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高校数学 東京大学2016 (平成28)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度:B,B,B,C,C,C

解答例

第1問

不等式の証明なので、微分の問題だと判断しよう。対数関数に変換してから微分する。対数関数の係数にxが含まれたまま微分すると再び対数関数が現れてしまうので、うまく式変形しよう。

第2問

問題文を読んだだけでは推移をイメージしにくく難しそうだが、1試合目から推移図を書き出してみると、思いのほか単純なパターンだと分かる。(2)で「3m回」という数が示されているのも、3試合で1パターンになっていることを示唆している。

第4問

鋭角三角形の必要十分条件を複素数平面で扱いやすいように数式で表そう。複素数平面は角度を扱いやすいのが特徴なので、「3つの内角が90°未満」を数式化する。

∠C について、公式「(γ -α) /(β -α) = (γ’ -α’) /(β’ -α’) ⇒ △αβγ ∽ △α’β’γ’」を利用すると、(z2 -1) /(z -1) = (z +1 -0) /(1 -0) である事から、「1, z, z2が作る三角形は0, 1, z +1が作る三角形と相似」と言える。この様に置き換える事で計算を楽にできる。

第5問

(1)や(2)は難問で、問題内容の把握からして大変だ。把握が難しいときはK = 1や2で実験してみよう。

(3)は(1)や(2)を誘導にした問題ではなく、無理数が無限小数である事を示す典型問題なので(1)や(2)よりも易しい。

第6問

空間図形の求積問題。この手の問題に慣れてしまえば非常に易しいと感じるようになる。

まずは点Aの動く領域を調べよう。すると円の内部を動くと分かるから、Kはz軸周りの回転体だと分かる。そこでKをxz平面で切断して考察する。

高校数学 東京大学1982 (昭和57)年度 理系前期入試問題の解説

解答例

第2問

空間図形の問題は対称性に着目するのが常道。与えられているデータは球Sの半径で、求めるのは正四面体Tの一辺の長さだから、これらが現れる断面を考察するのが筋がいい。

正三角形の重心は高さ1/3の位置にあるが、正四面体の重心は高さ1/4の位置にある。この知識を使っても解ける。

この問題にはエレガントな解法がある。頂点を正四面体Tと共有する立方体を考えると、球Sはその内接球である。

第4問

難しい微分方程式の問題。

x, yはtの関数として不明なので、tを消去する方針で行こう。まずは、合成関数の微分を利用してyを消去。するとv1, v2をxで表せる。さらにそれらを用いてdv1/ dt, dv2/ dtを作れる。

問題の簡素さとは裏腹に計算量は多く、尚且つ答えは非常にシンプルなのが面白い。

第5問

zの不等式は複雑だから一先ず置いておいて、x, yの不等式で範囲を確認してみよう。すると立体の底面は平行四辺形の内部だと分かる。y軸に垂直な平面で切断すれば断面の幅は一定値で求めやすい。

zの不等式の右辺はyの2次式になっており、yを固定すると断面が単純なものになると期待できるのだ。

高校数学 東京大学1981 (昭和56)年度 理系前期入試問題の解説

解答例

第1問

「空集合になる場合の数」と「f(n, k) = f(n, 1)を満たすn, k」の2つを答える必要があるが、小問に分けるべきだろう。前者を解答するだけでも10点得られるだろう。

第2問

頂点A1を固定することで場合の数が1/6に激減し、数え上げも可能になる。

第3問

点P(a, b)、点R(a, t2)とする。

法線の傾きは-1 /2tだ。ここで、PQに根号が含まれているという不自然な特徴に着目すると、直角三角形PQRの三角比から、b = yが簡単に導ける。

面積は、Cがxの関数、C’がyの関数となっているので、y = xで分割するのが良い。

第4問

明らかに図形的対称性のある問題なので、まずは図形的に考察していこう。平面z = tで考察すると、点A, B, Cを頂点とする円錐の断面がそれぞれ現れる。

点Pはxz平面上で動くのは明白だから、この平面上で条件(ロ,ハ)に基づく軌跡1と条件(ニ)に基づく軌跡2を調べよう。軌跡1は、円錐を母線に平行でない断面で切断しているので双曲線になる。結局は共有点の個数の問題に帰結する。

第6問

(1)条件から、f(x)とy = 1 -|x|がx = ±1で共有点を持つと分かる。故に両式を連立した際に(x ±1)で割ることができるので、字数下げが出来る。

(2)積分関数は(1)が解けなくても容易く解ける。

高校数学 東京大学2017 (平成29)年度 理系前期入試問題の解説

「大学への数学」における各大問の難易度: A, B, C, B, B, C

本年度は丁寧な誘導となる小問が付いた大問が多い。誘導無しで解けるようになっておこう。

分析: 東進, Z会, 河合塾

解答例

第1問

g(θ)にθ = 0を代入してみると分母と分子がいずれも0になるので、x -1で約分できる。これに気付かないと計算が面倒になる。

(1)の誘導が親切過ぎて非常に易しい大問になっているので、(1)は不要だったと思う。

ちなみに、f(θ) = F(x)とおくと、g(θ)には「点(1, F(1))と点(x, F(x))を結ぶ直線の傾き」 という意味がある。

第2問

(1)点Pがy = x 上にあるとき、「上+右の移動回数の和」と「下+左の移動回数の和」が等しい。6秒という設定を4秒にして実験すると気づきやすい。

(2)(1)とは独立の方法で解ける。(2)の方が易しい。

第3問

(1)と(2)は別の問題のように思えるが、どちらもzが直線上を動くという設定。(2)は、(1)の直線が線分になり、α = -1としただけ。

第4問

誘導が異常に丁寧。

(4)実験によって最大公約数は常に2であると分かる。

第5問

(2)グラフを描いてみれば、傾きa = -1の共通接線が存在することは一目瞭然。但し、(1)で求めたbの式はa ≠ -1という条件なのでa = -1を代入してはいけない。

第6問

(2)円錐の底面の円周は、原点からの距離が常に1だ。よって、その円錐をx軸回転させると球の一部が現れる。これに気付けば、軸回転の求積法が楽だ。断面x = tで求積しても難しくはない。

高校理科 東京大学 物理・化学 2009 (平成21)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

第1問

二体問題とバネの融合問題。

[I]

(2)物体1, 2同士では作用反作用の法則により同じ大きさの力が掛かる。非慣性系なのでその力は時間変化する。

(3)運動方程式を利用しなくても、物体1はバネ自然長の位置で減速するのでx = hは自明。

[II]

(1)単振動の周期は、いかなる時も物体の質量とバネ定数のみに依存する。

第2問

[I]

(2)合力には電磁力だけでなく重力も忘れずに。

第3問

気液共存がテーマ。2020年度東工大物理でも取り上げられている。

化学

第1問

[I]

(ア)電子殻は最大で2n2個の電子を収容できる。第4周期の遷移金属は、価電子数(N殻)は全て2個であり、族が増す毎にM殻の電子が増えていく。

[II]

()ポリエチレンは重合度が十分大きいので、末端のH原子を無視して CnH2nとして扱って良い。するとシクロオクタンと燃焼熱が等しいと分かるので計算は不要。

(コ)反応熱=(生成物の生成熱の和)-(反応物の生成熱の和) という公式を使いたくなるが、与えられているのは生成熱ではなく燃焼熱なので、使えない。

第2問

[I]

問題文で複数の金属イオンが挙げられているので、系統分析の問題だと気付ける。

(ア,イ)実験1で坩堝を加熱することで、ヘキサフルオロケイ酸は四フッ化ケイ素に変化し揮発する。これによりケイ素が坩堝から除かれ、金属イオンと硫酸が残る。

(ウ)実験2では酸性条件なのでFeSは沈殿しない。

第3問

[II]

真新しい問題。

ケ.アルコールが題材なら水素結合を疑おう。

高校数学 東京大学1995 (平成7)年度 理系前期入試問題の解説

東大数学が最も難しかった90年代の中で例外的に易しかった年度。

解答例

第1問

シンプルながら次のような工夫が求められる問題。

  • 同次式なので1変数に置換する
  • 不等式なので相加相乗平均やシュワルツ不等式を利用する

第2問

図形的には、g(x)が下に凸の関数であることを証明するという意味があるが、積分を解いて不等式を証明する方法でも良い。

第4問

整数問題ではあるが、f(n)が下凸の関数であることは容易に気付ける。

第5問

(2)座標系の持つx軸とy軸に関する対称性に着目する。

高校数学 東京大学1980 (昭和55)年度 理系前期入試問題の解説

全体的に易しい。

解答例

第1問

(1)△ABPと△BB’Pの相似に着目するのが良いだろう。

(2)△ABCと△A’B’C’も相似なので、面積を求めるまでもなく、辺の比が√2であることを利用すれば良い。

第2問

東大らしい空間図形の良問。曲面上の曲線の長さというと如何にも難しそうだが、球面Kと円弧ABがどちらも直線NSを軸としている点に着目するのがコツ。

図形に関する問題なら、対称性や角度などの図形的考察を必ず行うようにしよう。

第4問

x2 +y2 の式を作ったら、そのまま微分すると煩雑な計算になるのでz = (sin t・cos t) /2 と多項式に変換する。解の配置の問題ではなく、最大最小値の問題なので、変換時に単調性の確認は不要。ただしkの値で場合分けは必要になる。

三角関数の微分という選択肢がない分、文系の方が解きやすい問題かも。

高校理科 東京大学2008 (平成20)年度 物理・化学 前期入試問題の解説

物理

前年度より難化。

「ネオンランプ」や「密度の勾配」といった目新しい設定が見られるが、もはや即応力を測る問題となっており、物理の学力を測るという本来の趣旨から外れている様に思える。受験生の得点分布を散らばらすにはこうせざるを得ないのだろう。

解説

第1問

[III]

どんな力の加え方をしても、箱を押す力以外の外力は加わってないので、与えた仕事は最終的な速度に依存する。

[IV]

最初に強い力で短時間の内に押すのが効率的だという事実は意外性があり面白い。ボールを遠くまで飛ばす為に、バットで打撃するのは理に適っているという事だ。

これは正に撃力の概念だが、理論上は幾らでも力を大きく、接触時間を短くすることが出来てしまうので、上限値 F0 が設定されている。

F(0) = F0, F(T)= 0のグラフが描けていれば部分点が得られるだろう。

第2問

ネオンランプを用いた回路図の問題。

ネオンランプの回路記号はコンデンサーの様に導線が接続されてない様に思える奇妙な物だが、改定した方がいいのでは?

[I]

計算量が多いが、手計算においてCA = a, CB = b, Von = n, Voff = f と置き換える事で効率化できる。

[II]

「Qは一定」というヒントがあるので電荷保存則を利用しよう。

第3問

難問。浮力による単振動というよくある問題を、液体を気体にして考える。

東大物理では目新しい定義の文字や関数が頻繁に登場する。混乱を避ける為に、問題文の中で定義している箇所に印をつけると良い。

[I]

(1)東大物理は導出過程を書く必要がないので、分からなければ適当に答えておこう。

(3)不要な文字を消していくのではなく、係数比較をする。物理というより数学的問題だ。これが解けなくても(5)は解ける。

(5)(*)式から微分方程式を建てる。実は、微分方程式を使わなくてもz = 0 に於ける力の釣り合いを立式する事でも解けるし、こちらの方が速い。

化学

東進の解説

第1問

[I]

計算問題は1問当たり10分程度掛かるのでコスパが非常に悪い。こんな問題を出題したいなら電卓を使用可能にすべきだ。時間が掛かる問題かを調べる時間が勿体ないので計算問題は全て後回しにしよう。(オ)だけ解けば良い。

[II]

.錯イオンは配位子が4つ以上あると必ず立体になる。銅は例外的に平面になると教わるが、実は水が配位子として上下に結合している。

第2問

[I]

.一部が酸化還元反応を起こしてしまったヨウ素の「昇華精製」の方法。

イ.フッ素は酸素を上回る電気陰性度を持つ。

ウ,エ,オ. 東工大化学の様な重厚な計算問題。思考力を要する良問。

[II]

ア.尿素は炭酸とアンモニアのアミド。

第3問

[II]

ケ.立体異性体は16個あるので不適切問題。

高校化学 東京工業大学2008 (平成20)年度 前期入試問題の解説

解説

[1]

問i

  • 3,4,5.エタノールはアセトアルデヒド→酢酸と段階的に酸化する。Ca(OH)2と反応するのは酢酸のみ。 巧い引っ掛け問題だ。Bがアセトアルデヒドだとすると、(5)ではビニルアルコールが生成し、ケトエノール互変異性によりアセトアルデヒドに変化する。よって正解が3つになってしまうので勘違いに気付ける。

問iii

炭素原子を追跡すると良い。脱炭酸反応で炭酸カルシウムが生じる時にCを一個失っている点に注意。

[2]

「ナイロン6, 6を扱った問題だろうから、ジアミンはヘキサメチレンジアミンだ」と思ったら間違い。

ポリアミドAの繰り返し単位の分子式はすぐに分かる。その後に構造式を描いて調べるのは非効率。繰り返し単位の末端と結合部位にH2Oを足せば、ジアミンとアジピン酸の分子量の和が得られる。

[4]

問ii

1.クラーク数とは、各元素の地表付近の地殻における質量パーセント濃度のこと。酸素は50%にも及び、意外にも大気中より高濃度。ケイ素は25%だ。

[5]

問ii

平衡定数の式を作っていくが、答えは対数の形式だから、式を10の累乗の形に整える。

[6]

問ii

  • B.鉛蓄電池では、放電すると正負の両極で同じ質量のPbSO4 が析出する。
  • D.酸性溶液中では、KMnO4は還元されるとMn2+になる。また、H2O2 は金属ではないので酸化された際にSO42-と結合することはない。よって、酸化還元反応が完了すると、SO42- は K+, Mn2+ とのみ結合する。こう考えれば、反応式を書く必要がないので圧倒的に速く解ける

高校物理 東京工業大学2004 (平成16)年度 前期入試問題の解説

いずれの大問も応用力を要求される高度な問題。原子分野からも5年ぶりに出題された。2題が天体を扱っている。

解答

[1]

天体の三体問題。三体問題は一般的には現象が極めて複雑になるが、ここでは極力単純化された設定を扱っている。

(b)

(a)での考察を元に立式する。これらの式を利用してこの後の問題を解いていく。複雑な式が多数出てきたように見えるが、天体1のx方向は恒等式であり、天体3の式はいずれも天体2の式と同値なので実質的に3つの式を利用する。

(c)

ベクトルの考え方と同様の計算をすれば効率的。重心の式を作ると、Mb -2mc = 0を導けばよいと分かる。

(d)

L = 2aを導くことを目標にする。

3体が正三角形を形成するという興味深い事実が判明したが、実は3体が万有引力と遠心力が釣り合って安定する配置には正三角形と共線がある。

(e)

(d)が誘導になっているが、(d)が解けなくてもL = 2aを代入することで解答できる。

この問で得た角速度に加えて、回転中心が3体の重心であること(c)、3体が正三角形に位置すること(d)の3条件が3体が安定するための必要十分条件である。

[2]

珍しい設定のコンデンサーの問題。

(b, c)

P2はt = 0, t1 の時は別の極板と接着して静電誘導が起きているので、それらが離れた際のP2の電荷の和は0ではない。その事実は問題文で明示されている訳ではなく、自力で気付かないとこの先の小問も全て間違うので、中々難しい大問だと言える。

[3]

中性子星のX線(ガンマ線)バーストが題材。原子分野からは5年ぶりの出題となったが、基礎知識を覚えただけでは歯が立たない応用問題だ。この大問の平均点はかなり低かっただろう。

(b)

水素の原子核は陽子1個。与えられた式は、56個の陽子の中で30個がβ崩壊して陽電子を放出して中性子に変化し、残った陽子26個・中性子30個で鉄原子1個を作るという反応を表している。

核融合により結合エネルギーの差(質量欠損)が放出される。更に、β崩壊により飛び出した陽電子は電子と対消滅して光子になる。この両者のエネルギーの和を求める。

質量欠損については原子力安全システム研究所の資料が分かりやすい。

(c)

鉄原子を気体として扱っているのは、相転移に必要なエネルギーを計算させないための配慮だろう。

生成した鉄を一つの塊と見做し、これに爆発で生じたエネルギーが運動エネルギーとして与えられたと考えれば分かりやすい。

(d)

難問。

題意の把握からして大変だ。ある量の水素が中性子星に降り注ぎ、(a)に対応するエネルギーが定常X線として放射される(E2)。その後、(b)に対応するエネルギーがX線バーストとして放射される(E1)。つまり、両者のエネルギーは同じ量の水素からもたらされているのだ。

E1 におけるmFe の値が不明なので、これを与えられた静止エネルギーと結合エネルギーの物理定数を用いて組み立てる。化学におけるエネルギー図を用いた反応熱の計算と似た作業だ。