20世紀頃から、世界中の社会で「構成員が社会への従属より自身の自己愛を満たすことを重視する」という傾向が進んでいる。
その一つの証拠として、日本や米国で自己愛性人格障害者が有意に増えている事が分かっている。
この様な社会を岡田尊司(精神科医)は「自己愛型社会」と称した。
自己愛型社会の傾向は、構成員の自己中心性によりその社会を破綻に追い込む恐れがある。この傾向の背景とその対策について考える。
背景の考察
- 自由主義の普及
- 他者との交流の回避が可能になる
- ”過剰な自己愛”への脅威に対する逃避傾向が強まる
- 共感的交流の不足
- Internet の普及
- 現実での他者との交流の機会が減る
- ”過剰な自己愛”への脅威に対する逃避傾向が強まる
- 共感的交流の不足
- 強い自己愛的共依存が可能になる
- 少子化
- 過保護の進行
- 核家族化
- 親との接触の減少
- 共感的交流の不足
- 離婚の増加
- 親との接触の減少
- 共感的交流の不足
- 共働きの増加
- 大人との接触の減少
- 共感的交流の不足
- 交通基盤の発達
- 定住の減少
- 長期的な人間関係の減少
- 共感的交流の不足
- 長期的な人間関係の減少
- 防犯体制の強化
- 地域社会との交流の減少
- 共感的交流の不足
共感的交流の不足は次の様な影響を及ぼす。
- 自己肯定感の未発達
- libido 転換の未発達
自己愛型社会への対策
自由主義は、経済政策としては社会を豊かにする事は歴史が証明しているので望ましいと言える。
但し、人同士の結びつきを弱める「個人主義」には歯止めをかけたほうが良いだろう。
自己愛型社会の背景の中でも、internet の普及は、その社会の構成員の自己中心性を著しく高めている。
人格形成の発達過程にある児童期は、internet の利用を制限した方がいいと思う。
但し、internet 環境は学習効率の著しい向上に寄与するものであるので、それ自体を子供から奪うのは望ましいとはいえない。健全な対人関係の中で成長していく事を促す為に、internet 上のSNS やchat の様なコミュニケーション・ツールの利用を制限すると良い。