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高校数学 東京工業大学1981 (昭和56)年度 前期入試問題の解説

大問毎に難易度の差が大きく、第2, 4問は易しく第1, 3問は難しい。数学センスの良さが求められる辺りに東大入試の雰囲気がある。

解答例

第1問

漸化式と極限の問題。nが奇数と偶数の場合で振る舞いが異なるので、a2n, a2n-1でそれぞれの漸化式を作る必要がある。そのために、与えられた方程式を2n, 2n-1に関するものに変形し、それらを連立する。

これは方針で迷う難問で、数学的帰納法が使えそうだから小さいnで実験してみても、αが1/3に収束しそうだという予想が付くくらいで、手がかりは得られない。裏を返せば、「a2n, a2n-1で漸化式を作って極限を取る」という記述で部分点が得られる可能性があるということだ。

第2問

⊿ORSの面積が最大になるときの点R, Sの座標は、ほぼ直観的に分かる。この部分についてどの程度の論証が求められているかで計算量が大きく変わってくる問題だ。

計算量が増えない範囲で論証するならば、

  • 点Sを固定すると、線分OSと点Rの距離が最大になる点Rの座標は常に(1, 4)である。
  • Rの座標が(1, 4)ならば、線分ORと点Sの距離が最大になる点Sの座標は(-16/9, 4)である。

という二点は記述するべきだろう(Math Stationの論証は雑すぎる)。この程度の論証の精度で満点を得られるか定かでないが、更に高い精度を目指して時間を掛けるよりは、別の大問に注力する方が戦略的に正しい。

第3問

一般に、複数の動点がある問題の場合、相対運動と見做すことで変数を減らせる。物理学なら慣性力を考慮する必要が出てくるから安易に導入できないが、数学の問題ならそういう心配がない。

本問でも、Pを固定することで動点を2つに減らせる。厳しい制限時間があるから意外と気づきにくいのだが、これが最重要で、このことを示すだけで部分点が得られるはずだ。

三角形の面積公式は多種だが、頂点の座標が判明しているのでサラスの公式を使う。数値計算が煩雑だが、Math Stationみたいに綺麗に纏めなくても減点されないだろう。

第4問

(2)

0 < t≦1/2のときF(t) = (sin πt)/2tだが、分数関数の微分は面倒。要は(sin πt)/2t≧1 を満たすtを求めればよいのだから、(sin πt)≧2t と変形して図形的に考察するのが速い。1/2 < t≦1のときも同様。

高校数学 東京工業大学1982 (昭和57)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

半径1/nの円を半径1の円の周りに敷き詰めていくと、anとnを含む不等式を得られるので、 an/n を挟む形に変形することではさみうちの原理に持ち込める。

変数θは三角関数なので、三角関数の極限公式を利用する。

第2問

本年度の最難問。

(1)

証明すべきことが感覚的に正しいとは分かるが、如何に論証するかで悩む。

Aを(1, 0)に固定しても一般性を失わないので、この状態でBを動かしてみよう。そしてBがどの位置にあればLが 1, |a +b|, |a -b|になるか調べる。すると角度の範囲によって分けられると分かるので、角度θを導入する。

第3問

α = ±1のときは接線は最大で3つしか引けないことも明示しておいた方が良い。

図示するグラフは、縦横比や”Cの極値の座標”まで丁寧に描く必要はないだろう。

第4問

題意を勘違いし易いので要注意。「楕円を45°傾けたときの通過領域」と書けば分かりやすいのに、問題文は紛らわしい。当時の入試でも勘違いした解答が多かったはずだ。

問題自体は易しい。直線y = x で領域を分割すると楕円で囲まれる部分と円で囲まれる部分に分けれる。楕円で囲まれる部分の求積は、置換積分を使わず√(12 -x2)の形にして円の面積として求めれば速い。

高校化学 東京工業大学2001 (平成13)年度 前期入試問題の解説

[2]

4.室温は空気の臨界温度より高いので、圧縮しても液体にならない。

[6]

6.有機化合物は、実は炭素を含む化合物の大部分を指し、意外に範囲が広い。

[8]

天然高分子化合物の細かい知識が問われる難問。トリプシンとリパーゼはいずれも膵液に含まれているが、リパーゼは油脂を分解する。

[14]

東工大としては珍しい定性的な内容だ。残念ながら問題文が意味不明な不適切問題だ。

  • 1.十分に(NH4)2CO3を加えると溶液中の全てのCa2+, Ba2+が沈殿するはずだが、そうはなっていない。これは溶解度積により多量の(NH4)2CO3を加えても僅かにイオンが残るからだと解釈できる。
  • 2.十分にCO2を通じると溶液中のCa2+, Ba2+が共に沈殿するはずだが、なぜかBaCO3だけが沈殿したことになっている。Ba2+の方がCa2+より分子間力が大きいので先に沈殿することから、この場合の「十分」とは「BaCO3のみを沈殿させる為に十分」という意味と推測できる。また、「沈殿を濾過」という文言があるが、沈殿は固体なので濾過できないので不適切。

問I, II.溶液中に元々含まれていたCa2+, Ba2+ は実験操作によってそれぞれ固体C, Eの中に分けられた事になる。それぞれの固体に含まれるCa2+, Ba2+ の量が元の溶液中の量を上回る事はないので、実際の濃度より高い値を得たという事は、より分子量の大きい別の化合物が含まれているということだ。

[15]

浸透圧はπ = nRTで表されるが、2つの溶液におけるR, T, 体積, そして溶質の分子量は等しいので、質量比を調べればよいだけだ。

高校物理 東京工業大学2005 (平成17)年度 前期入試問題の解説

全体的に易しいので8割程度が合格ラインだろう。

解答

[1]

とても易しいので満点を取るべき大問。

(d)小球の円運動は最高点に達したときに運動エネルギーが最小になるので、このときに円運動をするのに必要な速度を持っていることが必要条件。速度が足りず「重量 > 向心力」となると紐が緩む。

[2]

(c)並列回路が正解。並列にすることで、電流計にとって過剰な電流を抵抗の方に流す。並列なので電流計と抵抗の電圧は等しくなる。

(f)スイッチがONの場合とOFFの場合で、同じ電流を流したときのRの大きさを比べる。注意すべきなのは「電流」とは電源に流れるものではなく電流計に流れるものを比べること。問題文は目盛りに関する説明が曖昧なので不適切。

[3]

2004年度に続いて原子分野が出題されたが、基本的な問題だ。

この問題から15年間は原子分野の出題はない。

高校理科 東京大学2002 (平成14)年度 物理・化学 前期入試問題の解説

物理

第1, 2問は難問だ。

解説

第1問

[I]

パイプの重心をGとする。

まず、支点a, bの両方に力を加えているのにbだけが動き出した理由を把握する必要がある。これは、A点, B点での最大静止摩擦力がA > Bとなっている為で、重心がA側に偏っていることを示す。

(1) 初めに支点bが動き出し、重心が近づくにつれて支点bの動摩擦力が大きくなり遂に支点aの最大静止摩擦力に等しくなる。

(2)パイプ中に小球が2個入っているという設定に惑わされ易いが、小球それぞれの位置や質量は無視して重心の位置のみに単純化してよい。

支点bがC点に到達すると、代わりに支点aが動き出すが、この時に支点bの摩擦係数が μ’→μ となり、逆に支点aは μ→μ’ となる。支点bが動いていた時と立場が逆転するのだ。この状況把握が難しい。

(3) (1)~(2)が誘導となっている。実は、(1)の結果をμ’/μ = Na/Nb と比の形にしてみると、AG : CG = μ : μ’と分かる。同様に CG : DG = μ : μ’も成り立っており、簡単に答えを得られる。理科の問題は比を見出すのが一つのポイントだ。

[II]

第2問

相互誘導の問題。微分方程式を利用する。

[I]

(2)式(イ)を区間[0, T]で積分する。時刻t = TではV1 = 0 だがΦ = 0というわけではない。

(4b)V1 = 0 からコイルに流れる電流は一定だと分かる。よってΦ も一定だ。

[II]

(1)スイッチSのOn/Off に関わらずV1 は図2-2のように保たれているので、式アを使わず式イだけで求められる。

第3問

各状態において状態方程式を適用する作業ばかりの基本的な問題。

化学

解説(第3問)

第1問

[II]

エ.(2)式ではCOとメタノールのモル比が等しい。問ウでCOが0.33 mol 生成すると分かったので、1 + 0.33 = 1.33 molである。

[III]

温度としてTを用いるよう指示されているが、気体の溶解度は温度に依るので、この指示は不適切だ。

オ.解は一通りではなく、V = 0.4(1 -PCO2)RT, V = 0.4PH2RT でも良い。

第2問

[I]

問題文が曖昧なので手を付けにくい。 更に、第3, 4文に言及されている数値は利用しないので何故載せているのか不明。

海水にはカルシウムなどの1~2族元素がミネラルとして多く含まれている。また、空気中の二酸化炭素が溶解して HCO3 となっている。問題文の「海水において過飽和になっていた炭酸カルシウム」という記述は非常に紛らわしい。

  • ア.Yは溶解物、Zは液体であるという情報から、電荷の和は両辺とも0だと分かる。CO2は酸性気体 だから、Yが酸性またはZが塩基性と推測できる。
  • オ.硫酸カルシウム二水和物が石膏であるという知識があれば、計算せずに解答できる。

[II]

. H2O2が H2O に変化した事から酸化剤として働いたと分かる。また、H2O2 の係数がそれを元に係数決定できる。

キ. H2O2が酸化剤として働いた結果、Co2+ → Co3+ +e と酸化して錯体を作るが、この反応は高校範囲では見かけないので難しい。

第3問

[I]と[II]でそれぞれ扱う油脂は同一の物であり、[I]で得た結果を[II]で用いたりするのが紛らわしい。

[I]

  • イ.油脂を実際に加水分解した場合には、その分解が完全に進むことはない。問題文にある「収量」とはそのように不完全な反応によって得られた生成物の量を指している。この収量は掲載する必要のない数値。
  • .2001年度でも類題が出題されたが、極性の小さい物質が有機溶媒として適当。
  • オ.ハロゲンの付加が一般的で、臭素なら色の変化が観察できる(赤褐色→無色)。また、過マンガン酸カリウム(赤紫色)で酸化することで褐色の酸化マンガンを観察できる。

[II]

キ.fは計算に時間がかかるが、二量体を形成するのは容易に分かり、整数値で答えるので解だけ書いておくのもアリ。

高校数学 東京工業大学1983 (昭和58)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

(1)Math Stationの解法以外に、相加相乗平均を利用する解法もある。与式を変形して1/|m2n1 -m1n2|≦m1 /2m2 +m2 /2m1 とする。相加相乗平均により1≦(右辺)なので、(左辺)≦1を示せば良い。これを変形した不等式1≦|m2n1 -m1n2|について、(m1, m2)と(n1, n2)はいずれも互いに素だから正しい。

(2)は、nを偶奇で場合分けして極限計算するだけのとても易しい問題。(1)の方が難しい。

第2問

通過領域の典型問題。tの方程式に変形して、放物線の軸t = yを動かして実数解条件を求める。

図は大きめに描かないと、円と放物線の間の部分が細かくて図示しにくい。

第4問

F’ はcos 3θの関数で表されるが、cos 3θ のまま増減表を書くとcos 3θ = -1のときに極大であると勘違いする。θが0→π/2と動くとき、cos 3θ は1→-1→0と動くからだ。単調関数であるかの確認の重要性を気づかせてくれる。

第5問

面積は全体を積分で求めるのではなく、双曲線が関わる1≦x≦3tの部分のみ積分して残りは三角形または台形の面積公式を使った方が楽だ。

高校数学 東京工業大学1984 (昭和59)年度 前期入試問題の解説

微積を用いる第4, 5問は易しい。

解答例

第1問

整数の難問。昔の東工大は整数問題をよく出題していたが、これは特に難しい。もう少し誘導を付けても良かったと思う。

(2)

まずは、”素数の整数乗” = a3 +b3 = cd に気づかなれば何も始まらない。そして、様々な必要条件で絞り込んでいく。

まずは(1)で与えられている不等式を弄らずにそのまま当てはめよう。

次に”解と係数の関係”を用いるが、これは思いつきにくい。「(a, b)の組み合わせを求める」というゴールを常に意識しておけば思いつきやすいかな。

ところで、整数問題では実験が大事だ。a, bに小さい数を当てはめて実験しているうちに、解の一部である(a, b) = (2m-1, 2m-1)に気付ける。十分性を示すことで部分点を得られるだろう。

第2問

与えられた条件を、x, y ,z≦n/2 に変換するのがポイント。x, y, zにはこの上限が与えられているので、その範囲で数値を動かしてカウントしていく。

第3問

双曲線の接線に関する有名性質が題材。面積はサラスの公式を用いる。

高校国語 東京大学 前期入試問題(現代文・古文・漢文)の解説サイト

年度現代文古文漢文
1999佐々木哲学校
2000GV
Yasuda’s Site
佐々木哲学校
2001GV
佐々木哲学校
2002GV
佐々木哲学校
Yasuda’s Site
2003東進
GV
佐々木哲学校
2004東進
GV
佐々木哲学校
2005東進
GV
佐々木哲学校
2006東進
GV
佐々木哲学校
2007東進
2008東進
空を飛ぶ土竜
GV
佐々木哲学校
2009お茶ゼミ
東進
空を飛ぶ土竜
GV
2010お茶ゼミ
東進
空を飛ぶ土竜
GV
佐々木哲学校
2011東進
GV
2012東進
河合塾
GV
空を飛ぶ土竜
2013東進
GV
2014東進
GV
佐々木哲学校
2015東進
GV
木山
2016東進
GV
参考文献:松本徹三『東大入試合格には「知性的」であってはいけないのか?
木山
2017東進
GV
木山
2018東進
パスナビ
GV
木山

高校数学 東京工業大学1985 (昭和60)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

これはペル方程式が背景となっており、与えられた条件が複素数の性質に似ている。 ペル方程式の知識が無いと取り組みにくい。

Math Stationの(2)の解答は「gn ∈ G」を証明したものであって、正しい証明になっていない。

(3)は「u0 = 1 ∈ G」 であることを利用して数学的帰納法を用いても証明できる。

第2問

東工大らしさが感じられる問題。

(1)直方体を描いてみて、平面を想像で動かしてみよう。

(2)微分可能であるかを検証するには、t = 1, 3/2 において「関数が連続」且つ「傾きが一意」であることを調べればよい。傾きが一意であることを示すには導関数の定義を利用する必要がある。導関数f'(x)は利用できない…それはf(x)が微分可能であることが前提の関数だからだ。

第3問

これも東工大らしさが感じられる問題。

(2)微分して最大値を求める。根号を含む式の微分は面倒なので、√a = u として多項式に置き換えよう。

第4問

簡単な微分方程式の問題。対数微分法の逆の操作をする。

第5問

標準的な難易度の確率問題。A, Bどちらのルールでも期待値は等しくなるのが面白い。

高校数学 東京工業大学1986 (昭和61)年度 前期入試問題の解説

全体的には易しい。

解答例

第1問

これは有名な問題で、スタディサプリでも題材になっている。

a1とa2を調べることで答えが7であると予想できる。整数や数列の問題は実験してみることが大事だ。

第3問

本年度の最難問。2つの面積の比 k が一定であることを立式した後にどう変形するかでセンスが問われる。

①式の左辺は原始関数Fを用いてF(x) -F(a)と表せる。そして右辺に含まれている”x-a”に着目して、微分係数の形に変形する。ここでx→a とするとk = 1が必要条件だと分かるので、十分性も示せば完了。f(x) = -x -2 が解であることは容易に予想できるので、その結論に議論を誘導していくわけだ。

別解

f(x)がどんな関数であっても、x→0 やa→1とした場合に明らかにk = 1しか成り立たない。ということはk = 1を満たすf(x)が唯一の解だ。よって f(x) = -x -2 である。

これは少し論証が甘いが、部分点は得られるだろう。

第5問

アステロイド曲線のような曲線で作られる領域の面積。ベータ関数に似た結果が得られる。最も難しい小問は(2)であり、(3)は(2)が解けなくてもその結果を利用して解ける。

(2)

まずyについて解いて積分する方針は(1)と同じだが、t = -x1/m+1 と置換する。このtの式をそのまま両辺微分するとxの式が残ってうまく行かないので、xで解き直してから両辺を微分する。