高校理科 東京大学 物理・化学 2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

物理

解説

分析

京都大学のような穴埋め形式が出題された。

到底75分で解ける難度と分量ではなく、東工大のように2時間は必要だろう。第3問が易しいのでここで8割程得点しよう。

第1問

[II]

変位xは lθ と表せるが、これをlで割っている。単位が”位置”から”角度”に変わっても単振動という本質を把握できるかを試されている。

(1)図1-3のベクトル「-ma」は誤りで正しくは「ma」だ。出題ミスなので符号が誤っていても正解。

(2アイ)t = 0, T/2を代入してグラフと照合すれば良い。

(2iii)「速度の変化」という表現がヒントだが誘導が分かりにくい。グラフを元に勘で書いても当たりそう。

第2問

[I]

Rについては、どんな場合に抵抗値が大きくなるかを考えれば良い。

[II]

(2)早くも難問の登場。電荷の流れの追跡は困難なので「全体の比」に着目しよう。コンデンサーが回路にどう繋がっていようが抵抗の消費電力の比は一定なので、各抵抗のエネルギーの取り分を考えよう。コンデンサーに蓄えられたエネルギーが解放される際に、各素子の電圧が全て等しいということは自明ではないが、そういうことになっている。

(3)素子の構成単位同士は直列しているので、1構成単位に流れる電流を調べれば良い。交流の場合、コンデンサーの電流は位相がπ/2先行し、I = ωCV1 cos ωtとなる。

[III]

(イウ)(ア)が誘導問題なので区間LMを分析することになるが、R2やC0にかかる電圧が不明なので、未知数を設定する。

(キク)2つの電流の式は等しい。ここにt = 0, π /2を代入すればR, Cが得られる。

第3問

[I]

(1)「sin θ1 /sin θ2 = n1 /n2」となるように屈折率の定義を変えて欲しいね。

[II]

(2)「nfとn1,n2の大小関係」とあるので、n1とn2の大小関係を示す必要はない。

(3)[I]での考察結果をここで適用するという筋書きだ。球面については計算せずとも定性的考察によって分かる。半径は勘で書いても当たる。

化学

第1問

些末な知識が必要な大問。

(実験1,2)フェノールにはオルト、パラ配向性がある。この知識の有無で大問全体の点数が大きく左右される。2018年度第一問(カ)でも問われた知識。

(実験3)アニリンの製法として、ニトロベンゼンをSnとHClで還元し、強塩基によりアニリンを弱塩基として遊離する方法がよく知られている。一方で鉄と酸性溶液でニトロ基を還元する方法をBechamp還元といい、ここでは強塩基としてNaHCO3を用いている。鉄は塩化鉄に酸化される。

(実験4,5)酸触媒を用いることでエステル結合を促進できる(フィッシャーのエステル化反応)。酢酸より無水酢酸の方が結合の収率が高い。

(エ)幾何異性体が生じるのは回転の障害となる配置があるからで、二重結合があるとは限らない。

(キ,ケ)フェノールはホルムアルデヒドの付加においてもオルト、パラ配向性がある。 Iはレゾールではなくノボラックなので出題ミス。

第2問

(ア)東大入試でよくある不明瞭な問題文。その意図は、反応式を足し合わせると与式になるということだ。

(キ)カリウムが使えない因子として温度が絡んでくる。

第3問

[I]

(オ)滴下量が大きいほど目盛りの誤差範囲は相対的に小さくなる。ヨウ素はそもそも滴下していない。

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