高校化学 東京工業大学2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (1)硝酸や熱濃硫酸に溶けるのはAgまでで、AuやPtは王水(濃硝酸3:濃塩酸1)で溶けるツートップだ。
  • (2)Cr2O72-は酸化数6で、Crは第6族だから最高酸化数になっている。ゆえに還元剤にはなれない。
  • (3)水溶液やその沈殿の色は、Fe2+は緑系、Fe3+は赤系が多い。赤錆がFe2O3で表される事を憶えていれば間違えにくい。
  • (5)触媒として働いて酸素を発生させるのはKMnO4 ではなくMnO2だ。
  • (6)ハロゲン化銀は感光性を持ち、金属の微粒子は黒く見える。

〔2〕

引っ掛けが含まれる難問。電気分解と電池の問題が混ざっているので、構造の区別に注意。

  • (2)塩化ナトリウムは水溶液中で電気分解しようとすると代わりに水素を生じてしまう。そこで塩化ナトリウムを融解することで水を使わないので電気分解が可能になる。その代償として大きな融解熱が必要になる。
  • (3)電池では正極に電子が供給されるので金属イオンが析出する。ちなみにボルタ電池もダニエル電池も陰極にZn, 陽極にCuを使っている。
  • (4)イオン化傾向はZn < Mnだが、これが引っ掛け。負極はZn, 正極はMnO2 だ。
  • (5)水は安定性が高いので、Agが先に酸化される。

〔3〕

周期表を広範囲で把握していないと難しいが、元素A~D自体は全て馴染み深いものだ。両性金属が多く含まれているのも特徴的な出題。イオン化傾向に登場する元素の周期表配置くらいは知っておけという事か。

加えて選択肢もマニアック。東進の分析は余りに手抜きだ。

  • (ア)3~11族は遷移金属。
  • (イ)Hgは12族。
  • (カ)13から17族まで金属元素が一つずつ減っていく。14族が非金属C, Siを含む。
  • (3)遷移元素の中で酸化数+4となるのは14族以降。
  • (4)アルカリ金属・アルカリ土類金属以外の酸化物と水酸化物は沈殿する。ちなみにZnの沈殿は全て白い。
  • (5)PbOやPbCrO4やPbI2、HgOは黄色沈殿。

〔4〕

弱酸を中和させていくと、弱酸とその塩を含む緩衝液になる。プロピオン酸は聞きなれないが弱酸であるのは分かるので緩衝液を連想しよう。

滴下後のプロピオン酸は緩衝作用により電離度0となっており、プロピオン酸ナトリウムは完全電離している。よって電離定数の式に当てはめられるわけだ。

第II問

〔6〕

(5)ヘンリーの法則が成立する気体は、溶媒と反応せず、溶解度が低いもの。

〔7〕

A, B, Cの時間経過による濃度変化を表に纏めれば分かりやすい。

Aの濃度は指数関数的に10分毎に0.6倍となっていく。反応速度式が一次関数である事から、一次反応と言えるので(5)のような半減期の考え方が成り立つ。

〔9〕

時間が掛かる捨て問。

問1~3が実験1、問4~6が実験2に関する問題なので、片方の実験に関する問題に答えとなる選択肢が2つ含まれるとは考えにくい。よって、勘で答えるなら問1~3から1問、問4~6 から1問選択しよう。

  • (2)〔4〕とやることは似ているが、弱酸(塩基)の中和滴定ではなく強弱酸(塩基)なので緩衝液として計算しない。
  • (3)滴下しているのは水酸化ナトリウムではなく、水酸化ナトリウムの水溶液(pH = 14)。

〔10〕

文字式の問題にしては簡単だった。希薄水溶液の濃度が十分小さい事から、溶液と溶媒の質量を等しいとみなすのがポイント。

第III問

〔12〕

鎮痛剤のアセトアニリドとサリチル酸メチルとアセチルサリチル酸は、メチル基とO(二重結合)を持つという共通点がある。

  • (イ)NaNO3と来ればジアゾ化だ。アニリンにHClと NaNO3 水溶液を0~5℃で加えると塩化ベンゼンジアゾニウムが出来て、それ以上の温度でフェノールに分解する。
  • (エ)高温高圧下でCO2を反応させる事でカルボキシ基を付加する(コルベ・シュミット反応)。更にカルボキシ基をメチル化して消炎鎮痛剤のサリチル酸メチルが出来上がる。
  • (オ)アミド結合して、解熱鎮痛作用のあるアセトアニリドとなる。
  • (1)ナトリウムフェノキシドは、セッケンと同じく「弱酸と強塩基からなる塩」なので、加水分解して弱塩基性となる。
  • (5)鎮痛作用を持つ物の中でサリチル酸メチルは例外的に液体。

〔13〕

オゾンを反応させたあとZnで還元する事で酸化開裂させる操作をオゾン分解という。

東工大は捻って環状化合物を出題する事が多い。分解後のカルボニル化合物はOを二個持っているのでAが環状化合物と容易に分かる。

次に、二重結合を数をxとして反応前後で質量と分子量の関係式を立てれば良い。反応前の分子式は C33H66-2x (75g)、反応後はC33H66-2xO2x (107g)となるが、分子量の桁が大きく計算が大変になるので、反応後の物質ではなく付加した酸素O2x (32g)を利用した方が良い。

〔14〕

天然ゴムはポリイソプレンから出来ており、そのままだと強度が低く、酸化して弾性を失いやすい。そこで加硫によって分子同士を架橋してこれらの弱点を補う。

〔15〕

アミノ酸Bはアスパラギン酸だ。酸性アミノ酸の側鎖のカルボキシ基を繋ぐ炭素は1または2個。主なαアミノ酸の側鎖における「炭素の節」は3は無い。

酢酸カルシウムを乾留するとアセトンと炭酸カルシウムが生成する脱炭酸反応を知らないと正答するのは難しい。脱炭酸反応には、酢酸ナトリウムと水酸化ナトリウムからメタンと炭酸ナトリウムを作るものもある。

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