中小企業診断士 令和元(2019)年度第二次試験 筆記(事例ⅠⅡⅢⅣ), 口述の解説

模範解答: KEC

事例Ⅰ

問題(PDF)

再現答案(点数): 96838278

第1問

補修用性能部品の保有期間とは、販売した製品が故障したときに修理ができるようにするため補修用性能部品(製品の機能を維持するために必要な部品)を家電メーカーが保有している期間のこと(JEMA)。

「最大の理由はなにか」と問われているが、直接の理由として第4段落に売上減少と費用増大が併記されているので、理由を一つに絞る必要はないだろう。

全社的な売上減少(第4段落)
たばこ市場の縮小
乾燥機の買い替え需要を奪った
費用増大(第4段落)
メンテナンス事業は部品の確保と在庫が必要
備考
  • 「売上減少」と書くだけではメンテナンス事業のみに対する記述と誤解されうるので、「全社的な売上減少」と書くべき。
  • 第5段落に「保有期限過ぎた部品についても個別対応していた」とあるが、これはメンテナンス事業に対する記述ではないため、これを解答の根拠としていいかは怪しい。わざわざ事業化したくらいだから、この新事業に対しても高コスト体質をそのまま残していたとは流石に考えにくい。どちらかというと第2問に記述すべき内容だろう。

第2問

「古い営業体質」として第5段落に「期限切れ部品の補修の個別対応」や「前近代的な経理体制」が挙げられているが、このままでは企業風土とは呼べないので言葉を補う必要がある。

  • 期限切れ部品の補修の個別対応など非収益性
  • 前近代的な経理体制などの非効率性
  • 昔の成功体験を忘れなれない古参社員に危機感が足りず、改革への意志や協力が不足していた

第3問

問われているのが「成功の背景にどのような要因があったか」という漠然としたものなので、何を答えても良さそうに思えるが、設問に「HPに期待する目的・機能とは異なる点に焦点を当てた」とわざわざ書かれているので、インターネットの利点に焦点を当てて記述するのが良い。第9段落に取って付けたように書かれている営業部隊の件は重要に思えるので答案に組み込みたい。

  • インターネットの双方向性を活かし、潜在顧客のニーズを把握し、かつては困難だった潜在市場へのアプローチを可能とした。
  • 営業部隊による優れたプレゼンで、潜在顧客の自社サービスへの関心を高めた。

第4問

問題文には「事業領域を明確にした結果、積極的に取り組むようになった」と説明されており、その要因を問うているが、答えは当然「事業領域を明確にしたこと」である。問題文が論理的におかしいのだが、受験者の回答を正しい方向に誘導しようとしてこうなったのだろう。こういう場合は無難に「事業領域を明確にしたこと」を詳述しておくのが点数を稼ぐうえでは大事である。

その他の要因については、Kotter の組織変革の8段階モデルが参考になる。

営業部門の労働意欲向上
農作物の乾燥技術をコア・テクノロジーとして明確に位置づけし社内に共有
リストラを通じて社内に危機感を醸成
成果報酬制導入

第5問

組織再編には指示系統やチームの混乱やコスト増のリスクも伴う。期待の大きい新規事業が成長中の最中、組織再編するのはタイミングが悪い。事業が安定してから着手しても遅くはない。

機能別組織のメリットを挙げることで組織形態の知識があることを試験官にアピールするという方向性もアリだろう。

事例Ⅱ

問題(PDF)

再現答案(点数): 84787777

第1問

この設問を回答するのは後回しにして、他の設問を解くために与件文を読む際に、同時にSWOT情報を集めるのが効率的だろう。

S
技術力、顧客への提案力(第6段落)
賃貸料が安いため固定費が低い(第3段落)
顧客から店の雰囲気が落ち着くと好評(第3段落)
W
店舗が商店街中心から離れているため集客力が低い(第3段落)
顧客の年齢層の偏り(第6段落)
O
商店街の他社と関係良好で協業の可能性(第3段落)
デザイン性が強みなので、SNSでの拡散効果に期待できる(第6段落)
ネイルサロン市場に成長余地(第5段落)
T
大手チェーンによる低価格ネイルサロンの出店(第7段落)
X市周辺に競合が多数おり、市場成長鈍化と立地の悪さから顧客を奪われる可能性(第5段落)
備考
  • O: ネイルサロン市場に成長余地があるという機会は競合にも当てはまることなので記述の優先度は低い。
  • T: 「小型ショッピングモール開業を控えた時点の状況」という指定は、低価格ネイルサロンに言及してはいけないとも解釈できる。仮にそうだとしても、言及により減点されることはないだろう。

第2問

表でわざわざ価格体系が示されているので、「顧客にオプションを注文してもらい客単価を高める」という説明は大事だろう。

デザイン面で競合と差別化しオプション注文を促す
季節や様々な行事に合うネイルデザインの提案
顧客の属性に合うネイルデザインの提案
デザインを写真付きで送ることで訴求力を高める

第3問

設問1

図1で年齢別人口構成比が示されているので、年齢で標的を絞るのが望ましい。協業の具体的内容は問われていないので書く必要はない。

協業相手
商店街のファッション関連店
顧客層
ファッションに敏感な中年女性
理由
デザイン性が強み
商店街の他店と友好的
Y氏は中年女性への接客に評判がある
オプション注文で収益増が見込める
設問2

「協業を通じて獲得した顧客層を…」と書かれているので、設問1と設問2の回答の一貫性が得点に影響すると思われる。「リピートに繋げる」という要件を満たすのが難しいが、「イベント前に毎回来店してもらえる」とか「満足度向上」と書いていれば自然だろう。

  • X市は様々なイベントが盛んなので、Y氏の接客力を活かして顧客の要望を聞きつつ参加イベントの雰囲気に合わせたデザイン性の高い提案を行う(第2段落)
  • 顧客が理解しやすいように写真を用いて説明する(第4段落)

事例Ⅲ

問題(PDF)

再現答案(点数):77, 72, 72

第1問

第2問

第3問

第4問

第5問

事例Ⅳ

問題(PDF)

再現答案(点数):85838279

第1問

設問1
売上原価率と売上高利益率のいずれかは収益性指標として挙げる必要があるだろう。
当座比率(安全性)は0.41⇐0.56で0.7倍。当座資産に「その他流動資産」は含まれない。
棚卸資産回転率(効率性)は3.13⇐4.74で0.7倍。
D社の賃貸収入は唯一の強み。有形固定資産回転率(効率性)は1.64⇐1.49で1.1倍。
設問2

与件文から、財政状態と経営成績の特徴の原因を拾ってくる必要がある。

建材・マーケット事業の不振が負債増加による財政悪化と経営成績悪化を招いている。賃貸収入は経営に好影響。

第2問

設問2

損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)=固定費÷限界利益率

設問1で導出した変動費率を用いると答えは4345になる。「固定費÷限界利益率」で導出すると4343になるが、設問1の解答を利用して計算するよう指示されているので、不正解とされるので注意。

入力画面表示
1, -, .8909, M+0.1091
474, ÷, M+, =4344.6379
電卓で計算する際の効率的入力方法
設問3

一般に、売上高が変化したという条件が与えられた場合、単価の変動は考慮せず売上数量の変化のみを考慮する。よってマーケット事業部の変動は売上高に比例して10%増加する。

「設問1の解答を利用」という指示は意味不明。

第3問

設問1

「全社的利益(課税所得)は十分にある」という条件は、回りくどいが「税引前利益が負になっても課税対象になる」という意味だ。したがって第1期も課税を考慮する。

設問2

回収期間の年数は整数で答えてはいけないので注意。

入力画面表示
20, M-20
.9, ×, .952, M-0.8568
6.1, ×, .907, M+5.5327
14.5, ×, .864, M+12.528
9.6, ×, .823, M+7.9008
9.6, ×, .784, M+7.5264
MRC12.6311
NPVを電卓で計算する際の効率的入力方法
設問3

煩雑な計算が必要なので後回しにしよう。

高性能設備によって削減できる原材料費・労務費の割合をx (0≦x≦1)で表すと、煩雑な計算を経て、

70.342x +5.229 ≧ 12.631

を解くことになる。設問通りに四捨五入すると不等式を満たさなくなるが、指示通りに答えて減点されることは流石にないだろう。

第4問

設問1

企業経営理論における組織形態の問題と同じ発想で解ける。子会社化は分権化を意味しているので、機能別組織に対する事業部制組織の特徴を当てはめれば良い。

メリット
損益・責任の明確化
業務の専門性向上
子会社役員の裁量拡大
別の労働条件を適用可能
デメリット
管理費増
短期的判断の傾向
親子間の役割重複・排他的傾向
設問2

EDI導入の直接の効果は、与件文にある通り「取引先との在庫情報の共有」だから、これを盛り込むのは必須。その上で、在庫や配送の適正化、受注業務効率化などに言及する。「どのような財務的効果が期待できるか」と問われているので収益性・効率性強化まで記載しよう。

口述試験

出典: AAS

事例Ⅰ

  • 事業承継にあたり、後継者が農業経験がないことによる留意点
  • 代表や常務から後継者への承継をどのように進めるべきか
  • A社では新規事業の展開を考えているが、今後どのような組織体制をとるべきか
  • 農業と直営店の発展に向けて必要な方策
  • A社は今後、どのように事業展開していくべきか
  • A社は、直営店も営んでいる中で、取引している大手中食会社とは、どういう関係構築をしていくべきか

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