事例Ⅰ
第1問
設問1
- A社長に仕事を学ばせて後継させる
- 老舗酒蔵のブランドを活かしてインバウンドを取り込み
- 酒蔵再建と関連多角化で地域活性化
- グループ内の旅館とシナジー効果を出す
事例Ⅰは組織・人事がテーマなので、A社長を後継させるという要素は重要。
酒蔵と旅館が同じグループ内に属していることは明示されていないので、第4問の問題文から忖度する必要がある。
設問2
- 前経営者の雇用責任遂行の意向に沿う為
- A社長やその祖父は酒蔵経営に詳しくなく、再建と多角化の上で前経営者やベテラン従業員のノウハウや人脈が必要だった為
- コアメンバーを残す事でA社の一体感を維持
第2問
- 事務員から事務作業や取引方法を学ぶ
- 情報システム導入について従業員や取引先に説明し理解を得る
- データのDB化、業務標準化
- 事務員から情報システムについて評価を受ける
- トラブルを防ぐ為に段階的導入
事例Ⅰは組織・人事がテーマなので、「従業員や取引先に説明し理解を得る」という要素は重要。
第3問
直販に必要とされる能力が何かを問われている。出題の趣旨には「主たる販売方法がルートセールス方式から直販方式に変更される際に、営業担当に求められる能力が、どのように変化するのか」と書かれているので、ルートセールスに必要な能力を書いても評価されない。
- 老舗ブランドを訴求する為の会社や商品の知識
- グループ内店舗との連携
- 消費者に対する接客・ニーズ収集・提案
- 自身の能力を同僚にも与える育成能力
事例Ⅰは組織・人事がテーマなので、「グループ内店舗との連携」「自身の能力を同僚にも与える育成能力」という要素は重要。
第4問
与件文第12段落の「A社の人事管理は、伝統的な家族主義的経営や祖父の経験や勘をベースとした前近代的なもの」「年功序列型賃金が基本」「企業グループ全体のバランスを考えた人事制度の整備が必須」という記述に対応した解答が必要。
- 親族以外も役員登用可能にする
- 経営者の裁量に依らない公平透明な人事評価制を導入し情報システムで効率運用
- 成果報酬制導入で従業員の意欲向上
- グループ全体の賃金体系を統一し不平等を解消
事例Ⅱ
第1問
- S
- 無農薬・高品質のハーブの効率的栽培、多種栽培
- 美しいハーブ畑
- 確固たる取引実績
- W
- 島外への高い輸送費
- ハーブYの売上減
- ハーブと島が都会で無名
- 自社ブランドの弱さ
- O
- ヘルスケアに関心ある層のハーブへの認知拡大
- 通信販売での需要
- ハーブの広い用途
- T
- 依存度高い取引先と取引が無くなる恐れ
- ヘルスケア市場の競争激化
- X島の人手不足
Z社への依存度が高いという点は弱みとも言えるが、取引減という脅威と纏めて書くのが合理的だ。
第2問
ターゲット顧客と取引先の両方を示す必要がある。
第3問で自社サイトでのマーケティング戦略が問われているので、設問群の流れを考慮して、自社ブランドの直販も取引先構成に含めよう。取引先には企業だけでなく消費者も含まれるのが盲点になりやすい。
4P戦略のPriceを盛り込むために「品質・安全性・希少性の強みを活かして高価格帯で取引」と書くのも有効だろう。
第3問
設問1
高得点者の再現答案に基づくと、多角化戦略が正解のようだ。予備校の殆ども多角化戦略と答えているが、KEC, MMCは新製品開発と答えている。
製品市場マトリックスは基本知識とは言え、思い出すのは容易ではない。本問に正解できたかどうかで10点の差が付いたと思われる。
設問2
問題文に「眠る前に飲むハーブティー」と書かれており、自社サイトの利用者は主にこの製品の顧客であるから、彼らを主なターゲットとして健康に焦点を当てた企画を提案する。
「自社オンラインサイト」と書かれているので自社サイトでしかできない企画を提案するのが望ましい。SNSでの情報発信は論外。
第4問でX島訪問ツアーの話が些か唐突に出ている。設問群の流れを考慮して、この企画に繋がるような提案ができると素晴らしい。
- 健康の悩みを相談できるBBSや問い合わせフォームを設置し消費者ニーズ収集し、ハーブ・製品開発に活用
- ハーブ畑などX島の魅力を発信し関与拡大
- ハーブ以外で安眠できる方法も紹介し顧客の信頼拡大
第4問
B社長は「B社とX島のファンになってほしい」とは言うものの、中小企業診断士の役割は中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う事であるから、B社経営に資するものに重点を置く必要がある。
多様なアイデアが考えられるが、顧客がわざわざX島に訪問するのだから、「ハーブ畑への招待」と「島民との交流」は必要な要素。
- B社ハーブ畑に招き景色を楽しんで貰いB社への愛顧拡大
- B社の様々な製品の工場見学や試供で信頼と認知拡大
- ハーブを用いた料理を島民と作って食べて貰い、島の文化理解と交流を促す
事例Ⅲ
令和元年度から大幅に易化。
第1問
与件文と問題文を読むと、「納期遅延根絶」が一貫した課題であり、C社長はあなた(中小企業診断士)にこの課題を解決するために助言を求めていることが分かる。したがって、弱みとして納期遅延を挙げる必要はなく、納期遅延の要因を挙げるべきだ。
モニュメントの受注事業が需要変動が大きいのは事業の性質によるものなので、同業他社に劣っている訳ではなく、弱みとして挙げるのは説得力に欠ける。
- (a)強み
- 表面品質・溶接・研磨・装飾性に優れた技術力(第3段落)
- 設計から製作、据付工事の一括受注可能(第3段落)
- (b)弱み
- 受注や生産計画が非効率
- 大型製品は対応不可(第2段落)
- 一部技術者が未熟(第11段落)
- 工場の作業場が狭い(第14段落)
第2問
設問1
「3D CADの導入」は全ての予備校が言及していたが、これは設計の問題である。受注・工事における顧客対応とは区別すべき。
- (a)問題点
- ①受注時に顧客との打ち合わせに時間を要し、モニュメントの最終検査で修正・手直しが生じる
- ②2D CADを使用した設計が非効率
- (b)対応策
- ①製品仕様を3Dモデルで顧客と共有し的確に把握する事で打ち合わせや修正の手間を省く
- ②3D CADを設計に導入し効率化
設問2
工場レイアウトの最適化も有力候補だが、第4問に温存しても良いだろう。
- (a)問題点
- ①技術力が不足した作業チームがある
- ②生産計画が月次の為非効率で、基準となる工程順序や工数管理が未標準化
- (b)対応策
- ①技術が未熟な人員にOJTを行い高度な作業に従事可能にし生産力強化
- ②生産計画の週次化、工程管理の標準化で効率化を進める
第3問
- 業務効率化
- メッセージソフトで打ち合わせする事で製造作業の不在時間を減らし稼働率向上
- スケジューリングに数理最適化ソフトを使用し、生産計画最適化と計画策定の人員削減
- 受注や設計データをDB化し作業の進捗を端末で全社的に即時共有
第4問
モニュメントの事業拡大が問われているので、与件文に書かれたモニュメント事業特有の強み・弱みを利用して解答する。高度な加工技術を持った人員が必要なことが増産のボトルネックだ。
事例Ⅲは生産・技術がテーマなので、マーケティングや営業部の強化といった、事例ⅠやⅡのような提案をしても評価されない。工場を大型製品に対応するよう改築・増設する提案が正解の一つである。これを書けたのは、予備校の中ではAAS名古屋、ユーキャン、大原で、個人では「資格取るなら」。
- 受注の充実・拡大に対応
- 大型製品も受注できる様工場の改築・増設
- SLPで工場レイアウト改善し生産拡大
- モニュメント加工の標準化・手引書化により効率化
- モニュメントを3Dモデルで共有し製作図への理解を深め、OJTで技術者育成
事例Ⅳ
今年度はNPVの問題が易化した一方、その他の問題が思考力を問う良質な難問となった。NPVは例年難しいので受験者の多くが捨て問にしてしまうのだが、今年度は減価償却や法人税率を無視した単純な問題となり捨てるわけにはいかなかった。良い出題傾向ではあるが、NPVの問題文が不適切なために却って混乱を招く事態になった。
第2問
設問1
BEPの公式と言えば「固定費÷(1-変動費率)」だが、変動費率が一定でないためこれは使えない。公式を暗記しただけの受験者を落とす良問。
設問2
広告効果は税引き後CFであることが書かれている一方、広告費については何も書かれていない。わざわざ広告効果にのみ税引き後CFであることを示しているということは、広告費は税引き前であると解釈するのが自然だ。ところが法人税率が書かれていないので不適切問題である。こういう場合は自分に都合の良いように解釈して法人税率は無視しよう。
目的 | 入力 | 画面表示 |
X6年度末のCF | .681 × 59 M+ | 40.179 |
X2~X5年度末のCF | .735 + .794 + .857 + .926 × 30 M+ | 99.36 |
NPV | 5 M- MRC | 134.539 |
目的 | 入力 | 画面表示 |
X4年度末のCF | .794 × 23 M+ | 18.262 |
X2~X3年度末のCF | .857 + .926 × 10 M- | 17.83 |
NPV | 5 M- MRC | -4.568 |
第3問
設問1
記述のポイントは、「純資産時価と買収額の差額」である「100百万円」を「負ののれん」として「特別利益」に計上するという点。
設問2
- 買収に伴い財務の安全性が悪化しうる
- デューデリジェンスの必要性
- 収益力の悪化
第4問
設問2
利息の受取りと支払いは営業外損益の勘定科目なので、営業利益には含まれない。
予備校によって4.18%, 4.02%で答えが分かれている。四捨五入して4%になれば部分点が得られるのではないか。
設問3
セグメントの収益性という部分最適化が全社的な収益性という全体最適化を果たさない事があるというのが本問の趣旨なので、資本コストに触れるのが正しい。その他、売上高営業利益率で評価する方法も得点になるだろう。