中小企業診断士 一次試験 令和四(2022)年度 「G 中小企業経営・政策」の解説

G 中小企業経営・中小企業政策

問題(PDF), 解答(PDF)

第1問

我が国の企業のうち99.7%を中小企業を占めることを知っていれば選択肢を絞り込める。また、中小企業従業員の平均年収が400万円程度であることを知っていれば、従業員一人当たりの付加価値を計算することでも絞り込める。

第2問

小規模企業数割合は、製造業86%、小売業82%と拮抗しているため、(イ)と(エ)が紛らわしい悪問である。中規模企業数割合は卸売業が29%で最も高いが、こんなことは知る由もないので、「製造業と小売業は小規模企業が多い」ということから推測するしかない。

第3問

対象期間は2010年度から2019年度、つまりリーマンショック後・パンデミック前なので不景気ではないことから絞り込める。

持続的な市場金利の低下や借入金依存度の減少が利払い額を減らし、売上高経常利益率の改善に寄与しているとみられる。

第4問

中小企業の労働生産性は、2003年度から2019年度の長期に渡って残念ながら横ばいである。後に出てくる中小企業向け賃上げ促進税制、経営革新支援事業、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金のように、政府は生産性向上に関心がなく賃上げでごまかしているためである。

第5問

平成20 (2008)年度第2問でも類似の出題があったが、当時は労働生産性の格差は宿泊業・飲食サービス業より製造業の方が大きかった。それから10年経ち、宿泊業・飲食サービス業では大企業においてITシステム導入や省人化が進んだため格差が広がったとみられる。

小売業は主に最寄品を扱うため企業規模によって価格差があるとは考えにくく、これが生産性格差の小ささに反映されている。

第6問

廃業率は、2010年度から一貫して開業率を下回っており、減少傾向。リーマンショック後の持ち直しを反映している。

第7問

設問1

自己資本比率の2000年度から2019年度の変化は、中規模企業では20%⇒43%、大規模企業では30%⇒45%といずれ大幅に増加している。中小企業基本法の基本方針第4項に適う変化であるが、その理由として次が考えられる。

  • バブル崩壊を機に自己資本比率が重視されている
  • 我が国の経済成長が停滞し投資ができず、利益剰余金が蓄積している
設問2

借入金依存度=借入金/総資産

宿泊業・飲食サービス業は巨額の先行設備投資が必要なため、借入金依存度が高い。

第9問

損益分岐点比率は経営の安定性に関わる指標である。中小企業の損益分岐点比率は大企業に比べて高く、1990年からほとんど変化がない。中小企業基本法の基本方針第三項に適わない事態である。

第10問

中小企業は大企業に比べて、IT人材の獲得が難しく、従業員の年齢層が高いためITリテラシーが低いことがソフトウェア投資率の横ばい傾向を反映していると考えられる。

第11問

設問1

導入におけるコストや難易度が低いITツール・システムほど導入されやすい。

設問2

デジタル化による投資収益率は一般的に高いので、「資金不足」が大きな要因ではないことは推測できる。「アナログな文化・価値観が定着している」と「組織のITリテラシーが不足している」は似たような説明なので、悪問だ。

第12問

建設業に休廃業・解散が多いのは、近年の人手不足と資材高によるもの。中小企業診断士として覚えておきたい話だ。

第13問

事業引継ぎ支援センターの相談社数、成約件数は増加傾向だったが、相談社数が2020年度に初めて減少した。パンデミックの影響とみられる。

第13問

ここでは1986年と2006年を比較しており、30年もの間隔があることに注目。この30年でサービス業が大きく成長したことを踏まえると絞り込める。

第15問

設問1

経営課題として小規模事業者が挙げた以下の三つを、回答割合の大きい順に並べる問題。

  • 営業・販路開拓(営業力・販売力の維持強化、新規顧客・販路の開拓)
  • 人材の確保・育成、働き方の改善
  • 生産・製造(設備増強、設備更新、設備廃棄)

中小企業白書によると、「営業・販路開拓」が圧倒的に大きい。このアンケートは複数回答形式なので、あらゆる業種や規模の企業が同意できるこの選択肢が圧倒的に選ばれたと考えられる。個人や家族経営の企業ならば「人材の確保・育成、働き方の改善」には関心がないし、非製造業には「生産・製造」は関係ないので票が集まらないわけだ。

設問2

非製造業には小売業やサービス業が含まれるが、これらの業種における商品は差別化が難しい。それがブランド化が困難な原因である。

第16問

製造業においてはサプライチェーンの維持の要請から、BCP (事業継続計画)の策定が進んでいる。

第17問

資本性劣後ローンの金利は固定ではなく業績連動型。業績が悪い時の金利負担を抑えることができる。

第18問

設問1
  • 中小企業に該当する製造業等: 資本金が3億円以下または従業員数が300人以下
  • 中小企業に該当する卸売業: 資本金が1億円以下または従業員数が100人以下
  • 中小企業に該当する小売業: 資本金が5000万円以下または従業員数が50人以下
  • 中小企業に該当するサービス業: 資本金が5000万円以下または従業員数が100人以下
設問2
  • 小規模企業に該当する製造業等: 従業員数が20人以下
  • 小規模企業に該当する商業・サービス業: 従業員数が5人以下

第19問

「中小企業向け賃上げ促進税制」は補助金を餌にして強引に企業に賃上げさせる政策。なぜか教育訓練費がインセンティブに含まれていて、愚策を強調する出題となっている。

第20問

設問1

経営革新支援事業の経営計画は、ものづくり補助金の事業計画とほぼ同じ。

第21問

下請代金法は「委託内容」と「資本金を区分する境界」で覚えると良い。

  • 物品の製造・修理委託の場合は3億円と1千万円
  • 情報成果物の作成、役務提供委託の場合は5千万円

第22問

「小規模事業者持続化補助金(一般型)」の補助金の対象は、各業種における一般的な人員規模に基づいて定められている。

第23問

経営セーフティ共済は、迅速かつ手間をかけずに資金調達できる制度だ。

  • 貸付けを受けた共済金の10分の1に相当する額が積み立てた掛金総額から控除される。
  • 償還期間は貸付け額に応じて5年~7年の毎月均等償還
  • 取引先企業が倒産し、売掛金や受取手形などの回収が困難となった場合、この回収困難額と、積み立てた掛金総額の10倍のいずれか少ない額の貸付けを受けることができる。貸付限度額は8,000万円。

第26問

「女性、若者/シニア起業家支援資金」の対象者は

  • 開業7年以下
  • 女性 or 35歳未満 or 55歳以上

第27問

JAPANブランド育成支援等事業費補助金

  • 1 ~ 2 年目は3分の2補助
  • 補助額の上限は500万円
  • 支援期間は最長3年
  • 複数者による連携体として共同で応募する場合、1社ごとに最大500万円を上限額に嵩上げし、最大で2000万円

第29問

成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)は、戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)と商業・サービス競争力強化連携支援事業(サビサポ事業)が2022年度に統合したもの。

第30問

PMI (Post Merger Integration)とは、M&Aによって引き継いだ事業の継続・成長に向けた統合やすり合わせなどの取り組みのこと。

(ア)の「M&Aで株式譲渡、事業譲渡などに係る最終契約を締結した後、株式・財産の譲渡を行う工程」はclosingを説明している。

(ウ)の「後継者不在などの中小企業の事業を、廃業に伴う経営資源の散逸回避、生産性向上や創業促進などを目的として、社外の第三者である後継者が引き継ぐこと」は中小M&Aを説明している。

(エ)の「対象企業である譲渡側における各種のリスクなどを精査するため、主に譲受側が専門家に依頼して実施する調査」はdue diligenceを説明している。

第31問

経営力再構築伴走支援の資料では、「経営者、その支援者が取るべき基本的なプロセスは、本来、課題設定を入口として課題解決を出口とするもの」と述べられている。

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