問題文に「衝突しないものとする」と書かれている。

球面鏡を題材にした問題だが、この大問だけ異常に簡単である。ⅠとⅡは難易度も分量も大きいので、この大問に辿り着く前に解答時間を使い切ったとしたら非常に勿体ない。「難しい問題はガンガン飛ばして行く」という事を教訓にしよう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です