高校理科(物理) 筑波大学2019 (平成31/令和1)年度一般入試問題の解説

易しい問題と難しい問題が混在している。大問の中で「小問を解き進めるほど難しくなる」という訳でもなく、誘導も余り関係ないので、難しい問題はドンドン飛ばして行った方がいい。

斜面を滑る物体というオーソドックスな問題。センター試験レベル。

問1

摩擦力が、その力と垂直である垂直抗力の大きさに比例するという不思議な性質を持っているのは、物体と床面の間の微小な凹凸の引っ掛かりに由来するからだ。

ふつうは「静止摩擦係数の値を求めよ」となるところが「tanθを求めよ」となっているのがチョットした捻りだ。静止摩擦力νはtanθで表される事は憶えておいても良いだろう。

問2

求める時間は、等加速度直線運動の公式「距離 = 1/2 * at2」を使う。

求める速度は、運動方程式から加速度を求めて時間tを掛ける方法と、力学的エネルギーで立式する方法がある。

問3

  • 重力がした仕事は、力と距離を 坂に平行なものに分解する必要はなく、そのままmghでよい。
  • 垂直抗力は文字通り運動方向に垂直なので仕事をしない。
  • 摩擦力がした仕事は、「摩擦力×進んだ距離」だ。

これらの力の総和が「進行方向の力 × 進んだ距離」に等しくなる。

問4

点B周りの重力のモーメントの釣り合いを考えて立式するのが正攻法だ。一見すると作用線が分かり難いが、物体を軸を中心に回転させるような力がどこから来るのか考えれば良い。これについては スマナビングの解説が詳しい。

でも、そんな事をしなくても直感的にBDが水平面に垂直になる時に転倒が始まると分かるのですぐ答えは出せる。

ちなみに、摩擦力や垂直抗力の力のモーメントを無視していいのは、作用線が軸から出ているので回転力を持たないからだ。

問5

  • 重力の反時計回りのモーメント: mg * sinθ2 * a/2 + mg * cosθ2 * b/2
  • 力Fの時計回りのモーメント: F * cosθ2 * a – F * sinθ2 * b

これらが釣り合うので等式化する。

問6

問5の応用だが、直感的に答えられる問題。

題意を満たす条件とは、「力Fの作用線が ACより下に潜り込む事」。数学的に言い換えれば、力Fの時計回りのモーメントが0以下になる事だ。

まず、回路のどの地点を電位の基準とするかだが、問5に「点eの電位を0とせよ」と書かれているのでこれに従うのが合理的だ。

問1

コンデンサーC1の負極板とコンデンサーC2の正極板をつなぐ回路は電気的に孤立しているので、 それぞれのコンデンサーが蓄える電気量が等しいわけだ。その様な考え方以外にも、コンデンサーの充電や放電をさせた時に、コンデンサーC1の正極板とコンデンサーC2の負極板の電荷が異なっていると矛盾が生じるので等しい筈だと分かる。

一般的解法 を用いて解く事ができるが、「直列の合成容量の公式」または「キルヒホッフの第二法則」を用いると速い。

問2

まず流れた電気量を算出すれば、自ずと電流の向きも分かる。スイッチS2を閉じるとc地点の電位はEになる。

まずスイッチS2を閉じる前のc地点の電位Ebを求め、そのEとの差と「コンデンサーC1, C2 の電気容量」とをそれぞれ掛けて合計する。

Eb は問1で求めた二つの値どちらからでも求められる。 d地点の電位は0だから、2Eから C1 電位差を引けばいい。もしくは、Q1 = Q2なので、Qを C2 で割る事でも求まる。

問3

設問の行為によって変化したのは、静電容量と電気量である。比誘電率3の誘電体を挿入したので、静電容量Cは3倍になり、それに伴いQも3倍となった。

電気量Qは、「Q = C * V = A * s」という様に単位の組立としては二種類の表し方がある。 求めるのは電流Aなので、 これを利用しよう。

電気量は単位がCなので、静電容量C = ε* S / d と混同しやすいので注意。

問4

スイッチを切った後は電荷の逃げ場がないため、誘電体を取り除く前後で コンデンサーC2 の電気量は変化しない。そして、電気量が一定だと、Q = C * Vなので、静電容量が減る事で電位差が増加するという事に気づくのが肝だ。静電容量Cは3C2 からC2 へ減少すると分かっているので、静電エネルギーの式はU = Q2 / 2C を用いるとよい。

問5

コンデンサーC2 が充電されているのでヤヤコシイが、一般的解法を使える。電圧は C1 が負の値で算出されるが、絶対値で答える。

グラフは、c地点が最も高くなる。 求まるコンデンサーC2 の電圧は3Eより小さいと分かるので、 c地点の電圧は2Eより大きく3Eより小さい。

問1

相対屈折率n12 = sinθ1/sinθ2 = n2/n1 という風に、絶対屈折率の比は関係性が逆になっているので注意。

問2

図では直角三角形BDGが直角二等辺三角形に見えるが、これは偶々なので注意。与えられた距離はdだけなのでこれを利用し、i0とr0それぞれと等しい角度を見つけて値を特定していく。

問3

明るさを最小にしたいという事なので、光路差が (m+1)λ/2 となればよい。mでも良いと思うが、解答ではm+1となっている。

次に光路差を求める。GEとDEの光路長は等しいのは明らか。BGに等しいのは、BF⊥CDとなるのでFDである。したがって光路差はBCFだ。光路差の求め方はトライイットの解説の様に補助線を引く方法が速い。光路差が2nd cosθという式になるのは定番で、憶えていてもいい。

問5

この装置はジャマン干渉計という。

問6

気体の圧力と屈折率が比例するという高度な知識が必要。

「50回光が暗くなる」という表現も意味不明だし、「もとと同じ最大の明るさになった」のは初めてなのか分からないので不適切問題だ。解説によると、「 50回光が暗くなる」は 「 50回光が明るくなったり暗くなったりする」という意味らしい。

空気の屈折率は真空と同じ1なので、求めるのは n1 – 1の数値だ。 n1 – 1 という式は、与えられた「ガスの屈折率の式」に含まれていて、結局はこれを式変形して出すことになる。

方針は、屈折率と波長の情報が与えられているので目星は付くだろう。P1とP2の場合で干渉の式を立て、mをキャンセルする為に辺々引くのだ。

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