B 財務・会計
第1問
「仕入戻し」と「売上戻り」は返品を表す。先入先出法を理解しているかを問うた問題で、前月繰越分を売上原価に含む必要がある。(イ)は安直過ぎる解。
第2問
圧縮記帳というマニアックな問題。
直接減額方式とは、固定資産の取得価額から補助金を差し引いて計上する方法。
固定資産の購入に充てた補助金の分まで税がかかると補助金の効果が弱まるため、圧縮損という費用科目を作る。
減価償却の総額は16,000千円で耐用年数 4年なので、1年あたり4,000千円。使用開始から決算までの期間は半年間なので、決算時の減価償却費は2,000千円。
第3問
- (ア)A社によるB社の議決権の所有割合が 40 %未満でも子会社と判定される場合はあるが、A社がB社を支配している特別な事情が必要なので、偽。
- (イ)非支配株主持分は親会社の株主が所有する財産と見做される。ちなみに、連結前に親会社の資産の部に計上されていた関係会社株式は、親会社と子会社の純資産として重複しているので、連結後は資産の部に計上されない。
- (ウ)持分法による投資損益は営業外損益として計上される。営業外損益には受取利息、受取配当金、仕入割引、為替差益、雑収入などが計上される。特別損益には土地・株式などの資産売却などによる今期だけの臨時収入や、災害などによる損失、不良債権処理のための損失などが計上される。
- (エ)子会社と連結財務諸表を作成する際は、親会社と子会社の財務諸表を合算して必要な調整を加える(連結法)。非連結子会社及び関連会社と連結財務諸表を作成する際は、親会社の財務諸表に必要な調整を加える(持分法)。
第4問
- 「買掛金支払いのため振り出した小切手 30,000円が、先方に未渡しであった」とは、自社の口座から引き落とされていたと思われていた30,000円が実際は引き落とされていなかったということだ。
- 「受取手形 20,000円が取り立てられていたが、通知が未達であった」とは、売上代金 20,000円が自社の口座に入金されていたが、銀行からその通知がなされていなかったということだ。
第5問
- (ア)計算書類は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表で構成される。株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部における株主資本の変動事由を記載したもの。
- (イ)財務諸表規則に準拠しなければならないのは、金融商品取引法の適用対象である上場企業のみ。
- (ウ)金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出する大会社は、計算書類と連結計算書類を定時株主総会に報告する必要がある。子会社や関連会社を持たない会社は連結計算書類の報告は必要ない。
- (エ)取締役会設置会社は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に計算書類と事業報告を提供する必要がある。
第6問
- (ア)棚卸資産の期末評価において帳簿価額と比較すべき時価は、正味売却価額。再調達原価の方が都合が良い場合はこれでも良い。
- (イ)棚卸資産の評価方法として認められている方法は、個別法、先入先出法、平均原価法、売価還元法。
- (ウ)数万種類を個別に評価するのは効率が悪いため、売価還元法が用いられる。
- (エ)簿価切り下げによる評価損は、原則として売上原価として計上される。臨時かつ多額の場合は特別損失として計上される。
第7問
- (イ)営業取引により発生する資産・債務は全て流動資産・負債である。破産債権、更正債権及びこれに準ずる債権として1年以内に回収できないことが明らかな債権のみが固定資産として扱われる。
- (ウ)未払費用は、継続的な役務の提供において発生する経過勘定科目の一つ。主たる営業取引以外の取引から生じた未払額は、未払金である。
- (エ)引当金は、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もることができる場合に計上できる。
第8問
企業会計と法人税法で計算したときの法人税は異なってくるのだが、企業が実際に納めなければならない法人税は税法に基づく。会計上と税法上の税額の差を埋めるのが繰延税金資産/負債という項目である。
会計上と税法上で備品の耐用年数が異なることから、減価償却費も異なってくる。ここでは、税法上の減価償却費の方が100千円安いので、法人税率を掛けた30千円を繰延税金資産として計上する。
第9問
ここで言う「消費価格」は企業が製品を作るために消費するときの材料の価格を指す。予定消費価格を設定することのメリットには、材料費の計算や記帳が迅速に行えるというものがある。当然、予定消費価格と実際消費価格にはズレが生じるので、材料消費価格差異を損益計算書に計上する必要がある。
材料の実際消費額は総平均法を用いて計算するので、前月繰越分と今月仕入分の重み付け平均値を取る。
第10問
条件2は、部品Xの製造に必要な固定費が賃借料900千円以外にもあることを否定していないので、不適切問題。
第11問
- 「固定比率 = 固定資産 / 純資産」。長期的な支払能力を表し、低いほど安全性が高い。一般的に100%以下が望ましいとされる。
- 総資本営業利益率 = 営業利益 / 総資本
- 売上高営業利益率 = 営業利益 / 売上高
- 総資本回転率 = 売上高 / 総資本
設問1では、貸借対照表のどの勘定科目が固定資産、純資産に該当するかも同時に問われている。
第12問
掛取引では現金の動きがないためCFには計上されないが、営業CFにおいて、売上債権が増加に伴い減少し、仕入債務の増加に伴い増加する。
CF計算書の記法には直接法と間接法があり、間接法が多く用いられる。直接法の営業CFでは、現金の動きをすべて記録していく。一方、間接法の営業CFでは、損益計算書での税金等調整前当期純利益から始まる。
第14問
本文は難問である。
本質的価値の定義は、コールオプションの場合「原資産価格 – 権利行使価格」(※)なので、本質的価値と原資産価値は混同しやすいが大きく異なる概念だ。「差額の本質的価値」と憶えた方が良いだろう。
※権利行使すると損する場合は権利行使しないため、”0 ≦ 本質的価値”が成り立つ。
(イ)
オプションの価格 = 本質的価値 + 時間的価値
であるが、この式を変形すると
時間的価値 = オプションの価格 – 本質的価値
となる。”0 ≦ 本質的価値”より、”本質的価値 = 0″ ⇔ “At the Money” のとき時間的価値は最大となる。
(エ)
問題文が「オプションを今すぐに行使する」という意味であれば、将来の期待を意味する時間的価値を考慮する意義がないため、偽である。ちなみに、”0 ≦ 本質的価値”は権利行使しないことを前提としており、行使した場合は損することもあり得る。
第15問
(エ)投資家が選択可能な「リスク資産」の組み合わせ「投資機会集合」において、リスクの最小化とリターンの最大化を果たす曲線を効率的フロンティア(有効フロンティア)という。
第16問
年金現価係数という語に「年金」が含まれているのは、年金制度の「元本を複利で運用しながら生活費を取り崩していく」という性質を反映しているからだ。
年金現価係数はn = 19 年後までの支払いを想定しているので、年金現価係数は12を選ぶ。年金現価係数の意味が分からなくても(ア)と(エ)は安直すぎて誤りだと分かる。
第17問
β値とは、資本資産評価モデル(CAPM)において株主資本コストを求めるための変数。”安全利子率”と”市場期待収益率”の内分比だから0≦β≦1である。よって(エ)は消去できる。
第18問
- (イ)インターバンク市場には、コール市場や短期金融市場がある。公定歩合は1994年の金利自由化に伴い金利と連動しなくなり、2006年には名称が「基準割引率および基準貸付利率」に変更され、現在では「無担保コールレート翌日物」における短期金利の変動上限としての役割を担っている。
第22問
設問1
営業利益から利子を引いたものが経常利益。経常利益から税引したものが税引後利益。これを知らなくても問題文に利子率が書かれているのでこの条件を使用する必要があることは分かる。
設問2
企業価値は「将来のキャッシュフローの割引現在価値」である。
MM理論には「法人税が存在する場合は、負債による節税効果 = 負債✕法人税率」というものがある。負債の利子の支払いによって利益が減少するため、法人税も減少するためである。このため、負債によって資金調達することで企業価値が高まる。
法人税は「負債の利子」によって減少するにも関わらず、節税効果の数式は「負債の金額」に依拠するものになっている。これは、無限等比級数によって将来の利子の現在価値を求めると、負債の金額と一致するためである。
第23問
- (ア)会計的利益率(Accounting Rate of Return)では企業会計上の利益を扱う。税引後利益を使用するため、減価償却による節税効果なども含む。
- (イ)回収期間法における回収期間とは、プロジェクトへの投資額を回収するまでの期間のこと。ちなみに、耐用年数が固定資産が使用できる法律上の年数であるのに対して、経済命数は実質の年数。
- (エ)DCFは「Discounted Cash Flow (割引キャッシュフロー)」の略。割引現在価値を考慮した手法である。