高校理科(物理) 筑波大学2018 (平成30)年度一般入試問題の解説

問2

鉛直ばね振り子の周期「T = 2π√(m /k)」は憶えておくべき基本知識だが、微小振動の単振り子の周期「T = 2π√(l /g)」と混同してしまう可能性もあるので、円運動の正射影として導出できる方が良い。(この問題では式に用いる記号が与えられており、lやgは無いので混同はしない)

周期はT = 2π /ω と表せるので、ωと与えられた単位(x0, V0 M, k, π)を含む式を導けばよい。

また周期は明らかにバネ定数kに依存しているので、kを含む式を思い出そう。F = -kx である。つまり運動方程式をωを含む別の形で表現すればよいのだ。

円運動の正射影の変位は「x = A・sin (ωt)」であり、速度はt微分なので「v = A ω・cos (ωt) 」。加速度は更にt微分して「a = -A ω2・sin (ωt) 」 であるが、これに変位の式を代入すると「a = -ω2x」。運動方程式は「F = ma = -mω2x = -kx」となるので「mω2 = k」が得られる。

「mω2 = k」と「T = 2π /ω」の組み合わせで周期は得られる。


振幅は円運動の半径A に等しい(直径ではない。ちなみに波の振幅も高さの半分だ)。振動中心とは即ちt = 0 であり、tと与えられた単位を含む式「v = A ω・cos (ωt)」よりV0 = Aω なのでA = V0 /ω である。

単振動のエネルギー保存則から導くとより速い。振動中心では運動エネルギーが最大(1/2・mv2)、位置エネルギーが0である。逆に両端では運動エネルギーが0、位置エネルギーが最大( 1/2・kA2 )である。つまり単振動の力学的エネルギーは1/2・MV02 = 1/2・kA2 と立式出来る。運動エネルギーと位置エネルギーの最大値を等式で結ぶのは一般的なテクニックだ。

問4

反発係数と運動量保存則の方程式をそれぞれ立てる。上向きが正であるである事に注意。

反発係数を立式する際、小球と板は衝突前後で運動量が変化するので、相対速度を用いる。

式を整理する過程で分数になる形を作ってしまうと計算が面倒になるので回避しよう。v0 は最後に代入するのが楽。

問5

小球と板は、衝突後、原点Oに戻ってくる時間が等しいのでこれを立式する。

小球は、最初に速度v0 で運動していたが速度-gtを受け取った結果 -v0 となったわけだから、v0 -gt = -v0 となる。

板の振動は、初速が異なっていても、振幅は異なるが周期は「T = 2π /ω」で一定である。

もし問1からここまで誘導が無ければ、まずは最初の状態を式に落とし込む事だろう。それが問1の答えになっている。釣り合いのほか、保存則(問3, 問4)にも注目しよう。そして問5のように時間について等式を立てる。

問6

(a)

Hを含む式としてH = gt2/2 と Mv2/2 = MgH (力学的エネルギー保存則)が挙げられる。

前者の式のtとバネの1/4周期が等しい(バネの振幅に関わらず周期は一定)という事を組み合わせるのが速い。

後者の式を使って解こうとすると、vを消すためにバネの力学的エネルギー保存則を用いてMv2/2 = kX2/2 が出てくるが、Xが残ってしまう。ただしこの式も後で使うので分かりやすく書き残しておく方がいい。

(b)

ここでMv2/2 = MgH とMv2/2 = kX2/2 を利用する。M, g, kは(a)の解答を利用するとうまく消せる。

(c)

小球とバネはどちらも「質量」と「衝突時の速さ」が同じで反発係数が1なので、衝突前後で速さが同じだ。したがって衝突を周期的に繰り返す。

小球が放物線運動をする時間とバネの半周期が同じなのだが、与えられた単位がkを含みgを含まないので、バネの半周期から考える。

最初に衝突までにバネの1/4周期分の時間が掛かっている事に注意。混乱しない様に図を描いても良いだろう。

もし問6に誘導が無ければ、まずは小球と板がどのように振舞うかを調べる。そしてやはりつり合いと保存則を立式する。

「アラゴーの円盤」が題材。

問2

電磁誘導の法則によれば誘導起電力はV = -N・Δφ /Δt で表される。円盤上のコイルの巻き数は1なので V = -Δφ /Δt に(1)で得た式を代入する。

誘導電流は磁束の時間微分に比例するので、平らな直線で表される。

レンツの法則により誘導電流は時計回りに流れる。電流の向きは上から見て反時計回りが正と定義されているので、 グラフでは0 < t < t0 の領域で負、t0 < t < 2t0 で正だ。

問3

導線と磁束の距離の変化に伴うローレンツ力は、円盤の接線方向に垂直なのでここでは無関係。

電磁誘導によりコイルに電流が流れ、辺LM, JKの部分で磁場により生じるローレンツ力を計算する。

「0 < t < t0」と「t0 < t < 2t0 」では電流の向きがそれぞれ時計回り・反時計回りだ。結局どちらの辺にも同じ向きのローレンツ力が加わることになる。

問5

円盤の回転が磁石と速さが同じ事と向きが同じ事を書けば満点だろう。

ここまで誘導が無ければ、電磁気の分野なので電磁誘導とローレンツ力を調べる。条件を単純化して円盤を固定したものとして円盤の振舞いを調べる。電磁誘導の法則はコイル一個に対して記述したものなので、円盤の一つのコイルの振舞いに注目する。

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