中小企業診断士 一次試験 令和五(2023)年度 「G 中小企業経営・政策」の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

中小企業基本法における小規模企業の定義では、製造業その他は「従業員20人以下」、商業・サービス業は「従業員 5人以下」となっている。したがって本問では、建設業と製造業は「従業員20人以下」、小売業は「従業員 5人以下」を対象としている。売上高は従業員規模に概ね比例するので、小売業の売上高が最も低いと推測できる。

第2問

小規模企業数割合について

産業別規模別企業数を参照。小規模企業数割合は、建設業(95%)、製造業(84%)、小売業(81%)。

小売業は定義上「従業員 5人以下」なので小規模企業数割合が小さい。また、下請け構造があったり、ニッチな市場があったり、地域に根差した業種ほど割合が高いことが読み取れる。小売業は電子商取引の増加により小規模企業は淘汰されている。

中小企業庁によると、小規模事業者は、事業者数では小売業、建設業、製造業の順に多いが、従業員数は建設業、製造業、小売業の順に多い。卸売業と小売業を合わせた売上高では建設業より高い。

中小企業数について

中小企業基本法における中小企業の定義は、

  • 製造業その他(建設業を含む)は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」
  • 小売業は「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人」

業界への参入のしやすさが大きく影響している。

第3問

仕入れや設備投資が必要だと自己資本比率は低くなりがちだ。また、自己資本比率が高いと財務的に安定するが、小売業は日々の安定したキャッシュインがあるため自己資本比率が低くても耐えられる。

第4問

利益率の低い業種ほど開業率、廃業率が高い。

第5問

2021年初頭から円安ドル高が進み、さらに2022年初頭から物価高も進んだ。

第7問

産業別就業者数の推移をみると、第一次・第二次産業が減少傾向であるのに対して医療福祉分野を筆頭とする第三次産業は上昇傾向にあることが分かる。製造業の就業者数の減少の背景には、自動化や事業の海外移転もある。

第9問

我が国の製造業のノウハウを学びたい外国人が多いこと、留学生は自身の語学力を接客で活かせることから正答を選べる。

第10問

研究開発費割合のオーダーは、企業規模や業種に関わらず、0.1~10%。能力開発費割合のオーダーは、企業規模や業種に関わらず、0.01~0.1%。

つまり「研究開発費の差」と「能力開発費の差」は、そもそもスケールが異なるので比較する意味がないのだ。こういう悪問を出す傾向があることを知っておくと、逆手にとって正解できる。

第11問

中小企業の大部分を小規模企業が占めるわけだが、事業継続計画(BCP)の策定のコンサル費用の相場が数十万円であることを考慮すると、検討すらしていない事業者が大半だと分かる。

第12問

労働生産性は企業規模だけでなく業種にも大きく依存している。

第14問

設備投資額は景気動向に大きく影響される。リーマンショック後から15年経ってもリーマン前の投資水準に回復していない。

これについてNRIの木内登英氏は「リーマンショックをきっかけに、株価が低迷したことが企業の設備投資を慎重にさせたこと、金融仲介機能が低下し、企業が銀行あるいは市場から資金を借り入れることが難しくなったことが、投資率低下をもたらした」と結論付けている。

バブル崩壊後に無借金経営が称賛される雰囲気があったように、リーマンショック後も経営者や投資家の心理によって設備投資が抑制されている一面がある。

第16問

我が国は少子高齢化により、平均年齢が年平均0.2歳ずつ上昇している。実は、開業時の平均年齢も年平均0.2歳ずつ上昇しており、人口動態要因によるものだと分かる。

第17問

倒産件数の推移について、始点が2009年と指定されていることに注目。この年はリーマンショックによる倒産が急増した直後で、その後に金融緩和などで経営環境が改善していった。

Covid-19影響下で倒産件数が減少しているのは、本来倒産するはずの企業が政府の支援によりゾンビ化したためだ。この現象は世界各地で起きた。

第18問

債務保証とは、企業が返済できない債務を弁済してもらうこと。リーマンショック後の2010年からCovid-19騒動前の2019年までは景気拡大期だったので保証債務残高は減少していた

第18問

中小企業基本法における中小企業の定義は、

  • サービス業は「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人」
  • 製造業その他は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」

第19問

設問2

法令の穴埋め問題は、その法令の内容を知らなくても文の論理性を検証することで正答を選べることがある。

  • (A)解答群の「新たな価値を創造する」は、「新商品の開発又は生産」や「新役務の発又は提供」を言い換えたものに相当する。よって「新たな価値を創造する」で穴埋めすると文の因果関係が成り立たないので誤りだと分かる。
  • (B)経営資源は新商品等を生み出す際に利用されるものであるので、「創意工夫を凝らして生み出す経営資源」という表現は誤り。
設問3

中小企業憲章に「中小企業は、経済やくらしを支え、牽引する。創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える。」という文言がある。

第20問

新創業融資制度は令和6年3月31日をもって廃止し、以降はこの制度の適用なく、無担保・無保証人で各種融資制度を利用できる。

第21問

小規模企業共済制度

  • 経営者が対象
  • 共済金の受け取り方は、「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能
  • 掛金の全額を、その年分の総所得金額から所得控除できる
  • 掛金に相当する額の貸付を受けられる

中小企業退職金共済

  • 従業員が対象
  • 18,000円以下の掛金を増額する事業主に対して、増額分の3分の1を増額した月から1年間、国が助成する
  • 初めて加入した事業主に対して、掛金月額の2分の1を4カ月目から1年間、国が助成する

第24問

設問1

先端設備等導入計画に係る特例は、地方税法に基づく固定資産税を対象としたものであることが問題文に示されている。固定資産税は市町村税であることを知っていれば正答できる。それを知っていなくとも、「市町村(特別区を含む)」とわざわざ括弧書きが付されている点に着目することで正答できる。

設問2

営業利益=売上総利益-「販売費及び一般管理費」

「販売費及び一般管理費」には人件費、減価償却費、広告宣伝費、販売手数料、家賃などを含む。

第25問

IT 導入補助金は2024年版で次のように改編された。

  • 通常枠: ソフトウェア、クラウド
  • インボイス対応類型: インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェア
  • 電子取引類型: インボイス制度に対応した受発注システム
  • セキュリティ対策推進枠: 「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービス
  • 複数社連携IT導入枠: サプライチェーンや商業集積地で連携してITツールを導入

補助率は多くの枠が1/2以内だが例外もある。

第26問

期末資本金の額が1億円以下の一定の中小法人の場合、所得金額のうち800万円以下の部分について15%(本則19%)の軽減税率が適用される。

第27問

設問1

経営発達支援計画: 小規模企業の支援に取り組む商工会の支援計画

設問2

最新の「法人版事業承継税制(特例措置)」

  • 承継する株式にかかる贈与税・相続税のすべてが納税猶予の対象
  • 親族外を含むすべての株主から、代表者である後継者(最大3人)への贈与・相続が対象
  • 雇用維持 要件を満たせなかった場合でも納税猶予が継続可能
  • 将来、事業を売却・廃業する際に株価が下落していた場合には、その株価を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免

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