FNN 「シンギュラリティは来る?イーロン・マスクの頭の中を「シミュレーション仮説」から考える」を読んだ感想。
技術的特異点は訪れるのか?
「技術的特異点(シンギュラリティ)」とは、コンピューターの性能が時代とともに向上して、やがては「文明の進歩の主役」を人類から奪い取るときを示す。
「 技術的特異点」という言葉を作り出したRay Kurzweil は、技術的特異点が2045年に訪れるという説を提唱している。その根拠として収穫加速の法則を挙げている。これは「科学技術は時間とともに指数関数的に進歩する」というものだ。
私はこの説を疑わしく思っている。というのも、収穫加速の法則は飽くまで経験則に過ぎず、今後もその経験則通りに技術が発達する証拠にはならないからだ。
それに、コンピューターが今後も性能を向上させ続けるには越えられない壁もある。収穫加速の法則は、コンピューターの世界では特に「ムーアの法則」としてよく知られている。ムーアの法則とは、簡単に言うと「コンピューターの性能は2年経つごとに2倍に向上する」というものだ。
確かにこれまではこの経験則に概ね沿ってきた。でも、コンピューターの集積回路の密度を高めるのは物理的な限界がある。また、情報を伝達する電子の速度も有限だ。
コンピューターの性能を桁違いに向上させると期待されている「量子コンピューター」も、絶対零度に近い温度でなければ正しく機能しないという課題があり、これが克服されなければスマホなど身近な機器に用いるのは難しいだろう。
そもそも技術的特異点の定義にある「文明の進歩の主役」を測る客観的な尺度はあるのか。それが生産性であるとすれば、科学技術なしには現代の生産性は殆ど実現できないので、とっくの昔に技術的特異点を迎えていると言える。
Neuralink というビジネス
Neuralink というビジネスは、一見するとあまりにも壮大で成功するのか分からない。でもその事業を着々と進めているということは、それなりに勝算があるのだろう。
こういうハイリスク・ハイリターンのビジネスに踏み込めるのがさすがElon Musk だ。仮に「人類がAIをコントロールする」という大義が果たせなくても、神経系の医療技術として応用できるという保険もある。
あと、Neuralink といい、SpaceXといい、Musk の社名センスはイカしてるよね。