中小企業診断士 一次試験 令和元(2019)年度 「A 経済学・経済政策」の解説

A 経済学・経済政策

問題(PDF)解答(PDF)

第2問

輸出

輸出先の市場規模を考慮すると、cが日本だと見当がつく。

輸入

ASEANに並んで1位なのはEUだ。自動車などの「機械および輸送用機器」が多い。ドイツを中心にEU加盟国は自動車産業が盛んなのを想像しよう。

日本からの輸入は集積回路などの「集積回路電気機器およびその部分品」が多い。

アメリカからの輸入は大豆や集積回路が多い。

第3問

ア: 公的需要=政府最終消費支出+公的固定資本形成+公的在庫変動
  • 政府最終消費支出: 公共サービスや公務員給与
  • 公的固定資本形成: インフラ・公共施設などの長期的資産
  • 公的在庫変動: 災害や不測の事態に備えて政府が保有する物資

(エ)の民間需要と比べることで政府最終消費支出が足りないことに気づける。

イ: 国内需要=民間需要+公的需要

国内需要はGDPと同様に輸入を含まない。

第4問

恒常所得仮説(Permanent Income Hypothesis): 家計の消費は、現在の所得ではなく、長期的な所得によって決定されるという仮説

絶対所得仮説(Absolute Income Hypothesis): 家計は現在の所得の増加に対して、常に一定の割合で消費を増加させるという仮説

ライフサイクル仮説(Life-cycle hypothesis): 家計は、生涯を通じて得られる所得の総額を、将来的に全部使い切れるように消費を決定するという仮説

第5問

45度線分析(Keynesian cross diagram)を扱った問題。横軸は国民所得(= GDP)、縦軸は総需要(= 総支出)である。

供給が需要に対して等しくない場合、在庫投資が増減する。在庫投資もGDPに含まれるので、横軸は国民所得であると同時にGDPでもある。

45度線上では「総供給 = 総需要 (= GDP)」が成り立っているが、「閉鎖経済(輸出入がない)」且つ「将来の利益を考慮しない(投資しない)」という条件下でのみ成立するものである。実際には限界輸入性向や限界投資性向を考慮する必要があるので、総需要曲線の傾きは45度線より緩やかになる。

所得に対する国内消費の割合が大きければ乗数効果は効きやすくなる。

第6問

  • マネタリー・ベースは日銀が供給する通貨の総量。
  • マネー・ストックは日銀を含む金融機関全体が供給する通貨の総量。

買いオペや売りオペは、日銀が市場で債券を買ったり売ったりしてマネタリー・ベースを増減させる日銀の市場操作のこと。

マネーストックは流動性の高い順にM1, M2, M3に分類される。

  • M1: 流通中の紙幣・硬貨と、要求払預金の合計
  • M2: M1に定期預金、譲渡性預金、普通預金などの準通貨を加えたもの
  • M3: M2にCD、MMFなどの短期金融資産を加えたもの

信用乗数はどのくらい信用創造がなされているか数値的に示すものだ。準備預金を増やすと市場に流通する通貨は減るので信用乗数は下がる。

第7問

金利平価説や購買力平価説について知らなくても解ける問題。

金利の高い通貨で資産運用した方が得なので、高金利の通貨は人気となり高くなる。

第8問

IS-LM曲線の問題。IS (Investment-Saving)曲線は財市場、LM (Liquidity preference-Money supply)曲線は金融市場の均衡を表している。この交点でその国のGDPと金利が定まる。

中央銀行がマネーサプライを増加させると、貨幣の供給が増え、短期的には物価と金利は下がる。ところが流動性の罠(liquidity trap)においては、将来の金利上昇を期待して投資を控えるため、金利が低下しなくなる。

総需要曲線は、横軸を実質GDP, 縦軸を物価としたグラフである。貨幣の供給量を増やしても投資は増えないため、実質GDPは変わらない。したがって総需要曲線は垂直になる。

クラウディング・アウトは、政府支出の拡大により利子率が上昇して民間の経済活動を圧迫する現象である。流動性の罠の状況下では利子率が非常に低いため、クラウディング・アウトは起きにくい。

第9問

自然失業率は完全雇用(現行の賃金率で働く意思がある全ての人が職に就くことができている)状態における失業率である。自発的失業や摩擦的失業は発生しているが、非自発的失業は発生していない。

自然失業率仮説において、物価が上昇すると失業率は短期的には下がるとされているが、長期的には自然失業率に均衡する。

循環的失業とは、景気循環に起因する短期的失業である。不況時に失業が増え消費者の購買力が下がると、企業は商品の価格を下げて対応するため、物価が下がる。

第13問

価格弾力性(Price elasticity)とは、価格の変化に対して需要が変化しやすいということ。この「弾力性」という表現は些か分かりにくい。「価格感応度(Price responsiveness)」を使った方がいい。

第16問

(ア)は問題文が不適切。価格がP1とP2の間にあるということは、利益が総費用以下かつ可変費用以上であるということだ。

MCとACの交点が損益分岐点、MCとAVCの交点が操業停止点である。

財の生産量と価格の組み合わせは限界費用曲線上にある。これは、利潤(=総収入-総費用)が最大(生産量で微分すると0)となる価格の条件がP=MCであるからだ。

第18問

設問1

S0とS1国内の生産者の供給曲線であることに注意。設問1の「供給量」は「国内の生産者による供給量」という意味。

設問2

これは難問で、資格とるなら.tokyoで詳しく解説されている。「関税導入による価格の上昇幅」と「補助金導入による限界費用の下落幅」が一致しているという点がこの問題の要所。

社会的余剰には生産者余剰と消費者余剰だけでなく政府余剰も含まれる。関税導入については、「政府余剰 = 輸入量 ✕ 関税」となる。補助金導入については、「政府損失 = 国内生産者の生産量 ✕ 補助金」となる。

第20問

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