令和3(2021)年度大学入学共通テストの解答・解説

本試験

現代社会(公民)

センター試験から共通テストに移行して最も大きな変化を遂げたのが社会科ではないだろうか。純粋な暗記科目であったのが情報処理能力を要求されるようになった。「現代社会」では、ディベートやデータの処理などの問題が増加した。

国語

評論文のテーマは「妖怪の現代における解釈」だった。受験生が小学生の頃に妖怪ウォッチが大ブームとなっているので、「受験生が出来るだけ関心を持てるテーマを出題したい」という意図があったと思われる。全体的に難易度は高かった。

第1問[12]は不適切問題。ドッペルゲンガー見たのは主人公である「僕」ではなく”K君の夫人”や”隻脚の翻訳家”であるので、彼らが不安定な存在とは言えるが、主人公に対しては言えないからだ。

英語

発音の問題は完全に廃止され、イディオムの知識も余り必要なくなった。その一方で読むべき英文の量は顕著に増加し、時間内に全てを解き切るのは難しくなった。

  • factとopinionについての問題は、選択肢を読むだけで正解が得られる場合があった。
  • 第5問: 問1と問2は文章全体を読んで判断する必要がある問題なので、後回しにするのが良い。

リスニングは配点が今回から50点から100点になった。試行調査ほど難しくはない。

数学

出題形式は、共通テスト試行調査とセンター試験の中間といった印象。状況設定が実用的であったり複雑になったので読解に時間が掛かる。その代わり問題数は減少したので難化したとは言えない。

IAは第5問が難関大レベルの超難問だった。

IIBは、伝統的に三角関数の合成が頻出だったが、まさかのcosバージョンが出題されて出鼻を挫かれた人は多かったのでは?しかし全体的には易しかった。

物理

「2本の動く導体棒」や「ブリッジ回路」など、二次試験レベルのテーマが出題されたのが特筆に値する。問題の難易度は上がった代わりに問題数が減ったので、出来不出来が大きく分かれるだろう。

第2問問6は難問。ネット上でまともな解説をしているのは東進くらいだ。

化学

化学も本来は知識量が物を言う科目だが、思考力を要求する科目へと変貌した。ポリペプチドの計算問題は過去に東工大でも類題が出題されている。他にも周期表や水素結合など、東工大入試の化学を参考にしたとしか思えないような問題がいくつか見られた。

考察

センター試験が平均点6割となるように作られていたのに対して共通テストは5割となるように作られているので難化は予想できた。それにも関わらず平均年が例年並みだったのは、コロナ禍に伴う高校行事や外出機会の減少により勉強時間が増えたことが大きいと思う。来年度はその反動で更に難化しそうだ。

暗記では太刀打ちできない問題が大幅に増えたので、得点に差が付いただろう。

共通テスト試行調査の問題内容と比べると、国語や数学は従来のセンター試験と大差ない内容だった。これは、記述式の削除などの混乱があり共通テストの出題方針を十分に反映した問題を作成する余裕が無かったためかもしれない。来年度以降、新傾向の出題が増えるだろう。

共通テストへの移行による出題傾向の変化は、暗記主体の勉強からの脱却を促す狙いが感じられて概ね歓迎すべきものだ。ただし、我が国の大学教育制度は「入学し難く卒業し易いもの」から「入学し易く卒業し難いもの」に根本的に改革すべきで、今回の入試制度改革は単なるその場しのぎに過ぎないことを教育関係者は理解するべきだ。

追試験

数学に関しては、多くの解説サイトがあるが、そのの多くは質が低い。「やさ数」が良質なのでオススメ。

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