A 経済学・経済政策
予想外に長引くCovid-19の影響を反映した試験問題が多かった。
第2問
aが中央銀行であることは明白だが、bとcを特定するのは難しい。市中銀行が個人に比べて遥かに多くの国債を保有している背景として次のようなことがある。
- 財政法第5条に基づく「国債の市中消化の原則」によって、発行された国債は民間金融機関に売却することが原則となっている。
- バーゼル規制では、市中銀行の自己資本比率において「自国通貨建ての国債は、格付にかかわらず、信用リスクをゼロにすることができる」という規定がある。
第4問
コロナ禍を絡めた意欲的な設問となっているが、残念ながら(a)と(b)は文が意味不明だ。それでも、いずれの選択肢も偽なので不適切問題の扱いにはならない。
- (a)この文は恒常所得仮説ではなく絶対所得仮説の説明と思われるが、仮に絶対所得仮説の説明だとしても、一時金の給付によって経済全体の消費が増加するとは限らない。
- (b)「生涯の所得が生涯の消費を決定する」という文はライフサイクル仮説の説明だ。また、「新しい生活様式」という語の定義が不明。
- (d)「XのY弾力性が高い」という語は、「X/Yの絶対値が1より大きい」と読み替えれる。
第5問
設問1
(a)記事「均衡予算乗数=1になる理由」が分かりやすい。均衡予算とは、赤字国債は発行せずに政府の支出はすべて税収によって賄うということ。
乗数はG, T, I が所得の増加にどれくらい寄与するかの指標なので、(b), (c), (d)についてはそれぞれdY/dG, dY/dT, dY/dI を求めればよい。
設問2
問題文の「景気の落ち込みを回避するための財政政策の効果」という文言から、選択肢を絞り込める。
限界消費性向はc < 1 であるため、国民は所得の一部を消費ではなく貯蓄や投資に回す。一方で政府は国民から徴収した税を全て当期の消費に充てるため、政府支出による景気拡大の効果の方が大きい。
注意すべきなのは、景気拡大の効果が増税分より大きくなるのは当期だけである。将来の効果を先食いしているのである。
第6問
設問2
財政拡張政策や金融緩和政策によってIS曲線やLM曲線は右に移動し、GDPの増加に寄与する。経済政策にフリーランチはないので、受益を先食いしている。
第7問
- マネタリーベースとは、日本銀行が金融部門を含めた経済全体に供給する通貨量。
- マネーストックとは、金融部門(通貨発行主体)から経済全体に対して供給される通貨量。マネタリーベースに含まれている日銀当座預金や金融機関の保有現金は含まない。
預金には、家計等が市中銀行に預ける預金と、市中銀行が中央銀行に預ける日銀当座預金とがある。「家計の預金✕法定準備率 ≦ 日銀当座預金 ≦ 家計の預金」が成り立つ。
第8問
(c)stagflation を理論的に説明するために構築されたのがMonetarism である。マネーストックの操作による政策が特徴で、k%ルールが含まれる。Keynesianが絶対所得仮説を支持するのに対して、Monetarismは恒常所得仮説を支持する。
第9問
外国貿易乗数は、純輸出が所得の増加にどれくらい寄与するかの指標。第5問で登場した乗数の仲間だ。
第11問
(エ)有効求人倍率=月間有効求人数/月間有効求職者数
第12問
経済成長率=(労働分配率 × 労働投入の成長率)+(資本分配率 × 資本投入の成長率 )+ 全要素生産性の成長率
という関係式は、コブ=ダグラス型生産関数Y=NαKβ を対数微分して得られる。
第19問
独占市場における価格決定プロセスは「独占市場の利潤最大化「MC=MR」と価格の決まり方・余剰分析と独占利潤など」を読むと直感的に理解できる。
第20問
(c)は、「太郎さんは点Aではなく点Bで消費するのではないか」と物議を醸した文だ。
需要曲線は限界費用曲線のように、生産量で微分した関数だ。よってQ=0のときは埋没費用のp=700になる。