事例Ⅰ
第1問
※補修用性能部品の保有期間とは、販売した製品が故障したときに修理ができるようにするため補修用性能部品(製品の機能を維持するために必要な部品)を家電メーカーが保有している期間のこと(JEMA)。
「最大の理由はなにか」と問われているが、直接の理由として第4段落に売上減少と費用増大が併記されているし、100字も一つの理由を語るのは難しいので、一つに絞る必要はないだろう。
- 全社的な売上減少(第4段落)
- たばこ市場の縮小
- 乾燥機の買い替え需要を奪った
- 費用増大(第4段落)
- メンテナンス事業は部品確保と在庫が必要
- 高コストな組織体質は改善しなかった
備考
- 「売上減少」と書くだけではメンテナンス事業のみに対する記述と誤解されうるので、「全社的な売上減少」と書くべき。
- 事例Ⅰは「組織・人事」がテーマなので、高コストな組織体質にも言及しよう。
第2問
「古い営業体質」として第5段落に「期限切れ部品の補修の個別対応」や「前近代的な経理体制」が挙げられているが、このままでは企業風土とは呼べないので言葉を補う必要がある。
- 期限切れ部品の補修の個別対応など非収益性
- 前近代的な経理体制などの非効率性
- 昔の成功体験を忘れなれない古参社員に危機感が足りず、改革への意志や協力が不足していた
第3問
問われているのが「成功の背景にどのような要因があったか」という漠然としたものなので、何を答えても良さそうに思えるが、設問に「HPに期待する目的・機能とは異なる点に焦点を当てた」とわざわざ書かれているので、インターネットの利点に焦点を当てて記述するのが良い。
第9段落に取って付けたように書かれている営業部隊の件は、事例Ⅰのテーマが「組織・人事」であることを考慮しても重要に思えるので答案に組み込みたい。
- インターネットの双方向性を活かし、潜在顧客のニーズを把握し、かつては困難だった潜在市場へのアプローチを可能とした。
- 営業部隊による優れたプレゼンで、潜在顧客の自社サービスへの関心を高めた。
第4問
問題文には「事業領域を明確にした結果、積極的に取り組むようになった」と説明されており、その要因を問うているが、答えは当然「事業領域を明確にしたこと」である。問題文が論理的におかしいのだが、受験者の回答を正しい方向に誘導しようとしてこうなったのだろう。こういう場合は無難に「事業領域を明確にしたこと」を詳述しておくのが点数を稼ぐうえでは大事である。
その他の要因については、Kotter の組織変革の8段階モデルが参考になる。
- 営業部門の労働意欲向上
- 農作物の乾燥技術をコア・テクノロジーとして明確に位置づけし社内に共有
- リストラを通じて社内に危機感を醸成
- 成果報酬制導入
第5問
組織再編には指示系統やチームの混乱やコスト増のリスクも伴う。期待の大きい新規事業が成長中の最中、組織再編するのはタイミングが悪い。事業が安定してから着手しても遅くはない。
機能別組織のメリットを挙げることで組織形態の知識があることを試験官にアピールするという方向性もアリだろう。
口述試験
- 事業承継にあたり、後継者が農業経験がないことによる留意点
- 代表や常務から後継者への承継をどのように進めるべきか
- A社では新規事業の展開を考えているが、今後どのような組織体制をとるべきか
- 農業と直営店の発展に向けて必要な方策
- A社は、直営店も営んでいる中で、取引している大手中食会社とは、どういう関係構築をしていくべきか
- コアテクノロジーをより浸透させる方法
- A社は正規社員が大半であることのデメリット
- 業績向上のためにA社の社員を活性化させる手段
事例Ⅱ
第1問
この設問を回答するのは後回しにして、他の設問を解くために与件文を読む際に、同時にSWOT情報を集めるのが効率的だろう。
- S
- 技術力、顧客への提案力(第6段落)
- 賃貸料が安いため固定費が低い(第3段落)
- 顧客から店の雰囲気が落ち着くと好評(第3段落)
- W
- 店舗が商店街中心から離れているため集客力が低い(第3段落)
- 顧客の年齢層の偏り(第6段落)
- O
- 商店街の他社と関係良好で協業の可能性(第3段落)
- デザイン性が強みなので、SNSでの拡散効果に期待できる(第6段落)
- ネイルサロン市場に成長余地(第5段落)
- T
- 大手チェーンによる低価格ネイルサロンの出店(第7段落)
- X市周辺に競合が多数おり、市場成長鈍化と立地の悪さから顧客を奪われる可能性(第5段落)
備考
- O: ネイルサロン市場に成長余地があるという機会は競合にも当てはまることなので記述の優先度は低い。
- T: 「小型ショッピングモール開業を控えた時点の状況」という指定は、低価格ネイルサロンに言及してはいけないとも解釈できる。仮にそうだとしても、言及により減点されることはないだろう。
第2問
表でわざわざ価格体系が示されているので、「顧客にオプションを注文してもらい客単価を高める」という説明は大事だろう。
- デザイン面で競合と差別化しオプション注文を促す
- 季節や様々な行事に合うネイルデザインの提案
- 顧客の属性に合うネイルデザインの提案
- デザインを写真付きで送ることで訴求力を高める
第3問
設問1
「どのような協業相手と組んで、どのような顧客層を獲得すべきか」と指示されているので、協業相手と顧客層を明確に分けて書いた方が良い。
図1で年齢別人口構成比が示されているので、年齢で標的を絞るのが望ましい。協業の具体的内容は問われていないので書く必要はない。
- 協業相手
- 商店街のファッション関連店
- 顧客層
- ファッションに敏感な中年女性
- 理由
- デザイン性が強み
- 商店街の他店と友好的
- Y氏は中年女性への接客に評判がある
- オプション注文で収益増が見込める
設問2
「協業を通じて獲得した顧客層を…」と書かれているので、設問1と設問2の回答の一貫性が得点に影響すると思われる。「リピートに繋げる」という要件を満たすのが難しいが、「イベント前に毎回来店してもらえる」とか「満足度向上」と書いていれば自然だろう。
- X市は様々なイベントが盛んなので、Y氏の接客力を活かして顧客の要望を聞きつつ参加イベントの雰囲気に合わせたデザイン性の高い提案を行う(第2段落)
- 顧客が理解しやすいように写真を用いて説明する(第4段落)
口述試験
- 新規顧客に対し、クーポンを配るとすれば、どのようなクーポンにすべきか
- B社の強みとそれを活かした戦略
- ショッピングモールに出店する大手チェーンのネイルサロンの弱み、それに対するB社の戦略
- B社は顧客データベースを作成予定だがどのような情報を載せるべきか、そしとそれをどのように活用するか
- B社はジェルネイルの施術前後の写真をSNS等で活用すること考えているが、その効果は
事例Ⅲ
第1問
問題文に「C社の事業変遷を理解した上で」と条件付けられているので、熱処理業務と機械加工業務の関係に焦点を当てる必要がある。
- 熱処理と機械加工を一貫生産できる(第2段落)
- 多品種少量生産に対応(第3段落)
- 金属熱処理と機械加工における優れた技術者(第6段落)
- 扱いやすく効率的な加工機を複数保有(第5段落)
- 明確な経営方針を持つ社長(第13段落)
「強み」は同業他社に対する優位性や差別化できている点を指す。第2段落の「一般に金属加工業では」という記述は、同業他社の能力が続いて記述されていることを示す重要な表現。この一文から、「熱処理と機械加工を一貫生産できる」というC社最大の強みを見いだせる。このように、他社の状況を把握することで相対的な自社の強みを導出することができる。
第2問
「効果とリスク」と指示されているので、この2つを明確に分けて書いた方が良い。リスクとして「設備投資の負担」を挙げている受験者は多いようだが、これは生産面のリスクではない。
- 効果
- 量産体制導入で全社的な生産性向上や新たな技術の獲得
- リスク
- 作業員の不足
- 新たな生産体制導入による混乱
- X社依存度の更なる高まりによる生産体制の硬直化
第3問
設問1
書ける事項は色々あるが、「C社社長の新工場計画についての方針に基づいて」と指示されているので、第13段落で社長が挙げている方針を具体化した手段を書く必要がある。
回答を「在り方は」で始めるのは日本語として不自然なので注意。
- 稼働効率の最適化
- X社に限定しない汎用的な生産ラインの導入
- 製品別レイアウトの導入
- 人材難への対応と作業者のスキルに頼らない加工品質の維持
- 作業のマニュアル化
- 多能工化の為の研修実施
- 作業の自動化
設問2
「受注生産方式とカンバン方式の違い」と「生産管理の定義」をよく理解していないと解けないので難問。
- 後工程引取方式導入の為の生産体制整備
- 機械加工・熱処理の生産計画の統合により生産リードタイム短縮して納期厳守
- X社の外注に機動的に対応できる日程計画、在庫管理、人員配置の策定
- 納品予定内示に基づいて材料発注し、リードタイム短縮と欠品防止
- 工程への負荷変動抑制の為の平準化生産の推進
第4問
第13段落の社長の方針に基づく必要があるだろう。方針1では将来の方針が明示されているので、これについて戦略立案するのは必須。ただ、それだけでは120字は埋まらないので、方針4の「近年の人材採用難」も将来続くであろうと考えて戦略立案しよう。
「戦略を述べよ」という具体性の欠片もない指示なので、深く考えずに、他の設問への答案と内容が被らないように自由な発想で回答欄を埋めれば十分だろう。
口述試験
- 繰り返しの受注生産を行うことに伴うC社にとっての問題点
- X社は機械加工をC社への移管を検討しているが、その意図は?
事例Ⅳ
第1問
設問1
収益性、安全性、効率性から指標を一つずつ挙げるのが定石だが、与件文を元に分析するという基本に立ち返れば、棚卸資産回転率と有形固定資産回転率という2つの効率性指標を挙げるのが自然だ。
- ①
- 与件文で原価高騰が問題視されているので、売上原価率と売上高総利益率のいずれかは挙げる必要がある。
- 棚卸資産回転率(効率性)は3.13⇐4.74で0.7倍。
- ②
- D社の賃貸収入は唯一の強み。有形固定資産回転率(効率性)は1.64⇐1.49で1.1倍。
設問2
与件文から、財政状態と経営成績の特徴の原因を拾ってくる必要がある。
建材・マーケット事業の不振が負債増加による財政悪化と経営成績悪化を招いている。賃貸収入は経営に好影響。
第2問
設問2
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)=固定費÷限界利益率
設問1で導出した変動費率を用いると答えは4345になる。「固定費÷限界利益率」で導出すると4343になるが、設問1の解答を利用して計算するよう指示されているので、不正解とされるので注意。
入力 | 画面表示 |
1, -, .8909, ÷ | 0.1091 |
474, ÷ | 0.00023016877 |
= | 4344.6380671 |
設問3
一般に、売上高が変化したという条件が与えられた場合、単価の変動は考慮せず売上数量の変化のみを考慮する。よってマーケット事業部の変動は売上高に比例して10%増加する。
「設問1の解答を利用」という指示は意味不明。
第3問
設問1
「全社的利益(課税所得)は十分にある」という条件は、回りくどいが「税引前利益が負になっても課税対象になる」という意味だ。したがって第1期も課税を考慮する。
設問2
回収期間の年数は整数で答えてはいけないので注意。
入力 | 画面表示 |
20, M- | 20 |
.9, ×, .952, M- | 0.8568 |
6.1, ×, .907, M+ | 5.5327 |
14.5, ×, .864, M+ | 12.528 |
9.6, ×, .823, M+ | 7.9008 |
9.6, ×, .784, M+ | 7.5264 |
MRC | 12.6311 |
設問3
煩雑な計算が必要なので後回しにしよう。
高性能設備によって削減できる原材料費・労務費の割合をx (0≦x≦1)で表すと、煩雑な計算を経て、
70.342x +5.229 ≧ 12.631
を解くことになる。設問通りに四捨五入すると不等式を満たさなくなるが、指示通りに答えて減点されることは流石にないだろう。
第4問
設問1
企業経営理論における組織形態の問題と同じ発想で解ける。子会社化は分権化を意味しているので、機能別組織に対する事業部制組織の特徴を当てはめれば良い。
財務会計科目なので、財務会計面での指摘が望ましい。
- メリット
- 損益・責任の明確化
- 投資家の投資判断がし易くなる
- 業務の専門性向上
- 子会社役員の裁量拡大
- 別の労働条件を適用可能
- デメリット
- 管理費増
- 短期的判断の傾向
- 親子間の役割重複・排他的傾向
設問2
EDI導入の直接の効果は、与件文にある通り「取引先との在庫情報の共有」だから、これを盛り込むのは必須。その上で、在庫や配送の適正化、受注業務効率化などに言及する。「どのような財務的効果が期待できるか」と問われているので収益性・効率性強化まで記載しよう。
口述試験
- 建材事業でEDIを導入することで、どのような財務的メリットがあるか(第4問設問2)
- 今期施行した建売住宅が来期になって売れた場合の経営成績と財政状態
- 全社的に変動費を削減する方法
- 全社的な損益分岐点を利益計画に使うことに対して勘案すべきこと
- 音響事業参入に際する財務への影響