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中小企業診断士 一次試験 令和元(2019)年度 「C 企業経営理論」の解説

C 企業経営理論

問題(PDF)解答(PDF)

第1問

  • (ア)「事業の定義」とは、「誰に・何を・どのように提供するか」を決めることである。
  • (イ)事業ドメインの説明をしている。
  • (ウ)全社戦略策定は企業ドメインで行う。
  • (エ)企業ドメインの説明をしている。
  • (オ)事業ポートフォリオの決定は企業ドメインで行う。

第2問

  • (ア)事業間のシナジーが考慮されていないのがPPMの欠点とされている。
  • (イ)衰退市場にある「金のなる木(Cash Cows)」は、資金投入ではなく削減による事業合理化が望ましい。また、成長市場にある「問題児(Question Mark)」には資金投入が望ましい。
  • (ウ)「花形(Stars)」は成長市場にあるので、資金投入すべきであり資金供給源にはならない。
  • (オ)「金のなる木(Cash Cows)」の余剰資金を、成長市場にある「花形(Stars)」や「問題児(Question Mark)」に注入する。

第3問

Ansoffは部分的無知(partial ignorance)の状況下での意思決定として、組織の上層部から順に戦略的、管理的、業務的意思決定を定義した。

選択肢にある「非対称情報」は情報の非対称性のことだと思われる。

第5問

(イ, ウ)戦略的提携では、織的な統合や経営資源の合体は行わない。

第6問

「業界の構造分析」とはM. Porterが論じた「5つの競争要因」を指す。

  • (ア)成長市場では市場が飽和していないため、競合は発生しにくい。
  • (イ)顧客のスイッチング・コストは買い手の交渉力の一要素。
  • (ウ)固定費が高いと利益率が圧迫される。
  • (エ)多様なバックグラウンドを持つ企業はシナジー効果を利用できるので、業界の競合が緩和するとは限らない。
  • (オ)撤退障壁が高いと、プレイヤーが減りにくいので競合は緩和しにくい。

第7問

  • (ア)この選択肢が正解なのだが、大抵「コスト優位」は「高い市場シェア」の結果というより因子である。コスト優位を実現するために高い市場シェアを維持できるのは、コストを吸収できるだけの資金力のある企業だけだろう。
  • (イ)規模の経済が単位製品あたりの固定費を減少させる効果に起因するのに対して、経験効果は技術の精錬による生産の効率化に起因している。
  • (オ)シナジー効果は規模の経済ではなく範囲の経済に因るもの。

第8問

デジタル化された製品は複製が容易なため、固定費が相対的に高くなる。

「P = MC」は完全競争市場における利潤最大化の必要条件である。「IoTの普及によって限界費用ゼロ社会が訪れる」と予言するJeremy Rifkinの著書がある。

「デジュール標準(de jure standard)」はデファクト標準の対義語で、公式に制定された標準を指す。

「リバース・イノベーション」とは、途上国で起こしたイノベーションを先進国に導入すること。一般的にイノベーションは先進国で起きることからリバースの名が付いている。

第9問

キャズムの理論では、顧客層はInnovator, Early adopter, Early majority, Late majority, Laggardに分けられ、Early adopterとEarly majorityとの間にchasm(市場の分断)があるという。

大きな収益が見込める市場はEarly majority, Late majorityなので、彼らへのマーケティングが重要である。Laggardを振り向かせようとする必要はない。

第10問

  • (ア)社内ベンチャー新規事業に関する学習装置としての機能も果たす。
  • (エ)他社への経営について、「ハンズオン」は深く関わり、「ハンズオフ」は浅く関わることを指す。社内ベンチャーは文字通り社内の組織であるから、ハンズオフより親会社の関与は深い。

第13問

不確実性とは情報量の不足を指す。これを除去するためには効率的なコミュニケーションが望ましい。

多義性とは必要な情報に多様な解釈があって、どのような情報を集めればよいかわからない状態を指す。この場合、双方向性のあるリッチなコミュニケーションによって解釈の不一致をなるべく減らすのが望ましい。

第14問

シングルループ学習(低次学習)とダブルループ学習(高次学習)はChris Argyrisが提唱したものだ。シングルループ学習は、過去の成功体験を踏襲し、既存のプロセスを繰り返して効率化や改善を目指す手法。これに対してダブルループ学習には、価値観や行動基準の振り返りも組み込まれている。

  • (ア)Douglas McGregorは、「人は、強制や命令がないと働かない」というX理論、そして「人は、自ら設定した目標に対しては積極的に働く」というY理論を提起した。
  • (イ, オ)シングルループ学習は基礎的な学習と位置づけられており、忌避すべきものというわけではない。
  • (エ)シングルループ学習は過去の成功体験を踏襲するだけで原因の考察は行わない。そのため迷信的学習に陥りやすい。

第15問

  • (ア)スラックとは余裕資源のことで、リーン・スタートアップとは対照的な用語。スラックがあれば、部門同士の資源依存が減ることになるので、独立性は高まりコンフリクトは減る。
  • (ウ)「部門間の知覚」とは、部門毎の環境や目標に対する従業員の認識のこと。
  • (エ)「目標が共有されている」を「目標が共有されていない」に読み替えると正しい文になる。目標が共有されていない場合、従業員は自身が属する部門の目標の達成を目指すので政治的工作やバーゲニング(交渉)が起きる。

第17問

  • (ア)F. Fiedler は、リーダーを人間関係志向型とタスク志向型に分け、「リーダーと部下の関係」「課題の明確さ」「課題に与えられたリーダーの裁量の大きさ」によって適性が異なると論じた。
  • (イ)Situational Leadership理論では、リーダーシップを人間関係志向とタスク志向i応じて指示型・コーチ型・援助型・委任型の4種類に区分した。部下の成熟度によってリーダーシップの適性が異なる。
  • (ウ)「部下」と「フォロワー」は同義。Path-goal theoryでは、リーダーシップを指示型・支援型・参加型・達成志向型の4種類に区分した。達成志向型は困難な目標(ゴール)を設定しながら道筋(パス)は放任している点で、理論的な説得力に欠ける。
  • (エ)リーダー・メンバー交換理論では、リーダーが部下を差別して、内集団と外集団に区分するようになると指摘している。

第19問

協調戦略には交渉、包摂、結託がある。

第21問

職能資格制度は年功主義的な人事管理の基盤ではないが、年功序列に変容しやすい。また、社内等級というポストとは似て非なる制度も合理性がない。

第22問

従業員はマジメに働い(8割以上出勤し)ていれば誰でも有給休暇を得られるが、会社には著しい不利益を避けるために時季変更権が与えられている。

第23問

2020年度から、時間外労働の上限は月45時間となった。残業(平均して週あたり40時間を超える労働)が80時間以上で、疲労の蓄積があり、本人からの申し出がある場合は、医師による面接指導が企業に義務付けられている。

第24問

  • (ア)男女雇用機会均等法により、妊娠を退職理由として規定する契約は無効である。これは「契約自由の原則」に優越する。
  • (ェ)妊娠や出産を理由とした解雇は無効である。

第26問

  • (イ)顧客との関係構築を重視するマーケティングの考え方はBtoBからBtoCへ応用されている。
  • (ェ)顧客生涯価値 = 顧客単価 × 粗利率 × 購買頻度 × 取引期間 - 顧客の獲得・維持コスト

第28問

(ウ)導入期の主要顧客は”innovator”である。

第29問

  • (イ)の「専ら」、(ウ)の「常に」という限定的表現には注意。
  • (ウ)製品開発のための資金をオンライン上の多数の消費者から調達するのは”cloud funding”。”cloud sourcing”とはオンラインで業務の外部委託をすること。

第30問

設問1
  • (イ)dynamic pricing は昔から宿泊施設や交通機関で採用されてきた手法だ。
  • (エ)デジタル財には非排他性、複製可能性、非空間性という性質がある。非排他性とは、複数の人が同時に使用でき、しかも劣化しないという性質を指す。
設問2
  • (ウ)owned media が企業が運営するメディアを指すのに対して、earned media はユーザーや消費者が情報発信するメディアを指す。
  • (エ)企業と無関係な消費者であるかのように振る舞って情報を受発信するマーケティング手法は”stealth marketing”である。

第31問

設問1
  • (ア)需要の交差弾力性(Cross elasticity of demand)は「製品Bの需要量の変化率/製品Aの価格の変化率」で表せるが、この定義を知らなくても選択肢文の「製品Aの価格変化が製品Bの販売量にもたらす影響」からこの選択肢が偽なのが分かる。
  • (イ, エ)交差弾力性が正ならば代替財、0ならば独立財、負ならば補完財。
  • (ウ)「威光価格」は心理的価格の一種で、高品質、高級感などの価値を伝えるシグナルとして敢えて高価格で販売するマーケティング手法。購入頻度が少なく、品質や効果など製品価値の判断が難しい商品に多く用いられる。
設問2
  • (イ)skimming price (上層吸収価格)は、富裕層やinnovatorのような市場の上位層を狙った設定価格のこと。投資の早期回収が主な目的である。威光価格と類似した概念で、独自性が高く模倣されにくい製品に付けられる。
  • (エ)キャプティブ価格(Captive Product Pricing)とは、本体価格は安くし、付属品の価格を高くしてswitching cost を引き上げる戦略。

第32問

設問1

(ウ)知覚マップ(Perceptual Map)は、顧客があるブランドや製品に対して持つイメージを可視化したもの。これに対して、positioning mapは企業がブランドや製品に対して付与したいイメージである。

設問2

(エ)Lead Userは、イノベーター理論におけるInnovatorやEarly Adaptorに近いが、企業の製品開発に貢献する点が異なる。探索的調査は仮説を建てるための調査。検証的調査はその仮説を基にしてアンケートやインタビューを行い、問題の原因や解決策を調べる。

設問3

(エ)この選択肢を正しく解説できている人は少ないだろう。男女それぞれの母平均の差の検定を行いたいので、カイ二乗検定ではなくt検定を利用する。カイ二乗検定は母分散や適合度の検定に用いられる。

第33問

設問1
  • (ア)知覚品質とは、同じ目的の他の代替品と比べた時に感じる品質のこと。
  • (イ)不可分性(同時性)は、サービスの生産と消費が不可分であること。
  • (ウ)消滅性とは、在庫を持つことができないということ。
設問2
  • (ア)サービス・トライアングルは、顧客・サービス提供者・企業の関係を指し、三者関係のバランスを図ることが大事とされる。
  • (イ)サービス・プロフィット・チェーンは、「従業員の生産性が向上」⇨「顧客満足が向上」⇨「企業収益が向上」⇨「従業員の生産性が向上」というサイクルを説いている。
  • (エ)「真実の瞬間」は主にサービス業を用いられる用語で、従業員が顧客と直に接する状況を指す。顧客は従業員の態度から企業の印象を決めてしまうことに由来する。
  • (オ)SERVQUALは、サービスの品質を有形性、信頼性、応答性、確実性、共感性の5要素から評価するもので、二時点間の差を比較することが推奨されている。

第34問

マーケティングにおける関与(involvement)は、製品やサービスに対するこだわりの強さである。関与が強いからといってその製品に好意的だとは限らない。

中小企業診断士 一次試験 令和元(2019)年度 「B 財務会計」の解説

B 財務・会計

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

「仕入戻し」と「売上戻り」は返品を表す。先入先出法を理解しているかを問うた問題で、前月繰越分を売上原価に含む必要がある。(イ)は安直過ぎる解。

第2問

圧縮記帳というマニアックな問題。

直接減額方式とは、固定資産の取得価額から補助金を差し引いて計上する方法。

固定資産の購入に充てた補助金の分まで税がかかると補助金の効果が弱まるため、圧縮損という費用科目を作る。

減価償却の総額は16,000千円で耐用年数 4年なので、1年あたり4,000千円。使用開始から決算までの期間は半年間なので、決算時の減価償却費は2,000千円。

第3問

  • (ア)A社によるB社の議決権の所有割合が 40 %未満でも子会社と判定される場合はあるが、A社がB社を支配している特別な事情が必要なので、偽。
  • (イ)非支配株主持分は親会社の株主が所有する財産と見做される。ちなみに、連結前に親会社の資産の部に計上されていた関係会社株式は、親会社と子会社の純資産として重複しているので、連結後は資産の部に計上されない。
  • (ウ)持分法による投資損益は営業外損益として計上される。営業外損益には受取利息、受取配当金、仕入割引、為替差益、雑収入などが計上される。特別損益には土地・株式などの資産売却などによる今期だけの臨時収入や、災害などによる損失、不良債権処理のための損失などが計上される。
  • (エ)子会社と連結財務諸表を作成する際は、親会社と子会社の財務諸表を合算して必要な調整を加える(連結法)。非連結子会社及び関連会社と連結財務諸表を作成する際は、親会社の財務諸表に必要な調整を加える(持分法)。

第4問

  • 「買掛金支払いのため振り出した小切手 30,000円が、先方に未渡しであった」とは、自社の口座から引き落とされていたと思われていた30,000円が実際は引き落とされていなかったということだ。
  • 「受取手形 20,000円が取り立てられていたが、通知が未達であった」とは、売上代金 20,000円が自社の口座に入金されていたが、銀行からその通知がなされていなかったということだ。

第5問

  • (ア)計算書類は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表で構成される。株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部における株主資本の変動事由を記載したもの。
  • (イ)財務諸表規則に準拠しなければならないのは、金融商品取引法の適用対象である上場企業のみ。
  • (ウ)金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出する大会社は、計算書類と連結計算書類を定時株主総会に報告する必要がある。子会社や関連会社を持たない会社は連結計算書類の報告は必要ない。
  • (エ)取締役会設置会社は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に計算書類と事業報告を提供する必要がある。

第6問

  • (ア)棚卸資産の期末評価において帳簿価額と比較すべき時価は、正味売却価額。再調達原価の方が都合が良い場合はこれでも良い。
  • (イ)棚卸資産の評価方法として認められている方法は、個別法、先入先出法、平均原価法、売価還元法。
  • (ウ)数万種類を個別に評価するのは効率が悪いため、売価還元法が用いられる。
  • (エ)簿価切り下げによる評価損は、原則として売上原価として計上される。臨時かつ多額の場合は特別損失として計上される。

第7問

  • (イ)営業取引により発生する資産・債務は全て流動資産・負債である。破産債権、更正債権及びこれに準ずる債権として1年以内に回収できないことが明らかな債権のみが固定資産として扱われる。
  • (ウ)未払費用は、継続的な役務の提供において発生する経過勘定科目の一つ。主たる営業取引以外の取引から生じた未払額は、未払金である。
  • (エ)引当金は、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もることができる場合に計上できる。

第8問

企業会計と法人税法で計算したときの法人税は異なってくるのだが、企業が実際に納めなければならない法人税は税法に基づく。会計上と税法上の税額の差を埋めるのが繰延税金資産/負債という項目である。

会計上と税法上で備品の耐用年数が異なることから、減価償却費も異なってくる。ここでは、税法上の減価償却費の方が100千円安いので、法人税率を掛けた30千円を繰延税金資産として計上する。

第9問

ここで言う「消費価格」は企業が製品を作るために消費するときの材料の価格を指す。予定消費価格を設定することのメリットには、材料費の計算や記帳が迅速に行えるというものがある。当然、予定消費価格と実際消費価格にはズレが生じるので、材料消費価格差異を損益計算書に計上する必要がある。

材料の実際消費額は総平均法を用いて計算するので、前月繰越分と今月仕入分の重み付け平均値を取る。

第10問

条件2は、部品Xの製造に必要な固定費が賃借料900千円以外にもあることを否定していないので、不適切問題。

第11問

  • 「固定比率 = 固定資産 / 純資産」。長期的な支払能力を表し、低いほど安全性が高い。一般的に100%以下が望ましいとされる。
  • 総資本営業利益率 = 営業利益 / 総資本
  • 売上高営業利益率 = 営業利益 / 売上高
  • 総資本回転率 = 売上高 / 総資本

設問1では、貸借対照表のどの勘定科目が固定資産、純資産に該当するかも同時に問われている。

第12問

掛取引では現金の動きがないためCFには計上されないが、営業CFにおいて、売上債権が増加に伴い減少し、仕入債務の増加に伴い増加する

CF計算書の記法には直接法と間接法があり、間接法が多く用いられる。直接法の営業CFでは、現金の動きをすべて記録していく。一方、間接法の営業CFでは、損益計算書での税金等調整前当期純利益から始まる。

第14問

本文は難問である。

本質的価値の定義は、コールオプションの場合「原資産価格 – 権利行使価格」(※)なので、本質的価値と原資産価値は混同しやすいが大きく異なる概念だ。「差額の本質的価値」と憶えた方が良いだろう。

※権利行使すると損する場合は権利行使しないため、”0 ≦ 本質的価値”が成り立つ。

(イ)

オプションの価格 = 本質的価値 + 時間的価値

であるが、この式を変形すると

時間的価値 = オプションの価格 – 本質的価値

となる。”0 ≦ 本質的価値”より、”本質的価値 = 0″ ⇔ “At the Money” のとき時間的価値は最大となる。

(エ)

問題文が「オプションを今すぐに行使する」という意味であれば、将来の期待を意味する時間的価値を考慮する意義がないため、偽である。ちなみに、”0 ≦ 本質的価値”は権利行使しないことを前提としており、行使した場合は損することもあり得る。

第15問

(エ)投資家が選択可能な「リスク資産」の組み合わせ「投資機会集合」において、リスクの最小化とリターンの最大化を果たす曲線を効率的フロンティア(有効フロンティア)という。

第16問

年金現価係数という語に「年金」が含まれているのは、年金制度の「元本を複利で運用しながら生活費を取り崩していく」という性質を反映しているからだ。

年金現価係数はn = 19 年後までの支払いを想定しているので、年金現価係数は12を選ぶ。年金現価係数の意味が分からなくても(ア)と(エ)は安直すぎて誤りだと分かる。

第17問

β値とは、資本資産評価モデル(CAPM)において株主資本コストを求めるための変数。”安全利子率”と”市場期待収益率”の内分比だから0≦β≦1である。よって(エ)は消去できる。

第18問

  • (イ)インターバンク市場には、コール市場や短期金融市場がある。公定歩合は1994年の金利自由化に伴い金利と連動しなくなり、2006年には名称が「基準割引率および基準貸付利率」に変更され、現在では「無担保コールレート翌日物」における短期金利の変動上限としての役割を担っている。

第22問

設問1

営業利益から利子を引いたものが経常利益。経常利益から税引したものが税引後利益。これを知らなくても問題文に利子率が書かれているのでこの条件を使用する必要があることは分かる。

設問2

企業価値は「将来のキャッシュフローの割引現在価値」である。

MM理論には「法人税が存在する場合は、負債による節税効果 = 負債✕法人税率」というものがある。負債の利子の支払いによって利益が減少するため、法人税も減少するためである。このため、負債によって資金調達することで企業価値が高まる。

法人税は「負債の利子」によって減少するにも関わらず、節税効果の数式は「負債の金額」に依拠するものになっている。これは、無限等比級数によって将来の利子の現在価値を求めると、負債の金額と一致するためである

第23問

  • (ア)会計的利益率(Accounting Rate of Return)では企業会計上の利益を扱う。税引後利益を使用するため、減価償却による節税効果なども含む。
  • (イ)回収期間法における回収期間とは、プロジェクトへの投資額を回収するまでの期間のこと。ちなみに、耐用年数が固定資産が使用できる法律上の年数であるのに対して、経済命数は実質の年数。
  • (エ)DCFは「Discounted Cash Flow (割引キャッシュフロー)」の略。割引現在価値を考慮した手法である。

中小企業診断士 一次試験 令和元(2019)年度 「A 経済学・経済政策」の解説

A 経済学・経済政策

問題(PDF)解答(PDF)

第2問

輸出

輸出先の市場規模を考慮すると、cが日本だと見当がつく。

輸入

ASEANに並んで1位なのはEUだ。自動車などの「機械および輸送用機器」が多い。ドイツを中心にEU加盟国は自動車産業が盛んなのを想像しよう。

日本からの輸入は集積回路などの「集積回路電気機器およびその部分品」が多い。

アメリカからの輸入は大豆や集積回路が多い。

第3問

ア: 公的需要=政府最終消費支出+公的固定資本形成+公的在庫変動
  • 政府最終消費支出: 公共サービスや公務員給与
  • 公的固定資本形成: インフラ・公共施設などの長期的資産
  • 公的在庫変動: 災害や不測の事態に備えて政府が保有する物資

(エ)の民間需要と比べることで政府最終消費支出が足りないことに気づける。

イ: 国内需要=民間需要+公的需要

国内需要はGDPと同様に輸入を含まない。

第4問

恒常所得仮説(Permanent Income Hypothesis): 家計の消費は、現在の所得ではなく、長期的な所得によって決定されるという仮説

絶対所得仮説(Absolute Income Hypothesis): 家計は現在の所得の増加に対して、常に一定の割合で消費を増加させるという仮説

ライフサイクル仮説(Life-cycle hypothesis): 家計は、生涯を通じて得られる所得の総額を、将来的に全部使い切れるように消費を決定するという仮説

第5問

45度線分析(Keynesian cross diagram)を扱った問題。横軸は国民所得(= GDP)、縦軸は総需要(= 総支出)である。

供給が需要に対して等しくない場合、在庫投資が増減する。在庫投資もGDPに含まれるので、横軸は国民所得であると同時にGDPでもある。

45度線上では「総供給 = 総需要 (= GDP)」が成り立っているが、「閉鎖経済(輸出入がない)」且つ「将来の利益を考慮しない(投資しない)」という条件下でのみ成立するものである。実際には限界輸入性向や限界投資性向を考慮する必要があるので、総需要曲線の傾きは45度線より緩やかになる。

所得に対する国内消費の割合が大きければ乗数効果は効きやすくなる。

第6問

  • マネタリー・ベースは日銀が供給する通貨の総量。
  • マネー・ストックは日銀を含む金融機関全体が供給する通貨の総量。

買いオペや売りオペは、日銀が市場で債券を買ったり売ったりしてマネタリー・ベースを増減させる日銀の市場操作のこと。

マネーストックは流動性の高い順にM1, M2, M3に分類される。

  • M1: 流通中の紙幣・硬貨と、要求払預金の合計
  • M2: M1に定期預金、譲渡性預金、普通預金などの準通貨を加えたもの
  • M3: M2にCD、MMFなどの短期金融資産を加えたもの

信用乗数はどのくらい信用創造がなされているか数値的に示すものだ。準備預金を増やすと市場に流通する通貨は減るので信用乗数は下がる。

第7問

金利平価説や購買力平価説について知らなくても解ける問題。

金利の高い通貨で資産運用した方が得なので、高金利の通貨は人気となり高くなる。

第8問

IS-LM曲線の問題。IS (Investment-Saving)曲線は財市場、LM (Liquidity preference-Money supply)曲線は金融市場の均衡を表している。この交点でその国のGDPと金利が定まる。

中央銀行がマネーサプライを増加させると、貨幣の供給が増え、短期的には物価と金利は下がる。ところが流動性の罠(liquidity trap)においては、将来の金利上昇を期待して投資を控えるため、金利が低下しなくなる。

総需要曲線は、横軸を実質GDP, 縦軸を物価としたグラフである。貨幣の供給量を増やしても投資は増えないため、実質GDPは変わらない。したがって総需要曲線は垂直になる。

クラウディング・アウトは、政府支出の拡大により利子率が上昇して民間の経済活動を圧迫する現象である。流動性の罠の状況下では利子率が非常に低いため、クラウディング・アウトは起きにくい。

第9問

自然失業率は完全雇用(現行の賃金率で働く意思がある全ての人が職に就くことができている)状態における失業率である。自発的失業や摩擦的失業は発生しているが、非自発的失業は発生していない。

自然失業率仮説において、物価が上昇すると失業率は短期的には下がるとされているが、長期的には自然失業率に均衡する。

循環的失業とは、景気循環に起因する短期的失業である。不況時に失業が増え消費者の購買力が下がると、企業は商品の価格を下げて対応するため、物価が下がる。

第13問

価格弾力性(Price elasticity)とは、価格の変化に対して需要が変化しやすいということ。この「弾力性」という表現は些か分かりにくい。「価格感応度(Price responsiveness)」を使った方がいい。

第16問

(ア)は問題文が不適切。価格がP1とP2の間にあるということは、利益が総費用以下かつ可変費用以上であるということだ。

MCとACの交点が損益分岐点、MCとAVCの交点が操業停止点である。

財の生産量と価格の組み合わせは限界費用曲線上にある。これは、利潤(=総収入-総費用)が最大(生産量で微分すると0)となる価格の条件がP=MCであるからだ。

第18問

設問1

S0とS1国内の生産者の供給曲線であることに注意。設問1の「供給量」は「国内の生産者による供給量」という意味。

設問2

これは難問で、資格とるなら.tokyoで詳しく解説されている。「関税導入による価格の上昇幅」と「補助金導入による限界費用の下落幅」が一致しているという点がこの問題の要所。

社会的余剰には生産者余剰と消費者余剰だけでなく政府余剰も含まれる。関税導入については、「政府余剰 = 輸入量 ✕ 関税」となる。補助金導入については、「政府損失 = 国内生産者の生産量 ✕ 補助金」となる。

第20問

中小企業診断士の試験 専門用語の別名や英語名

科目名

日本語名英語名
経済学・経済政策Economics & Economic policy
財務・会計Finance and Accounting
企業経営理論Corporate Management
運営管理(オペレーション・マネジメント)Corporate Operations
経営法務Management Law
経営情報システムManagement Information System
中小企業経営・中小企業政策SME Management and Government Policy

財務・会計

日本語名英語名
財務諸表financial statements
貸借対照表Balance Sheet (BS)
資産Assets
負債Liabilities
資本Equity
損益計算書Income Statement, Profit and Loss Statement (PL)
費用Expenses
利益Net income
収益Revenue
キャッシュフロー計算書Cash Flow Statement (CF)

品質管理における「QC七つ道具」

日本語名別名英語名
ヒストグラムHistogram
散布図Scatter plot
チェックシートCheck sheet
パレート図Pareto chart
特性要因図魚の骨図
因果関係図
Ishikawa diagram
管理図統計的処理図Control chart
層別法ストラトフィケーションStratification

中小企業診断士の資格取得の勉強

試験内容

一次試験

一次試験の案内(令和5年度)

二次試験

事例はそれぞれ出題分野が異なる。それぞれの事例において関係する一次試験の分野は次の通り。

  • 事例1: 経営理論
  • 事例2: 経営理論、運営管理
  • 事例3: 運営管理
  • 事例4: 財務会計

判定

  • A:60%以上
  • B:50%以上60%未満
  • C:40%以上50%未満
  • D:40%未満

戦略

一次試験

難易度は年度によって変動するので、苦手な科目を作ると4割を下回る可能性がある。そこで全科目を6割以上取れるようにしておくべきだろう。特に、二次試験と関係が深い「財務会計」、「経営理論」、「運営管理」を7割以上取れるのが望ましい。

中小企業診断士の試験に関わる法律は改正される場合があるので、過去問演習では新しい過去問を使用するのが良い。

「中小企業経営・政策」の過去問を解説するサイトは少ないが、中小企業白書の概要は役に立つテキストである。

二次試験

中小企業診断士2次試験完全攻略マニュアルは参考になる。

勉強法

過去問と解答用紙(マークシート)

過去問の解説サイト:

一次試験:

二次試験:

模範解答は、KECとAASが良質。TAC, TBC, 大原, まとめシート, MMC等は設問を誤読して見当違いな解答をしているものが多く使い物にならない。

口述試験: AAS

各科目の正解率

参考書:

  • みんなが欲しかった! 中小企業診断士の教科書
  • 中小企業診断士 最速合格のためのスピードテキスト
  • 中小企業診断士 最短合格のための 第1次試験過去問題集
  • 一発合格まとめシート

その他

「中小企業診断士試験にかかる保有個人情報の開示請求の申請手続き」をすることで、どの科目が何点だったのかを把握できる。