分析
解説
第I問
〔1〕
- 1.電子軌道のエネルギーは4s < 3pとなっているため、第4周期の遷移金属には4sに1または2個入った元素が並ぶ。
- 2. CrO42− は黄色。Cr2O72−は橙色で、還元すると緑色のCr-3になる。
- 3.ハロゲンは電気陰性度が高いのでハロゲン化物には溶解度が高いものが多いが、銀は金属の中でも電気陰性度が高くAgCl(白), AgBr(淡黄色), AgI(黄色)は沈殿する。しかしFは電気陰性度が極めて大きいので溶解する。
- 4.両性元素の単体は、酸・塩基のどちらと反応しても水素を生じる。Alの配位数は6だが、ヒドロキソOHは4配位しか作らない。
- 5.OH化物はアルカリ金属・アルカリ土類金属以外は全て沈殿する。
〔2〕
- ウ.熱濃硫酸は硫酸が熱によりSO3に分解しておりこれが酸化剤として働いてSO2に還元される。
- 1.有色気体はF2(淡黄), Cl2(黄緑), NO2(赤褐), O3(淡青)の4つ。
- 3.硫化物は基本的に黒だが、ZnSは白, CdSは黄。
- 5.ヨウ素ヨウ化カリウム溶液は、水に難溶な I2がヨウ化カリウム水溶液には解ける事を利用した水溶液であり、ヨウ化カリウム(還元剤)とは異なる。SO2は酸化剤・還元剤どちらにもなり得るが、I2は酸化剤なので還元剤として働く(SO42−)。
- 7.自己酸化還元反応によりHCl +HClOとなる。自己酸化還元反応は、 H2O2 をMnO2を触媒としてO2を発生させる場合やNO2からHNO3 を作る場合に起こる。
〔3〕
Cl−は強酸由来のイオンなのでその化合物は溶解しやすいが、Pb, Ag, Hgについては沈殿する。
〔4〕
CuSO4 +H2S ⇄ H2SO4 +CuS↓
CuSが沈殿しているという事は水溶液に溶けているCuSは飽和状態なので溶解度積を使える。
CuSO4 のモル濃度の値は計算に直接関係しない。
〔5〕
(問ii)CとDの関係は、原子量と密度について分かっているので、密度に関して関係式を作る。原子量は単位格子内の質量を求める際に使う。
第II問
〔6〕
- 2.HeとNe以外は閉殻ではないが、オクテット則により安定している。
- 3.第一イオン化エネルギーは同周期では貴ガスが最大。
- 4.「天然に同位体が存在しない」という事を証明するためには、地球上の全ての元素を調べ上げる必要があるので厳密には不精確である。無視できるほど天然の同位体の数が少ない元素にはF, Na, Pなどがある。
〔7〕
- 1.ArrheniusはH+を持ちそれを放出する物を酸、 OH–について塩基と定義した。しかしこれは水溶液中の物質しか適用できず、 NH3 も塩基として扱えない欠点があり、これをBrønsted & Lowryが改良して「H+を放出するのが酸、受け取るのが塩基」とした。
- 3. 弱酸(塩基)の電離定数はKa = Cα2である。濃度が高まればルシャトリエの原理により電離度は下がるので分かる。ちなみに緩衝液においては Ka = [H+]Cs /Ca, 加水分解定数はKh = Ch2 だ。
〔8〕
反応熱の問題は、エネルギー図を書くと把握しやすい。
- 1.反応熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和)
- 2.水素の燃焼熱の反応式と水の生成熱の反応式は同一。
- 3.二酸化炭素の生成熱は「C(黒鉛) +O2(気) = CO2(気) +Q」で表されるが、「二酸化炭素のC=O結合」で言及されている二酸化炭素は気体であるので、黒鉛の昇華熱が必要。
- 6.蒸発熱・融解熱・昇華熱は状態変化のための熱(冷却曲線における平坦な部分に当たる)なので、温度変化のための熱も必要。
〔9〕問ii
どの窒素酸化物の濃度を未知数として置くかで解法は異なってくるが、大筋は同じだ。
容器にO2 を加えた後は、NOは無くなりNO2, N2O4, O2 のみになった。大事なのは、この時点での容器内の気体は、NO2, N2O4の間では正・逆反応が起きて平衡状態になっている一方でO2は何も反応を起こしていない(無視できる)点だ。したがって問iで導いた平衡定数の式を利用できる。
状況を把握する為に流れを書き出してみると良い。
各物質の量的関係を立式する必要があるが、バランスシートで確認する方法のほか、化学受験TUBEのようにNの物質量が不変なのを利用する方法もある。
〔10〕
沸点上昇・蒸気圧降下の理解を問う良問だ。
液体が受ける外圧は、沸点では蒸気圧に等しい。
蒸気圧曲線は一般に下に凸の曲線なので、このような一次関数にはならないので取っつきにくいが、化学を思考力を試す問題に仕立てる為にこうなっている。
状況把握が難しいが、わざわざ一次関数にしている点に着目してグラフを描いてみると、純溶媒と溶液のΔtb に関する関係が明らかになり各段に分かりやすくなる。
第III問
〔11〕
- (1)2,4,6-トリブロモフェノールの白色沈殿を生じる。よく似た構造にニトロ基を持つ黄色のピクリン酸があるが、ピクリン酸は爆発性を持つのに対してこれは難燃剤に用いられるのが対照的だ。
- (2)アルカリ融解法では、ベンゼンスルホン酸ナトリウムの官能基(-)を電離させる事でヒドロキシ基を結合させる。これは昔の製法で現代では(ア)のクメン法が用いられる。
- (3)ナフタレンをV2O5を触媒に酸化するとCを2個失ってフタル酸になる。
- (4)ヒドロキシ基と酢酸が濃硫酸を触媒に脱水縮合する。
- (5)無水フタル酸は加水分解するとカルボキシ基を持つようになる点に注意。
〔12〕
「最も~」という問題は、その指名されている物質から評価するのが効率的。なぜなら、次に別の物質を評価して反証となっていれば、その時点で「誤り」と結論付けて次の問題へ進めるからだ。
ベンゼン環の二重結合と単結合は区別する必要がない。
〔13〕
- (2)けん化とは、エステルに塩基を加えて酸の塩とアルコールに加水分解すること。ここではポリ酢酸ビニルをNaOHでけん化して ポリビニルアルコールと酢酸ナトリウムに加水分解した。
- (4)スチレンとp-ジビニルベンゼンを共重合させ、濃硫酸でスルホン化させたのが陽イオン交換樹脂だ。
- (5)架橋構造を持つポリアクリル酸ナトリウムは、水に溶けるとNa+ が電離して分子内での電気的反発が生じるため膨張し高吸水性高分子として働く。
- (6)イオン交換樹脂は高分子なので水に不溶。
- (7)縮合重合で作ることも可能だが、ア~オに書かれた製法には縮合重合は含まれていない。誤解を生む問題文だが、これが東工大の方針という事だ。
〔14〕
各予備校によるとこの問題が最も難しいようだが、私は逆に最も簡単だと思った。実験1の情報だけで確定するのでは?