中小企業診断士 一次試験 令和元(2019)年度 「C 企業経営理論」の解説

C 企業経営理論

問題(PDF)解答(PDF)

第1問

  • (ア)「事業の定義」とは、「誰に・何を・どのように提供するか」を決めることである。
  • (イ)事業ドメインの説明をしている。
  • (ウ)全社戦略策定は企業ドメインで行う。
  • (エ)企業ドメインの説明をしている。
  • (オ)事業ポートフォリオの決定は企業ドメインで行う。

第2問

  • (ア)事業間のシナジーが考慮されていないのがPPMの欠点とされている。
  • (イ)衰退市場にある「金のなる木(Cash Cows)」は、資金投入ではなく削減による事業合理化が望ましい。また、成長市場にある「問題児(Question Mark)」には資金投入が望ましい。
  • (ウ)「花形(Stars)」は成長市場にあるので、資金投入すべきであり資金供給源にはならない。
  • (オ)「金のなる木(Cash Cows)」の余剰資金を、成長市場にある「花形(Stars)」や「問題児(Question Mark)」に注入する。

第3問

Ansoffは部分的無知(partial ignorance)の状況下での意思決定として、組織の上層部から順に戦略的、管理的、業務的意思決定を定義した。

選択肢にある「非対称情報」は情報の非対称性のことだと思われる。

第5問

(イ, ウ)戦略的提携では、織的な統合や経営資源の合体は行わない。

第6問

「業界の構造分析」とはM. Porterが論じた「5つの競争要因」を指す。

  • (ア)成長市場では市場が飽和していないため、競合は発生しにくい。
  • (イ)顧客のスイッチング・コストは買い手の交渉力の一要素。
  • (ウ)固定費が高いと利益率が圧迫される。
  • (エ)多様なバックグラウンドを持つ企業はシナジー効果を利用できるので、業界の競合が緩和するとは限らない。
  • (オ)撤退障壁が高いと、プレイヤーが減りにくいので競合は緩和しにくい。

第7問

  • (ア)この選択肢が正解なのだが、大抵「コスト優位」は「高い市場シェア」の結果というより因子である。コスト優位を実現するために高い市場シェアを維持できるのは、コストを吸収できるだけの資金力のある企業だけだろう。
  • (イ)規模の経済が単位製品あたりの固定費を減少させる効果に起因するのに対して、経験効果は技術の精錬による生産の効率化に起因している。
  • (オ)シナジー効果は規模の経済ではなく範囲の経済に因るもの。

第8問

デジタル化された製品は複製が容易なため、固定費が相対的に高くなる。

「P = MC」は完全競争市場における利潤最大化の必要条件である。「IoTの普及によって限界費用ゼロ社会が訪れる」と予言するJeremy Rifkinの著書がある。

「デジュール標準(de jure standard)」はデファクト標準の対義語で、公式に制定された標準を指す。

「リバース・イノベーション」とは、途上国で起こしたイノベーションを先進国に導入すること。一般的にイノベーションは先進国で起きることからリバースの名が付いている。

第9問

キャズムの理論では、顧客層はInnovator, Early adopter, Early majority, Late majority, Laggardに分けられ、Early adopterとEarly majorityとの間にchasm(市場の分断)があるという。

大きな収益が見込める市場はEarly majority, Late majorityなので、彼らへのマーケティングが重要である。Laggardを振り向かせようとする必要はない。

第10問

  • (ア)社内ベンチャー新規事業に関する学習装置としての機能も果たす。
  • (エ)他社への経営について、「ハンズオン」は深く関わり、「ハンズオフ」は浅く関わることを指す。社内ベンチャーは文字通り社内の組織であるから、ハンズオフより親会社の関与は深い。

第13問

不確実性とは情報量の不足を指す。これを除去するためには効率的なコミュニケーションが望ましい。

多義性とは必要な情報に多様な解釈があって、どのような情報を集めればよいかわからない状態を指す。この場合、双方向性のあるリッチなコミュニケーションによって解釈の不一致をなるべく減らすのが望ましい。

第14問

シングルループ学習(低次学習)とダブルループ学習(高次学習)はChris Argyrisが提唱したものだ。シングルループ学習は、過去の成功体験を踏襲し、既存のプロセスを繰り返して効率化や改善を目指す手法。これに対してダブルループ学習には、価値観や行動基準の振り返りも組み込まれている。

  • (ア)Douglas McGregorは、「人は、強制や命令がないと働かない」というX理論、そして「人は、自ら設定した目標に対しては積極的に働く」というY理論を提起した。
  • (イ, オ)シングルループ学習は基礎的な学習と位置づけられており、忌避すべきものというわけではない。
  • (エ)シングルループ学習は過去の成功体験を踏襲するだけで原因の考察は行わない。そのため迷信的学習に陥りやすい。

第15問

  • (ア)スラックとは余裕資源のことで、リーン・スタートアップとは対照的な用語。スラックがあれば、部門同士の資源依存が減ることになるので、独立性は高まりコンフリクトは減る。
  • (ウ)「部門間の知覚」とは、部門毎の環境や目標に対する従業員の認識のこと。
  • (エ)「目標が共有されている」を「目標が共有されていない」に読み替えると正しい文になる。目標が共有されていない場合、従業員は自身が属する部門の目標の達成を目指すので政治的工作やバーゲニング(交渉)が起きる。

第17問

  • (ア)F. Fiedler は、リーダーを人間関係志向型とタスク志向型に分け、「リーダーと部下の関係」「課題の明確さ」「課題に与えられたリーダーの裁量の大きさ」によって適性が異なると論じた。
  • (イ)Situational Leadership理論では、リーダーシップを人間関係志向とタスク志向i応じて指示型・コーチ型・援助型・委任型の4種類に区分した。部下の成熟度によってリーダーシップの適性が異なる。
  • (ウ)「部下」と「フォロワー」は同義。Path-goal theoryでは、リーダーシップを指示型・支援型・参加型・達成志向型の4種類に区分した。達成志向型は困難な目標(ゴール)を設定しながら道筋(パス)は放任している点で、理論的な説得力に欠ける。
  • (エ)リーダー・メンバー交換理論では、リーダーが部下を差別して、内集団と外集団に区分するようになると指摘している。

第19問

協調戦略には交渉、包摂、結託がある。

第21問

職能資格制度は年功主義的な人事管理の基盤ではないが、年功序列に変容しやすい。また、社内等級というポストとは似て非なる制度も合理性がない。

第22問

従業員はマジメに働い(8割以上出勤し)ていれば誰でも有給休暇を得られるが、会社には著しい不利益を避けるために時季変更権が与えられている。

第23問

2020年度から、時間外労働の上限は月45時間となった。残業(平均して週あたり40時間を超える労働)が80時間以上で、疲労の蓄積があり、本人からの申し出がある場合は、医師による面接指導が企業に義務付けられている。

第24問

  • (ア)男女雇用機会均等法により、妊娠を退職理由として規定する契約は無効である。これは「契約自由の原則」に優越する。
  • (ェ)妊娠や出産を理由とした解雇は無効である。

第26問

  • (イ)顧客との関係構築を重視するマーケティングの考え方はBtoBからBtoCへ応用されている。
  • (ェ)顧客生涯価値 = 顧客単価 × 粗利率 × 購買頻度 × 取引期間 - 顧客の獲得・維持コスト

第28問

(ウ)導入期の主要顧客は”innovator”である。

第29問

  • (イ)の「専ら」、(ウ)の「常に」という限定的表現には注意。
  • (ウ)製品開発のための資金をオンライン上の多数の消費者から調達するのは”cloud funding”。”cloud sourcing”とはオンラインで業務の外部委託をすること。

第30問

設問1
  • (イ)dynamic pricing は昔から宿泊施設や交通機関で採用されてきた手法だ。
  • (エ)デジタル財には非排他性、複製可能性、非空間性という性質がある。非排他性とは、複数の人が同時に使用でき、しかも劣化しないという性質を指す。
設問2
  • (ウ)owned media が企業が運営するメディアを指すのに対して、earned media はユーザーや消費者が情報発信するメディアを指す。
  • (エ)企業と無関係な消費者であるかのように振る舞って情報を受発信するマーケティング手法は”stealth marketing”である。

第31問

設問1
  • (ア)需要の交差弾力性(Cross elasticity of demand)は「製品Bの需要量の変化率/製品Aの価格の変化率」で表せるが、この定義を知らなくても選択肢文の「製品Aの価格変化が製品Bの販売量にもたらす影響」からこの選択肢が偽なのが分かる。
  • (イ, エ)交差弾力性が正ならば代替財、0ならば独立財、負ならば補完財。
  • (ウ)「威光価格」は心理的価格の一種で、高品質、高級感などの価値を伝えるシグナルとして敢えて高価格で販売するマーケティング手法。購入頻度が少なく、品質や効果など製品価値の判断が難しい商品に多く用いられる。
設問2
  • (イ)skimming price (上層吸収価格)は、富裕層やinnovatorのような市場の上位層を狙った設定価格のこと。投資の早期回収が主な目的である。威光価格と類似した概念で、独自性が高く模倣されにくい製品に付けられる。
  • (エ)キャプティブ価格(Captive Product Pricing)とは、本体価格は安くし、付属品の価格を高くしてswitching cost を引き上げる戦略。

第32問

設問1

(ウ)知覚マップ(Perceptual Map)は、顧客があるブランドや製品に対して持つイメージを可視化したもの。これに対して、positioning mapは企業がブランドや製品に対して付与したいイメージである。

設問2

(エ)Lead Userは、イノベーター理論におけるInnovatorやEarly Adaptorに近いが、企業の製品開発に貢献する点が異なる。探索的調査は仮説を建てるための調査。検証的調査はその仮説を基にしてアンケートやインタビューを行い、問題の原因や解決策を調べる。

設問3

(エ)この選択肢を正しく解説できている人は少ないだろう。男女それぞれの母平均の差の検定を行いたいので、カイ二乗検定ではなくt検定を利用する。カイ二乗検定は母分散や適合度の検定に用いられる。

第33問

設問1
  • (ア)知覚品質とは、同じ目的の他の代替品と比べた時に感じる品質のこと。
  • (イ)不可分性(同時性)は、サービスの生産と消費が不可分であること。
  • (ウ)消滅性とは、在庫を持つことができないということ。
設問2
  • (ア)サービス・トライアングルは、顧客・サービス提供者・企業の関係を指し、三者関係のバランスを図ることが大事とされる。
  • (イ)サービス・プロフィット・チェーンは、「従業員の生産性が向上」⇨「顧客満足が向上」⇨「企業収益が向上」⇨「従業員の生産性が向上」というサイクルを説いている。
  • (エ)「真実の瞬間」は主にサービス業を用いられる用語で、従業員が顧客と直に接する状況を指す。顧客は従業員の態度から企業の印象を決めてしまうことに由来する。
  • (オ)SERVQUALは、サービスの品質を有形性、信頼性、応答性、確実性、共感性の5要素から評価するもので、二時点間の差を比較することが推奨されている。

第34問

マーケティングにおける関与(involvement)は、製品やサービスに対するこだわりの強さである。関与が強いからといってその製品に好意的だとは限らない。

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